ウォーター

第六十九部

 

旅行の帰り客が多いからか、行きよりも話し声も少なく、大人し

い感じがした。宏一はこういう静かな浴場は嫌いではない。静か

に身体を沈め、ゆっくりと身体の芯まで温めて旅行の最中に起こ

った出来事を振り返ってみる。ずっと会いたかった史恵に会えて、

心ゆくまで抱くことができたので一応目的は達したことになる。

特に、バージンを奪っただけだった最初の旅行に比べて、史恵を

新たに絶頂の世界に誘うことができたのは素晴らしい思い出にな

った。また、有紀やめぐみに会えて心の奥を開いて貰えたのは大

切な思い出として心の中にしまっておこうと思った。

将来、彼女のうちのどちらかが宏一の前に現れることもあるかも

知れないが、その時はどんなことが起こるのか、楽しいような不

安なような、不思議な気持だった。ゆっくりと体を温めると旅の

疲れが取れていくようだ。今は急いで部屋に帰る理由もないので

、ゆっくりと風呂を楽しんだ。

風呂から上がった宏一は、一度部屋に戻った。もしかしたら洋恵

が起きているかも知れないと思ったからだ。しかし、洋恵はベッ

ドに入って大人しく寝ているようで、宏一が部屋に入ってきても

何の反応も示さない。

宏一は寝るにはまだ早かったので、バーにでも行って軽く一杯飲

んでくるかと思って再び部屋を後にした。宏一が部屋に風呂の道

具を置いて部屋を出ると洋恵がゆっくりとベッドから起きあがっ

た。

一眠りしたあと、目を覚ましていたのだが、宏一の気配に気が付

いて慌てて寝たふりをしたのだ。宏一と一緒にいたいような、そっ

としておいて欲しいような、複雑な気持だった。あんな事があっ

た以上、素直に宏一に抱かれる気にはならなかった。

洋恵が帰る前日、おじさん夫婦は洋恵に持たせるお土産を買うた

めにしばらく家を空け、洋恵と慎司という高校生のいとこの二人

だけになった。

二人はそれまでとても仲が良く、夜遅くまで洋恵は慎司の部屋で

過ごしていた。そして二人きりになった昼間、ふとしたきっかけ

で二人が見つめ合った瞬間、慎司は洋恵を抱きしめた。洋恵も嫌

がらなかったので慎司はそのまま洋恵にキスをした。そして、慎

司は洋恵を抱き上げるとベッドに降ろし、その上に覆い被さった。

洋恵は慎司のことが好きだったし、旅行先で気分が開放的になっ

ていたと言うこともあって慎司のしたいようにさせた。

しかし、慎司の愛撫は荒く乱暴で、洋恵が感じていようといまい

と関係ないという感じだった。だから、次第に服を脱がされて行

くに従って、洋恵の心は少しずつ冷めていった。それでも洋恵は

慎司の前に全てをさらした。不器用な愛撫から、こちらの高校生

の慎司がセックスになれていないのは当然だと思ったのだ。そし

て、不器用ながらも相手に自分を選んでくれたことが嬉しかった。

慎司は洋恵を全裸にすると、慌てて服を脱ぎ、洋恵の乳房に吸い

付いた。

「アン、慎ちゃん、そんなにしないで、痛いよう」

洋恵は慎司に言ったが、愛撫は優しくならなかった。

「もっとそっとして、ね、お願い」

「どげんしてほしかと?」

「慎ちゃんの好きにしていいよ。でも、そっとね」

洋恵は慎司を嫌ってはいないと言うつもりで慎司の肉棒に手を伸

ばし、軽くしごいてやった。その仕草に慎司は驚いた。洋恵はま

だ中学生なのでバージンだと思っていたし、自分がセックスでリー

ドを取るつもりだったのに、洋恵の方が落ち着いていて肉棒の扱

いも慣れていたからだ。

「洋恵ちゃん、もう経験しとっとか?」

「一回だけ」

洋恵はそう言ったが、慎司には一回だけしか経験していないよう

には見えなかった。洋恵の手は優しく肉棒をしごいており、それ

だけでとても気持ちよかった。とても一回だけの経験しかない女

の子にできることではないと思った。慎司自身はこの時点でまだ

童貞だったので、洋恵の方が先に経験していると言うことが少し

ショックだった。

「こっちも触りたい?いいよ」

洋恵は軽く足を開くと慎司の手を茂みの方に持っていった。慎司

がその中に手を入れると洋恵の身体がピクンと動き、

「アアンッ、慎ちゃん」

と洋恵が甘い声を出して軽く仰け反った。しかし、慎司は自分主

導でセックスを進めたかった。女の子に指図されたくなかった。

だから、濡れ始めた秘心からすぐに手を抜くと、挿入の体勢に入

った。

「アアン、もう入れるの?急がなくてもぅ」

洋恵には全く悪気はなかったのだが、その言葉は慎司のカンに障っ

た。無理やり肉棒を入れようとあちこちをつつくが、巧く入らな

くて焦ってしまう。洋恵はしばらく慎司のしたいようにさせてい

たが、やがて、

「もう少し上、ウウン、もっと、アン、今度は下。そう、その辺

り、近いの、そっと入れて」

と慎司が挿入できるように協力した。洋恵の声を聞く度に慎司は

焦っていった。これほど挿入するのが難しいとは思っていなかっ

たのだ。

やっと洋恵の中に入った時、慎司は焦りまくっており、いきなり

力任せに出没を開始した。洋恵は挿入された時、もっと圧倒的な

ものが入ってくると思っていたのに、あまり押し広げられる感覚

がないので『あ、小さいんだ』と思った。それでもやっと一つに

なれたことが嬉しく、

「ああーっ、慎ちゃん、凄い、凄いよう、もっと、もっと頂戴、

もっと入れて」

洋恵が喜んで体を反らせる。しかし、慎司の肉棒は既に洋恵の中

にすっぽり入っていたので、これ以上は入れられなかった。大人

の宏一の肉棒と、高校一年生の肉棒では大きさが倍くらい違う。

「洋恵ちゃん、気持よかよ。よか」

「アン、慎ちゃん、慎ちゃんのオチンチン、可愛いよ。気持ちい

いよ」

洋恵には全くそんなつもりはなかったのだが、慎司には洋恵の

『可愛い』の意味が、大きさが足りないと言っているのだと思っ

た。しかし、慎司は自分のが小さいとは思っていなかったので、

経験の違いだと思いこんだ。

洋恵はこれ以上は無理なことを悟ると、慎司の肉棒が抜けないよ

うに、足を開いて腰を少し持ち上げ、できるだけ深く迎え入れる

体勢をとりながら感じ始めた。洋恵の肉壁はしっかりと肉棒を締

め付けているので、慎司には最高だった。

しかし、童貞の高校生には洋恵の肉壁は手強すぎた。しばらく動

くうちに、たちまち慎司の肉棒は限界になってしまった。

もう少したっぷりと濡らしてから挿入すれば肉棒への締め付けも

少しスムーズになっていたはずだが、濡らし方が少なかったので

余計肉棒は強くしごかれてしまったのだ。慎司は慌てて我慢しよ

うとしたが、肉壁の締め付けが気持ちよく、目の前にいる全裸の

洋恵の抱き心地が最高だったので、我慢するタイミングを逃して

しまった。

「ああっ、でるとっ」

そう言うと慎司は肉棒を抜き去り、洋恵の腹の上に勢い良く白濁

した液体を放出した。裕恵は腹の上に出された経験がなかったの

でちょっと驚いたが、ティッシュを取ってふき取り、まだしずく

が垂れている慎司の肉棒を優しく口で含んでやった。

「うふっ、可愛いな。中に出しても良かったのに。安全日だから」

そう言うと丁寧に心を込めてしゃぶり始める。慎司は洋恵が全く

恥ずかしがったり嫌がったりせずに慣れた様子で肉棒にしゃぶり

付いたので驚いた。

「洋恵ちゃん、一回だけしかしとらんとか」

「うん、ごめんね。でも、本当だよ」

洋恵はそう言ったが、慎司にはとても信じられなかった。心の中

で洋恵に対するイメージが崩れていくのが分かった。本当はバー

ジンを失って涙を流している洋恵を慰めるはずだった。しかし、

今は年上の自分を洋恵がリードしている。それでも、全裸の少女

にしゃぶられているのだ。高校生の肉棒は全く固さを失わずに、

すぐに臨戦態勢に戻った。

「ね、もいっかい、ね?いいでしょ?」

洋恵が甘えた声で十分に大きくなった肉棒をしごきながら慎司に

おねだりをした時、慎司はとうとう切れてしまった。

「ほなこつ、東京のおなごばすすんどるとよ。やり放題ズボズボ

やっとるとね。中学生のくせにベテランばい。ガバガバになっと

るばい」

そう言うと慌てて洋恵から離れ、服を着て出ていってしまった。

全裸のまま部屋に残された洋恵はしばらく唖然としていたが、や

がて今起こったことが理解できるようになると涙が頬を伝わり始

めた。

慎司の心ない一言が鋭く刺さっていた。泣きながら慎司に脱ぎ散

らかされた服を着て、慎司の部屋を出る。それからはほとんど慎

司と口を利くことはなかった。慎司はしばらくして洋恵に悪いこ

とを言ってしまったと思ったのだが、とうとう最後まで謝るチャ

ンスを持てなかった。

洋恵はそんな出来事が起こって傷ついた心を宏一の腕の中で甘え

て癒したかった。しかし、それは同時に自分が更にセックスをす

ることを意味する。『中学生のくせに』『ガバガバ』と言う言葉が

胸に刺さっていて、簡単に宏一の腕には飛び込めなかった。

それでも宏一に服を着たまましばらく抱かれていて、そのしこり

がやっとほぐれてきたような気がした。やはり宏一の腕の中は安

心できる。その腕の中だったら全てを許して受け入れても良いと

思えるのだ。それは女のカンだった。洋恵はその気持を確かめる

ように、着替えを取り出すとシャワーを浴びるためベッドを降り

た。

宏一はロビーに出ると、ふと思い出してデッキに出てみた。幸い

風と同じ方向に航行していると見えて、デッキの上は意外に弱い

風しか吹いていない。そのままデッキを歩いて階段を上がってみ

る。すると、上段のデッキの手すりに寄りかかって遠くを眺めて

いる人たちの中に目当ての人影を見つけた。そっと近寄り、ショ

ートスリーブでロングのワンピースを着たその人の隣に並ぶ。

「こんばんわ」

「あ、こんばんわ、三谷さん」

「また会えたね。良かった」

「ほーんと。ちょっと不思議」

「恵美さんの九州は楽しかった?コロキュウムに出るって言って

たっけ?」

「楽しかったのかな?どうでしょうね?三谷さんは?」

「楽しかったよ。懐かしい人にも会えたし、知らない人とも友達

になれたし」

「それって可愛らしい彼女のこと?」

いきなり恵美にパンチを食らって宏一はギクッとした。

「それはどうかな?でも、女の子の知り合いはできました。ちゃ

んと白状しておきます」

「それじゃ、一緒にこの船に乗っているもう一人の可愛い彼女は?」

「え?彼女?」

「見ましたよー。一緒に食堂で夕食食べてたのを」

「あれは家庭教師の女の子で、往復だけ一緒だけど、あとは別行

動なんだ。だから船に乗る前に親戚のおじさんから預かっただけ」

「どうなのかな?怪しいな?」

「信じてくれないの?」

「どうしようかな?それじゃ、港で別れた彼女は?」

「恵美さん、どうしてそれを・・・」

「私、バスで来たから港にだいぶ早く着いたの。だから、三谷さ

んが彼女と車で着くのをしっかり見ましたよ」

「知り合った子に送ってもらっただけですよ」

「本当?でも、しっかりキスしてたでしょ?彼女泣いてたじゃな

いの」

宏一はおかしいと思った。史恵は泣いて等いなかったし、キスを

したのも車の中だから、近くにいないとよく見えないはずだ。

「恵美さん、引っかけようったってそうはいかないよ。今度はそっ

ちが白状して。何を見たの?」

「ばれました?私は二人が車に乗って駐車場の方に走っていくの

を見ただけ。きっと涙の別れだったと思ったんだけどな?」

そう言って笑う恵美はやはり綺麗だった。カールして肩まで伸び

た髪が風になびき、整った顔立ちをいっそう引き立てている。

「今度はそっちが白状する番。今回の旅行はどうだったの?」

「別れて来ちゃった。振られたのかな?」

いきなり恵美がとんでもないことを言い出したので宏一の方が驚

いた。

「別府で?」

「危ないなぁ」

「え?何が?」

「三谷さん。危険だなぁ」

宏一は恵美が何を言っているのか分からなかった。一週間前に日

向行きの船の中で会ってから、全然別行動だったので恵美のこと

など何も分からない。

「三谷さんて、どうも危険な臭いがするのよねー」

「俺が?どうして?」

宏一はおどけて服をくんくん嗅いでみせる。

「あっちにもこっちにも女性がいるし、それで私にまた声をかけ

てくるでしょう?」

「でも、中学生の子はさっさと寝ちゃったし、港で別れた子はも

ういないよ」

「ふうん、中学生だったんだ、あの子」

語るに落ちてしまった宏一は慌てた。

「あ・・・、でも、恵美さんが港で見た子にも駅で偶然知り合っ

たから港まで送ってもらっただけだよ。今頃は鹿児島の部屋に帰

り着いた頃だし」

「そうなの。日向の近くの子じゃなかったんだ。鹿児島で一人暮

らししてるんだ」

「あ・・・参ったなぁ、もう許してよ。それに一人暮らししてる

なんて言ってないよ」

「鹿児島の部屋っていったでしょ。普通なら鹿児島の家って言う

のに」

「あぁあ、参ったな」

「危ないなぁ。ほんとに駅で偶然知り合って送ってもらっただけ?

そんな短い時間でそこまで話すのかなぁ?」

恵美は興味津々という感じでニコニコしている。宏一を困らせる

のが楽しくて仕方ないようだ。

「恵美さん、そんなにいじめないでよ。最初から話すと長くなる

よ。それより、恵美さんのこと、話して」

「私は三谷さんのことの方を話したいんだけど、これ以上いじめ

ても仕方ないかな」

「よかった」

「ふふ、やっぱり話すとボロが出そうなんだ。危ないなぁ」

「恵美さん」

「ごめんなさい。私のことですよね。私、彼を九州まで追いかけ

てきたの。コロキュウムに参加するのが分かってたから」

「恵美さんが?」

「私って彼を追いかけるようには見えない?」

「そんなこと無いけど、追いかけられるやつは羨ましいなって」

「ありがとう。ちょっと嬉しい。それでね、今回は修復のチャン

スだと思ってたんだけど」

「修復できなかったの?ケンカしたの?」

「どっちも外れ。声をかけられなかった」

「どうして?」

「分からない?クイズにしましょうか?」

「会えなかったのかな?どう?」

「三谷さんはダメね。女の子ならすぐに分かるのに」

「う〜ん、わかんないや」

「別の女の人と一緒に来てたの。その人」

「それじゃ、彼は恵美さんが来てたのを知らなかったんだ」

「気が付いたかも知れない。たぶん、そんな気がするの。でも、

話しかけてはこなかった。いくらでもチャンスはあったのに」

「女の人と一緒だったから恵美さんに話しかけられなかったんじゃ

ないの?」

「ううん、会場で二人は結構別行動を取ってたから、その気にな

ればいくらでも話すチャンスはあったの」

「でも、もし、恵美さんと話をしているところをその人に見られ

たらまずいことになるんじゃないの?」

「う〜ん、そうか。三谷さん、良いこと言ってくれるのね」

「やっとヒット?」

「でも外れ。いいの。もともと無理な気はしてたから。この船に

乗る時から別れるのが分かってたのかも・・・」

そう言う恵美はサバサバした感じで別府でのことを話してくれた。

そこでは大学の同級生や教授に再会したことや、友人と地獄巡り

に行ったことなど、気楽に話して聞かせた。特に宏一も別府にい

たことを話すと、地獄巡りの話で会話が弾んだ。二人はデッキの

上でかなり長い間話し込んだので、ふと気が付くと周りの人はま

ばらになっており、ほとんどの人は部屋に引き上げたあとだった。

「三谷さん、ちょっと寒いわ。近くに来て」

恵美はそう言うと宏一を自分の横に引き寄せた。

「バーに行こうか?まだ開いてるかも知れないよ」

「ううん、もう少しだけ。ちょっとこうしていて。よいしょ」

恵美は隣にいた宏一の片方の手を取ると、自分の肩を回して反対

側に持ってきて、宏一の両手を背中から前に回して自分のおへそ

の辺りで交差させた。これで宏一は恵美を後ろから抱きかかえる

感じになる。

「恵美さん、良いの?」

「ちょっと寒いだけ。もっとくっついて良いのよ」

恵美はそう言いながら遠くの海を見ている。宏一は言われた通り、

恵美に後ろからピッタリとくっついた。

「温かいな。安心できるわ」

そう言うと、恵美は何も話さなくなった。宏一も恵美を抱いたま

ま無言で海を見ている。二人はまるで恋人同士のように、無言で

海を見続けた。高速で走る船の下では海が凄い勢いで通り過ぎて

いくが、水平線の辺りでは全く動いていないみたいだ。

暗い空には雲がいくつも浮かび、月が雲に出たり入ったりするた

びに海全体が明るくなったり暗くなったりを繰り返す。

宏一は恵美を抱いている手が気になってきた。もう少しだけ手を

上に滑らせば恵美の膨らみに触ることができる。現にほんの少し

だけ恵美の膨らみは腕に当たっていた。小柄な恵美だが、膨らみ

はどうやら大きそうだし、腰も良くくびれているのが分かる。

しかし、いくら抱きしめて欲しいと誘われたからと行って、この

状況で触るのは無理だと思った。

しかし、恵美は突然宏一の手を取ると、宏一が望んでいた場所に

手を引き上げた。絶妙なカーブを描く布地がすっぽりと手の中に

入る。宏一の手は戸惑っていたが、笑みは優しい手つきで宏一の

手の上から自分の乳房を包んだ。

「いいの?」

「何にも言わないで。このまま」

恵美はそれだけ言うと、また無言で海を見ている。宏一は突然手

に入った宝物を確かめるように、ゆっくり、そっと膨らみのカー

ブを確かめながら手をゆっくり動かした。

「暖かい」

突然恵美が言った。一瞬宏一は手を止めたが、恵美はそれ以上何

も言わずに海を見ている。

恵美の膨らみは想像以上に豊かで、ワンピースの生地の上から見

ただけでは分からないくらいしっかりと突き出していた。

そっと全体を撫で上げるように愛撫すると、かすかに恵美の身体

が反応したような気がした。そして、その先端をゆっくり指先で

なぞっていくと、かすかにしこりが見つかったような気がした。

その辺りを丁寧に指でゆっくりなぞっていると、次第にしこりが

はっきりしてくる。

『恵美さんが感じてるんだ』そう思うと宏一の中でカッと熱いも

のがたぎった。このまま揉みしだいてみたい、と言う激情が起こ

り、肉棒が硬くなる。しかし、恵美は自分の尻に当たっている宏

一の身体の変化に気がついた様子もなく、じっと風に吹かれて海

を見続けている。

心なしか風が強くなってきたようだ。どうしようか、かなり迷っ

たが、結局今の恵美は人の温もりが欲しいだけなのだと思い直し、

それ以上の愛撫はかろうじてこらえた。一度は硬くしこっていた

部分も、しばらく愛撫をやめているとゆっくりと元に戻っていく。

しかし、恵美は全く嫌がる様子もなく宏一に身体を預けている。

宏一はもう一回試してみることにした。もしかしたら恵美の部屋

に入れるかも知れないと思うと試さずにはいられなかった。今度

はゆっくりと少しだけ力を込めて周りから撫で回し始めた。する

と、たちまち恵美の膨らみが堅くなるのが分かった。

そのまま次第に先端に向かって愛撫を狭くしていく。恵美の体が

期待に固くなるのが分かる。そして、ついに先端に指が届いた瞬

間、恵美はクッ、と身体を少し動かした。宏一は更にうなじに唇

を這わせようとする。しかし、恵美の髪がじゃまをして上手くう

なじにたどり着けない。すると突然、

「これ以上ダメ。やっぱり危ないなぁ」

恵美がぽつりという。

「ご、ごめん。だってあんまり刺激的だから」

「だから手を動かしたの?触って楽しい?」

「ごめん」

やがて、恵美は宏一の手を離すとくるっと宏一の方を向いた。そ

の顔は少しだけ笑顔になっている。ちょっといたずらっ子という

感じだ。

「どうして我慢できないの?私たちまだ知り合ったばかりでお互

いを知らないし、キスだってしてないのに」

そう言って宏一を軽く睨む。

「ご、ごめん、あんまり恵美さんが綺麗だったから・・」

「そんなこと言ってごまかそうとしても・・・」

何とも言えない雰囲気になってしまい、宏一はどう言って良いか

分からなくなって黙り込んでしまう。すると、

「三谷さん、ありがとう。温かかった。東京に戻ったら連絡して

も良いでしょ?」

そう言って宏一の首に手を回してくる。

「うん、良いよ。待ってるか・・・」

全部話し終わらないうちに、恵美は伸ばした手で宏一を引き寄せ、

その小さな唇が宏一に押しつけられた。しかし、それも抱きしめ

る間も与えずに一瞬ですぐに離れてしまう。

「本当に会いたかったのよ」

それだけ言うと、恵美はデッキの階段の方に向かって歩き始めた。

宏一が後を付いて船内に戻る。デッキから戻った船内は人影が少

なくなったとは言え、多くの人が行き交っていて街の中のようだ。

「しばらくは忙しいけど、一週間位したら連絡しますね」

そう言うと、恵美は宏一の方に顔を寄せてきた。また一瞬キスす

るのかと思って宏一が顔を寄せると、恵美は唇ではなく、宏一の

耳元で囁いた。

「三谷さん、別府は誰と回ったの?」

その言葉に宏一は一瞬固まってしまったが、どうにか、

「どうしてそんなこと分かるの?」

と言うと、

「本当に正直な人ね。やっぱり危ないなぁ、やっぱり連絡するの、

よそうかなぁ?危ないなぁ」

とくすくす笑いながら、

「それじゃ、東京で会いましょう。お休みなさい」

と言って二等船室の方に帰っていった。


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