ウォーター

第七十九部

 

「いや、ここはイヤ、待って、お願い・・・あうぅ、そんなにし

たら・・・は、だめぇ」

宏一の指は巧みにブラウスのボタンを外し、その中に隠されてい

る友絵の膨らみを探り始めた。そして、ブラの中にまで差し込ま

れた手は難なく可愛らしい膨らみを包んでしまう。掌の中で膨ら

みの先端で尖っている乳首が心地よく弾んだ。

「はうぅぅっ・・・待って、お願い、今だけはダメ・・・はう、

はうぅっ、お願いだから」

ほんの今まで宏一の目の前にいた有能で明るい友絵はどこかに行っ

てしまい、今宏一の手によって悶えてさせられているのは女の性

に翻弄される一人の普通の女の子だった。

友絵はいつ大きな声を上げてしまうか気が気ではなかった。『も

し、誰かにちょっとでも聞かれたら・・』そう思うととても感

じられる雰囲気ではなかった。

「待って、宏一さん、お願い、ね、ちょっとだけ、ね、待って」

そう言うと、何とか宏一の手を引き抜き、机の上にべったりと俯

せになって息を整えようとしている。幸い5時以降に応接室を使

おうという社員などいないので、廊下には足音一つ聞こえなかっ

た。

「今日、空いてますか?」

「え?今日?」

宏一は友絵に聞かれて慌てて答えた。

「いいよ。今日は予定もないし」

「私の部屋に来ませんか?」

「いいの?」

「はい」

「分かった。おじゃまするよ」

「それじゃぁ、早く片づけましょう」

そう言うと、友絵は再びファイルの整理を始めた。真剣にスクリー

ンを見つめているのはいつも会社で見る友絵の姿だが、胸元のボ

タンがはずれており、マウスを使いながらも右手で時折ボタンを

掛けようとする仕草がとても可愛らしい。

宏一も今日の残りの仕事をさっさと片づけることにした。友絵と

過ごせるのなら、何も会社に無理して張り付いていることはない。

二人はそれから1時間ほど、ほとんど会話もせずに全力で仕事を

片づけた。

おかげで宏一は臨時ではあるが、各サーバーを全て動かすことが

できるようになり、友絵の使っているパソコンもオンライン化す

ることができた。丁度エクセルファイルを作り終えた友絵がファ

イルをサーバーにアップしたところで二人の仕事は終わりになり

そうだ。

「ありがとう、新藤さん」

宏一がそう言うと、

「まあっ、はい、良かったですね、三谷さん」

と友絵がいきなり他人行儀な挨拶に驚いてちょっとむくれたみた

いだ。友絵はブラジャーの中に手を入れてさんざん好きにしてお

いて『新藤さん』も無いもんだと思った。

「それじゃ、お疲れさま、夕食はどこで食べようか?」

「あ、そうですね。とにかく出ましょう」

友絵はそう言うと、ファイルを片づけてから女子社員用のロッカー

ルームに向かった。宏一は近くのマックで友絵を待つ。友絵はす

ぐに現れた。宏一が買っておいたコーヒーを飲みながら、

「宏一さん、さっきも言いましたけど、良かったら家に来ません

か?」

と誘いを掛けてくる。

「え?本当にいいの?一人暮らしだっけ?」

「そうですよ。以前に送ってくれたの、覚えてます?」

「そうか、三茶の方だったね」

「ええ、今は妹が来てるんですけど、気にしなくていいですから」

「ええっ?妹さん?」

「まだ高校生なんですけど、時々遊びに来るんです。近いから」

ここまで聞いて宏一はがっかりしてしまった。妹が一緒なら食事

の後に宏一の望むことなど起きるわけがない。友絵はその宏一の

顔を見てクスッと笑うと、

「さあ、まず買い物に行きましょう」

とにっこり笑って席を立った。二人は電車を乗り換えて友絵の最

寄り駅までまず行ってしまう。そして、駅前の小さなデパートに

入ると一階の食料品売り場ですき焼きの材料を買い込んだ。と言っ

ても、材料をセットにしたものの他は、ちょっと肉を買い足した

だけだが。

「ビールは途中の酒屋さんで買いますから」

と友絵が言うので会計を済ませてしまうと友絵は、

「宏一さん、上にも行きましょう?」

と言って、紳士物の肌着売り場に向かう。

「エーと、宏一さんはこのくらいのサイズかな?」

と言いながら白のTシャツやYシャツ、それにパンツや靴下まで選んでいく。

「友絵さん、それってもしかして、泊まっていっていいってこと?」

「そうよ」

「だって妹さんが一緒に住んでるんでしょ?」

「大丈夫よ。そんな子供じゃないんだから」

「でも・・・」

「気にしない気にしない。早く行きましょう」

友絵はそう言いながらレジの方に向かった。

「良く下着なんか買えるね。いい度胸してるよ」

「家は両親が仕事だから、中学になってからの買い物は私が多かったの。

家族の分はたいてい買っていたから」

「そうなんだ、だから男物でも迷わず買えるんだね」

「あんまり言わないで下さいよ。これでも結構恥ずかしくて顔が熱いんだから」

友絵は小さな声で抗議すると、またポーカーフェイスでレジに並んだ。

酒屋で冷えたビールを買ってから、友絵の家までの道筋で友絵は嬉しそうに、

「ありがとうございました。全部出して貰っちゃって」

と丁寧にお礼を言う。

「いいよ、妹さんは帰ってきてるかな?えーと、何て言う名前だっけ?」

「令子です」

「帰ってるといいね」

「さっき電話した時はもうすぐ帰るって言ってたから、たぶん帰ってると思う

んですけど」

「俺なんかが行っても良いの?」

「大丈夫。向こうも興味津々だったみたい」

そう言って友絵は笑った。気楽にさっそうとアパートの階段を上がっていく

友絵に対し、宏一は恐る恐るという感じで後に続いた。

「あ、妹は帰ってますよ。上がって下さい。令子、帰ったわ」

「おじゃましまぁす」

「お帰りなさい」

「お待たせ、すぐに支度するね」

「お姉ちゃん、凄いね。自分からそんなこと言うなんて」

「しっ!」

「もう遅いわよ」

「なんなの?友絵さん、普段はあんまり自炊しないの?」

「そんなこと無いですよ・・・・」

「お姉ちゃん、正直に言った方が良いわよ」

宏一は買い出しの荷物を令子に渡しながら、

「始めまして、三谷宏一です」

と言うと、

「始めまして、令子です」

と丁寧に挨拶してくれた。令子は高校2年生とのことで、友絵とは3つ違い

になる。既にテーブルにはカセットコンロと鍋が出してあり、コップや箸も出

ていた。

「ははぁん、どうやら水仕事が得意なのはお姉さんじゃなくて妹さんの方み

たいだね」

と言うと、

「ばれたか、そうなんです。上手ですよ」

と友絵も開き直って答えた。

「豪華ね、すき焼きなんてどれだけぶりかなぁ」

「令子ちゃんは育ち盛りなんだから、すき焼きなんか好物だと思ったんだけ

ど?」

「大好きだけど、家はバラバラに食事をすることが多いから滅多に食べたこ

となんて無いな」

「そうなんです。テーブルに用意しておいたものを、それぞれが都合のいい

時に来て食べるだけ。令子とは一緒によく食べたけど」

「私が何か一品くらい作るから、それが目当てだもんね」

「だって令子のは美味しいんだもん」

「それじゃ令子ちゃん、いっぱい栄養補給していってね」

「ごちそうさまですって、あれ?これはお姉ちゃんに対して言った方が良い

のかな?ね?」

「え?どうして?」

「いきなり彼を連れてくるなんて、お父さんが聞いたら何て言うかな?」

「ダメよ、もちろん秘密」

「分かってるわよ。言わないから」

「いつも泊めてあげてるんだから、それくらい協力しなさい」

「食事当番は?」

「それはいつもじゃないでしょ。別よ」

どうやら仲のいい姉妹のようだが、それなりにはっきりと役割も別れてお

り、絆の強い姉妹のようだった。

「お姉ちゃん、火が通るまでの間に着替えてきたら?」

「そうね、宏一さん、ちょっと待ってて下さいね」

そう言うと友絵は寝室に入った。

「三谷さん?」

「宏一でいいよ」

「はい、宏一さん。お姉ちゃんと付き合ってどれくらいなんですか?」

令子は目を輝かせて聞いてきた。ちゃんと手は熱した鍋に油を敷いてか

らすき焼きの材料を上手に並べ、見る見るうちにすき焼きが出来上がっ

ていく。

「どれくらいって言われても・・・つい最近なんだ。良く会うようになったの

は」

「ははーん、そうだ。確かにそうだわよね」

どうやら令子の方は、友絵のプライベートについてもある程度知っている

ようだ。

「ね、お姉ちゃんのどこがいいの?」

「どこって、だって美人だし」

「美人?そうかなぁ?まぁ好みもあるからなぁ」

「それに仕事ができて明るいし」

「確かに仕事はできると思うけど、そんなの魅力なの?」

「もちろんだよ。会社の友絵さんはとっても格好いいんだから」

「家で寝転がってるのしか知らないからなぁ、私は」

そう言いながら令子はてきぱきと肉や野菜を足して砂糖、醤油と入れてい

く。

「それじゃ、今度はこっちから質問」

「いいわよ」

「良く来るの?ここに」

「今は夏休みだから」

「友絵さんのこと、良く知ってるんだね」

「姉妹だもの」

「それじゃ、さっきのハハーン、て何のこと?」

「えっ、それは・・・・・・宏一さん、知らないんですか?」

「ううん、そんなこと無いよ。友絵さんはちゃんと言ってくれたから。しばらく

の間ピンチヒッターでって」

「えー、こんないい人なのにピンチヒッターなんてもったいないなぁ」

「それは嬉しいな」

「お姉ちゃんが男の人を連れてくるなんて言うから、どんな人かと思って期

待して待ってたの。初めてなんだから、部屋に連れてくるのなんて」

「あーいい臭い。で何が初めてなの?」

友絵はTシャツにミニスカートというラフな格好で戻ってきた。

「何でもないの。ちょっと宏一さんにいろいろ教えて貰ってたの」

「まぁ、もう宏一さんなんて」

「あ、いきなり嫉妬だ?みっともないよ」

「ごめんなさい。いつもはいい子なんですけど」

「フォローになってないわよ」

「いいんだ。俺がそう呼んでくれって頼んだんだから」

「ほら、こういうのをフォローって言うのよ」

「はいはい。そろそろ食べられるんじゃない?」

「いただきまーす」

令子は自分で作ったすき焼きに真っ先に箸を付けた。宏一たちも楽しそう

に箸を付ける。それからの3人の食事はとても楽しいものだった。令子は

大喜びで肉を食べまくった。もちろん肉以外のものも食べたので、令子が

食べた分と宏一や友絵が食べた分の合計が同じくらいだった。

令子は友絵よりも少し背が低くて腰は更に細いのに、どこにこんなに入る

のだろうと思うくらいたくさん食べた。宏一はビールを飲んでいたのであま

りたくさん食べなかったし、友絵もそうだった。だから、令子が食べている

のを二人で見ているようなものだった。

「あーあ、美味しかったぁ」

食べ終わると令子がそう言い、後片付けを始めた。二人も少しだけ手伝っ

た。そしてテーブルの上を片づけてしまうと、ちょっと気まずい雰囲気にな

る。

「あ、デザート何か買ってきた?」

「あ、忘れた」

「私何か買ってくるね」

令子はスッと立ち上がる。慌てて友絵がお金を渡すと、

「ちょっと出てきますから」

と宏一に向かって何か言いたそうにして出ていった。令子が出ていくとスッ

と友絵が寄ってきて、宏一の肩により掛かる。

「ビールが回ってきたの?」

「そうかなぁ、でも、とっても気持ちいいの」

そのまま友絵はあぐらをかいて座っている宏一の膝の上に倒れかかってく

る。それを左手で支えて上を向かせ、右手で軽く膨らみを愛撫しながら唇を

合わせた。友絵の足がクッと伸びて床の上を擦る。

「あん、なんか敏感になってるみたい」

それだけ言うと、再び友絵は宏一にキスをねだる。宏一がTシャツの中に手

を入れようとすると、さすがに

「まだ待って、お願い、後で・・・ね?」

と手を押さえた。それでも二人はねっとりとしたキスをしばらく楽しんだ。

友絵のアパートからはコンビニはすぐそこにある。あまり時間がないのは二

人とも分かっていた。案の定、やがて軽い足音がすると、コンコン、とノック

する音がした。

「入っても良い?」

「どうしたの?」

友絵が玄関に向かって声を上げる。

「よかった」

戸を開けて入ってきた令子はバサバサと袋の中身を机の上に出しながら、

「だって、決定的瞬間に入っちゃったらどうしようかと思って」

と言った。

「何を言ってるの。令子!」

友絵は少し口調を強くしたが、どちらかというと狼狽に近い感じがした。令

子の方は全然気にしていないようで、

「お姉ちゃん、そう言うのを言う時は、まず自分を点検してから言った方が

良いわよ。口紅がずれてるんだから」

と涼しい声で言った。

「えっ」

慌てて友絵は慌てて化粧を直そうと立ち上がろうとした。それを見て、宏一

は友絵が令子の策にはまったことを悟った。すき焼きを食べた後なのだ。

口紅はもう残っていない。

「ほらね?」

令子がしてやったりと宏一に向かってそう言ったので、友絵も自分が引っ

かけられたことに気が付いた。

「あ、やられた」

「ほんとにお姉ちゃんは単純なんだから。これで良く社会人やってられる

わね」

「令子ちゃんの方がしっかりしてるみたいだね」

「宏一さん、こんなお姉ちゃんだけど、とっても一途でいい人なの。よろし

くお願いしますね」

「あーあ、よろしくお願いされちゃった」

「友絵さんのいいところはちゃんと知ってるよ」

令子は買ってきたデザートをテーブルに出し、

「これ、レアチーズケーキとムースの合いの子みたいなものなんだけど、

結構美味しいの」

と言って宏一に勧め、紅茶を入れながら友絵のことをいろいろ話してくれ

た。その間友絵は受け答えをするだけで、ほとんど話をせずにデザート

を食べていたので、なんかあくまで令子主導という感じで3人の楽しい時間

が過ぎていった。

「そろそろ9時半を回るわよ、令子。支度しなさい」

友絵が言うと、

「ええ?私、帰るの?」

「はい、新幹線とタクシー代」

と友絵は一万円を渡す。

「これから三島まで帰れって言うの?」

「新横浜から10時過ぎの新幹線に乗れば十分間に合うわよ」

「いいよ、俺、帰るから」

「いいんです、宏一さん、ね、令子?」

「はい・・・分かりました」

令子は驚いただけではなく、本当は帰りたくなさそうだったが、

「宏一さん、今日はごちそうさまでした」

と丁寧に礼を言うと、渋々と言った感じで奥の部屋に入り、手早く荷物をま

とめて部屋を出ていった。

「悪い事しちゃったなぁ」

「いいんです。こうでもしないと帰らないから」

「帰らせたかったの?」

「令子、実家にいると遊べないんでこっちに来てるんです。でも、それじゃい

つまで経っても帰らないから」

きっと実家の商売が忙しいのだろう、家の手伝いばかりでは確かに遊びた

い盛りの女の子には辛いことだ。友絵はすぐに実家に電話をして、令子が

家を出たことや到着時間、さらにタクシー代も持っていることを連絡した。

電話が終わると、友絵は宏一の側にすり寄ってきて、

「それじゃ、邪魔者は帰ったんで・・・」

そう言いながら宏一に身体を預けてくる。宏一はそれを優しく受け止めてゆっ

くりと自分の膝の上に横抱きにすると、ゆっくりと唇を合わせた。

「・・・ん・・・・はぁ・・・っ・・・・んぷっ・・」

友絵は積極的に応じてくる。どうやらアルコールが入った上に、自分の部屋

という気楽さが友絵を大胆にさせたようだ。自分から宏一の首に手を回して

何度も舌を積極的に絡めてくる。


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