ウォーター

第三百五部

 
宏一は香奈の話したことは本当だと思った。もちろん洋恵とのことは身に覚えがあるし、香奈の話には真実の響きがあった。
「それじゃ、香奈ちゃんにはお礼を言わなきゃいけないんだね」
宏一は探るように言った。すると香奈は元気に答えた。
「はい、そうですっ」
「それで、俺はどうすればいいの?」
そう聞かれて香奈は少し考え込んだが、直ぐに宏一を見て言った。
「私のお願いを聞いて下さい」
ここまでの香奈の言動は、明らかに初対面の大人に対するもので、特に違和感は無い。そこで宏一は聞いてみた。
「どんなこと?」
「その前に、私のこと、どう思いますか?」
「え?どうって??」
「どんな風に思ってるかなって・・・・」
「いや、会って直ぐにそんなこと言われても・・・・普通の可愛い女の子だと思うけど・・・・・」
「その普通のって言うのは聞かなかったことにします。可愛いだけで嬉しいから」
香奈の言葉を聞いて、宏一は大人びた子だと思った。
「それじゃ、一緒に行きましょうか」
「どこに?」
「内緒です。でも、一緒に行くところだから・・・・・」
そう言うと香奈は歩きながらスマホを弄り始めた。宏一はとにかくしばらくは香奈に付き合うしか無いと思い、大人しく付いていった。
やがて香奈が宏一を連れて行ったのは、繁華街から離れたビジネスホテルだった。香奈はフロントで手早く手続きをすると、宏一を連れて小さなエレベーターに乗った。
「香奈ちゃん、どういうこと?」
宏一は明らかに警戒していた。香奈は何も言わずにエレベーターを降りると、宏一を部屋に連れて行った。
「香奈ちゃん、ちゃんと話してくれる?どういうこと?」
廊下で話すわけにもいかないので部屋には入ったものの、宏一の口調は強かった。なんとなく無理矢理部屋に連れ込まれた気がしたからだ。香奈は部屋に自分の荷物を置くと、王一に向き合った。
「ここでしばらく一緒に居て」
「どうして?」
「洋恵も知ってるの。洋恵に頼まれたことをするときの約束だから」
「そんな事言ったって」
「一回ちゃんと言っておくね。洋恵の噂を打ち消すために、私がどんなことしたと思う?簡単にできたと思ってるの?本当は私、洋恵のしたことは自業自得だって思ってる。あの時の声を彼氏に聞かせるなんて最低。そりゃ誰だって怒るのは当たり前。でもね、友達に頼まれれば助けてあげたいでしょ?だから、結構いろんなことした。あちこちにお願いしたし、その分気乗りしないデートとかだってするし。だから洋恵は私に感謝しなくちゃいけないの。違う?」
「それは・・・・そうだね」
「そう、宏一さんだって共犯なんだから責任の半分はあるよね?」
「そう・・・・」
香奈に詰め寄られて宏一は何も言い返せなかった。確かに香奈の言うとおり、宏一にも責任はある。
「香奈ちゃんには感謝しなくちゃね。ありがとう」
「わかってくれた?」
「うん、わかったけど・・・・」
「それなら、洋恵にも言ってないこというわね」
そう言うと香奈はベッドに座って話し始めた。
「洋恵には簡単にデートっていってあるけど、実はそれだけじゃ無いの」
「どういうこと?」
「逆の噂を流したって言ったでしょ?その噂を流す男の子って、私のことが好きなの。だからデートするって言ったら協力してくれたんだけど、デートだけじゃ無いの。だから私の言うとおりに噂を流してくれたの」
「デートじゃ無い?」
「ううん、デートはデートなんだけど、それ以上のこともあるって事」
「それって、身体って事?」
「まぁ、ね。ただ、全部じゃ無いけど。いきなり全部させたら、その後のことが怖いもの。だから、出させてあげるって・・・・・」
「そんなことまで・・・・・・」
「そうよ。それくらい覚悟しなきゃ、こんな事ってできないの。逆の噂を流したけど、それだって間違ったら大変なことになるんだから。宏一さんは大人だから私の言ってること分かるでしょ?」
話の主導権は明らかに香奈にあった。宏一は香奈に翻弄されている感じで、香奈の言うことを受け入れるしか無い、そんな雰囲気だ。もしここで宏一がこの部屋を出て行けば、洋恵に良くないことが起こるかも知れない。少なくとも香奈を怒らせるわけにはいかないことだけは確かだ。
「たしかに、そうだね」
「分かってくれて良かった。やっぱり大人の人は違うな」
香奈は宏一の説得に成功したと確信すると、いよいよ本題に入っていった。
「それじゃぁ、私が宏一さんをここに連れてきた理由は分かる?」
「このホテルって・・・・」
「私たちが時々使うの。きちんと手続きさえすれば中学生でも使わせてくれるから」
「エッチのため?」
「それも確かにあるけど、どっちかって言うと女の子をここにかくまったりもするし、使い方はいろいろ・・・」
「かくまう?」
「そう。家に居られない女の子を少しの間、ここに居てもらうとか・・・・。親から逃げてきたり、家の周りを見張られていたりして家に帰れない子とかも居るし・・・」
「学校の先生とかに相談できないの?」
「その先生が原因だったらどうする?」
「そうか・・・・・」
宏一は香奈のポジションがだんだん分かってきた。要するに香奈は女の子の駆け込み寺なのだ。親にも学校にも言えないようなトラブルを解決するには香奈のような子も必要なのかも知れない。
「ねぇ、こっちに来て」
香奈は宏一を隣に座るように誘った。
「でも・・・・・」
「とにかくこっちに来て」
雰囲気としてはどうにもならない。宏一は仕方なく香奈の横に座った。すると、香奈は話し方の雰囲気を変えて、大人しい静かな声で話し始めた。
「あのね、私だって良いことばっかりしてるわけじゃ無いの。それは分かってるよ。だけど、女の子が私の所に来るんだもの。見かけは普通の子だけど、心はボロボロになって。だから・・・・・。いけないことだってしてるよ、わかってる・・・・」
「・・・・・・・・」
宏一は何も言えなかった。香奈のような子が居るからこそ、他の子は元気に暮らしていけるのかも知れないと思った。そう思うと、宏一の心の中に少しだけ香奈を応援してあげたいという気持ちが生まれた。
すると、香奈はスッと立ち上がり、上に羽織って胸で縛っていたTシャツを脱いで薄手のTシャツ一枚になった。ツンと尖った胸が印象的だ。洋恵よりも少し背が低いが、プロポーションは香奈の法が大人びており、腰のくびれがはっきりと分かる。ミニスカートから伸びている足はすらりとしているし、肌はとても白い。
香奈はじっと宏一を見つめながら近づくと、何も言わずに自分から宏一の膝の上に横向きに座った。
「香奈ちゃん」
宏一はそう言ったが、拒絶はできなかった。すると香奈は宏一の首に手を回すと、宏一の耳元でそっと囁いた。
「分かってるの。私、いけないことしてる。だから、ここで優しく叱って。夕方まで一緒に居るから。私だって甘えたいときもあるの。良いでしょ?宏一さんなら私、しても良いよ。今、私たちがここに居るのを知ってるのは私たちだけ。だから、誰にも邪魔されたりしない。だから宏一さんのしたいようにしていいの。優しく、ね?お願い」
そう言うと香奈は宏一の首に回した手に力を入れて身体を密着させてきた。ぷくっと膨れた固い乳房が宏一に当たった。宏一は身体がカッと熱くなった。
その日の午後から洋恵はずっと携帯を肌身離さずにいた。絶対に香奈は何か言ってくるはずだった。覚悟はしていたが、やはりその時が来ると怖くなってしまう。香奈が本気になれば宏一だって香奈の思い通りになるしか無いだろうと思った。宏一はきっと共犯の責任感から香奈の言うとおりにするだろう。それは分かっていた。しかし、やはり悲しかった。そして何度もあんなことをしたことを後悔した。
しかし、覚悟して待っているのに香奈からはなかなか連絡が来なかった。そして夜の10時近くになってやっと連絡が来た。瞬時にラインを確認した。
『洋恵、終わったよ。良かったね。宏一さんは何もしなかった。私の負けだね。約束は終わり。じゃあね』それだけだった。洋恵が詳細を聞こうとしたが、既読になっているのに香奈は返事をしなかった。
最初はもっと聞こうとしたが、何度聞いても返事は無かった。夜も遅くなった頃、一回だけ返事が来た。『本当に家庭教師、頼もうかなぁ』それだけだった。その後は相変わらず返事が無い。夜中を過ぎた頃、洋恵はだんだん嬉しくなってきた。あの香奈が負けを認めたのだ。もしかしたら香奈は嘘をついているかも知れないと思ったが、香奈が嘘をつく理由など何も無い。宏一と何かあったのなら勝ち誇ったように連絡してくるはずだ。洋恵は宏一に連絡した。
翌日、宏一はいつものように洋恵が来るというのでケーキを買って待っていた。すると、時間よりも少し早く洋恵が現れた。今日は宏一の好きな制服姿だ。それにこれなら家を出るときに図書館に行くと言って出てこられる。
「洋恵ちゃん、こんにちは」
宏一がドアを開けると、洋恵はいきなり抱きついてきた。
「どうしたの?洋恵ちゃん?」
そう言って宏一が纏わり付いている洋恵をなんとか部屋に引き入れると、洋恵は相変わらず何も言わずにくっついてくる。宏一は洋恵をなんとかちゃぶ台の前に座らせると、ケーキを出して紅茶を入れた。
「洋恵ちゃん、今日は早いんだね」
「うん」
「いきなり甘えてきたからびっくりしたよ」
「うん、私もちょっとびっくりした」
「洋恵ちゃんも?」
「うん、びっくりした」
今日の洋恵はご機嫌だった。
「まぁ、良いか。それで、今日はご機嫌だね」
「うん・・・・・」
そこで洋恵は始めてちょっと真面目な顔になった。
「ねぇ、香奈に・・・誘われた・・・でしょ?」
「うん、そうだよ」
「なにも、・・・・・・・・・・なかったの?」
「うん、可愛い子だったけどね。何もしなかったよ」
「聞いてもいい?どうして?」
「もう少し前から香奈ちゃんのことを知ってれば気持ちも違ってたかも知れないけど、いきなり会った子に誘われてもね・・・・・。なんて言うか、他人て言うか知らない子だから・・・・」
それを聞いた洋恵はケーキを食べるのもそこそこに、隣に座った宏一の膝の上に寝転がってきた。そして膝の上から宏一を見上げて言った。
「でもちょっとくらい後悔してないの?可愛い子だったでしょ?」
「後悔はしてないよ。・・・・でも、ちょっと・・・・」
そこでニコニコしていた洋恵の表情が始めて曇った。
「え・・・・・」
「ううん、そう言うことじゃなくて、遊んでるように見えて結構苦労してる感じの子だったから、家庭教師をしてくれないかって言われたときは少し考えたけどね」
「それで・・????」
「ううん、それだけだよ」
「香奈の家庭教師、するの?」
「ううん、だってまだ話があったってだけで、ちゃんと言われてないし」
「そう・・・・・」
それを聞いた洋恵は、これだけはなんとかしなければいけないと思った。もし宏一が香奈の家庭教師をすれば、どうなるか分からない。香奈だって見かけは派手だが世話好きだし苦労人なのは洋恵だって知っているからだ。もし、香奈が落ち込んだりしたときに宏一に励ましてもらったりすれば、どう転ぶか分かったものではない。洋恵はそれだけを心にとめると、先ず宏一に甘える事にした。
「ねぇ先生、優しくしてぇ」
そう言うと軽く身体を起こして宏一の首に手を回し、宏一の首元でスリスリしてくる。
「どうして欲しいの?」
「先生が決めて・・・・・・・」
「それじゃ、いつもみたいに横に座って」
そう言うと宏一は洋恵を隣に座らせた。但し、いつもの女の子座りでは無く、足を伸ばして、だ。
そしていつものように脇から手を入れて洋恵の胸の膨らみを撫で始めた。洋恵は大人しくその愛撫を受け入れたが、感じ始めるのがいつもより早いことに気が付いていた。
しかし、宏一の手に乳房が包まれた途端、一昨日香奈に言われた言葉が頭の中でフラッシュバックした。『センセが好きなんじゃなくて、結局大人のおっきいあれを入れてもらうのが好きなんでしょ?気持ち良いから』胸から沸き上がってくる感覚に洋恵はドキッとした。洋恵にとっては宏一が好きな気持ちも、宏一に愛されて気持ち良くなることも、どちらも同じ事なのだ。今まで単に気持ち良くなりたいと思ってしてもらったことなどないし、好きだからと言って何もしてもらわなかったこともない。ずっと前から宏一にはいつも身体を触ってもらって甘えながら好きな気持ちを確かめていたからだ。
洋恵は胸から沸き上がってくる感覚を確認しながら、香奈の言葉に引っかかっていた。もう胸の感覚から、乳房がはっきりと固く尖っているのは分かっている。もう、ギュッと揉まれるだけで身体が自然に反応するのは間違いなかった。それに、このままじっとしていれば、だんだん我慢できなくなってきて、宏一の両手を乳房に押し付けながら身体を左右に激しく捻りながらおっぱいをブルブルしてしまうのは間違いない。そうなったら後はブレーキなど不可能だ。洋恵は香奈の言葉を今の自分の身体でどう理解するべきか悩みながら、ゆっくりと焦れていった。

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