ウォーター

第百六十部

 


「ああん、宏一さんたらぁ」

「由美ちゃん、最高だよ。このまま離したくないな」

「ああん、まだ中で元気になってるぅ」

「由美ちゃん、もっとしたい?」

「ダメですぅ、お食事に行かないと」

「ご飯の方が良いの?」

そう言って宏一はグッと腰を突き上げた。その拍子に肉壁がザラァッと肉棒を絞り上げる。

「ああぁぁっ、ダメえぇ」

由美はまだ身体の中心を貫かれたままで、さっき絶頂を極めたばかりで身体に力が入らない。しかし、こうやって悪戯ばかりをしていたら、本当に食事を逃してしまう。宏一はさほどお腹が減っていなかったが、食べ盛りの由美に夕食を抜けというのは可愛そうだ。

「それじゃ、由美ちゃん、後は部屋に戻ってきてからね」

そう言うと宏一は由美の身体を持ち上げて肉棒を抜いた。

「ああぁぁん、あん・・・・・・」

由美はそのまましばらくソファで息を弾ませていたが、何となく残念そうだった。たぶん、そのまま次を挑んでも由美は素直に受け入れただろう、そう言う感じだった。

「さぁ、由美ちゃん、食事の支度をしておいで。出かけようよ」

「でも、身体が怠くて・・・・・」

そう言いながら由美はバスルームに支度へと入っていった。だから由美の支度が終わるまでに十分以上かかったし、それから二人がレストランに行ったのは予約した7時を大きく回っていた。

レストランに入る直前、由美は振り向いて宏一に言った。

「宏一さん・・・・」

「どうしたの?」

「なるべく早く食事を済ませて部屋に戻りましょう。ね?いいでしょ?」

そう言って由美は宏一に甘えるように身体を寄せた。

「うん、良いよ。由美ちゃんがそう言うなら」

宏一は由美の肩を抱いてそう言うと、由美を連れてレストランに入っていった。

「予約していた三谷です。ちょっと7時を回っちゃったけど」

と言うと、レストランのスタッフは快く二人を迎えてくれた。

「いらっしゃいませ、三谷様。本日はようこそお越し下さいました」

「ちょっと遅くなってごめんなさいね」

「いいえ、ラストオーダーにはまだ時間がありますから」

そう言うとスタッフはオーダーしたコースを確認していった。

「素敵なレストランですね」

このレストランはウッドデッキスタイルで、森に向けて広く窓をとっているのでオープンデッキで食事をしているかのような雰囲気を味わえる。

「何となくゆったりとしたレストランだね」

「こんなところで食事ができるなんて嬉しいです」

「お腹、減ってきた?」

「はい、実は、目を覚ました時からずっと減ってて・・・」

「おやおや、それは悪いことしちゃったね」

「ううん、さっきのことは嬉しかったけど・・・・、でも、宏一さん、いっぱい食べても良いですか?」

「もちろん。でも、由美ちゃん、部屋には直ぐに戻るんじゃなかったの?」

ほんのさっきそう言った自分を思い出すと由美は、

「はい・・・・・」

とちょっと寂しそうに言った。

「ごめんごめん、意地悪しちゃったね。せっかくの食事だからちゃんと楽しまないと失礼だよ。あんまり長居はしないけど、それなりの時間はかけようね」

と取りなすと、

「はい。宏一さん、ありがとうございます」

と由美は嬉しそうに笑った。

最初に出てきたアミューズブーシュは鮎のリエットや一口サイズのビシーソワーズで、

「うわぁ、綺麗。だけど、スプーンに乗った料理なんて始めてみました」

と由美は綺麗な盛りつけと上品なディスプレイに感心した。ただ、高校生には量が少なすぎたみたいで、見かねた宏一が自分の分を由美に渡してやっと落ち着いた感じだった。

「ちょっと由美ちゃんには少なすぎたかな?」

「ごめんなさい、でもちょっと・・・・・。ん?でも宏一さん、今日は何種類も出てくるんですか?」

「そうだね。これは最初のスタートだけど、これからオードブルが3種、順番に出てくるみたいだよ。それからスープが出て魚が出て、小さいシャーベットが出てからお肉が出るかな?」

「そんなにいっぱいあるんですか?」

「そうだよ。お腹一杯食べてね」

「でも・・・そんなにお腹一杯食べたら・・・・・」

「どうしたの?」

「だって後で宏一さんと・・・・・・・・・・」

由美はお腹をいっぱいにすることに少し不安になったみたいだった。

「大丈夫だよ。まだ7時なんだ。食事の後にお腹がいっぱいだったら少し散歩でもすれば良いさ。あんまり気にしすぎると、夜中にお腹が減っちゃうぞ。これから二人でいっぱい運動するんだからね」

そう言ってウィンクすると、由美はささっと左右を見てから顔を真っ赤にして俯いた。

「・・・はい・・・・」

「夜遅くなってお腹が減っても何にも食べるものなんか無いぞ。なんか買って下さいって言ったってダメだからね」

「私、そんなこと言いません」

「そうだったね。ごめん。でも、ちゃんと食べておかないと、本当にお腹が減っちゃうからね」

「はい。でも、もし、お腹がいっぱいになったら、ちゃんと優しくして下さいね」

「うん、由美ちゃんをずっと抱いててあげるよ」

「宏一さんっ、こんなところで」

「ははは、ごめんよ」

由美はこれ以上この会話を続けるのが気が気ではなかった。何とか話題を変えようとした。

「宏一さん、さっきのアミューズブーシュってどういう意味ですか?」

「あぁ、アミューズは楽しむ、ブーシュは口、つまり口を楽しませるもの、って言う意味だよ。まぁ、おつまみだね」

宏一が乗ってきたので、由美は続けて聞いた。

「オードブルはどういう意味ですか?」

「作品の外、って言う意味になるんだけど、要するにメインディッシュの前に、それとは別に出される料理、って言う意味らしいよ。アミューズブーシュがおつまみだから、あんまり料理として認められてないけど、オードブルはちゃんとした料理なんだね」

「ええ?でも、このアミューズブーシュ、凄く美味しいですよ。とっても複雑でどうやって作ったのか分からないくらいだし」

「そうだね。とっても美味しいね」

宏一はそう言うと、白ワインをボトルで注文した。一人で一本は多いかとも思ったが、いちいちグラスワインを注文するのは面倒だったし、気に入ったのが見つかったので思い切って頼んだのだ。

「テイスティングはスキップします」

「かしこまりました」

そう言うとサーバーがワインを並々と注ぎ、宏一は美味しそうに呑む。

「あぁ、冷えてて美味しいな」

「宏一さん、聞いても良いですか?」

「ん?なあに?」

「ワインをボトルで注文すると、味見をするんでしょ?」

「あぁ、テイスティングね」

「さっき、何か言ってましたね」

「うん、テイスティングをスキップするって」

「どういう事ですか?」

「だから、テイスティングをスキップ、つまり、しないって事だよ」

「いいんですか?」

「店を信用してるって事だから問題ないよ」

「そうなんですか・・・・・・・・」

由美は何か釈然としない感じがしたようだったが、運ばれてきたオードブルに気をとられたようで、直ぐに料理に夢中になった。ここの料理は全て真っ白の皿に材料の色を生かしてパステルカラーのように美しい色合いで盛りつけられ、淡い味わいと相まってディナー全体の雰囲気をとても清々しくしてくれる。これは間違いなく、夜を共に過ごすカップルのための料理だった。

由美は美味しそうに次々に口を付けていった。ウッドデッキ風のレストランで由美が食べている姿はとても絵になる。さっきまで部屋で見せていた情熱的な姿とは対照的な清楚な姿だった。

その時、宏一はふと由美の姿に目を留めた。

「あれ?由美ちゃん、もしかしてブラジャーをしてないの?」

宏一がそう言うと、

「わかりましたか?」

と由美が小声で悪戯っぽく笑った。

「うん、なんとなく、だけど」

「Tシャツの上にサマーセーターを着てるから分からないと思ったんですけど」

確かに、少し目が粗いサマーセーターを着ているので、Tシャツの生地をツンと押し上げているはずの突起の位置はちょっと見ただけでは分からない。もちろん、由美の身体を見慣れている宏一には微かに飛び出している位置が分かったが。

「由美ちゃんにしては大胆だね」

「この方が宏一さんが喜ぶかなって思って・・・部屋に戻って付けてきましょうか?」

「ううん、そのままが良いな。でも、由美ちゃんはブラが無くてもラインがとっても綺麗だね。美人だからできる技だね」

「だって、そんなに大きくないから・・・・・・」

そう言って由美は恥ずかしそうに下を向いたが、由美自身、こういう会話ができるようになったことに驚いていた。ちょっと自分が大人になった気がした。もちろん、由美がこの服装にしたのは先程宏一に力強く貫かれて身体が満足しているからで、だからこそ宏一の前で冒険してみる気になったのだ。由美の身体の奥にはまだ先程の感覚が熾火のように残っていた。

由美は結局、3皿運ばれてきた料理を感動しながらもあっという間に食べてしまった。お酒を飲んでいないのだから仕方がない。宏一は飲みながら話しながらだからどうしても時間がかかる。なるべく由美に追いつくように食べていたので、どちらかというと宏一には忙しい感じの食事だった。

「由美ちゃん、この3つのオードブルの中ではどれが一番好き?」

「えーと、最初のシーフードとトマトのが好きです」

「へぇ、高校生だから二つ目のフォアグラが好きって言うかと思ったよ」

「フォアグラってあんまり食べたこと無いから。それに、何か独特の臭いがあって脂っこくて、私にはあんまり・・・・・」

「確かにそうだね。お酒を飲みながらだと美味しいのかも知れないね。そうだ、それじゃ、由美ちゃんにも何か飲み物をとらないとね」

そう言うと宏一は、由美にジンジャエールを炭酸で割ったものを注文した。

「これならそんなに甘くないし、脂っこくても口の中がさっぱりするだろ?」

「はい。とっても美味しいです」

「由美ちゃん、ところでだいぶお腹一杯になった?」

「・・・・ううん、ごめんなさい。まだまだ食べられそう・・・・」

「良かった。これからスープと魚料理が来るしね」

それから二人はスープと魚料理、そして小さなシャーベットを挟んでメインの肉料理へと進んでいき、由美は鴨肉、宏一は牛ロースのグリエを取った。

 

 

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