ウォーター

第二百九十九部

 
「嫌だったら直ぐに言ってね。俺もどうすれば良いかよく分からないから」
「うん」
宏一は舞を後ろから抱きしめながら、舞の耳元を唇と舌で可愛がり始めた。しかしまだバイブは使っていない。
「ねぇ、舞さんてどうして営業の仕事をしてるの?学卒で入ってくる女の子って営業補助で机仕事が多いんじゃないの?」
「それは、私が希望したから」
「そうなんだ。良く自分から希望したね」
「私の時は就職が厳しくて、採用面接で合格したい一心で、営業志望って言うと好感度が高いって言われたから。それだけ」
「でも、大変だったろう?」
「最初はそんなことなかったの。先輩に付いて挨拶回りして、先輩に言われたことをしてれば良かったから」
宏一の唇は舞の耳元や項をそっと可愛がっている。
「でも、それは最初だけでしょ?だんだん自分で担当を持って、ノルマも出てくるだろうし」
「そう、だんだんノルマがきつくなってきて・・・・・。その頃かな、開発もしないとだめだって思うようになったのは」
「それじゃ、開発営業をしようって思ったのは新人の頃からなんだ」
「そう、一種の逃げだったのはバレバレだったから、なかなか始めさせて貰えなかったけど」
「ふうん、そんな新人の頃の舞さんを見てみたかったなぁ」
「嫌よ。あの頃の私はギスギスしてて可愛げが無かったし、先輩に突っかかってばっかりだったから」
「一生懸命だったんだね。それって新人らしくて良いと思うけどなぁ」
「ふふふ、宏一さんだからそう言ってくれるのよ。実態はそんな見せられるようなものじゃなかったんだから」
舞は宏一に抱きしめられてそんな話をしながら、もし宏一ともっと前に知り合っていたら、きっともっと楽な気持ちで仕事ができたかも知れないと思った。こうしていると、自分が年上だとは思えない。しかし、宏一と一緒に居るのはとても心地よい。そう思うと、舞は宏一ともっと会える方法を思いついた。
「ねぇ、ちょっと、使ってみて」
「え?いいの?」
「そう、宏一さんがしてくれるのなら。それじゃないと安心できないもの」
舞はそう言うことで、これからも宏一に定期的に会う理由を作ったのだ。正直に言えば、バイブなど余り気乗りしないが、宏一の気持ちはありがたいし、それなら宏一に会う時に使ってもらうなら、と思った。そうすれば、きっともっと宏一と繋がりができるような気がした。
「うん」
「その代わり、ちゃんと宏一さんが責任を持って使ってね。直ぐにだめって放り出すのは無しよ。私だって決心するの大変なんだから。やっぱりだめだって放り出されたら悲しくなるし」
「そうだね。わかったよ」
舞に言われて宏一は、スイッチが入ったままのバイブを反対側の耳にそっと押し付けた。
「ひゃっ」
舞が小さな声を上げた。
「いや?」
「ううん、ちょっとびっくりしただけ」
「だいじょうぶ?」
「うん」
「新人の頃から苦労した?」
宏一は話を続けながら、舞の項や耳元、髪の生え際などをそっとバイブで刺激していく。
「ううん、新人は最初、楽なお客さんしか任せられないから。お客さん自身が協力的で、値段にも文句を言わずにいろいろ提案してくれるような・・・・。だから、最初は問題なかったの」
「そうか、新人には新人の仕事があるって言うことか」
「そう、それで計画を立てて進めることとか、ノルマを達成する方法とかを覚えていくの。そして慣れてくると、だんだん難しくて取引の大きいお客さんを任されていくって感じかな」
舞は宏一が丁寧に項を刺激してくれているのは分かっていたが、特に感じるとは思わなかった。それでも、宏一の腕の中で宏一に守られているのはとても安心できる。
「どう?」
「ちょっとくすぐったい・・・・でも、嫌じゃ無い・・・・」
「良かった。それじゃ、もうちょっとだけするね」
宏一はそう言うと、バイブを耳元から項、首筋を通って胸へとゆっくり動かしていった。そして、乳首の近くまで持って行くとバイブで軽く円を描くように愛撫していく。
「ふふっ、これもくすぐったい」
「くすぐったいって言うのは感じる第一歩だから、最初にしては幸先が良いって事かな」
「うん」
舞は乳首の周りをバイブがゆっくりと動いていくのを感じながら、もしかしたらくすぐったいだけではない、他の感覚が混じっているかも知れないと思った。そして、そのバイブが乳首にそっと触れた時、小さな感覚が走った。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「舞さん、痛かったり嫌だったら直ぐに言ってね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
舞は何も言わずにじっと目を閉じている。宏一は少し身体をずらして舞の表情を伺ったが、嫌がっている雰囲気ではない。それなら、と宏一はゆっくり舞の横に身体を移すと、舞の左の乳首をバイブで刺激しながら、右の乳首をそっと口に含んだ。
「ん・・・・・」
ほんの少しだけ、舞の身体が伸び上がったような気がした。そのまま宏一は丁寧に舌を乳首に絡めていく。
「・・・・・・・・」
舞はそのまましばらく何も言わずにじっと目をつぶって愛撫を受け入れていた。感じていたと言うよりは、今までこうされると悲しくなるだけだったのが、悲しいと思わない、安心していられる、そんな感覚だった。しかし、それでも今の舞にとっては大切な感覚だ。舞は久しぶりに胸を可愛がられて『嬉しい』と思った。
それから二人は少しだけじゃれ合って、そのまま短い眠りに入った。そして宏一が目を覚ました時、舞は既にシャワーを浴びて支度を始めていた。
そして舞が支度を終えて出てくると、もう一度軽くキスをしてから二人でホテルを出た。舞は羽田へ、宏一は会社に、それぞれ向かって出て行った。舞は少し寝足りないかも知れないと感じていたが、どうせ飛行機に乗れば少し眠れる、と思った。それよりも、とても清々しい朝なのが嬉しかった。これから舞は出張先の製造会社でコストや量の話をまとめてから販売予定先の問屋にプレゼンしなければならない。普通なら胃の痛くなるような仕事だが、今の舞は元気いっぱいだった。
宏一はコンビニでシャツを買い、ネクタイは会社に置いてあるものに変えると元気に仕事を始めた。友絵は宏一の服装に気が付いたみたいだが、何も言わなかった。
その日も前日の続きで宏一は外回りが多かった。出先から何度か友絵に電話をしたが、友絵もバタバタしていて用件を正確に伝えて返事をもらうので精一杯で、とてもゆっくり話すどころではなかった。仕方の無いこととは言え、そうやってすれ違う時間ばかりが積み重なっていくのが寂しかった。
今日は木曜日だから由美を抱く日だ。宏一はその前にシャワーを浴びておきたかったが、残念ながらその時間は無かった。宏一がいつもの部屋に着いた時には既に由美は来ており、きちんと机で勉強していた。
「由美ちゃん、こんにちは」
「はい、宏一さん」
由美は嬉しそうに応えた。実は火曜日には由美が支度を終える前に宏一が来たので、今日はいつもより早めに来てシャワーを浴びて待っていたのだ。
「ちょっと汗をかいちゃったみたいだからシャワーを浴びてくるね」
宏一はそう言ったが、由美は承知しなかった。
「宏一さんは良いです。だから、勉強を見て下さい」
そう言われては無理にシャワーを浴びるのも変だ。宏一は泊まったのが分かってしまうかも知れないとは思ったが、由美の言うとおりにした。由美の後ろから勉強しているノートを見下ろす。
実は由美は、本当を言えば直ぐにでも宏一に抱きしめて欲しかった。しかし、前回もそうしたのでいつもだと嫌われるかも知れないと思って我慢したのだ。だから今日はひさしぶりに勉強を見てもらう事にした。そして、いつものように宏一が好きな方法でアプローチしてもらえば宏一も喜ぶと思ったのだ。
「今日は何を勉強してるの?」
「世界地理です」
「由美ちゃんは地理は好き?」
「覚えることが多くて・・・・、好きじゃないけど、覚えればなんとかなるから・・・」
「そうか、俺は地理が大好きだったけど、人によって違うんだね」
「どうして宏一さんは地理が好きなんですか?」
「うーん、いろんな世界のことが分かるからかなぁ。旅行したような気分になれるし。だから、写真の多い参考書を使ってたっけな。今は地理のどこを勉強してるの?」
「南米です。知らない国が多くて・・・・」
「日本人には余りなじみのない国が多いものね」
「それに、産業とかもバラバラでよく分からなくて」
そう言うと由美は南米の参考書をパラパラめくって見せた。宏一がそれをのぞき込むために由美の耳元に顔を近づけると、由美は自然に宏一の息がかかるくらいの距離に首筋をそっと近づけた。
「ははぁん、ちょっとわかりにくい感じかもね。国としての分類を主体にしてるからね。それじゃぁ、ちょっと国の枠を取り払ってみてみようか」
「はい」
「南米の東と西では何が違うの?」
「西にはアンデス山脈があって、東は平原が広がってます。アマゾン川とかもあるし」
「そうだね。それじゃ、アンデス山脈ってどうしてできたの?」
「え?それは・・・・・・・」
「先ずその理由から考えていこう」
「理由って言われても・・・・・それって地理じゃないし・・・・」
由美は困ってしまった。地理の勉強でそんな風に考えたことなど無かったからだ。しかし、宏一の吐息が項や耳元にかかるのが嬉しい。宏一に気に入られたい一心で由美は考え込んだ。
「たぶん・・・・・・山脈ができる理由は・・・・地面が盛り上がったから」
「どうして盛り上がったの?」
「それは・・・・・両側から押されたから・・・・」
「そうだね。この場合はどことどこ?」
「東側には大きな平原があるから・・・・でも、西には何もない・・・・」
「何もなくはないよ」
「でも・・・アンデス山脈の西は直ぐ海だし、海が陸を押すって変だし・・・」
「海の中に隠れてるだけさ」
「そうか・・・・・海の下にある陸地が押したんだ・・・・」
「正解。偉いね」
宏一の優しい息が項にかかると、由美はわざと熱い振りをして制服の胸当てを少し前に出し、宏一に胸元が見えるようにした。『こんな事内緒でするなんて、私って小悪魔になったみたい。宏一さん気が付くかな?』と思った。すると直ぐに宏一の視線が胸元を探ってきたのが分かった。『ふふっ、良かった。ねぇ、宏一さん、はやくぅ』と思いながら勉強を続ける。
「それじゃ、陸と陸が押し合って山ができると、その山はどんな山になるの?」
「高い山ができるって教わった気が・・・します」
「それはそうだね。それと?」
「山がいっぱい・・・・できる・・・・」
「そう、陸と陸が押し合って山ができる時はたくさんの山がいっぱいできるね。それと?」
「後は・・・・・・わかりません」
「凄い力で陸と陸が押し合うと、押し合ったところには凄い圧力がかかるんだ。なんてったって大きな地面同士が押し合うんだからね。すると、そこは凄い温度になるんだよ。だから、いろんな金属ができるんだ。鉄が代表的かな?」
「鉄は山ができたところにあるの?」
「一口には言えないけど、その場合が多いね。だから、鉄の産地は一直線に並んでることが多いんだよ。もっと細かいことを言うと、陸地同士が押し合う前に海の底にあって太陽の光をたくさん受けた鉄分が酸素と反応して沈殿することが前提なんだけど、それは覚えなくても良いよ。そう言うものだと思っておいて」
「はい」
宏一は素直に勉強している由美の胸元から少し覗いている胸の膨らみを心から可愛いと思った。自分がたっぷりと時間を掛けて感じるように開発した膨らみなのだ。早く由美を裸にして手と口でたっぷり可愛がりたいが、勉強している由美の邪魔をするのは少し可愛そうだ。だからもう少し我慢して勉強を続ける事にした。
「このアンデス山脈は海に近いだろ?赤道にも近いし。だからアンデス山脈には鉱物資源が多いんだよ」
「そう考えると覚えやすいですね」
「うん」
宏一は由美が喜んだのが嬉しかった。
「南米で言えばブラジルにも大きな鉄鉱石の鉱山があるけど、それも同じ原因なんだ。だから海から近いんだよ」
「鉄鉱石の鉱山は海から近いんですか?」
「うん、その場合が多いね。もっとも、周りの陸地が低い場合は元々海だったところの場合があるから、それだと海から離れてる時もあるけど。中国やロシアの鉄鉱石鉱山なんかはそうだね。でも、基本は海から近い、だよ」
「はい」
二人はそのまましばらく勉強を続けた。しかし、いつまでもそのままというわけには行かない。由美の時間は限られているのだ。もちろん宏一もそれは十分分かっている。だから、南米のチリの勉強が進んだところで、由美がさっきからわざと脇を開けているところにそっと両手を差し込んで由美の可愛らしい胸の膨らみを包み込むと、由美は自然に脇をそっと閉じて宏一の腕を挟んだ。嫌がっているのではなく、腕が離れていかないようにしたのだ。


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