ウォーター

第五百十一部

 
「受託加工って、確か料亭向けとかに料理を作って卸す部署だよね?」
「料理って言うか、業務用の茶碗蒸しとか八寸とかね。手間が掛かるけどメインじゃ無いもので配送できるもの」
「へぇ、料亭とかってそんなの使ってるんだ。業務用なんてあるんだ」
「そうよ。どこだってコストカットで大変だから。でも、安物じゃ評判を落とすから業務用って結構大変なのよ。お店ごとに食材も変えるし、レシピだって違うから。値段も高いし。でも最近は伸びてるのよ」
「そうなんだ。その内、業務用の料理だけで料亭が開けちゃうかも知れないね」
宏一は話に乗ってきたが、舞はもうそんなことはどうでも良かった。我慢できなくなくなってきたのだ。敢えてわざと話を区切る。
「でもねぇ、宏一さん、こんな話、ここでしなくても良いんじゃない?」
「ごめん、怒った?」
「ううん、そうじゃないけど」
「舞さんには教えて貰うことがいっぱいあるから、どうしてもそう言う方向に行っちゃって。ごめんなさい」
「私こそ、いつも宏一さんには教えて貰ってるのに」
舞は話の方向を二人だけの時間へと持って行きたいのだが、宏一はそうさせてくれない。
「そんなこと無いよ。でも舞さん、今日はもしかして食べるの、セーブしてた?」
「それほどは・・・・・でも少し・・・・かな?」
「だからお腹減らして現れたんだね。美味しいもの、有ったんでしょ?なんせ食品照射だから」
「まさか、商売ものなんて食べないもの。それに、予算が第一。一人5千円の料理だったんだから」
舞はそう答えながら、また話が二人のことからそれていくことを寂しがった。しかし、自分からベッドに誘うには雰囲気が違う。仕方なくもう少し話に付き合うことにした。
「舞さんは祝って貰う方だろ?よく知ってるね」
「それくらい知っておかないと。どれくらい気合いを入れて祝って貰ってるのかって言うのは大事だもの」
「そうか。それで、その5千円て言うのは、会社の気合いの入れ方としてはどうなの?」
「そこそこ、かな?ちゃんと一応はお祝いになってるって感じ。お祝いでも簡単なケースだと料理で3千円ちょっとなんていくらでもあるから。うちの会社は転勤が多いから毎回気合いなんて入れてられないし」
「それなら良かったね。舞さんのはちゃんとしたお祝いだったんだ。おめでとう」
「そう・・・ありがとう。そう、そんな風に考えたこと無かった。そうね。ちゃんとお祝いしてくれてたのね。気が付かなかった」
「よく分かんないけど、きっといろんな上司がいろいろ言ってくれたんだろう?」
「それはいつものことだから。特に気にしてなかった」
「舞さんらしいなぁ」
「私らしい?それってどう言うこと?」
「仕事ではポーカーフェイスって言うか、一生懸命なのに普通にやってるみたいに見えるって言うか・・・・・」
「それね・・・・・自然とそうなったの。だって、知ってるでしょ?前の彼」
「あぁ、同じ職場の上司だったね」
「そう、ああいう人と一緒にいると、自然にそうなるわ」
「そうだったんだ」
「だから、宏一さんに知り合えて本当に良かったと思ってる。これ、本心よ」
「うん、俺も舞さんと知り合えて良かった」
「今から考えると、本当に不思議。だって、システムの人とはなすことなんてほとんど無いもの。たいていはトラブルの内容をメールで送って、返ってきたメールの通りにやってみてお終い」
「そうだよね。でも、この前自分で舞さんにトラブル対応のメールを送ってたか見てみたんだけど、俺は送ってなかったよ。だから、あのアクセストラブルが初めてだったんだ」
「そうなの・・・・でも、トラブルのメールって相手が誰だか気にしたことなんて無いし。本当に不思議。別れて直ぐだったからかな、宏一さんと知り合ったなんて」
「かも知れないね」
宏一は、二人の話もそろそろ良い感じになってきたと思った。その時、舞が宏一の持ってきた紙袋を指さして言った。
「そう言えばあれ、何を買ってきたの?食べ物か何か?それなら食べないと」
「ううん、そうじゃないよ」
宏一はそう言うと、立ち上がって堤を手に取り、舞とベッドに座らせると自分も隣に座った。
「なあに?プレゼント?」
「プレゼントと言えばそうだけど、今度舞さんと会う時に使ってみようと思って買ってきたんだ」
「使ってって・・・・・」
舞は一瞬戸惑ったが、直ぐにピンときた。舞と宏一が二人で過ごす時に使ったものと言えば、舞が今日ここに来る時に持ってこようかどうしようか最後まで悩んだものだ。結局、思い切って持ってきたが、それはまだ宏一は知らない。それなのに宏一はまた買ってきたらしい。舞は一気に身体が熱くなった。
「まさか・・・・・・・」
「そうだよ、どうする?」
「そんなこと・・・・・・・だって・・・・・」
「舞さん、この前あげたやつ、今日は持ってきた?」
宏一が聞くと、舞はコクンと頷いた。年上なのに、そう言う仕草はとても可愛らしいと思う。
「それなら、今日はこっちを使おうよ」
そう言うと宏一は舞に紙の包みを渡した。
「私が・・・・・開けるの?」
「そうだよ。それとも、俺が開けようか?」
「ううん、だいじょうぶ・・・」
舞はドキドキしながら包みを開け始めた。紙の包みを破ると、中から箱が出てきたが、箱には商品の写真などはのっておらず、型番だけ書いてある。その代わり、窓が付いていて中味が少し見えていた。舞は『やっぱり』と思った。
「それじゃ、電池を入れてみよう」
宏一はそう言うと、舞から箱を受け取り、中から取り出したものに電池を入れた。舞はそれを見て更にドキドキしてきた。これはローターだ。ただ、舞が持ってきたものに比べると明らかに一回り大きい。それに、ローターとコードで繋がって居る電池ボックス兼スイッチとは別に、もう一つ別体のコントローラーのようなものがある。宏一はそれにも電池を入れた。
「これ、なんだかわかる?」
宏一が聞いたが、舞はぜんぜん分からなかった。
「これはね・・・・・・・・・・」
宏一はローターのスイッチを入れて振動するのを確認すると、別体のコントローラーのスイッチを押した。すると、ローターが止まった。もう一度コントローラーのスイッチを入れるとローターが動き出した。
「ね?ワイヤレススイッチなんだ」
「ワイヤレス?どうして?」
舞はワイヤレスにする意味が分からなかった。二人でベッドの上で使うなら、ワイヤレスにする意味など無いはずだ。それに、ワイヤレスと言いながら、ローターにはコードがついていて、それがスイッチに繋がって居る。これだけなら舞が持ってきたものと同じだ。違いは、その他にもう一つコントローラーがあるのだ。
「それはこれからのお楽しみ、だよ」
そう言うと宏一は舞を引き寄せて後ろから抱きしめ、耳元で囁いた。
「さっき、待ち合わせの店に行く前に買ってきたんだ。きっと二人で過ごせると思ったから。良いだろ?」
舞は宏一の息が項に掛かるだけでくすぐったくなった。もともと耳は余り感じなかったのだが、新しいローターを見せられてからだが熱くなったからだ。しかし、『良いだろ?』と言われても素直に頷くことなどできるはずが無い。
「何をするつもりなの?」
「特に代わったこと何てしないよ。大丈夫。任せておいて。そうっとするから」
「それなら・・・・・」
「先ず時間を確認させて。明日は何時にここを出るの?」
「会議が始まるのは10時だから、ここからなら9時半で十分。宏一さんの方が先に出ることになると思うわ」
「それなら時間はたっぷりあるね」
宏一の息が項に掛かるとくすぐったさが強くなる。舞は宏一に後ろから抱きしめられているので身体を動かせない。更に宏一は舞の項に舌を這わせてきた。ねっとりとした夜の愛撫だ。
「んんっ・・・んん・・んんん・・」
「もう感じてくれてるんだね。嬉しいよ」
「恥ずかしいこと言わないで」
「どうして?舞さんが感じてくれるのがとっても嬉しいのに」
「お願い、電気を消して」
「うん」
宏一はベッドサイドのスイッチを押して小さな灯りだけにすると、舞を膝の上に横抱きにして上から被さるようにキスをしに行った。
「久しぶりだね。一緒に過ごせて嬉しいよ」
「私も。宏一さんと過ごせるのを楽しみにがんばってきたんだもの」
「それじゃ、今日はいっぱい愛してあげる」
「うん」
キスをしながら二人は甘い会話を楽しんだが、まだ舞はかなり冷静だ。
「どうしたの?まだ心配なの?」
「すこし・・・・・でも、きっとだいじょうぶ」
「そうだよ。さっきだって首筋がくすぐったそうだったよ」
「そう、久しぶりだから・・・・・・・・」
「向こうで、ローター使ってたの?」
「そんなこと言えない」
「それじゃ、舞さんの身体の反応できっとわかるから」
「そうなの?」
舞は一人で使っていたことがバレてしまうかも知れないと心配した。同時に、ローターを使わないと感じないかも知れないと心配していた。鹿児島の部屋では、ローターを使えば感じるし、その後なら指でも十分感じたのだが、最初はやはりローターを使わないと余り感じなかったからだ。指だけで始めると、少しは気持ちいいし、濡れても来るが、それ以上にはならないのだ。
キスが終わると、宏一の手は膝の上の舞の身体を優しく撫で始めた。舞は目をつぶっていたが、首を支えている宏一の左手が少しくすぐったいのが嬉しかった。
宏一は部屋着の上から舞の身体を撫でていたが、まだ乳首はほとんど感じていないようだった。そこで宏一の右手は部屋着の裾から舞の秘部へと侵入していった。舞は素直に足を開いて指を受け入れた。
「最初はここを少し可愛がるね」
そう言うと宏一の指先は舞の秘核の直ぐ下の平らな部分をそっと触り始めた。
「ん・・・ん・・・・・・」
まだ舞の反応は鈍い。しかし、宏一はじっくりと時間をかけて感じさせるつもりで、強く触ることはしなかった。
舞は宏一の愛撫が思ったよりも気持ちいいことに安心した。ローターほどでは無いが、自分で触るよりずっと気持ちいいし、これなら少しすれば十分に濡れそうだと思った。宏一の指先はほんの少ししか動いていないが、敏感な部分を的確に刺激しているし、時折秘核や秘口を可愛がるので感覚がいつも新鮮だ。安心した舞の足は少しずつ開いていく。
宏一は舞がリラックスしている様子に安心した。
「舞さん、いきなり触ってごめんね」
「ううん、良いの。この方が嬉しい」
「恥ずかしい?」
「キスして」
舞は恥ずかしさを消すためにキスをねだった。宏一がねっとりと舌を絡めていると、舞の腰が僅かに上下に動き始めるのが分かった。
「まだだよ。後で」
「感じてきたの。指を入れてみて」
「だあめ、もうすこししてからだよ」
「いじわる」
「そうだよ。舞さんが感じるためなら、もっと意地悪しちゃうからね」
「意地悪はダメ」
「でも、もう少ししてからだよ」
「どうして?」
「それはね・・・・・」
そう言うと宏一は、指を秘口の中にひと関節ほど入れた。
「あん」
「ほら、まだそんなに感じてないだろ?舞さんの身体の準備ができるのは、舞さん自身が思ってるよりずっと時間が掛かるんだ」
「でも、私の身体なんだから・・・・・」
「もう少しなら待てるでしょ?」
「う・・・うん・・・・」
舞は仕方なく頷いた。
「良かった。今日も舞さんは素敵だよ」
そう言うと宏一は想いを込めてねっとりと舌を絡めていった。宏一が想いを込めて舌を絡めていると、舞は身体がどんどん熱くなっていくのがよく分かった。宏一の視線があるのが分かっていても、舞は少しは腰を動かしたくて仕方ない。舞はローター無しでもこんなに感じることが嬉しかった。そして、ローター無しで感じさせて欲しいと言う気持ちと、この上ローターを使ったらどんなに感じるのだろうという気持ちの両方が湧き上がってきた。
舞の気持ちを表すかのように、舞の腰は僅かではあるが上下だけでは無く、うねうねと左右の動きも加えて宏一の指を最大限楽しもうとしている。
「ねぇ、まだ?」
舞の切れ長の瞳は光っており、かなりその気になってきたのが分かった。
「それじゃぁね、舞さん、買ってきたものを使ってみようか?」
「えっ」
舞の表情には戸惑いと喜びの両方が表れていた。しかし、もし想像以上に感じてしまったらどうしようという想いもある。ローターで感じているところに宏一に攻められたら乱れてしまわないか心配なのだ。しかし宏一は言った。
「俺は何もしないからね」
「感じるだけってこと?」
舞は予想外の言葉に思わず聞き返した。





トップ アイコン
トップ


ウォーター