ウォーター

第三百五十七部

 
「水野さんは、いつここの仕事になることを知ったの?」
「今朝です」
「えっ?昨日まで知らなかったの?」
「はい、今朝、突然言われました」
「それはびっくりしただろうね」
「はい、それで今は落ち込んでます」
「それはそうだよね。でも、あんまり気にしない方がいいよ、って言っても無理か」
「はい・・・・・・」
さとみは明らかに落ち込んでいる様子だ。それはそうだろう。まるで今までの仕事ぶりを否定されたような物だ。
「水野さんは前にここに居た斉藤さんが辞めた理由を知ってるの?」
「はい・・・なんとなく・・・・・。三谷さんは知ってるんですか?」
「うん、知ってるよ」
「斉藤さんから聞いてたんですか?」
「ううん、そうじゃなくて、相手の方からね」
「・・・・・やっぱり・・・・」
「女の子のネットワークで広がってると思うけど、そう言う理由で突然だったのと、結局総務でやりくりするしか無かったんだと思うよ。水野さんが選ばれた理由は分からないけど、若い内は仕事の差なんて殆ど無いんだから、鉛筆転がしで選ばれたみたいなもんじゃないかな?それよりも、新しい仕事を覚えてきちんとこなす方が大事だよ。そうすれば次は営業とかにも行けるだろうし」
「三谷さんは辛いことを平気で言うんですね。でも、その通りだと思います」
どうやらさとみはかなり大きく落ち込んでいるらしい。
「でも、斉藤さんが優秀だったっていうのは知ってるんだろう?」
「はい、かなり仕事ができる人だっていうのは知ってます。だから、その後任が務まるかどうか・・・・」
「だったら、その仕事をできるようになれば、水野さんは優秀になったって事だよね?」
「はい・・・・まぁ・・・・そう・・・・」
「できる限りフォローするから」
「はい、ありがとうございます」
「うん、がんばろうね」
「それと、最初だから聞いてもいいですか?」
「なんですか?」
「斉藤さんとは・・・その・・・親しかったんですか?」
「まぁ、親しいと言えば親しかったかな?でも、少なくとも恋人って言うんじゃ無かったよ。相手がいたのは直ぐに分かったからね」
「恋人じゃ無いのに、三谷さんには親しく相談してたんだ・・・・」
「そう言われるとなんとも言えないけど、二人で夜遅くまで残業したりしてたからね。これからはそんなことにはあんまりならないと思うけど、夜遅くまで仕事した後、お疲れさん会で軽く飲んだ時とかに話すようになったんだ」
さとみは宏一の話はたぶん本当だと思った。そして、プライベートまで相談できる男性とはどういう人なのだろうと思った。しかし、嫌な気はしなかった。それに、基本的には宏一と一緒に働けるのだから同僚からは羨ましがられるポジションなのだ。
翌日からさとみのトレーニングが始まった。実家が工務店で仕事の流れを基本的に理解していた友絵と違ってさとみは初心者だ。とにかく最初は宏一が全部説明してやってみせねばならない。さとみは頑張ってノートを取っていたが、残念ながら友絵ほど優秀では無さそうだった。
おかげで宏一は仕事が増えて残業が増える羽目になった。さとみが定時で帰ってから宏一自身の事務仕事を始めなければならない感じだったので、木曜日も金曜日も帰宅したのは深夜になってからだった。
おかげで当日になるまで結衣のことはすっかり頭から抜けていて、土曜日の朝になってから思い出した。慌てて支度をして結衣の家に出かけ、突いたのはちょうど約束の時間だった。
しかし、呼び鈴を押しても結衣は出てこない。宏一は不審に思って再度呼び鈴を押すと、少ししてやっと結衣が現れた。
「結衣ちゃん、こんにちは」
「こんにちは・・・・・」
現れた結衣の表情は暗く、元気が無い。
「どうしたの?」
「いえ・・・なんでも・・・・どうぞ」
結衣に言われて宏一は二回の結衣の部屋に入った。どうやら家には結衣だけのようだ。
「どうしたの?元気が無いみたいだけど?」
「何でもありません」
「だけど・・・・もし、京子のまま帰った方が良ければそうするよ。体調が悪いんじゃ無いの?」
「いいえ、だいじょうぶ」
そう言うと結衣は机に座った。宏一が結衣の後ろに立つと、明らかに緊張しているのが伝わってくる。
「結衣ちゃん、本当に良いの?」
「はい、慣れてないから・・・・でもだいじょうぶ」
「少し勉強する?」
「はい」
「それじゃ、参考書を出して」
宏一がそう言うと、結衣は国語の参考書を取り出した。古文だ。まだやったことの無い問題を結衣が始めると、直ぐに聞いてきた。
「この括弧を省略してある部分はどこか、って言う問題は・・・・」
「あぁ、それは明らかに会話なのに括弧が付いてない部分があるから、その会話はどれですかっていう問題だね」
「そうですか・・・・」
「わかる?」
「たぶん・・・・・・・これ」
結衣はペンで会話部分に傍線を引いた。
「そう、さすがだね」
「それと、この現代文に直しなさいって言う問題は・・・」
「わかる?」
「餅を早く食べなさいって言うから食べました・・・・」
「そうそう。よくできました」
宏一は結衣の質問に答えながら、結衣は緊張を解したがっているのだと思った。もともと今日することは結衣にとって強烈な体験になるはずで、だからきっと逃げ出したいような緊張の連続だったのだろうと思った。だからこそ、今日は結衣が納得するようにしてあげたいと思った。だから宏一は、そのまま30分ほど勉強を続け、カチカチになっている結衣の緊張を解すようにした。
そして、しばらくしてから宏一は結衣の肩にそっと左手を置いた。もちろん結衣は一瞬の間を置いてビクッと緊張した。そのまま宏一の左手は結衣の項と耳の下の辺りをそっとなぞるように愛撫していく。宏一は何も言わないし、結衣は宏一がそれ以上のことをしてこないので無視して勉強を続けた。
しかし、無垢な少女の身体は本人が思っている以上に繊細で、くすぐったさとほんの少しの気持ち良さがだんだん結衣の身体に変化を起こしていった。結衣は少しすると、明らかに怠そうな眠そうな表情を見せるようになった。これは未経験の少女が示す性的な反応の第一歩だ。宏一は既に洋恵や由美で経験済みなので予想通りの結衣の反応に安堵した。そのまま更に丁寧に結衣の項を愛撫していく。瑞々しい張りのある少女の肌は触っていてとても楽しい。
今日の結衣はディズニー柄のプリントTシャツを着ている。きっと何を着るか考え抜いて決めたのだろう。Tシャツなら上から脱ぐしかないので、気持ちが納得していれば自分で脱げばいいが、前開きのボタンやジッパーの服だと簡単に肌を露出される心配があるからだ。
宏一は徐々に愛撫の範囲を広げていったが、結衣は何も言わなかった。
「結衣ちゃん、嫌じゃない?」
宏一が聞くと結衣は微かに頷いた。
「だいじょうぶ?」
更に結衣が小さく頷く。
「少し怠くなってきたかな?」
宏一は結衣が頷けば良いだけにして質問を繰り返した。
「ちゃんと宿題はした?」
結衣はじっとして反応しない。
「したかしなかったか、言いたくないの?」
結衣は頷いた。それはそうだろう。自分でしたかなど言えるわけは無い。もちろんそれは宏一だって分かっていた。宏一の目的は、一人上手をしたかしなかったか確認することでは無く、結衣に心の準備をさせることなのだ。
「でも、それは結衣ちゃんの身体の反応を見れば分かっちゃうことだよ。分かっちゃうのは仕方ないよね?」
結衣は反応しなかった。しかし、ここは大切なことなので更に宏一は聞き直した。
「それとも、俺に確認されるのは嫌?」
結衣は少しじっとしていたが、やがて小さく首を振った。
「それじゃ、結衣ちゃんは恥ずかしいかも知れないけど、確認しちゃうからね?」
改めて確認された結衣は、本当に微かにだが頷いた。宏一が顔を結衣の顔の隣に近づけていくと、自然に結衣が目をつぶって横を向いた。そのまま宏一は結衣にキスをした。すると、最初唇をくっつけていただけの結衣が少しすると反応し、唇を軽く動かした。そのままお互いに軽く唇を求め合う。結衣はまだ軽いキスなのはよく分かっていたが、それでも『キスってどうしてこんなに気持ち良いんだろう?』と思った。快感とは違う本当の気持ち良さを結衣は静かに味わった。すると、身体が少しだけ熱くなってきた。子供っぽいキスではあったが、今の結衣には最高のキスだった。
これで結衣が身体を許す気になっていることがはっきりした。勉強机に座っている結衣の後ろに立っていた宏一は顔を結衣の顔の直ぐ近くに持って行って、わざと息が結衣の項に掛かるようにした。既に指で敏感にしてあるので、軽く息が掛かるだけでも結衣は微かに反応した。くすぐったいのだ。
「いいかい、嫌だと思えば嫌がってもいいよ。ちょっと嫌がったくらいなら止めたりしない。でも、結衣ちゃんがもし本当に嫌なら立ち上がるなりなんなりご自由にどうぞ。引き留めたり押し倒したりなんて絶対にしないから、いいね?」
結衣が明らかに緊張するのが分かった。しかし、宏一の巧みな指先の愛撫がその緊張をそっと解していく。結衣はコックリと頷いた。
これで準備は整った。後は始めるだけだ。
「それじゃ、そっと胸に触るよ」
そう言うと宏一は両手を結衣の脇から入れてTシャツの上から小ぶりな乳房を包んだ。途端に結衣が大きく反応した。両脇をぎゅっと締めて宏一の手を押し出そうとして、激しく首を左右に振って嫌がった。
「いや・・・・・いや・・・・・・やっぱりいや・・・待って」
結衣が嫌がると、宏一は無理やりする気は無かったので、直ぐに両手は乳房から引き剥がされて押し下げられた。
「そうだよね。突然でびっくりした?」
結衣が大きく頷いた。
「ごめんね?怒ってる?」
結衣が首を振った。
「違う・・・・私からお願いしたんだから・・・・・・」
「だいじょうぶ?」
結衣は頷いた。最初はびっくりしたが、少し落ち着いたようだ。



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