ウォーター

第百十二部

 

「優しくそっと動いて」

「こうかな?」

宏一はゆっくりと腰を使い始めた。腰を密着させたまま、ほんの少しだけ出没を始める。それは宏一にとっては物足りないほどだったが、友絵にとっては十分な動きだった。友絵の中では肉棒が力強く奥深くを動き回る。

「あんっ、あんっ、あんっ、いいっ、深いのっ、ああーっ、あーっ」

「今日は感じやすいんだね。大丈夫?」

「そのまま、そのまましてっ、抜いちゃいやっ、ああぁっ、あうぅっ」

友絵は宏一の首に手を回し、首につかまったまま仰け反って悶えた。両足は最大限に開かれて宏一の腰に絡みついている。友絵自身にもどうしてここまで感じるのかよくわからなかった。この程度の動きでは宏一にとって不満が残ることはわかっていたのだが、これ以上は自分の身体が受け入れられない。もし宏一がダイナミックに動き始めたら数秒でいってしまいそうだった。

「これくらいがいい?」

宏一はあくまでも友絵の身体を気遣ってくれた。友絵の望むように優しく動いて、ゆっくりと頂上へと導いていく。友絵は申し訳ないと思ったが、この優しい動きでもそう長くは持ちそうになかった。

「こ、宏一さん・・・・また・・・いっちゃいそう」

「いってごらん、何度でもしてあげる」

「ごめんなさい。ああんっ、ああっ、私の身体、ああぁぁーーっ、もう、ああんっ、いやぁ、まだいやあ、まだぁぁぁぁっ」

友絵は首を左右に振って快感から逃れようとした。

「もういっちゃうの?」

そう言いながら宏一は再び乳房を可愛がった。

「そんなことされたらぁっ、だめぇっ、ああああぁっ、・・・っちゃうぅぅぅーーーっ」

ぐっと友絵の身体が仰け反り、スーッと肌がピンク色になった。我慢し続けて最後に達したために先ほどとは違った深い快感が友絵の身体を駆け抜ける。そのとき宏一の肉棒は先程よりも強く締め付けられた。ソフトなのにとても気持ち良い。どうやら全体がソフトに締め上げられているようだった。

「・・・っはあぁっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ・・・」

友絵は激しく息を弾ませていた。とても話ができる状態ではなかった。

「少し休もうか?」

宏一が腰を引こうとすると、友絵はいやいやをして宏一を抱き寄せた。

「そんなに疲れてるのに、まだするの?だいじょうぶ?」

友絵は息を弾ませながらもうんうんと頷く。

宏一は友絵がどうしてそこまで挿入したままでいることにこだわるのかわからなかったが、友絵が望む以上、そうしてやることにした。再びゆっくりと動き始める。宏一の肉棒も先程のソフトな出没と友絵の締め付けで、最初よりは高まってきていた。

宏一がさらにゆっくりと友絵の肉壁を楽しむようにじわりじわりと出没を繰り返していくと、その度に友絵は、

「はうぅっ、ああぁぅぅ、あんっ」

と宏一の首に手を回してつかまりながら首を仰け反らせて喜ぶ。

「どう?まだ強い?」

「深いの、奥まで突き当たってるの、ああんっ」

「もっとそっとしたほうがいい?」

「このまま、このままして、お願いだから、ああうぅっ、すごいっ」

友絵は宏一の肉棒をたっぷりと感じられることに心から満足していた。もちろん快感も強かったが、今の友絵は本来の快感以上のものを作り出していた。友絵の中のどんな狭い隙間をも埋めようと押し入ってくる硬い肉棒の圧倒的な存在感は、友絵の心の隙間をも埋めてしまうほど力強いものだった。それは今、友絵自身が一番望んでいるものだった。

それを裏付けるかのように、宏一の肉棒が友絵の置く深くをさらに押し広げようとする度に、友絵の肉壁はじわりと肉棒全体を包み込み、それを優しく受け止めながら少しだけ抵抗する。宏一はゆっくりと腰を動かしながら、肉棒を包んでいる柔らかくて暖かい肉壁の動きはまるで友絵の存在そのもののようだ、と思った。

「宏一さん、ああぁぁ、もう、もう・・・ああん、だめ」

「いきそう?」

「いっちゃいそう、ああんっ、ごめんなさい、私、持たない・・・」

「いいよ。いってごらん」

「アン、そんなに優しく言われたら、ああぁぁ」

友絵は再び首を左右に振っていやいやをするようにして何とか耐えようとした。しかし、今日の友絵の身体は本人の想像以上にいき易くなっている。たちまち限界が友絵を襲った。

「本当に、ああっ、はあああぁっ、もう、ああぁぁーっ、だめえっ、はううううぅぅーーーーっ」

友絵は堪らずにあごを突き上げて絶頂した。肉棒の根元が再びびくっ、びくっと締め付けられ、肉壁全体が絡みつく。宏一は出没を止めて友絵の肉壁の動きをたっぷりと味わった。

「・・や、やめないで・・・・」

「え?」

「やめちゃいや・・・・」

「だって、友絵さん、もう疲れて大変だろ?」

「宏一さんが・・・・いくまで・・・・続けて」

友絵が激しい息の間から囁く様に言った。

「お願い。続けてほしいの」

「・・・・・・・・・わかったよ」

「もし私がいっても気にしないで続けてね」

「うん」

宏一は今日の友絵の気持ちを考えると、言われたようにするしかないと思った。確かに肉棒はどんどん感じやすくなっている。動き始めたときは、あの程度の出没でいけるとは思えなかったが、今の調子なら何とかいけるかもしれない。宏一は再び動き始めた。

そして、さらに結合を深くするために友絵の足を胸まで折り返し、膝がひじに当たるくらいまで持っていく。完全にまんぐり返しの体勢だ。

「ほら、見てごらん」

むき出しになった秘口に肉棒が埋まっているのが友絵にもはっきり見えた。

「いや、こんなに入ってるなんてっ」

友絵は驚いたが、それもうれしさに変わり、さらにそれは快感となって身体に満ち溢れた。宏一の腰の動きが少しずつダイナミックなものに変わっていく。友絵は宏一の肉棒が自分の中に刺さっていくのを見ながら、『もうどうなってもいい』と思った。

宏一は友絵が言った通り、友絵が快感から逃げようと首を左右に振りながらずり上がろうとしてもそのまま出没を続けた。

「ああっ、そんな、あうぅーっ、こ、こうい・はうぅーっ、ああんっ」

「また、またいっちゃうぅぅぅ、だめぇぇっ、宏一さんっ」

「はうぅぅっ、ああんっ、今は、今はだめぇぇぇ、ああん、また、またよくなるからぁ」

「早く、早くいってぇっ、ああああぁぁぁっ、すごすぎるのぉ」

友絵が汗びっしょりになり、自分でも何を言っているのかわからなくなってきた頃、宏一にも最後の瞬間が近づいてきた。宏一は友絵の可愛らしい乳房を両手でぎゅっと握り、友絵が、

「はうううぅっ」

と声を上げて肉壁が更に肉棒をきゅっと優しく包み込むのを感じながら最後の運動に入った。

「友絵さん、終わるよ。出すよ」

「はああぁーっ、ああぁんっ、あうぅっ」

「ほうら、最後だよ」

「いやぁ、いやああぁーーっ」

声を上げながら友絵は自分がいやがっていることさえ気づいていなかった。最後の瞬間に宏一は正常位になって友絵を抱きしめた。直ぐに友絵が下から抱きついてくる。その友絵の中にぐりぐりっと肉棒を突っ込んで、きらめくような感覚の中で宏一はどくどくっと放出した。

「またぁぁぁーっ、あああああああぁぁっ」

友絵は自由になった腰をククッと左右に振りながら、またいってしまった。

「うぐぅぅぅぅぅーーーーっ」

思わず声にならない声を発し、身体の硬直が解けると、そのままぐったりとした。しばらくは激しく息をしていたが、宏一がゆっくりと役目を終えたものを引き抜き、優しく友絵の髪をなでている間に疲れ切った身体はそのまま深い眠りへと沈んでいった。

宏一はいつの間にか寝息が聞こえるようになった身体をそっと抱きしめながら、これから先、二人が通っていくのはどのような道なのだろう、と少しだけ不安になった。

 

翌日の朝、友絵は宏一よりも先に目を覚ました。夜中に一度だけ軽く目を覚ましたときに自分と宏一に掛けたベッドの上掛けは、いつの間にか宏一が飛ばしてしまったらしい。自分の肌がエアコンで冷え切っていた。かなり汗をかいたらしく、自分の肌がべとべとしている感じがする。確かに今の自分は汗くさかった。

そっとベッドを抜け出し、思いっきりシャワーを浴びて身体をすっきりとさせながら、昨日の夜のことを思い出していた。しかし、宏一と激しく身体を繋いだことまでは覚えているが、それ以降の記憶が断片的で今ひとつはっきりしない。宏一に対していやがっていたような気がするが、なぜいやがっていたのか、どういう時のことなのか、よく思い出せなかった。その他にも何か口走っていたような気がするのだが、はっきりしない。確かに昨日はいつもよりもたくさんのお酒を飲んだので、酔って記憶が曖昧だったところに激しくセックスをしたためらしかった。友絵自身、あれほど激しいセックスは初めてだった。

今までの彼は年が遙かに上だったので、友絵を裸にするのに少し時間を掛けたが、それからは比較的淡泊だった。友絵自身も肉体的よりも遙かに精神的なつながりを求めていたのでそれで十分満足だった。どちらかというと、自分の方が積極的なのではないかと心配していたくらいだ。それに回数も月に一度も無いくらいだった。しかし、宏一はまさに一番魅力的な年齢の男性らしく、猛烈に求めてくる。それは友絵の積極さなどとは次元の違うもので、受け入れるだけで精一杯だった。シャワーで泡を流しながら、肌の上の汗がきれいに流し落とされても、まだ身体の奥底に昨夜の繋がりのけだるさが残っているのを感じていた。それまで友絵は、朝シャワーを浴びた後に男の寝ているベッドに潜り込む女の子の心理がわからなかった。シャワーを浴びてしまえば気分がリフレッシュされるので、直ぐにセックスを求める気が起きなかったのだ。しかし、今初めて『これなんだな』と自分で分かったような気がした。まだ身体の中に残っているけだるさが甘えたくて可愛がって欲しいという気を起こさせる。友絵は丁寧に流してからベッドサイドの鏡台で髪を軽く乾かし始めた。ふと時計を見ると6時過ぎだ。宏一はよほど疲れていたと見えて、上掛けがないのに熟睡している。そんな宏一を見て友絵は『可愛らしい』と思った。そっと鏡台の上にある電話を取るとフロントがでた。

「はい、三谷様、フロントでございます」

友絵は小声で話し始めた。

「すみません、昨夜遅くにチェックインしたので、チェックアウトの時間を延ばしてもらえますか?」

「はい、12時までは賜っておりますが、それ以上になりますと宿泊料金の半額がかかってしまいます」

「分かりました。12時前にはチェックアウトしますから」

「ありがとうございます。確かに賜りました。チェックアウトの際にお申し出いただければ特別な料金はかかりません」

「わかりました」

友絵が受話器を置くと、宏一が眠そうな目で見ていた。

「どうしたの?何か用事があったの?」

「ううん、フロントに寝坊させてくださいって言ってたの」

そういうと友絵はバスタオル姿のままベッドに腰を下ろし、宏一に軽くキスをした。

宏一が眠そうな目のまま友絵のバスタオルに手を出そうとすると、

「宏一さん、疲れてるでしょ?もう少し一緒に寝て。それから優しくしてね」

そう言って優しく宏一の手を払い、直ぐ横に添い寝した。普段の宏一なら、絶対にそのままで済むはずが無いのだが、前日はかなり疲れていたところに夜遅くまで友絵と激しい時間を過ごしたので、まだ完全に目を覚ましていなかった。だから宏一はそのまま静かに眠りの世界に戻っていった。

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