ウォーター

第五百部

 
「ああぁぁ、すごいぃぃ、こんなになって、あああぁぁ、こんなに奥まで来て」
「このままもう少し、ね」
「ああん、いやぁ、もう我慢できない。動いて、動いてぇ」
「だめだよ。このまま」
結衣の中は再び締まり始めた。肉棒がゆっくりと締め付けられていく。
「ああぁぁ、まだなの?まだ時間があるの?」
「あと5分くらいかな?」
「5分なんて絶対我慢できない。もう1秒だって無理。ああん、ああぁ、はやくぅ」
結衣はとうとう我慢できずに自分から身体を前後に動かし始めた。しかし、宏一はそれを許さず、結衣の腰を押さえてしまう。
「いやぁ、させて。ちゃんとさせてぇ。このまま帰るのは嫌」
「ダメ、これ以上はダメだよ」
「いや、ああんっ、もっと、もっとおっ」
結衣は宏一が腰を押さえているのに更に腰を動かそうとした。
「これじゃ、こうしてあげる」
そう言うと宏一はゆっくりと肉棒を出し入れし始めた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
結衣は気が遠くなるような快感に、必死にソファの背もたれを掴んで快感に耐えた。しかし、頂に連れて行ってくれるような快感では無い。宏一は時間を見ながら欲しがる結衣を焦らし続けた。そして時間が来た。
「さぁ、本当に最後の最後だよ。ほうらぁっ」
宏一は一気にスパートを掛けた。途端に結衣が反応した。
「ああぁぁっ、急にしたらぁっ、ああぁっ、いくっ」
たちまち結衣は絶頂を極めた。宏一は一気に肉棒を抜き去る。結衣は肉棒を抜かれたまま身体を何度か震わせ、そのままソファに崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、もう、最後までこんなこと」
結衣は重い身体を引きずってソファに座るとパンツを穿いた。
「さぁ、行こう」
宏一が二人分の荷物を持って玄関に行くと、結衣もノロノロと付いていった。そして外に出てくるままでの数十メートルを歩いているとき、結衣がポツリと言った。
「今日はママは夕方から居ないの。だから宏一さん、うちに来て」
「え?どうしたの?」
「だってこのままじゃ・・・・いじわる」
「俺は良いけど・・・・・結衣ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃなくしたのは誰なの?宏一さんが言う?」
そんなことを話している間に車まわしに着いた二人は、待機していた車に乗って駅へと向かった。
「お腹空いたろう?何か食べていこうか?」
「ううん、お店とかまで歩いて行きたくない」
「それじゃ、駅弁を買って電車の中で食べようか」
「うん」
二人は伊豆高原の駅に着くと、結衣がベンチで休んでいる間に宏一が買い物を済ませ、それから結衣が奈緒子から受け取っていた特急券を持って特急に乗り込んだ。座席に座ると、宏一が駅弁を取り出した。
「昨日はお魚がたくさんだったから、お弁当は魚よりも肉が良いかと思って探したんだけど、こんなのしかなくて。これで良い?それとも、こっちの豪華海鮮弁当が良い?」
宏一がそう言って鶏の唐揚げ弁当を差し出した。
「唐揚げ」
結衣はそう言って唐揚げ弁当を食べ始めた。宏一は海鮮弁当を楽しみながらビールを飲んでいたが、ふと見ると結衣の箸が止まっている。横顔を見ると、結衣は食べながらも寝落ちしそうだ。一気に疲れが出たようだ。結局、結衣は全部食べる前に箸を置くと、宏一に寄りかかって寝てしまった。
やがて電車が熱海に着く前、結衣の携帯が鳴った。結衣は跳ね起きると携帯を持ってデッキに行った。戻ってきた結衣は少し不機嫌だった。
「ママが、夕方の仕事はキャンセルしたから夕食は何が良いの?だって。見え見えよ」
「どういうこと?」
「私がどんな反応するか確かめてるの。宏一さんと一緒かどうかも含めて。だから帰ったら事情聴取が始まるってこと」
「うんと・・・よくわかんない」
「ママが家に居なければ、私は宏一さんと東京に戻ってからどこかに出かけることだってできるでしょう?それでも、私はママが帰る前に私が家に帰れば良いんだから。でも、ママはわざと用事をキャンセルして、私が残念そうな反応をするかどうか見てるの。そんなのわかりきってるでしょ?だから絶対ママの思い通りになんて反応しないの。喜んで焼き肉をリクエストしといた」
「それじゃ・・・・」
「ごめんなさい。家は無理になっちゃった・・・・」
「うん、仕方ないね。奈緒子さんだって心配なんだよ」
「『今は三谷さんと一緒なの?駅に着いたのは何時?』とか『お昼は駅前で食べたの?』とか必死になって聞き出そうとして。そんなの本当のことなんて言うはず無いのに」
「奈緒子さんはああ見えて苦労人だから、結衣ちゃんの反応だって見透かしてるんじゃないかな?案外、その結衣ちゃんの反応で全部分かっちゃったかも知れないよ?」
「そうかしら?」
結衣は宏一の指摘が当たっているとは思わなかったが、奈緒子が心配してくれていることについてはありがたいと思った。なかなか素直にはなれないが、やはり結衣は奈緒子が好きなのだ。
結局、熱海で新幹線に乗り換えて東京に着くまでの間、結衣はずっと宏一の腕を抱きしめて寄りかかって寝ていた。宏一はあどけない寝顔を見ながら宿の部屋を出るまでの結衣の身体の隅々の様子や感じているときの反応、そして幼く可愛らしい秘唇と秘核の様子、肉壁の感触を思い出しながら結衣の手を握り締めていた。
東京に着いて電車を乗り換えたころから、次第に結衣は不機嫌に黙り込んだ。
「どうしたの?何か嫌なことでも思い出した?」
宏一が電車の中で聞くと、結衣はポツンと言った。
「もうすぐ旅行が終わる」
「それはそうだね。結衣ちゃんは家に帰って焼き肉食べるんだろう?」
「それはそうだけど・・・・・・」
「それとも、家に帰るのを少し遅らせてどこかに寄ってく?」
「ううん、そんなことしても直ぐに夜になって帰らなきゃいけないから」
「それはそうだね」
「あーあ、帰るの気が重いかも・・・・・」
「ねぇ、どうせ真っ直ぐ家に帰る気になったのなら、逆にできるだけ早く帰って奈緒子さんを驚かせたら?」
「・・・・早く帰る?・・・・真っ直ぐ帰るってこと?」
「もちろんそうだけど、タクシーで送ってくよ。それならだいぶ早く帰れるだろ?」
確かに、結衣の家へは一つ手前の駅で降りるとタクシーを捕まえやすいし、それなら電車の便も良いのだ。しかし、結衣は本当は宏一とどこかでもう少しだけ時間を過ごしたかったのだ。しかし、もちろん宏一に愛して貰う時間は無い。どうしても短くなってしまう。結衣はしばらく考えていたが、やがて不自然ではない程度に宏一に寄り添って言った。
「うん、そうする。どうせなら思いっきり早く帰ってびっくりさせる。ママの顔が楽しみ。ふふっ」
二人は降りた駅でタクシーに乗ると、結衣を家の近くで降ろした。走り去るタクシーを見ながら結衣は『こういう時大人なら、スマートに一瞬だけキスして何も言わずに別れるんだろうな』と思った。
宏一の方はそのまま部屋に戻ろうかと思ったが、帰っても食べるものがないので部屋の近くの商店街でタクシーを降りると、食事を済ませて寝酒を買って部屋に戻ると風呂に入って寝た。そのまま朝までぐっすり死んだように眠った。
翌日、宏一が出社するとさとみが先に来ていた。さとみはいつも始業時間の10分前に来る。それは前の友絵の時もそうで、どうやら女子社員の間の暗黙の了解事項のようだったから、宏一は少し驚いた。
「どうしたの?こんなに早い時間から」
「ちょっと確認したいことがあったから、いつもより早く来ました。早朝出勤の処理はしておきます」
「それは良いけど、何か問題でもあったの?」
「工事が始まる前に手配部品を確認しておきたくて。始まったら止められないから」
「それはありがとう。確認の上に確認するのはとても大切だものね」
「はい、それで、結局大丈夫でした。実は配線で使うカップラーを注文したかどうか覚えて無くて・・・・、でも先月発注して納品されてました。今日の工事には問題ないです」
「ありがとう。そろそろ引っ越し先での工事も始まるから、そうなったら行ったり来たりで忙しくなるけど、無理をしないようにね」
「はい、分かりました。今日はこの部屋にも線が来るんですよね?」
「そう、各部屋でのLANの取り出し口ができるはずだからね」
「サーバーとルーターはもう用意できてますから、線が来たら付けるだけですね」
さとみは部屋の横に積み上げられた箱を見ながら言った。
「いいや、ラックを組み立てないといけないし、組み立てたラックは固定しないといけないし、OA床に配線も通さなきゃいけないからサーバーとルーターの接続はまだしばらく掛かると思うよ。もっとも、この部屋の床配線は簡単だけどね」
「はい」
「水野さん、どうしたの?朝早く出てきて問題ないの?」
「はい、ちょっと眠かった以外はぜんぜん。名字に戻ったんですね」
そう言うさとみは、なんとなく、だが、雰囲気が少し柔らかくなった気がする。
「え、だって、今日だけって・・・・・・」
「本気にしてたなんて。真面目なんですね。ま、どっちでも良いですけど」
「そう言うのなら、さとみさん、て呼ばせて貰うよ」
「今更・・・・ま、どっちでも良いっていったんだから、どっちでも良いです」
「ありがと。それで・・・・」
「だからカップラーはあったんで問題ないです」
「それはそうなんだけど、カップラーに使うコネクターはどうなってる?確か専用のコネクターが必要だったよね」
「えっ、あっ、はい、そうです。直ぐに確認します。ちょっと待ってください」
「あぁ、お願いします」
実はコネクターは先々週に入ってきたのだ。宏一はそれを覚えていたがさとみは抜けていたらしい。
「あ、はいってます。B4の棚です」
「うん、ありがとう。これで本当に問題ないね」
「はい、でも三谷さん、よく覚えてましたね。専用のコネクターなんて」
「もちろん、俺はこれで飯を食べてるからね」
「はい・・・私も・・・・・済みません・・・」
「え?なんで謝るの?」
「なんとなく・・・・・・」
「でも、さとみさんもこういう所まで気が回るようになって嬉しいよ。だいぶ慣れてきたんだと思うよ」
「コネクターを忘れましたけど。新しい仕事だからまだなかなか慣れないですけど・・・」
「徐々に慣れてきてるんだよね。良いことだ。それで、金曜にも言ったけど、良かったら木曜か金曜に食事にでも行かない?」
「確かにそんな話もしたような・・・でも、いきなりですか」
「だって、鉄は熱いうちに打てって言うし・・・。せっかくちょっとだけどお酒も飲みに行ったから」
「私は鉄?それが熱いうち、ですか?」
「そうだね」
「そんなに簡単には・・・・でも、他の子も一緒で良ければ、食事くらいは良いですよ」
「ほう、それなら木曜と金曜とどっちが良いか、決まったら教えてよ。それと、何を食べたいのかも」
「はい、後で連絡します」
さとみは一対一でなくても宏一が快諾したことに少し驚いた。そして、少し気を回しすぎたのかも知れないと思った。
「ありがと。よし、気合いを入れて仕事するぞ」
そう言うと宏一はパソコンに表示されている今日の仕事分を頭に入れると、先ずはビル内の工事現場の方へと向かった。ビルの中での工事は3ヶ所で進んでいた。もともとは5ヶ所、6ヶ所で工事を進めていたのだが、昨今の景気で工事予算が削られたため工事ヶ所を減らしてゆっくり進めることになったのだ。宏一は順に現場を回り、ほこりだらけにならないように気をつけながら工事が順調に進んでいることを確認した。
先ほどもさとみと話をしたが、この建屋での工事はそろそろ佳境に入ってきており、面倒な配線工事の段階は終わりつつあった。後は宏一の受け持ちのサーバーの立ち上げへと入ってくるのだ。既に現在使っているシステムから全く新しいシステムへの移行準備はできているのだが、何分にも今までのシステムはあちこちのソフトを継ぎ接ぎで使っているので、新しい統合管理システムとの相性はやってみるまで分からない部分がある。しかし、『やってみないと分かりません』などと言ったら付くはずの予算が付かなくなるので表向きはあくまで『スムースに移行することが可能です』と言っている。だから宏一は席に戻ると移行準備の確認を始めた。
実は、既に一部のシステムは移行を始めている。会社向けにはまだ移行していないことになっているが、一部の確実に動くことが分かっているシステムを移行することでエラーメッセージから新しいシステムへの適合性を調べているのだ。
宏一は毎日新しいシステムから出力されるエラーメッセージを順に確認しながら、この程度のエラーなら次の段階に進んでも良さそうだと判断した。
そこで宏一は形式上の上司である総務部長の席に向かった。次の段階への意向を伝えるためだ。幸、総務部長は自席にいた。
「少しよろしいでしょうか。簡単にご報告とご相談があります」
「なんだね?手短にお願いするよ」
この上司は前任の総務部長が転勤した後に部下から昇格した人物で、真面目だが宏一を今一歩信頼しては居なかった。



トップ アイコン
トップ


ウォーター