ウォーター

第二十四部

 

 長い追憶が終わると、心の中には今まで気がつかなかったもの

が見えてきた。札幌行きの列車の中で宏一は、フッと煙を吐き出

すと紫煙を見つめた。今、由美を愛していることに初めて気が付

いた。

もちろん、明子への感情とは違うものだが、史恵と同じように情

熱を由美に注いでいる自分を発見したのだ。だから由美を見てい

て史恵を思い出したのだ。最初は、完全に身体だけが目当てだっ

たはずだ。由美を思い通りに仕込んで宏一の性欲を満足させるた

めに由美に近づいた。

しかし、今はそれだけではなくなってしまったようだ。けなげに

宏一を愛してくれる由美に自然に宏一自身が惹かれていったよう

だ。

 「宏一さん、こっちにいたんですか?」

眠そうな目をして由美が寝室から出てきた。

「目が覚めたら隣にいないんで、少しびっくりしました」

そう言いながら近づいてくる由美は、全裸の上にTシャツだけを

羽織っている。

「こっちにおいで」

宏一は由美を膝の上に横向きに座らせると左手で髪を撫でながら、

右手で顎を宏一に向かせ、優しくキスをする。

「ちょっと思い出していたんだ。由美ちゃんと初めて会った頃の

こと」

宏一は何気なくそう言った。

「そうですか。私も最近良く思い出すんです。宏一さんに会った

ときのこと。今でも少し信じられないんです。父が悪いことして

いるなんて」

由美は宏一の耳元でささやくように言いながら、宏一の手を胸の

膨らみに導いた。宏一はシャツの上から優しく撫で始める。

「営業部長は毎月何千万円ものお金を扱うからね、たぶんあんま

り悪いことしてるって感覚はないと思うよ。でも、あんまりゴル

フにも行かなくなったろ?」

「ええ、宏一さんのおかげでだいぶお金の使い方が大人しくなっ

たみたいです。本当に感謝しています」

由美はTシャツの裾を持ち上げると宏一の手を中に導いた。

 宏一は手慣れた感じで半球型の膨らみを掌で包み、優しく揉み

始める。

「今はまだ完全に防ぎ切れていないけど、今僕がやっている仕事

が完成すれば自動的にもうお金は引き出せなくなる。毎日誰がど

んな取引を成立させたか記録が残るからね。今みたいな事をすれ

ば次の日にばれちゃうよ」

「宏一さんて、そんな仕事もしているんですか。監査のお仕事っ

て大変なんですね。でも、そうなると、うれしいです。私、あん

な家に住まなくてもいいから、家族三人で暮らせればいいんです」

由美は、少し泣きじゃくり始めた。

 その言葉を聞いて宏一はドキッとした。膨らみを包んでいる手

を抜くと、優しく髪を撫で始める。思わず由美に言ってしまった

ことだが、由美には宏一が監査課の人間だと名刺を渡したのだ。

由美にはばれていないようだが、危なかった。宏一は由美をだま

し続ける罪悪感に一瞬全てを由美に話そうかと思った。

 しかし、由美に話したところで宏一の気は楽になるかも知れな

いが、由美はまた悩むことになる。第一、宏一に与えた身体は元

には戻らないのだ。今の宏一は、腕の中で静かに涙ぐんでいる由

美を苦しめたくはなかった。

 宏一は心を決めた。

「由美ちゃん、元気を出して、東京に帰ったら由美ちゃんの口座

のハンコとカードを渡すからね。そのお金を少しだけ使ってご両

親に何かプレゼントをしてあげればいいよ。友達とアルバイトを

してお金をもらったからって言えば大丈夫だろ?」

由美の口座には既に60万以上の金が入っていた。今まではいくら

振り込んでも宏一が管理していたのだから由美にはどうすること

もできなかった。

しかし、宏一はこれから振り込む分も含めて由美に任せることに

した。大金ではあるが、それが由美への宏一の償いだった。もと

もと、今までの宏一の生活では金はたまるばかりで使う暇がない。

 由美は少し驚いた。今まで、由美は金額を確認するだけだった。

もし宏一がそのままどこかにいなくなったりしたら、お金は一円

も入ってこない。それを承知の上で、今まで由美は宏一を一生懸

命信じてきた。いや、信じる他はなかった。

それを、宏一の方から言い出してきたのだから。ハンコとカード

を手にすれば由美は好きなときに宏一と別れることができるので

はないか。もちろん、今直ぐは無理だが父親の横領金額次第で宏

一の手を借りなくても返済が可能なら由美の方から別れることが

できる。

 由美は考えた。宏一のことだから、そんなことは百も承知なの

だろう。たぶん、そうしてもいいと言うことなのだ。

 宏一の気持ちが心にしみた。

「宏一さん・・・、本当に・・・感謝しています・・心から・・

・ありがとうございます・・・・何の関係もない私なのに・・・

・ありがとうございます・・・・」

最後の方は言葉にならなかった。泣きじゃくりながら宏一の首に

可愛い唇を押しつけ、何度も何度もとぎれとぎれに可愛らしい言

葉を吐く。

 宏一はそんな由美を優しく愛撫しながら、考え込んでいた。貯

金はもともと五百万以上あるので、直ぐに大きな問題にはならな

い。問題は、由美に本気で協力すると言うことは、宏一がそのお

金で、本当に木下部長が横領した金額を返済しなければいけない

立場になると言うことだ。

横領するもの楽なことではないが、それを元に戻すのも楽ではな

い。ましてや、木下部長や会社に知られずに、である。知られて

しまえば由美との関係も明らかになる。

 何もかもひっそりとやるのはかなりの努力が必要だ。それに、

宏一がやろうとしていることは、横領ではないにせよ不正な経理

操作であることに違いはなく、立派な私文書偽造である。さらに、

宏一は横領を知っていて見逃したり金額を調整したりしたのだか

ら、ばれた場合には横領の共犯とされる確率も高い。今の宏一の

立場と能力を持ってすれば、何とかできないことではなさそうだ

が、かなり面倒なことになりそうだ。

 由美は、宏一がじっと何の反応もしないことに気が付いた。優

しく撫でていた愛撫も止まっている。

「宏一さん、何を考えているんですか」

「いや、どうやってお金を返そうかと思ってね。公にしてしまえ

ば簡単に返せるけど、それじゃ部長は懲戒免職だし。そっと返す

のって結構大変なんだ」

宏一に言われて由美は初めてそのことに気が付いた。

宏一の立場を持ってしても(監査課と言う架空の立場だが)そう

簡単に行きそうにないのは由美にだって分かった。ごまかすこと

に違いはないのだから。由美の頭の中には、そっと深夜に書類を

書き換える宏一の姿が浮かんだ。

 「宏一さん、お願いします。助けて下さい。私にできることは

何でもしますから。今宏一さんに見捨てられたら、お金だけ持っ

ていても何にもなりません」

由美は宏一に必死に抱きついて懇願した。

 宏一の腕の中でふるえながら必死に頼む少女の言葉は圧倒的な

説得力があった。元はといえば宏一が仕掛けたことである。宏一

は心を決めた。

「大丈夫だよ。安心していいよ。ちょっと怖がらせちゃったかな。

方法がなければこんなことしないよ。大丈夫。ちゃんとするから

任せてよ。由美ちゃんは今まで通りにしていればいいんだよ。ご

めんよ、心配させちゃったね」

宏一は由美の髪や背中を優しく撫でながらそう言った。

 「ホントですか?宏一さん、任せていいんですか?助けてくれ

るんですね?」

由美の顔がぱっと明るくなった。今初めて暗いトンネルから出て

きたような気分だった。自分一人で悩み続けなくても、気持ちを

うち明けられる人に巡り会えたのだ。

何度も宏一を疑ったし、ワンルームマンションでの出来事に悲し

くて眠れなかった夜もあった。不安で食事もできなかったことも

何度もあった。最初、宏一に体を許したのは愛情ではなかった。

ただ、肌を合わせてぬくもりが欲しかっただけかも知れない。

 由美は気が付いていなかった。由美のひたすら真剣な気持ちが

宏一を悪魔から天使に変えてしまったことを。一生懸命信じて宏

一に尽くしてきたからこその結果なのだ。宏一にしてみれば、明

らかにミイラ取りがミイラになってしまった格好だ。

しかし、今はそれで満足だった。ここに、宏一だけを頼りにして

いる少女がいる。腹をくくって助けねばならない。全力で助けて

あげよう。あの、ノーテンキな部長には何か別の手だてが必要だ

と思った。

 由美は、何か宏一にしてあげたくなった。黙って宏一の膝から

降りるとTシャツを脱いで全裸になり、宏一の元に跪いた。スラ

ックスのジッパーを下げ、肉棒を含む。由美の頭が小刻みに動き

始めると、宏一の中に新たな力が沸き上がってくる。由美のフェ

ラチオはゆっくりとしたものだった。射精を導くと言うよりは由

美自身が慈しんでいるようだ。

 時々ゆっくりと先端から奥まで飲み込んでいく。宏一の肉棒は

ほとんど喉の中まで入っていくように思えた。更に、由美はスラ

ックスのベルトに手をかけた。宏一が立ち上がるとゆっくりと全

てを脱がせていく。以前は泣き出したいほどいやだった行為を今

は自分からしていた。宏一が上半身を脱ぎ終わる頃、由美は宏一

の下半身を全て脱がせ終わっていた。

 由美は、今まで宏一に開発されるのを戸惑って受け止めていた。

どちらかというと身体が先に大人になっていった感じだった。し

かし、今の由美は違っていた。宏一を元気づけねばならない。自

分の全てを使って。恥ずかしさはなくならなかったが、それより

も使命感の方が上回っていた。自分が宏一の、いや、家族を助け

る力になれるのが嬉しかった。

 『宏一さんが喜んでくれるのなら一生懸命やらなくちゃいけな

い』そう考えると今は、宏一に飽きられるのだけが怖かった。

『宏一さんにもっと気に入ってもらわなきゃ。あんまり積極的に

なるといやがられるかも知れないわ』そう思ってフェラチオから

先は宏一に任せた。

 肉棒が口いっぱいに広がって顎が疲れるくらいになってくると、

宏一は再びイスに座った。そして、由美を宏一と同じ向きに宏一

の上に座らせる。最初十分腰を引いて座った宏一は後ろから肉棒

を浅く由美に埋め込んだ。

「はあっ、宏一さん、こんなの、もっと深く、はあーっ、ねぇ、

お願いします、ベッドで、アアッ、こんな」

突然の中途半端な挿入に由美はいやがった。今は思いっきり深く

貫かれたかった。宏一に全てを与えた実感が欲しかった。由美は

宏一の膝の上でいやいやをするように腰を振って悶えた。しかし、

宏一は由美の体を自分に引き寄せ、ぴったりと宏一に寄りかから

せた。

 「由美ちゃん、これからもがんばろうね」

そう言いながら前に回した手で乳房を優しくゆっくりと円を描く

ように揉む。時々、人差し指の先端で乳首を押し込んだり頃がし

たりすると、由美は可愛い声で悶えた。

「はあん、宏一さん、そんなにされたら、はうっ、狂っちゃいま

す、ああーっ、こんな、もっと、もっと欲しい、宏一さん」

由美の小さな声は透き通るように響く。宏一は窓のカーテンを開

けた。列車は秋田辺りを走っているはずだが、外にはほとんど明

かりがなく、時々小さな街頭が通り過ぎて行くだけだ。

由美の中からは新たな潤いが染み出してきた。次第に肉棒がぬ

ちゃぬちゃとイヤらしい音を立て始める。

「宏一さん、カーテンを閉めて下さい。外から見えちゃいます」

由美は小さな声で抗議したが、その声には以前のような拒絶は感

じられなく、甘い響きがこもっていた。

宏一は、由美の乳房をかわいがりながら、肉棒の先の方だけが由

美の中で肉壁に撫で上げられる感触を楽しんでいた。由美が声を

上げて悶える度にぶつぶつした肉壁がざらっと肉棒を撫で上げ、

軽く締め付ける。まるでもっと奥に引き込もうとしているようだ。

由美は恥ずかしさともどかしさを必死でこらえていた。

 時々小さな駅を通過するとき、ホームの明かりに思わず身体を

小さく丸めて窓から見えないように身体をかばった。しかし、そ

の後はまた体をのけ反らせ、宏一に焦らされながら愛され続けた。

宏一の肉棒は三分の一ほどが由美に入ったままだった。先端だけ

を刺激されているので、長時間の挿入でも由美に突き刺さったま

まだった。

 宏一は由美の肉壁の感触を味わいながらも明子のことを考えて

いた。今の宏一は明子との将来を考えていた。『今のような不安

定な仕事ではなく、収入が下がっても安定した職を見つけなくて

はいけないかな。明子の全てを支える自分にならなければ。その

ためには今の苦境を乗り切ることだ。由美に力づけてもらえばで

きるはずだ。金は使うが仕方がない。そして、この件が片づいた

ら由美と別れよう』そう考えて、自分の頭に整理を付けた。

 「あーっ、こういち、あう、宏一さん、もう、許して、お願い、

します。我慢できません、ううっ、はうぅっ、お願いです、許し

て・・早く・・」

由美が腰をくねらせて宏一の上で懇願していた。我慢できずに時

々腰をグラインドさせては深くくわえ込もうとする。しかし、宏

一の肉棒はまだそこまで突き出されてはいない。

「あーっ、もうーっ、はうーっ、だめーっ」

由美は髪を掻き上げながら悶えている。

 宏一が由美を下ろしたとき、しばらくは床に座り込んで息を弾

ませていた。しかし、宏一の肉棒を燃えるようなまなざしで見つ

め、宏一に再びすり寄ってくる。

「お口でしなさい」

宏一はぴしゃりと言った。ビクッとした由美は、残念そうに自分

の液体でびしょびしょになった宏一の肉棒に再び奉仕を始める。

宏一は、どうやら今までよりも由美を思い通りに躾けるつもりの

ようだった。

 既に十分に大きな肉棒をけなげに愛しながら、由美は無意識に

腰を振っていた。腰のうずきは我慢できなかった。しかし、宏一

の言うことは絶対だった。宏一はゆっくりとタバコを吹かしなが

ら由美の奉仕を受けた。そのとき、宏一にふと良いアイデアが浮

かんだ。『そうだ、この手があった』宏一は立ち上がった。

 由美は驚いて宏一を見上げた。そして、宏一の表情に自信を感

じた。今まで何かを考え続けていたようで、どこか悩んでいるよ

うだった宏一が、今は自信にあふれていた。由美の表情もぱっ

と明るくなった。

「ベッドに行こうか?それとも二人でシャワーを浴びる?」

宏一はいつものように優しく聞いた。

「宏一さんの好きな方でいいです」

由美は明るい声で答えた。まだ身体は激しくうずいていたが、宏

一に元気でいて欲しかった。

「じゃあ、一緒にシャワーを浴びようか」

宏一がそう言うと、

「はい」

と由美が立ち上がった。

宏一は由美の太股に、中から液体があふれて流れ出しているのを

見つけた。由美の体は燃えさかっているはずだ。宏一はひたすら

ついてきてくれる由美が嬉しかった。

 

 狭いシャワーブースに二人で入ると、抱き合って口付けしたま

まシャワーの栓を開けた。心地よい暖かさの湯が二人を包んでい

く。由美は抱きしめられて首筋を舐められるだけで激しく感じた。

「ああ、宏一さん、はあっ、あうっ、そんなに、しないで、あう、

今は、敏感になって、あっ、はあっ、あーっ」

宏一の舌が首筋を這い回り、両手で背中を撫で回しながら腰が動

いている。由美も宏一の首に手を回すと腰を動かして肉棒を迎え

入れようとした。しかし、肉棒は由美の入り口を刺激するばかり

でうまく中に入らない。

「ああっ、入りません、ああ、だめぇ、あーん、じれったい」

由美は恥ずかしげもなく乱れていく。宏一は由美の感じ方から、

ここでの挿入はあきらめようと思った。今の由美だと激しく動き

すぎて滑ったりぶつけたりする可能性が高い。

「由美ちゃん、由美ちゃんの手で僕を洗って頂戴。全部ね」

そう言うと、宏一は由美の手に備え付けのボディーシャンプーを

渡した。由美は、宏一にそう言われると黙って宏一の身体を洗い

始めた。既に肉壁は軽く痙攣を起こしており、指でからかうだけ

で簡単にいってしまうような状況だったが、息を整えながら宏一

の身体を撫でていった。

 しかし、首筋から上半身を全て洗い、肉棒をゆっくりと洗って

いるときに、由美は我慢できなくなった。優しく洗っていた手つ

きがいつの間にか肉棒をしごき始め、自然に口を近づけていく。

 宏一は由美が我慢の限界を超えたことを知った。由美を立ち上

がらせ両手を自分の首に回し、

「両手でしっかり掴まっているんだよ」

そう言うと、由美の片足を抱え上げ、両足を踏ん張りゆっくりと

肉棒を埋めていった。

 「くぅーっ、宏一さーん、イイッ」

待ち望んでいたものが来たので、由美は全ての力を込めて宏一に

しがみついた。

「そのままじっとしているんだよ、いいね」

宏一はそう言うと安定感に注意して腰をゆっくりと使い始めた。

由美の中はドロドロに解けていた。

「はあーっ、はうーっ、ああーっ、あーっ」

抑えきれない声が狭いシャワーブースにこだまする。不自然な姿

勢なのでどうしても肉棒は半分程度しか入らなかったが、今の由

美にはそれで十分すぎた。一分も動かないうちに

「あーっ、もうだめーっ、あーっ、ぃくーっ」

宏一の首が更に強く締め付けられ、由美の体が硬直する。宏一は

由美をぎゅっと抱きしめたまま肉棒の締め付けを感じていた。

 締め付けが弱まるのを待ってゆっくり由美を離すと、

「今度は僕が洗ってあげる」

そう言って、崩れ落ちそうになる由美を立たせ、優しくキスをし

ていく。まだ甘えて両手を回してくる由美の手をほどいてまっす

ぐに立たせると、ゆっくりと由美の体を撫でていく。肩から両手

にかけて丁寧に洗い、更に胸へと降りていく。

素晴らしい形の半球型の乳房の周りからゆっくりと円を描くよう

に中心を目指す。由美は、今は一心同体ともなった愛する宏一の

手で撫でられると今まで以上に感じてしまった。

宏一はそっと撫でているのだが、ほんの今絶頂を極めたばかりの

由美には刺激が強すぎた。

「うーっっ、はうっ、ううっ、だめ、このままじゃ、待って下さ

い、宏一さん、あーっ、いっちゃうーっ」

宏一がそっと右の乳首を口に含みながら左の乳首を軽く指で弾く

と、由美はまっすぐに立った姿勢のまま軽い絶頂を迎えた。

 ふらっと由美が倒れそうになったのであわてて宏一が抱きしめ

る。そのまましばらく宏一の腕の中でぐったりしていた由美は、

意識がはっきりしてくると宏一の腕に手を回して甘えてきた。

「ごめんなさい、軽い貧血みたいな感じで、フッて意識が遠くな

ったの。宏一さんが上手だから」

そう言いながら、早くも腕の中で身体をくねらせ始める。

 「まだ下の方を洗ってなかったね」

そう言うと、宏一はシャワーハンドルをフックから外し、抱きつ

いている由美の腰にかけ始めた。更に、そのまま由美の尻の方か

ら秘心に向かって湯をかけていく。

「あ、ああーっ、だめぇ、ああっ、いやあ、許して」

由美がぴょんぴょん飛び上がりながら激しく悶える。

 「今度は前からね」

そう言って由美を後ろ向きにすると、後ろから由美の腰をしっか

りと抱きしめ、シャワーハンドルを茂みの中に差し込んでいく。

「いや、いや、宏一さん、こんなの、いや、あ、はぁ、アアッ、

あーっ、こんなーっ、あーっ、いやあーっ」

由美は嫌がっていたが、その声には官能の響きがあった。ひとし

きり楽しんだ後で二人は部屋に出た。由美はもうフラフラだった。

宏一は優しく由美の体を拭いてやると、バスタオルを巻いてから

由美をイスに座らせた。

 「由美ちゃんの身体、あんなに感度良かったなんて、嬉しかっ

たよ」

宏一がそう言いながら、買い置きのジュースを開けてやった。

「もう、あんな事するなんて。びっくりしました」

「あんな事するって知ってたら一緒に入らなかった?」

「うーん、でも、宏一さんが喜んでくれるなら」

そう言って由美は恥ずかしそうにうつむいた。由美は、恥ずかし

いことは恥ずかしかったが、宏一になら許すことができた。そし

て、宏一が満足している様子なのが嬉しかった。

 「どう?疲れた?」

「いいえ、しばらく寝たらすっきりしました。宏一さんこそ疲れ

ているんじゃありませんか?」

「うーん、少しね、でも大丈夫だよ」

「宏一さん、ベッドに行きませんか?もし眠たければそのまま寝

ればいいし、あの・・・愛してもらえるのなら・・・宏一さんの

好きにして下さい」

由美は、最後の方は少し小さい声で恥ずかしそうに言った。ベッ

ドの上と違って、やはり面と向かって言うにはかなり勇気がいっ

た。

 宏一は無言で立ち上がると、イスの上から由美を抱き上げ、そ

のままベッドに運んでいった。既に夕方までお互いに楽しみ尽く

したはずだったが、今は二人で新たな道を歩み始めたのだ。

特に由美は宏一に抱き上げられて胸がドキドキしていた。『上手

にできるかしら』まるで処女のように興奮と不安が入り交じって

いた。

宏一は今まで以上に由美の体を楽しむつもりなのは何となくさっ

きのシャワーの時に分かった。がっかりさせないように、嫌がら

れないようにするにはどうすればいいのか、頭の中には不安があ

ったが、体の芯は再び液体が潤ってきていた。

 宏一は由美をベッドに下ろすと、優しくキスをしながらいった。

「最初にこうやって由美ちゃんをベッドに運んだときのこと、覚

えてる?」

「ええ、私が我慢できなくて宏一さんに恥ずかしいこといっぱい

してもらいました」

「あのときのことを思い出してごらん。由美ちゃんの身体がどれ

くらい大人になったか、よく分かると思うよ」

そう言いながら、ゆっくりとうなじから愛し始めた。

 由美は正直言ってあのときのことはあまり思い出したくなかっ

た。由美にとっては感じようとする身体に気持ちが負けてしまっ

たときの恥ずかしくて悲しい思い出なのだ。

「今日はお口と指で愛してあげる」

宏一は由美の耳元でそうささやいた。途端に身体がカッと熱くな

った。あのとき、宏一は同じ事を由美にささやいた。由美は、官

能の嵐と絶望感の中にいながらも迎え入れなくて良いことにほん

の少しだけ安心した覚えがある。

 「覚えていてくれたんだわ」

由美は、宏一がゆっくりと時間をかけて由美の体を開発してきた

ことを直感的に悟った。『あの時から、私の身体は宏一さんに一

つずつ教えられたんだわ』うなじをゆっくりと愛されながら由美

は喘いでいた。

「宏一さんが、教えて、はっ、くれたんですね。宏一さんの、あ

うっ、好きなように、ううっ、して」

 宏一は由美が全てを任せてきたことを知ると、ゆっくりとバス

タオルを解きながらいった。

「いいかい、今夜はあんまりおねだりしちゃだめだよ。最初の時

だって少ししかしなかったでしょ。いいかい、3回だけ、いいね」

宏一はそう言うと、ゆっくりと起きあがり、両手でそっと乳房を

周りから撫で始めた。



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