ウォーター

第四十三部

 

 少女が肉棒を十分に大きくした頃、船内のスピーカーから到着

準備の案内が流れ始めた。

「御乗船の皆様にお知らせいたします。大変長らくの御乗船、お

疲れさまでした。本船は定刻にて日向港に入港いたしました。接

岸作業が終わりますまで、どなたさまも・・・・」

はっと動きを止めた洋恵は思わず宏一の顔を見たが、宏一はその

まま洋恵の愛撫を受けているので、思い切って宏一の上に乗ると

宏一の肉棒をつかみ、自分の中に入れようとした。宏一はここで

やめようかとも思ったが、時間ぎりぎりまで洋恵を焦らして燃え

上がらせることにした。

 「アアン、上手く入らない。先生、上手くできない」

「落ち着いて入れてごらん。大丈夫だから。まだ時間はあるよ」

「あっ、アン、もう少しなのにぃ、オチンチンまで私を焦らすぅ」

洋恵は下船が始まるのではないかと気が気ではなかった。出迎え

に来ている親戚を待たせたら何か言い訳をしなければいけなくな

る。

 宏一が腰の位置を微妙にずらし、軽く下から突き上げてやると、

「あっ、そこ、アーッ、入ってくるぅ」

洋恵は腰をゆっくりと宏一の上に下ろした。

「くぅーっ、入った。自分で入れちゃった」

「これは洋恵ちゃんが入れたんだから、自分で好きなように動い

てごらん」

宏一はあくまで洋恵に任せることにした。

「ああっ、いいっ。先生、いっぱい入ってきた」

洋恵は自然に手をついて宏一の上で体を前後に動かし始める。

 「上手に感じられるかな?」

「き、気持ちいいけど、でも、上手に動けない。先生、お願い。

なんとか、して、いいの、とっても」

洋恵は賢明に体を動かそうとするが、快感を得ながら体を大きく

動かした経験がないのですぐに動きが止まってしまう。

「気持ちいいのにぃ」

洋恵が宏一の上に崩れてきそうになる。

 「ご褒美だよ」

宏一は洋恵の胸を両手で下から揉み上げて洋恵の身体を大きく反

り返らせる。

「アーッ、こんなっ、すごいっ」

ピンと体を反らせて洋恵が喜ぶ。

「このまま腰を動かしてごらん」

「あ、あう、いい、けど、上手く、できない、先生、すごく

深いっ」

洋恵は快感ともどかしさでどうしていいか分からなくなった。

「もうだめ、先生、いつもみたいに上からして」

洋恵はそう言うと、宏一の上から身体を下ろした。

 その時、

「本船はただいま無事接岸いたしました。お出口はメインロビー

の近くになります。扉が開いて係員の指示がありますまで、今し

ばらくお部屋でお待ち下さい。本日はご利用いただきましてあり

がとうございました」

 「あーん、もう少しだったのにぃ」

洋恵は残念そうに宏一の反り返った肉棒を見ている。『実際に下

船するまではまだ十分以上あるはずだ。それにここは一等船室だ

から二等に比べて出口には簡単にたどり着ける』そう思った宏一

は、

「仕方ないね。帰りも一緒だから」

ととりあえず服を着せることにした。

 宏一は簡単に支度を済ませると、荷物をまとめた。洋恵も余り

時間はかからなかった。下着を付けてTシャツとスカートを着て

しまえばあとはいくらもかからない。

「先生、もうみんな降りちゃった?」

「見てみようか」そう言って窓から外を見てみる。

「まだ誰も下りていないみたいだよ。見てごらん」

宏一はそう言って洋恵を窓際に誘った。

「ほんとだ。あわてて損しちゃった」

「大丈夫だよ。そんなこと無いから。ほうら」

宏一は洋恵を後ろから抱きしめると、首筋に舌を這わせ、Tシャ

ツの裾から左手を入れて乳房を撫で始め、右手はスカートの中に

入れてパンツのゴムをくぐると淡い茂みの奥を探った。

 「あ、ダメ、先生、こんな、もう下りなきゃ、ダメ、あっ、ア

アッ、そこ、ダメェ、感じちゃうからぁ、あっ、アアン、ダメだっ

てばぁ、アン、イイッ」

洋恵は突然の愛撫に身体をくねらせ、立ったまま感じてしまった。

「ダメ、こんなことしたら、我慢できなくなって、遅れちゃうか

ら、アン、先生ったらぁ」

「大丈夫だよ。少しくらい時間はあるから」

宏一はそうささやくと更に大胆に洋恵の身体を探った。

 もともと火のついていた身体が燃え上がるのは早かった。

「先生、ねえ、やっぱりして。我慢できない」

「ちゃんと言いなさい」

「アアン、もう、早くぅ、オチンチンを私に入れて」

宏一が洋恵の身体から手を抜き、振り向かせて唇を重ねると熱い

息をしながら身体をくねらせて擦り付けてくる。

 宏一が洋恵の肩を押して跪かせると、素早い手つきで洋恵はズ

ボンを脱がせて宏一の肉棒を含んだ。宏一もすでにその気だった

ので、半分ほどの大きさから見る見るうちに肉棒は再び堅くそそ

り立つ。

 「そこのイスに正面から座って、背もたれに手をつきなさい」

洋恵をイスに反対向きに座らせるとパンツを脱がせた。洋恵の腰

の位置はちょうど宏一の位置と合っている。

「入るよ」

そう言うと潤いをたたえた中に肉棒を突き立てていった。

 いきなり待っていたものが身体を満たした。

「アーッ、あっ、あっ、いいっ、せんせっ、やっぱりこれがイ

イッ」

すでにたっぷりと液体があふれている中で肉棒が暴れるのを、洋

恵は必死にイスの背を握りしめて耐えた。

「あっ、ああっ、あっ、いいっ、あっ、あっ」

 肉棒がゆっくりと一番奥まで入ると、

「はぁーッ、こんなに深く、イイッ、そのまま、ね、イイの」

と絞り出すような声で必死に快感を味わっている。すーっとゆっ

くり抜くと、

「あーん、全部抜いちゃいや、早く、もっと、ねぇ、いや、こん

な、たまんない」

とお尻を小さく振って催促する。次第に宏一は動きを早く、大胆

にして、洋恵を最後の頂上に導いていく。中に入ったままじっと

していると、洋恵の肉壁の動きで先に放出してしまいそうだった。

コリッと尖った肉壁が宏一にからみついて先端をしごくのが良く

分かる。

 宏一は更にTシャツを捲り上げるとブラジャーを外し、敏感に

なったままお預けをくわされていた乳房を揉み込んでやる。

「くぅーっ、イイーッ、イッ、こんなに、いい、いいのぅ、すぐ

に、いっちゃウッ」

洋恵は夢中で身体を左右に振り、宏一の手の中の膨らみを暴れさ

せる。

 「せんせーっ、イイッ、好き、大好き、いっちゃうからーッ、

あっ、あうッ、アーッ」

激しく息を弾ませながらも、自分からは何もできないので、洋恵

はただ宏一に与えられる快感に耐えるしかない。そのうちに、身

体の中心から快感が全身に広がり始めた。

 「先生、もう少し、アアーン、何か、はーッ、もうすぐ、イ

イッ、やめないで、はう、もうすぐだから、ね」

洋恵は宏一にこれ以上焦らされないように必死におねだりをする。

宏一も最後に思いっきり肉棒を突き立てることにした。

「イイッ、これっ、こんなっ、良すぎるっ、イイッ、あ、あう、

もう少し」

洋恵は夢中だった。

 それからいくらもしないうちに少女の身体の中で快感が爆発し

た。

「あっ、あっ、う、うーっ」

洋恵の痙攣にあわせて宏一が肉棒を深々と差し込み、とどめを刺

す。きっちりと肉棒を締め付けている肉壁が肉棒の先端をざらっ

と擦り上げる。

「くっ、うっ、うっ、い、いいっ」

洋恵は小さく痙攣するたびに、体の中で快感が爆発するのを味わっ

た。やがて宏一が肉棒を抜くと、洋恵の身体はぐったりとイスの

上に崩れ落ちた。

 宏一が窓から覗くと下船が始まったようだ。いつの間にかスピ

ーカーからは下船の音楽が流れている。

 「洋恵ちゃん、下りるよ。服を整えなさい」

宏一はそう言うと、身支度を整えて二人分の荷物を持った。洋恵

はだるそうに体を起こすとブラジャーを着け、パンツを履いて服

装を整え、宏一と一緒に部屋を出た。幸い、まだ通路は人であふ

れていた。安心した洋恵は、

「もう、あんなことするなんて。帰るときは覚えていて」

といたずらっぽく笑うと、まだ少しだけうずきの残る身体を宏一

の肩により掛かけた。

「まだ身体が熱いの。先生のいじわる」

そう言って宏一の腕を取って抱きしめる。二人は素早くチュッと

キスをした。

 結局、下船が始まったのは3時を回ってしまった。宏一と洋恵

がターミナルに入っていくと、既に船から下りた人と出迎えにき

ている人であふれていた。あちこちで団体を集める声が響き、ツ

アーのバッチを付けた人たちが右往左往している。しかし、洋恵

はすぐに出迎えにきていた親戚のおじさんとその息子を見つけた。

「あれだ、あれ。おじさん達ちゃんと来てた」

大きな荷物を宏一から受け取ると、洋恵が一組の親子連れに近づ

いていく。

 「洋恵ちゃん、よう来たとね。おっきゅうなったと。何年ぶ

りね?」

叔父はそう言うと、宏一に向かって

「洋恵ちゃんの家庭教師の先生とね。御世話になっとると」

と頭を下げて言った。一瞬、言葉が分からずに返事に詰まったが、

大まかな意味は分かったので、

「いいえ、洋恵ちゃんのおかげで退屈せずに済みましたよ。少し

わがままも言ったけど、だいたいは大人しくしてたよね」

と洋恵に話しかける。洋恵は、その子供扱いの言葉に少し腹が

立ったが、ここで怒っても仕方がない。

「はい、そうです」

とぶすっとした声で返事をした。

 叔父と一緒に来ているのがしばらく会っていないと言う従兄弟

の男の子らしい。洋恵をじっと見たまま何も話しかけてこない。

洋恵の方も、気にしてはいるようだが話しかけるきっかけがない

ようだ。何年も合っていないのだから、言葉が見つからないのも

当然だ。

 従兄弟の男の子は身長は宏一ほどではないが、高校一年にして

はかなりある方で、結構もてそうな感じだ。

「洋恵ちゃん、結構かっこいい子じゃない。よかったね」

とそっと言ってみると、

「そうかなあ?」

といいながらも結構嬉しそうだ。これからしばらく一緒だと思う

と嫌な気はしないらしい。

 「先生、電車の時間があっとで、ここで失礼ばされてごあんさ

い。また、金曜日にここでおあいせんとね」

叔父は洋恵の荷物を持つと、

「洋恵ちゃん、もう切符ば買ってあるけんね」

と、ターミナルの外に向かって歩き出した。

「え、もういっちゃうの?」

「特急の時間まで40分位しかないけん、今から行かんと」

洋恵はもう少し宏一と一緒にいて、宏一を迎えに来る相手を確か

めたいようだったが、仕方なく、

「先生、ありがとう。また金曜日にね」

と手を振って歩いていった。

 宏一は史恵に教えられたとおり、食堂に行って軽く食べること

にした。考えてみると、大した昼食はとっていない。何を食べよ

うかディスプレーを見ると、皿うどんがあったので注文すること

にした。こんなところで皿うどんとは意外だが、やはり九州に来

た感じがする。荷物の中から単行本をとりだし、片手で広げて読

みながら史恵が来るのをのんびりと待つ。やがて人気の少ない食

堂にごま油の香ばしい香りが漂いはじめた。宏一は窓の外にフェ

ニックスが並んでいるのを時々眺めながら読書で時間をつぶして

いった。

 史恵はやっと日向に入った。職場を出発するのが遅れたのでや

はり3時をだいぶ過ぎてしまった。実は、焦るあまり一回道に迷

ってしまった。高速道路の宮崎インターで、そのまま行けば有料

道路になって市街を迂回でき、その方が便利なので有料道路に

入ったのだが、街の入り口で途中で有料道路が一回切れるのだ。

本当は交差点を右折して有料道路の続きに入れば、ものの数分で

宮崎の反対側に出られるのだが、うっかりここで終わりだと思っ

10号線方向に曲がってしまった。

 そうすると、もろに宮崎の街の中心に向かうので、混雑と焦り

でイライラしていた。そして、やっと見つけた10号線を左折して

しまったので、しばらくの間鹿児島方向に逆走してしまった。町

外れの距離表示で気が付いて慌ててUターンしたが、20分近く時

間をロスした。

 当初はどうして有料道路がすぐになくなったのか分からなかっ

たが、10号線を通ってもう一度宮崎の街の中に入り、何度も国道

がカクカク曲がるのを必死に追いかけ、宮崎の街のはずれまで来

たとき、最初に入った有料道路の標示を見つけて、『こうなって

たのか!』とやっと自分の犯したミスに気が付いた。自分に腹が

立って、悔しくて仕方がなかった。

 それからイライラしながらしばらく走って、やっと日向の街を

通り抜けるとフェリーターミナルの表示が出ていた。そこからは

いくらの距離もない。ターミナルの駐車場に入ると既に車の出入

りはあらかた終わったようで、かなり閑散とした感じになってい

た。夕方に川崎に向けて出航するまでは4時間ほどあるのでまだ

出航待ちの車もほとんどいない。

 史恵は駐車場に車を止めると、ターミナルに向かって小走りに

駆けていった。しかし、食堂を見つけると自然に足が止まってし

まう。『ここだ。なんて話しかけようかな?』急に自信が無く

なってきた。宏一が四年間で変わってしまった自分を見て、なん

て言うだろう?もし、変わったね、と言われて素直に笑えるだろ

うか?『よし、自分から言ってしまった方がいい』そう心を決め

ると食堂の中に入っていった。

 宏一は既に皿うどんを食べ終わり、のんびりとお茶を飲みなが

ら本を読んでいた。それまでに何度も人の気配を感じては頭を上

げ、また読み始めると言うことを繰り返していたので、少々のこ

とでは本から目をそらさなくなっていた。

「宏一さん、こんにちは」

突然、なつかしい史恵の声がした。慌てて本から目を上げると目

の前に史恵が立っていた。

「あ、史恵ちゃん、久しぶり」

「お久しぶりです。宏一さん」

史恵はそう言って、

「ここ、いいですか?」

と宏一の前のイスに座った。

「元気そうだね」

「宏一さんこそ」

「全然気が付かなかったよ」

 「宏一さんたら、私が目の前に立ってもずっと本を読んでいる

んだもの、声をかけなかったらきっとまだ読んでたと思う」

史恵は、音を立てないようにそっと近づいてきたことなど一言も

言わず、宏一に不満を漏らした。

「ごめんよ。本当に気が付かなかったよ。ごめんね」

「ふふ、そうやって潔く謝るのは前と同じですね。やっぱり宏一

さんだ」

 「そうやって、ちゃんとほめてくれるのも史恵ちゃんだね」

「ありがとう。やっばり来てよかった。それはそうと、宏一さん、

これからどこに行くの?」

「えーと、今日はシーダイナに泊まるんだ」

「へー、凄い。そうだ、ついでに金曜日までの予定を全部教えて

下さい」

 「うんと、明日は霧島温泉に泊まって、水曜日はまだ決めてな

いんだ。最後の木曜はもう一回シーダイナだよ」

「え?シーダイナに二回も泊まるの?」

「うん、でも、今日はオーシャン50とか言うビルで、木曜日はラ

グゼとか言うコンドミニアムなんだ」

「そうか」

宏一は史恵があまり喜ばないのでちょっとがっかりした。実は、

予約したのは由美と旅行にでる前の時期で、会社のネットワーク

用の配線を通す場所の決定と工事の発注で忙しく、予約をすると

きにあまり調べる手間をかけなかったし、情報を集めている時間

もなかったので、値段の高いとこならばいいだろうと思って予約

したのだ。

 「どう?あんまり気に入らなかったら言ってよ。シーダイナっ

てあんまりいいところじゃないの?」

「いえ、そう言う事じゃなくて・・・」

「今日の分はさすがに無理だけど、行きたいところがあるなら今

からでも予約を変えるよ」

「宏一さん、タバコ吸ってて下さい。その間に考えますから」

史恵はそう言うと一人でじっと考え込んだ。

 宏一は言われたとおりタバコに火を付け、史恵を改めて見つめ

た。高校の時に比べて髪にカールを付けているので以前よりふっ

くらと見える。体つきもどことなく丸くなった感じだ。全体の印

象も大人の女性の感じがする。宏一は、分かってはいたつもり

だったがどう接していいものかとまどいを感じた。

 「宏一さん、いいですか?」

史恵は不意に顔を上げると話し出した。

「うん、いいよ。いいアイデア、出てきた?」

「あの、シーダイナの方はそのままでいいですから、霧島をやめ

て高千穂峡から別府に行きませんか?」

「いいよ」

「前から高千穂峡に行きたかったから。それに、別府は宏一さん

の好みに合うと思って。たぶん、気に入りますよ」

 「分かった。じゃあそうしよう。えーと、ではここで問題です。

具体的にどうすればそのスケジュールを実現して旅行できるで

しょう?」

「昔、良くやりましたね。エーと、まず、本屋さんに行って地図

とガイドブックを買って、それから喫茶店で検討して、最後に電

話で予約をすればいいんですよ」

「良く覚えてるね」

「高校の時にさんざん手伝いでやったもの。それくらいまだ覚え

てますよ」

史恵もだんだん言葉遣いが気楽なものに変わってきた。

 「じゃあ、出発しようか」

「はい、本屋さんに向けて、ね」

二人は席を立つと外の車に向かった。史恵の車は赤色の女性に人

気のあるハッチバックタイプで、見たところから想像すると新車

で購入したようだ。史恵は、

「これがキーです。お願いしますね」

と宏一に渡すとさっさと助手席に座った。

 「へエー、凄いね。新車で買ったんだ。元はそんなに高くない

とは思うけど、結構大変だったろう?」

「もちろん、私の給料じゃ無理ですよ。親にだいぶ出して貰いま

した。就職祝いだって」

そう言えば確か、史恵の両親は共働きだったことを思い出した。

それくらいの金額は何ともないだろう。

 宏一と史恵は国道にはすぐに出ず、日向の街中の本屋でガイド

ブックとロードマップを買い込むと宮崎を目指した。

「どこか、喫茶店に寄るかい?」

「いいえ、もう少しこのまま走っていて下さい。今の内にピック

アップしておこうと思って。それが終わったら喫茶店によっても

らって二人で決めましょう」

 宏一は、史恵が淡々と最も効率のよう方法を探っていくのを聞

いて、社会人になってまだ1年半なのに、かなり度胸が付いたも

のだと感心してしまった。元々史恵は思い切りのいい性格だった

が、それがちゃんと長所になっているのが嬉しかった。ほんの

さっきまでは一番新しい記憶だったのに、次第に宏一の胸で泣い

ていた時のことが遥か昔に感じられてくる。

 史恵はそれから一時間近く、ロードマップを見たりガイドブッ

クを見たりして気に入ったところを探していた。高校時代に、宏

一の大学で鉄道研究会を手伝っていた頃に戻ったようで史恵も楽

しんでいた。『あの頃は、十何人分も予約してたっけ』そう思う

と懐かしさが胸の中に広がっていった。まだ、純粋に人を好きに

なれたあの頃を。

 「宏一さん、だいたいの所はOKです。一通りは見ました」

「そうか、そろそろ休憩しようかと思っていたんだ。じゃあ、ど

こかに寄るよ」

「いつでもどうぞ」

「喫茶店がいいの?それともファミレス?」

「宏一さん、たぶん、このあたりにファミレスなんてありません

よ」

「そうか。ごめん、そう言えばまだぜんぜん見てないや」

 宏一は街道沿いの喫茶店に車を止めると、史恵と中に入った。

早速、注文を済ませて史恵の検討結果を聞くことにする。史恵は、

宏一がオレンジジュースを頼むのを聞いてクスッと笑った。



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