ウォーター

第四百四十七部

 
「そんなもの無いよ。お昼だもの。でも、見てると分かるよ。どう?一緒に食べてみる?」
さとみはそれでもしばらく考えていたが、やっと小さな声で言った。
「はい」
「それじゃ、後でお弁当を買ってくるね。この部屋では女性の自己負担は無いことになってるんだけど、もし、どうしてもお金を払いたければ、きちんと貰うよ。自分で払いたい?」
「いえ・・・そんなことは・・・・・」
「それじゃぁ、牛丼で良い?定番だけど」
「はい」
「決まりだね」
宏一はそう言うと部屋を出て行った。さとみは思い出していた。『牛丼』は、友絵が居たときに、いつも友絵が何人分もの牛丼を重そうに運んでいく姿が目撃されていた。宏一と友絵の二人で食べる量では無かったので、きっと業者の人と一緒に食べているのだろうと噂していたが、不思議なのは、その伝票が全く回ってこないことだった。宏一が自腹で払っているのだろうと言っていたが、真偽はとうとう不明なままだった。そして今、さとみ自身がその場に立ち会うことになったのだ。
やがて12時近くになると、現場を回っていたはずの宏一が重そうに牛丼を抱えて部屋に入ってきた。応接セットに広げると5人分だった。ただ、牛丼の他にサラダや味噌汁に加えて唐揚げなどのサイドメニューまであったので量が多かったのだ。もちろんペットボトルのお茶まである。お茶は牛丼屋のメニューには無いから、きっとお茶だけはコンビニで買ってきたのだ。
「水野さん、お昼の準備は良い?さぁ、食べようよ」
さとみが時計を見ると、あと3分ほどあったが、考えてみればこの部屋から出ないのだから早く食べても分かるはずが無い。さとみはそれでも弁当を並べ直したりお茶を置いたりして時間を潰し、12時を過ぎてから食べ始めた。宏一はもちろんそれを見ていた。しっかりしていると言うより固いという方が正しいが、それがさとみの持ち味なのかも知れないと思った。
二人は、ほとんど無言で牛丼にパクついた。特に宏一は話しかけなかったし、さとみからも話さなかった。さとみは、この謎の牛丼ランチの意味が分からなかった。
しかし、12時を10分ほど回った頃、業者が顔を出した。そして宏一の買ってきた牛丼を見つけると、嬉しそうに部屋に入ってきた。
「三谷さん、悪いね。買ってきて貰っただけじゃ無く、豪華なオプションまで付けて貰って」
「さぁ、どうぞどうぞ、私達はお先にいただいてます。冷めないうちに食べてください」
「なんか久しぶりだなぁ。この牛丼、なんか美味しいんだよなぁ」
そう言うと部屋に入ってきた3人は直ぐに牛丼にパクついた。そして、宏一と仕事の話をしながら楽しそうに大盛りを平らげてサイドメニューも片付けていく。
「さっきも少し聞いたけど、最近は品川の方は落ち着いてきたんだ」
「そう、いつも車で走ってると見かけるファーストネットの作業車もぜんぜん見なくなったよ。ここでの仕事は始まった頃は品川を通ると必ず見かけたんだけどね」
「今は八重洲?」
「そうだね。おっきいのをいくつも立ててるからね。この界隈の配線業者は総出じゃ無いかな?ホテルラッシュが終わって息つく間もなくだね」
「ホテルでも部屋の配線て複雑なの?」
「三谷さん、ホテルの部屋はすごいんだよ。考えてもみなよ。部屋ごとにエアコンは独立制御だし、部屋のキーで部屋全体の電源を切ったりする場合はキーボックスに部屋全部のスイッチボックスを付けて配線を集めなきゃいけないんだよ。一度見て欲しいくらいだよ」
「そうか、知らなかったなぁ」
「だから、ここに来るのだって楽じゃないんだよ。三谷さんだから来てるけどさ」
「ありがとうございます。牛丼位じゃお礼にならないかも知れないけど」
「何言ってるの。自腹だろ?前の斉藤さんに聞いたよ、一緒に買い出しに行ったときにさ。お金のことより、その気持ちが嬉しいんだ。だから来てるんだよ」
「感謝感謝、さ、水野さんも一緒に、感謝」
宏一が言うので、さとみも慌てて一緒に頭を下げた。業者は満足そうに牛丼を食べ終わると、そのまま堂々とソファで仮眠を始めた。さとみは立ち上がってお茶の用意をしようとしたが、宏一に制された。
「水野さん、何もしなくて良いから、そのままにしてあげて」
「はい・・・・」
さとみはそのまま席に戻ると、ネットで時間を潰した。今までさとみはこの部屋でお昼を過ごしたことが無かったので気が付かなかったが、ここは宏一と業者の情報交換の場だったのだ。宏一はそれをさとみに教えたかったらしい。さとみは、ランチの目的が自分への個人的興味では無くて安心した。
すると、一時の十分前に自分で起きた業者は、棚に行って部品在庫を調べ始めた。そしてしばらくしてから宏一のところに来た。
「ざっくり言うと、CとFの棚の部品が全体的に不足してるよ。このままだと来週には工事を止めなきゃいけなくなる。どうするか考えといてよ」
「了解、直ぐに足しておくよ。たっぷりね」
「たっぷりにはしなくて良いよ。再来週以降は使わないものが多いから」
「OK、それじゃ、よく考えて足しておくよ」
「よろしくぅ〜」
業者はそう言うと、さとみに一言お礼を言って部屋を出て行った。さとみはやっと宏一が言っていた意味が分かった。もともと配線業者は、宏一から部品を貰って取り付け工事をしているのだが、工事を先読みして部品在庫の量が適切かどうか調べてくれたのだ。たぶん、それが昼食のお礼と言うことなのだろう。さとみは宏一と業者の信頼関係の上に成り立った関係を知り、もっと自分も役に立ちたいと思った。
それから少しして、宏一が部品の追加発注のリストを送ってきた。さとみはそれを部品問屋ごとに仕分けし直してから発注をメールで流すだけでは無く、きちんと電話で相手に伝えて確認を取り、納期を決めて日程に追加した。一つだけ問屋にも在庫の無いものがあったので、追加料金を少し払ってその分だけ宅配便で届けて貰う事にした。そして一息つくと、少しだけ宏一の仕事を理解できたと思った。
その日の夕方、宏一は時間通り7時に結衣の家を訪ねた。すると、制服姿の結衣が無言でドアを開けてくれた。結衣の制服姿はとても綺麗だ。洋恵は見慣れすぎているし由美は制服のデザインが違うからなんとも言えないが、結衣の制服姿は本当に可愛らしくて綺麗だと思う。結衣がドアを開けたと言うことは、家には結衣だけと言うことだ。
「結衣ちゃん、こんにちは、お母さんは?」
「まだ帰ってきません。もうすぐ・・・・後で顔を出すと思います」
結衣は固い表情で宏一を迎え入れると、そのまま自分の部屋に上がっていった。宏一は母親からの電話を思い出しながら、久しぶりの結衣の部屋に入っていった。
「結衣ちゃん、お母さんから電話を貰ったときは嬉しかったよ。てっきり嫌われたと思ってたから」
「そんなこと・・・・・・・嫌いになったわけじゃ無くて・・・・・・」
「分かってる。お母さんから聞いたよ。もう気にしてないから」
実は日曜日に結衣の母親から電話があり、また結衣のところに来て欲しいと言われたのだ。本人が宏一に会いたがっているという。宏一は、伊豆から東京まで結衣がぜんぜん話そうとしなかったので嫌われたと思ったことを伝えたのだが、それは本人が気持ちの整理ができずに戸惑っていたからで、決して嫌いになったわけでは無いと言う。そして、帰ってきた翌日から宏一に合いたいそぶりを見せたので、結衣に確認の上、宏一に連絡したのだと言った。
「良いんですか?また俺が結衣ちゃんを・・・・」
「優しくしてあげてください。結衣も楽しみにしてますから」
母親はそれだけ言って電話を切った。
宏一が結衣の後に続いて部屋に入ると、既に見慣れた部屋がそこにあった。入ってすぐ前にはベッドがあり、左手奥には勉強机がある。結衣は宏一が部屋に入ると、宏一にベッドを指さして言った。
「ここに座ってて。今、お茶を持ってくるから」
そう言って部屋を出て行った。
宏一は部屋の中を見回し、この前、このベッドで結衣を抱いた時には、まだ結衣はバージンで指さえ受け入れたことが無かったことを思い出した。あの時の結衣の怯えたような上気した顔はまだはっきりと脳裏に焼き付いている。
やがて結衣が紅茶を持って部屋に入ってきた。そして、宏一の分はベッドのヘッドボードに置き、自分の分は勉強机に置いて自分も椅子に座った。
「ありがとう」
「砂糖は入ってないから」
「うん、ありがと。結衣ちゃんも入れないの?」
「そう、砂糖を入れると香りが変わるから。どう?」
「そうだよね。砂糖の香りって意外に強いから、紅茶の香りに勝っちゃうことがあるからね。うん、美味しいよ。ありがとう」
結衣は明らかにほっとした表情になった。直前になって宏一にお茶を出さなくてはいけないことを思い出して何度も練習したことは言わなかった。そして、今度は結衣の方から話し始めた。
「伊豆の後ね、学校に行ったら、なんか雰囲気が違ってたの。明るいって言うか、広いって言うか、変わってた。それでね、友達にも言われたの。良いことあったの?って」
「結衣ちゃんはなんて言ったの?」
「ううん、詳しくは言わなかった」
「内緒って?」
「内緒って言えば、教えないって事でしょ?そんなの詮索して欲しいって言うようなものだから、言えない」
「それじゃ、なんて言ったの?」
「いつも通りだよって」
「それで、友達は信じたの?」
「そうみたい。ちょっと可愛そうな気もしたけど、まだ言えないから。でも、きっと何か気が付いてる」
結衣はスッと伸びた首筋を回して宏一に少し微笑んだ。結衣の端整な顔立ちとすました表情を見ていると、とても宏一に抱かれるために自分から呼び寄せたとは思えない。しかし、この中学三年生の少女はもうすぐ肌を全て宏一に晒して仰け反って身体の隅々まで宏一に愛され、喜びの声を上げるのだ。
「結衣ちゃん、聞いてもいい?」
宏一がそう言うと、結衣の表情が一気に深刻になった。しかし、これは言わなければいけないと思ったのだろう、キリッと眉を上げると静かに話し始めた。
「日曜日はごめんなさい。ちょっといろいろなことが一気に起こったから・・・それが帰るときになって全部思い出したから、何も考えられなくなっちゃって・・・・。でも、帰ってきたら宏一さんと一緒に居たのが嬉しくなって、それでまた会いたく・・・・なった・・・の・・・。だから・・・・」
口数の少ない結衣にしては、かなり長い話だった。
「お母さんにも相談したの?」
「うん、今はとっても仲が良いから・・・。賛成してくれた」
「それで、お母さんが俺に連絡してきたんだね」
「もうすぐ帰ってくるから、たぶん挨拶に来ると思う。だからそれまでは・・・・」
たぶん、母親が挨拶に来るまでは脱がさないで欲しいと言うことなのだと分かった。
「でも・・・・・」
結衣は宏一の手を取ると、自分の胸元にそっともっていき、腕に少し頬ずりをした。
「甘えても良い?」
結衣の言葉は、結衣にしては最大限の直接的な姓の要求だった。
「いいの?」
「うん、でも、ママの挨拶が終わるまでは、服のままでいさせて・・・・ママは知ってるけど、恥ずかしいから・・・・・」
「うん、わかったよ」
そう言うと宏一は指先で結衣の項を優しく愛撫し始めた。結衣は目を閉じてじっとしている。
「これでいい?」
宏一が聞くと、結衣はコクンと頷いた。宏一は、結衣の希望通り余り愛撫を濃厚にしなかった。軽い感じの愛撫を繰り返して結衣を安心させる。結衣も静かにその愛撫を受けていた。やがて宏一の手が結衣の制服の胸元へと入って行った。結衣はじっとして何も言わない。小さな膨らみの上を滑っていった宏一の指先が、制服の下に隠された結衣の下着がブラジャーでは無く、伊豆で見たブラキャミの布地なのを発見した。胸元を覗き込もうとした宏一の視線を感じた結衣は少し恥ずかしそうに少しだけ身体をかがめた。
「だめ、まだ見ないで」
結衣は宏一にまだ見せる気は無いようだ。宏一は結衣の耳元で囁いた。
「伊豆で着てた虹色の下着だね。分かっちゃったよ」
「布が特別だから、触ると直ぐに・・・・」
宏一が耳元で囁いたことで結衣はピクッと小さく動いてから小さな声でそう言って、そっと制服の上から手で押さえた。まだ制服の中を探検して欲しくは無いのだろう。
「いや?」
「まだ・・・・ごめんなさい・・・・」
結衣は耳元を宏一の唇に可愛がられながら少し上擦った声で答えた。しかし、結衣は宏一の愛撫を楽しんでいた。とても優しい愛撫なので、肌を触られているのに安心できる。結衣は宏一の指が肌の上を滑っていく感覚に、伊豆のホテルの部屋で裸になって宏一に抱きついて肌を擦り付けていたときの感覚を思い出して顔を赤くした。まだあの時の感覚にはなっていないが、もうすぐああなるのだと思うと恥ずかしくて嬉しい。
「それなら、こうしようか?」
宏一はそう言うと、結衣の脇から手を入れて制服の上から小さな膨らみを包み込むと、細くて長い項を唇で可愛がり始めた。
「ああん、そんな・・・いきなり・・・」
結衣はそれ以上嫌がらずに、素直に宏一に身体を任せた。征服の上からなら触られても大丈夫だと思ったのだ。もちろん、結衣にだって触って欲しい気持ちがある。
宏一の手は、結衣の胸の小さな膨らみを易しく確認しながらゆっくりと撫で回していた。洋恵どころか由美の膨らみよりもまだ小さく、ほぼ円錐形の膨らみで先端がツンと尖っている結衣の膨らみは、宏一にとって新鮮だった。
「・・・んん・・・・」
結衣が小さな吐息を吐いた。
「ちょっとだけ感じた?」
結衣は微かに頷いた。
「結衣ちゃんのおっぱいは敏感なんだね」
「そう?」
「うん、一般的には、小さいおっぱいの方が感じやすいって言われてるんだよ。結衣ちゃんのおっぱいも可愛らしいから、感じやすいのかな?」
結衣は『一般的って、どこの話?』と思いながらも、静かに頷いた。そして、自分の身体が少しずつ熱くなってくるのが嬉しかった。そして、『早くママが来ないかな?そうしたら、その後、宏一さんの手が・・・・』と思った。



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