ウォーター

第三十九部

 

 「痛くないの?」

「うん、痛いって言うよりきついって言う感じ。大丈夫、先生、

動きたいの?ゆっくりだったら・・・」

「じゃあ、ゆっくり動いてみるから、首に手を回してごらん」

宏一は洋恵の中をもっと楽しみたかった。洋恵の手が宏一の首に

回され、宏一が洋恵の体を抱きしめるとゆっくりと動き始めた。

 「はぁーッ、そんなーっ、あうーっ、はあーっ、せ、先生、

ちょっとすごすぎる、くぅーっ」

洋恵は必死に宏一を抱きしめ、思いっきり仰け反ったり首を振っ

たりして体の中からあふれ出る感覚に耐えようとする。しかし、

あまりに強すぎて気持ち良いのかどうかも分からない。

 しかし、宏一は違った。中に入っていくときはいくつもの肉壁

を押し分けて入っていくザラザラとした感じが素晴らしく、引く

ときは先端だけ軽く何度もつままれる感じがたまらない。洋恵の

中では早く動かない方がお互いに気持ち良いようだと分かった頃

は、洋恵は汗びっしょりで宏一に与えられる快楽の虜になってい

た。

 宏一が動くのをやめると、

「アアン、先生、お終いなの?」

と無意識にもっとおねだりをする。

「ううん、動いた方がいいの?じっとしてても、とっても気持ち

いいんだよ」

「動いて」

「分かった。これくらいかい?」

「アン、いい、それいい、とっても」

洋恵は初体験がこんなにいいものだとは思っていなかったので、

凄まじいまでの快感に完全におぼれていた。

 やがて、体の芯から今までとは違った何とも言えない感覚が広

がってくる事に気が付いた。

「アアン、ああ、イヤ、何、変」

突然洋恵が嫌がり、反応が変わったので宏一がいったん動くのを

やめると、すーっとその感覚が無くなっていく。何か、とっても

残念な気がした。

「イヤン、やめないで、先生、もっとして」

その声は今までになく艶っぽいもので、じれったそうに腰を突き

上げてくる仕草はとてもバージンをロストした中学生のものでは

なかった。

 宏一は洋恵がいきそうになっているのを理解した。宏一自身も

もうあまり持ちそうになかった。

「洋恵ちゃん、中に出してもいいかい?」

「うん、だいじょうぶ、出して」

洋恵はとぎれそうになる意識の中で宏一を受け入れることを決め

た。宏一が再び動き始めると再びあの感覚がゆっくり広がり始め

る。

 「先生、何か変なの、アアン、変なの、すごいの、こわい」

「だいじょうぶ、こうして抱いていてあげるから、変になってご

らん、もうすぐ洋恵ちゃんの体は最高になるんだよ」

宏一はゆっくりと肉棒を出没させながら最後の瞬間に近づいてい

く。洋恵は両足を思いっきり開き、宏一の頸に掴まりながら汗

びっしょりで必死に快感に耐え続ける。

「あ、こんなの、はあっ、これがいくの?これなの?あ、アアッ、

こわいの、アン、もう、あ、待って、ちゃんと抱いて、イイッ、

すごい、イイッ、あう、うう、う、うーっ」

洋恵の体が思いっきり仰け反り、肉壁がぎゅっと擦りながら締め

上げる。その刺激の強さに宏一もたまらず放出した。

「あうーっ、何か、でたっ、先生ーっ」

指や舌で愛されていく時の感覚とは根本的に違う深く激しい絶頂

の中で、仰けに反りながら宏一が自分の中で終わったことを悟っ

た。

 洋恵は足を全開に開いたまま、気絶したかのように放心してい

た。まだ肉壁は時折ビクッと収縮し、しぼみ始めた肉棒から最後

の一滴まで搾り取っていた。宏一もあまりの気持ちよさに洋恵の

上に被さったまま余韻に浸っていた。最高だった。洋恵の体がこ

んなにいいものだとは予想していなかった。

 少しして宏一が洋恵から離れても洋恵は動こうとしなかった。

いや、動けなかった。足を開いた格好のまま、まだ快感の残って

いる体を味わっていた。やがて、洋恵の体から宏一の放った液体

が吐き出されてきた。

「せ、んせい、なにか、でてるの、よごれ、ちゃう、うごけ、

ないの」

洋恵はとぎれとぎれの小さな声で宏一を呼んだ。宏一がティッシュ

を取り、洋恵の秘部をのぞき込むと、収縮するたびに宏一と洋恵

の液体の混じったものが中から吐き出されてくる。少しピンク色

をしているところを見ると、軽く出血があったようだ。

 宏一が丁寧に吐き出されるものを拭き取ってやる。

「う、うう、う」

洋恵は快感とは違うくぐもった声を上げた。そして、宏一が拭き

取ったティッシュをベッドサイドのゴミ箱に捨てるのを見ると、

「ありがとう、先生、まだ、体が動かないの」

とすまなそうに言った。

 「もう少しそうしていてごらん、だんだん体が動くようになる

よ。洋恵ちゃん、最高に気持ち良かったよ」

宏一は洋恵の体にそっと布団を掛けた。

「まだ気持ちいいの。とってもいいの。力が入らないの」

洋恵はそう言うと、そのまま浅い眠りに包まれていった。

 

 宏一は洋恵のベッドから降りると窓際の応接セットでタバコに

火を付けた。洋恵の体は最高だった。こんな素晴らしい体にはそ

う簡単に巡り会えるものではない。しかし、良すぎる。宏一は洋

恵の体にのめり込みそうな自分を感じ、どうしたものか迷ってい

た。この旅の往復はいいとして、帰った後に洋恵を何度も部屋に

呼んで瑞々しい最高の体に溺れていくのが怖かった。きっと、何

度も何度も体力の続く限り交わり、洋恵の中に放出しないと気が

済まないだろう。それほど素晴らしい快感だった。

 そして、何度も部屋に呼べば明子にも知られてしまうかもしれ

ない。しかし、そう頭では考えながらも、今すぐにでも洋恵の体

を求めたくなっていることも事実だった。無邪気な洋恵は何も言

わずに受け入れるだろう。それが分かっているだけに更に怖くなっ

てきた。

 由美の体も素晴らしいが、由美の場合は宏一に頼ってきている

けなげさと知性、性格、美しいプロポーションが魅力なのであっ

て、中に放出すること自体が魅力なのではない。洋恵の体を大人

にしてしまった今は、今後のつきあい方を考える絶好の機会なの

だろう。宏一は何本もタバコを吹かしながら洋恵との今後を考え

てみた。

 洋恵は、今まで宏一の与える性の世界を本気で拒んだことはな

かった。それだけ宏一を信用していたと言うことだろう。宏一の

リードがあったからこそここまで開発されたのだ。宏一がいなく

なれば自分で本当に愛する相手を見つけなければならない。それ

は恋愛の自然なステップだ。これからは少し距離を置いて洋恵を

見守るべきなのだろう、そう考えて頭を整理することにした。洋

恵を大人にした今、宏一の役目は終わったと見るべきだろう。こ

れ以上のめり込むのは危険だった。

宏一の頭の中では、恥ずかしがりながらも胸に触られるのを

心待ちにしている表情や、初めて両手に包んだゴムまりのような

乳房の感触、乳首を舌で転がされて夢中になって感じる表情、秘

核を舐めながら乳房を揉み上げたときの喜びの声、フェラチオで

宏一の放出したものを飲み込んでいたずらっぽく笑う表情などが

渦巻いていた。

 『このフェリーの往復だけは精一杯感じさせてあげよう』、そ

う自分の気持ちに整理を付けて洋恵の隣のベッドに入った。

洋恵は満ち足りた表情で眠っていた。きっと、宏一の感じた

以上のすさまじい快感を得たはずである。体力の限界まで感じ

させられた幼い体は、再び愛されるときに備えて体力の充電に

入ったようだ。満足した表情で寝ている洋恵の寝顔はとても可

愛い。

 しばらくして洋恵はゆっくりと目を覚ました。既に部屋は暗く

なっている。はっと気が付いて横を見ると宏一は隣のベッドで寝

ているようだ。時計を見ると3時近い。まだ体がだるかったが、

のどが渇いていたのでゆっくりと起き出し、自分が全裸であるこ

とに気が付いたが、暗い部屋の中なので気にしないことにした。

自分のバッグの中からウーロン茶を取り出して飲む。一本はアッ

という間だった。先生にあげようと思って残しておいたもう一本

も、半分だけもらうことにしてゆっくりと飲んだ。

 のどを潤すと、自分が汗くさいことに気が付いた。宏一を受け

入れていた間は夢中で気が付かなかったが、かなりたくさん汗を

かいたようだ。股間もベトベトしているようで気持ち悪い。シャ

ワーを浴びると先生を起こすかな、と思ったが、そっと浴びれば

いいだろうと思ってシャワールームに入った。

 シャワーのくぐもった水音で宏一はゆっくりと目を覚ました。

どうやら洋恵がシャワーを浴びているようだ。起き上がって電気

をつける。サイドテーブルに飲みかけのウーロン茶を見つけ、残

りを飲む。冷蔵庫の中にも何本か飲み物が入っていたはずだった。

冷蔵庫からジュースを取り出す。洋恵のベッドの布団をはいでみ

ると、腰のあたりのシーツがあちこちうっすらとピンクに染まっ

ているのが分かった。しかし、この分なら出血は大したことなさ

そうだ。

 まだボーっとした頭のまま応接セットのいすに座り、しばらく

冷蔵庫のジュースを飲んでいると水音が止まって、かちゃりと音

がした。

「先生、起きたの?」

洋恵の声がする。

「うん、今オレンジジュースを飲んでいるんだ。こっちにおいで」

「でも、私、裸だから・・」

「バスタオルを巻いておいで」

洋恵が出てくると、宏一の方に歩いてきたが、宏一が全裸なのに

気が付くとあわててもう一枚のバスタオルを取りに戻った。

 「裸じゃ、ダメ?」

「だって、恥ずかしいもん」

「こっちにおいで」

宏一は洋恵にもらったバスタオルを膝の上に広げて、その上に洋

恵を横向きに座らせた。

 「どうだった?」

「うん、恥ずかしかった。でも・・・、嬉しかった」

「それだけ?」

そう言うと、そっと宏一のうなじに顔を埋めて、小さな声で

「知ってるくせに。気持ち良かった。とっても」

と言った。

「嬉しかったよ。洋恵ちゃんの初めての人になれて」

「私、ずっと前から決めていたの、先生にしてもらおうって」

「知ってたよ。嬉しかった」

「私も」

宏一はそう言いながらバスタオルを外し、洋恵の後ろに回した左

手で肩を支え、右手で乳首を軽くいじる。

 「先生、気持ちいい」

「うん、感じていてごらん。ベッドでして欲しくなったら連れて

いって上げる」

「うん。でも、もう少しこのままがいい」

洋恵は両手を宏一の首に回し、宏一の首にそっと頭をこすり付け、

目をつぶって柔らかい快感に浸っていた。安心できる、心の安ら

ぐ快感だった。

 宏一は、乳首が十分に堅くなって軽く洋恵が

「アン、アン、あ」

と声を出すようになると、膝の上に乗っている洋恵の足をゆっく

りと広げた。そしてそっと茂みの中を右手の中指だけで探検させ

ていく。まだ淡い茂みのすぐ下には、洋恵の秘核が愛されるのを

待っていた。最初は指をあてがってごく軽く押してみる。

 「あ、ん、先生、とっても気持ちいい、何か、とっても」

洋恵が安心した声でゆっくりとささやく。

「このまま指でして上げるから、オチンチンがどうしても欲しく

なったら言うんだよ」

「はい」

洋恵はおとなしく頷いた。

「ゆっくりとするからね」

宏一は優しい声でそう言うと、ほんの少しだけ刺激を強くした。

「はぁ、はぁ、あ、はぁ」

宏一の耳元に洋恵の小さな息がかかる。洋恵は、もう少ししたら

おねだりの言葉を言うことになると覚悟していた。

 しかし、しばらくしても気持ちいいままで焦れったくはなって

こない。洋恵は安心して宏一に与えられる快感の海に漂うことが

できた。ふと気がつくと、宏一の右手が茂みの中に深く入ってい

る。少しずつ宏一が刺激を強くしているのだ。焦れったくなる少

し前に刺激が強くなるので我慢することができるのだ。洋恵はま

た心から安心した。

 やがて宏一の右手の人差し指は、秘核だけでなく、秘口も刺激

し始めた。秘口の中からは新しい液体が湧き出している。

「き、気持ちいい、先生、いい」

洋恵が少しうわずった声で喜ぶ。少しずつ中指は秘口の中にも出

入りする。

「くぅっ、はぁっ、いいっ」

洋恵は思わず足を広げて深く迎え入れようとする。すると、洋恵

の肩に押しつけられていた宏一の顔から下が出てきて胸を舐め始

めた。洋恵は左手を離して身体を軽く仰け反らせ、宏一の顔が動

きやすい空間を作る。可愛い膨らみを宏一は食べ始めた。しかし、

いつものように焦らし続けるのではなく、裾野の方からゆっくり

と回り全体を食べてから先端まで口に含んでくれる。

「くっ、あーっ、イーッ」

洋恵の身体が満足しているのが宏一にも良く分かった。やがて秘

口に中に出入りしている中指は中にとどまらせ、指の動きだけで

出没運動を作り出し、掌で秘唇と秘核をゆっくりと押しつぶすよ

うに回し撫でる。

 「アアッ、イイッ、先せっ、指が、お口が、イイッ、イイッ、

アーッ」

洋恵は何度も身体を仰け反らせたり縮めたりして快感に必死に耐

える。自然に宏一の左手は洋恵の肩から首を支え、洋恵が仰け反

りやすいようにしていた。さらに宏一は無言でひたすら洋恵に快

感を与え続け、ゆっくりと頂上に導いていった。特に、口での奉

仕をたっぷりと与え、大きく全体を吸い込んだり、舌で乳首を転

がしたり、素早く乳房を移動して、もう片方を含み洋恵を十分に

満足させる。

 いつの間にか洋恵の身体は仰け反ったまま喘ぎ続けるだけになっ

ていた。

「先生、良いの、胸が、・・いいの・・、オッパイ、嬉しいの・

・、下も・・」

洋恵はとぎれとぎれに喜びを伝える。強要されなくても洋恵は喜

びを宏一に伝えたかった。どれほど気持ちいいかを分かって欲し

かった。

 やがて洋恵に最後の時がやってきた。

「先生、もう、あああっ、ダメ、いいッちゃウッ、先生、好き、

アアッ、もう、う、ううっ、くぅーっ」

洋恵は我慢できないかのように宏一の膝の上で思いっきり仰け反

り、体の中から沸き上がる快感を全身で味わう。宏一は乳房を思

いっきり吸い込み、先端を舌で押しつぶすように可愛がる。

 しばらく洋恵は無言で仰け反ったままだった。息さえも止めて

いた。そして、

「はーッ、うーっ、まだっ、イーッ」

と絞り出すような声でまだ頂上にいることを伝えた。宏は乳房を

くわえたまま、右手は中指をぐっと突き入れて中のぶつぶつした

肉壁をぐっと押しており、掌は強く秘核に押しつけられていた。

 宏一がその体勢を保っている間、洋恵は頂上から降りることは

なかった。何秒か、あるいは一分か、それ以上なのか、洋恵には

時間の感覚がなかった。ふわふわとした異次元にいるような感覚

に酔っていた。

 宏一が硬直したままの洋恵の身体から愛撫を取り去ると、始め

て洋恵は大きく息をした。

「はーっ、はーっ、せ、先生、はーっ、すごい、はーっ、凄かっ

た、はーっ」

洋恵は宏一に抱かれたまま喘いでいた。しかし、表情はどこか菩

薩のような深い喜びを表していた。

 「こんなに、いいこと、あるなんて、先生、はーっ、嬉しい」

「もうしばらくそのままにしておいで、まだ体を動かすのは無理

だよ」

「うん」

宏一は優しく脇腹を撫でながら言った。

「だめ、そんな事されたら、気持ち良くて、また」

「そう?、じゃこうしてて上げる」

そう言って宏一は優しく髪を撫で始めた。

「気持ちいい、とっても、いい・・・」

 洋恵は次第に意識が薄くなってくるのを感じていた。『寝たら

ダメ』頭のどこかでそう思ったが、あまりにも気持ち良かった。

髪から足の先まで充実した優しい快感と倦怠感に満たされていた。

うっとりと目をつぶりながら、『このまま寝たら先生はきっと優

しくベッドに連れてってくれる』と思った。そして、その通りに

なった。

宏一はベッドに洋恵を降ろすと、自分のベッドに入った。本

当はもう1ラウンドするつもりだった。まだ宏一は一回しか発

射しておらず、もう一回は十分にできた。しかし、疲れ切って寝

ている洋恵に無理に求めるのはかわいそうだった。きっと、どん

なに疲れていても受け入れてくれることは分かっていたが、今は

幸せな寝顔を大切にすることにした。

 宏一も寝る前にシャワーを浴びることにして、シャワーブース

に入る。ゆっくりと湯を浴びると、改めて自分がかなり疲れてい

ることが分かった。『洋恵ちゃんが寝てしまうのも仕方がない』

そう考えて、自分の疲れも落とすことにした。

 ベッドに入る前に、いつものように応接セットでタバコを一本

吹かす。暗闇で煙を吐きながら、明日会う予定の史恵のことを考

えていた。あれから史恵はどう変わっているだろうか、宏一の記

憶の中の史恵はストレートヘアの可愛らしい目のクリッとした女

の子だった。身体の線も、どこか子供のままだった。大人ぶって

みたり、ただ泣き続けたり、大人と子供の中間、と言うのがピッ

タリの年頃の子だった。

 きっと、綺麗になっているだろう、もしかしたら宏一が驚くく

らい変わっているかもしれない。しかし、宏一を好きでいてくれ

る気持ちは変わっているだろうか。夜になった途端に帰る等と言

われたら、もし、付き合ってくれたとしても、金曜日までの五日

間、本当にずっと一緒にいてくれるだろうか?

 史恵には、まだ泊まる宿は告げていない。気に入ってもらえる

とは思うが、そんなつもりではなかったと言われたらどうしよう、

果たしてもう一度史恵を抱くことができるのだろうか。疲れてい

るせいか、宏一は心配ばかりしていた。やがて、眠くなってきた

ことに気がつくと、おとなしく洋恵の隣のベッドに入って目をつ

ぶった。

 

 そのころ、鹿児島のアパートの一室で史恵が暗い部屋の天井を

じっと見つめていた。どうしても寝付かれなかった。『宏一さん

はあのころの私をそのまま想像しているかも知れない』そう思う

と、どうやって接したものか迷っていた。『あのころの私とは何

もかも変わっている。趣味も、考えも、身体だって・・・。そん

な私を見てなんて言うのかしら』

 『会いたい』その気持ちはとても強かった。宏一には何を知ら

れてもいいという安心感もあった。しかし、宏一が嫌ってしまっ

たら・・・。それだけが怖かった。自分の過去を否定されてしま

うような、そんな不安感が胸に広がっていた。『私は私、今さら

怖がってどうするの』自分で自分に言い聞かせる。『今頃は紀伊

半島のあたりかな』それが史恵の眠りに落ちる直前の意識だった。



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