ウォーター

第二百四十二部

 

「そう?・・・・・・」
「舞さんはどう?」
「なんか・・・・おっきく・・・・ううん、固くなったかも・・・・・・でも・・・」
舞は肉棒のことを言っているのだ。やはり挿入してもあまり感じないらしい。
「そうか・・・・」
宏一の声には明らかに落胆が混じっていた。それは舞にも敏感に伝わった。
「ごめんなさい・・・・・でも気持ちいいのよ、それは本当」
「俺も気持ちいいよ。舞さんの中、なんか気持ちよくて」
「そう?動きたければ動いて良いのよ」
「舞さんはどっちが良いの?」
「・・・・動いてみて」
舞にとってはどちらでも良かったのだが、宏一が動きたがっているようなので舞も同意することにした。しかし、宏一が動き始めると舞に反応があった。
「あ、あんっ、・・・・あん・・・・・んんん・・・・・・」
それは明らかに今までとは違う明確な反応で、舞が感じているのを表していた。
「舞さん、感じてくれてるの?」
「うん・・・・なんか少し違う・・・・あ、気持ちいい・・・・かも・・・」
しかし、舞が感じたのは最初だけで、だんだん舞の反応は鈍くなっていく。
「感じなくなってきた?」
宏一は肉棒全体を使って動き続けたが、舞の反応は変わらなかった。
「ごめんなさい・・・・・・・・そうみたい・・・・」
舞は申し訳なさそうに言うと、何度か腰を突き上げてきた。それは宏一に気持ちよくなって欲しいという舞の気持ちの表れだった。
「舞さん、ありがと。でも、大丈夫だよ」
宏一はそう言うと肉棒を抜き去った。一人で感じていない舞の中で果ててもむなしいと思ったのだ。
「それなら、手と口でしてあげる」
舞はそう言うと起き上がろうとしたが、それを宏一が止めた。
「ありがとう。でも、今日は良いよ。疲れただろう?寝よう」
「良いの?」
「うん、でも、また今度、お願いしても良い?」
「良いの?こんなことしても、またおんなじ事よ?こんな私じゃがっかりするでしょ?」
「うん、良いんだ。また舞さんとしたいなって思っちゃダメかな?」
「本当に?」
舞は宏一の申し出が信じられないという感じでそう言った。宏一は舞を抱き寄せ、髪と背中を愛撫しながら話し始めた。
「きっと今日、舞さんが俺を誘ったのはいろんな事があったからだと思うけど、俺にとっては新しい出会いだったし、会話も食事も楽しかったし、それに・・・舞さんが信じてくれたから舞さんとこうなれたし、本当に楽しいことばっかりだったから、今度は俺から何かお礼がしたいんだ」
舞は何も言わずにじっと抱かれていた。
「何かきっと方法があるはずなんだ。それに、舞さんが思いきり感じている姿を見てみたいんだ。ダメかな?」
「ダメじゃない・・・・・うん・・・任せる・・・・」
「良いの?」
「うん、お願い」
「きっとだよ」
「でも、無理なことはしないで」
「無理なんかしないよ。嫌ならきちんと言って欲しいし。悲しい思いだけはさせたくないから」
「うん」
「ねぇ、舞さんて、自分ではエッチだと思う?」
「どうかな?あんまり思ったことないけど・・・・・」
「エッチになれる?」
「どういうこと?わかんない」
「俺もよく分かんないけど、きっとエッチなことを考えたりすることが大切なんじゃないかって思うんだ。舞さんがそうやって協力してくれれば、きっとうまくいくんじゃないかな?」
「わかったわ。あんまり得意じゃないけど、やってみる」
「約束だよ」
「約束ね、分かった」
宏一は舞が納得してくれたことで、何か先に進めるような気がした。しかし、具体的にどうすれば良いのかは全く分からない。今腕の中にいる細身の美人の身体が、どうやったら思い切り感じるのか、皆目見当が付かない。それでも、舞が協力してくれればきっと何かが起こると思った。
舞は身体を宏一に摺り寄せると甘えてきた。
「もう少しだけこうしていてもいい?」
「もちろん」
「こうしていると安心するの」
「うん、うれしいよ」
舞は身体を宏一にゆっくりと密着させてこすり合わせてきた。こうして肌で宏一を感じていたいのだ。
「初めて自分から誘って・・・・こんなことしちゃった・・・・。私ってすごい女ね」
「そんなこと言うもんじゃないよ。誰だって悩みはあるし、それが辛ければ辛いほどとにかく頼りたいことだってあるんだから」
「うん、うれしい・・・・・宏一さん・・・・・」
舞は自分でも不思議だったが、宏一を好きになりかけているのが分かった。ほとんど話もしたことのない他の部署の派遣の男性なのだ。社員の女性の恋愛対象になど普通はなるはずがない。しかし、今は宏一の肌が心地良く、肌を撫でられているのが嬉しかった。
「舞さんの肌、とってもなめらかだね」
「ありがとう。年上の女性は得意な方?」
「ううん、初めてなんだ」
「それは光栄ね。良かった」
舞はそう言うと、自分から宏一の上になってねっとりとキスをしてきた。二人はそのまましばらくキスを楽しんでから自然に眠りに落ちていった。
宏一が目を覚ました時、舞は先に目を覚ましてシャワーを浴びていた。そしてシャワーから出てくると、
「先に行ってるわね。チェックアウトはこれでお願い」
そう言って身支度を調えるとお金を置いて先に出ていった。宏一もシャワーを浴びてからホテルを出ると、一度帰って着替えてから会社に出た。
舞は会社に早く着くと、備えてある着替えを使って身支度を整えた。時間があったので会社のすぐ近くのコンビニから自分の部屋に洗濯物を送っておいた。そして、いつも宏一と一緒にいる友絵のことを考えていた。彼女は外回りをすることはないから基本的にいつも会社にいるはずだ。つまり宏一とずっと一緒にいられる。そして、ちょっとだけ友絵に嫉妬している自分に気が付いた。そして、次に宏一に抱いてもらえるのはいつなのかと考えた。自分がセックスで感じないことに気が付いてから、次に抱かれるのが待ち遠しいと思ったのは初めてだった。
その日も忙しかったが、仕事そのものは順調だった。夕方、めぐみとの約束があるので突発のトラブルが起きないか心配していたが、何とか対応可能な内容だったので安心して帰る支度をしていると、友絵が宏一に聞いてきた。
「三谷さん、あの、金曜日、空いてます?」
「ほう?友絵さん、誘ってくれてるの?うれしいな」
「きっとお忙しいとは思いますけど、いろんな意味で」
友絵はニヤッと笑ってそう言うと、
「なんかこの前はドタバタしたから、ちょっと朝までゆっくりしたいなって思って・・・・」
と言った。先週、家の手伝いでホテルから早朝に帰ったことを言っているのだ。
「それじゃ、何を食べに行きたい?」
「ステーキ」
「ほう、いいね。それじゃ、いい店を探しておくよ」
「ううん、いい店じゃなくていいの。あんまりかしこまったところは・・・・・、気楽なお店がいい」
友絵はそう言いながら、そんなことを言える関係になったのが嬉しかった。高級な店ではなく気楽な店のほうが良いと言えるなら、二人の関係が親密になった証拠だ。
「うん、わかった。気楽なお店ね。探しておくよ」
宏一がそういうと、友絵は小さな声で、
「それじゃ、お願い。その代り、どこかに飲みに連れてって」
と言ってにっこり笑った。
「うん。楽しみにしてるよ。それじゃ」
宏一はそう言うと会社を出た。そして駅前の道でめぐみからの連絡をチェックした。すると、行きたい店があるから連れて行って欲しいと店の名前を伝えてきた。宏一はとりあえず了解の返事を送り、現地集合にして予約の電話を入れておき、店に向かった。
店の前でめぐみと合流した宏一は、そこが回転ずしであることに驚いた。
「めぐみちゃん、回転寿司が良かったの?」
「そう、前にテレビで見たの。友達が連れて行ってもらったけど凄く良いんだって」
「でも、別府のホテルにいれば新鮮な魚なんていくらでも食べられるだろうに」
「いくら新鮮でも賄いは賄いだから。それに、こんな店なんて東京に来ないと無いから」
「そう言うもんかね?ま、入ろう」
宏一は何となく納得すると、店に入った。六本木ヒルズの地下にあるその回転寿司は確かに高級な感じで一人のスペースが広く、塗りの盆が一人ずつにセットされていた。今日のめぐみは大学の面接があったので制服姿だ。九州特有の薄いブルーの制服が小麦色の肌のめぐみに似合っている。
「それじゃ、好きなもの食べてね」
「はい、いただきまぁす」
めぐみはそう言うと、マグロや縁側を注文し始めた。
「ふふふ・・・・」
「どうしたの?」
「ううん、デートで生ものなんて・・・・・。でも、二人で食べればいいよね?」
「そうか、キスが生臭くなっちゃうね。でも、いいか」
宏一がそういうと、めぐみは宏一の耳元でささやいた。
「ふふ、そう・・・身体が生臭くなっちゃうかも・・・・」
めぐみは顔を赤くして再び囁いた。早くも宏一に身体中を愛されることを想像しているらしい。
「めぐみちゃんも言うようになったね」
「だって、一昨日は・・あんなこと・・・・・されたから・・・・・」
「あんなこと?」
「ううん、いいの。食べましょう」
さすがにめぐみが探してきただけあって、ネタはどれも素晴らしかったし東京ではあまり見ないものも多く、それから二人は賑やかに寿司を楽しんだ。特にめぐみは大分ではあまり見ないホヤなどの貝類を喜んだ。宏一は一緒に冷酒を楽しむことにして、寿司はつまみ感覚だ。
「すごいね.ホヤなんて食べられるんだ。嫌いな人も多いのに」
「そうなの?私、これ好きよ。宏一さんは?」
さりげなくめぐみは言ったが、宏一を名前で呼ぶのは初めてなので宏一は少し驚いた。
「ありがと」
「なあに?」
「ううん、名前で呼んでくれて」
「なんのこと?」
めぐみは少し顔を赤くしながらもしらばっくれた。
「ううん、でもそれは、ここじゃなくてほかの場所で聞きたいな」
「ほかの場所?」
「そう、例えばベッドとか」
「あー、親父!でも、ま、いっか。お寿司、美味しいし」
「よかった。ドキッとしたよ。嫌われたかと思った」
「まさか」
「ううん、お寿司がのどに詰まるかと思った」
「心配なんて要らないのに」
「はい、ありがとう。一杯食べてね」
「もうおなか一杯」
「そうなの?まだ七皿しか食べてないよ。高校生には足りないだろう」
「ううん、もうだいぶいいかな・・・・・」
「それじゃ、あと少し食べたら行こうか?」
「うん」
それでもめぐみはそれからトロやイクラなどを頼んだが、さすがにウニだけは顔をしかめた。
「どうしたの?」
「これはちょっと・・・・・」
「ははぁん、大分で新鮮なものばかり食べていれば、東京のウニのレベルでは物足りないよね」
「やっぱりこれは・・・・・、でも他のものは美味しいし雰囲気も良いから・・・・」
「全部が全部いつも最高っていうわけにはいかないかな。やっぱり回転寿司だからね」
「でも、やっぱりこのお店の雰囲気は素敵。別府や大分にはないもの」
「めぐみちゃんの選択は正しかったってこと?」
「うん、ちゃんと写真も撮ったし。帰ってから自慢できそう」
そう言ってめぐみは笑った。
「それじゃ、そろそろ出ようか」
「はい」
宏一は勘定を済ませて外に出るとめぐみに聞いた。
「どうする?まだどこか行く?」
めぐみはちょっと言いにくそうだったが、小さな声で言った。
「部屋に行きたいの」
実はめぐみは朝からずっとそのことばかり考えていた。正直、とても楽しみだったのだ。おととい、思い切って久しぶりに宏一に会い、想像以上に思いきり愛されたことで気持ちがずっと楽になったし、最高の気持ちになれた。だからそのおかげで今日は一日中笑顔でいられたし、面接もうまくいった。これは宏一のおかげだなのだと思っている。だから、早く宏一に思いきり甘えたかったのだ。

トップ アイコン
トップ


ウォーター