ウォーター

第八十八部

 

やがて宏一の部屋に入ると二人はどちらとも無くお互いを求め、しっかりと抱き合った。宏一の唇が明子を捉え、ゆっくりと舌を送り込む。明子の口の中に差し込まれた舌は、明子を求めて大胆に絡みついてきた。それを明子の小さな舌が必死に受け止め、何度も複雑に絡み合う。

その間に宏一の手は明子の身体をまさぐり、スーツのジャケットに包まれたブラウスのボタンを外していった。明子は身体の中がカッと熱くなり、宏一の腕の中に身体を任せたい衝動に駆られながらも、何とか宏一から離れ、

「待って、直ぐにシャワーを浴びるから。ね?直ぐだから」

「待ちきれないよ」

「直ぐよ。後5分だけ待って。だいぶ汗をかいたし・・・・ね?」

そう言うと、宏一の返事も待たずに宏一の手を解くとバスルームに飛び込んだ。直ぐにシャワーの音が聞こえ始めると、宏一は服を脱いで素っ裸になり、台所でタオルを濡らして丁寧に体を拭いた。宏一自身、部屋での仕事だけではなく、急ぎの外回りがあったので結構汗をかいていたので思ったよりも汗くさかった。そこで、流しで簡単に髪まで洗うとさっぱりした。

明子がバスルームから出てきたのは十分ほどしてからで、宏一の姿を見ると、

「どうしたの?」

と驚いた。

「替わりに入る時間がもったいなかったから、流しで体を拭いて髪も洗ったんだ。さっぱりしたよ」

「そうなんだ」

明子は驚きながらも、自分が宏一のシャワーを待たなくて良い事に嬉しくなったようで、バスタオル一枚の姿で宏一に寄り添ってくる。

「どうする?ベッドに入る?それともまだしたい事がある?」

優しく小柄な明子の身体を抱きしめながら宏一が耳元で囁く。

「お腹が空いているのはそっちじゃない?私の買ってきた袋を取って」

宏一がテーブルの上にあったコンビニの袋を片手で持ち上げると、

「それじゃまず、ベッドに連れてって」

と宏一の胸の中でクスクス笑いながら明子が囁いた。明子はベッドで宏一と一緒に買ってきたものを食べるつもりのようだ。しかし、

「それじゃ、これを持って」

と宏一は明子にコンビニ袋を持たせると、一気に明子を抱き上げた。

「ひゃあ、あん」

明子は驚いたが、直ぐに笑顔になると宏一に抱かれたままベッドに連れて行かれ、優しく降ろされた時にコンビニ袋をヘッドボードの棚に置いた。

宏一は電気を消すと、自分のバスタオルを解き、そして明子のバスタオルもゆっくりと外した。その間、明子はじっと目をつぶって宏一に任せていた。宏一に抱き上げられた瞬間に、明子の意識からコンビニの食べ物は消えていた。

夜の薄明かりの中で明子の小柄な身体が浮き上がる。ゆっくりとキスをすると、明子は積極的に応じてきた。しかし、宏一は明子の手が首に回されるとそっとそれを降ろしてしまい、明子には何もさせなかった。そして何度も唇から首筋を丁寧に愛撫し続ける。

「ああん、宏一さん、宏一さん・・・ああん、首は・・・ねえ・・・ああっ」

明子は首筋からの快感が鈍く秘核まで届くのでゆっくりと足を擦り合わせながら先を待った。しかし宏一はなかなか先に進もうとせず、ねっとりと耳をねぶったして明子を更に焦らした。

そしてやっと宏一の唇が明子の胸元に下がってきた時、明子は思わず大きく仰け反って小さく喜びの声を上げた。ちょうど胸を突き上げる格好になったので、明子の三角の乳房が宏一に征服されるのを待つかのように差し出される。

それを宏一はゆっくりと両手で揉み回し、先端の小さな芽を焦れったい位にゆっくりと味わい、明子の悶える姿を楽しんだ。明子は宏一の腕の中にいるのが嬉しく、そして宏一の興味が自分に向いているのを確認できて満足だった。既に秘唇の奥は宏一を迎え入れる準備を始めており、焦れったさからゆっくりと足を擦り合わせているだけで、潤いが染み出してくるのが分かる。

「ああーーん、はうぅっ、あん、宏一さん、ううーっ、あうぅっ」

明子は宏一が見下ろしている事に気が付いていたが、何よりも宏一が優しく愛してくれた事が嬉しく、宏一の視線を感じて更に快感が増していた。

「今日はいっぱい感じてごらん。ゆっくり、そっと、いっぱいしてあげるから」

「はあーっ、宏一さん、宏一さん」

明子は宏一の手で悶えながら、宏一の片手を茂みの方に導いた。

「それはちゃんとおねだりしてごらん」

「宏一さん、早く、優しく可愛がって」

「なにを?」

「クリトリス。中もして」

「こうかな?」

「あぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ」

宏一の親指が秘核の下の敏感な部分から上へと大きめの秘核を撫で上げ、人差し指と中指がたっぷりと潤った肉壁に包まれると、明子は一際大きく仰け反って喜びの声を上げた。しかし、一度差し込まれた指は奥に入ったままで、親指も秘核に触れたまま動かされなかった。

「ああんっ、お願いっ、これはイヤッ、早く動かして、お願い」

明子の肉壁がゆっくりと宏一の指の周りを這い回り、深い底から沸き上がるような快感を明子自身に与え始める。明子は腰が動かないように我慢するので精一杯だった。

「明子さんが自分で動いてごらん」

「そんなあっ」

明子は宏一が何を要求しているのか分かった。その考えを裏付けるかのように、宏一は明子の足を大きく開き、更に膝を曲げて恥ずかしい格好を取らせる。仰向けになって膝を引き寄せて足を開いたので、明子の秘部は宏一の目の前に剥き出しになっていた。

「さあ、動いてごらん」

明子は宏一の指で感じさせられるのは嬉しかったが、じっと宏一が秘部を見下ろしているので夢中になりたくてもなれない。しかし、宏一は指で少しだけ肉壁を掻き上げ、明子を挑発した。途端に快感が溢れ出す。

「そんな、ああん、宏一さん、我慢できない。はうぅっ、ああん、良すぎるの。ダメ、見ないで、腰が勝手に・・・、ああっ、ああっ、ああっ、いやぁ、ああっ、だめぇっ、止まらないっ」

明子は宏一の見ている目の前で小さく腰を何度も突き上げて快感を海をさまよった。宏一は明子の円錐形の乳房の上に顔を伏せ、小さく薄い色の先端をそっとねぶり始めた。

「ああんっ、宏一さん、ああぁぁぁーーーっ、はあっ、ダメえっ、夢中になっちゃうっ、あん、あん、アンッ、もっとぉっ」

たちまち明子の中からは大量の潤いが溢れ出し、宏一の指がビショビショになる。

「宏一さん、早く来て、はあぁんっ、ねえっ、早くぅ」

「ちゃんとおねだりしてごらん」

「宏一さん・・・・入れて、オチンチンを私の中に・・早くぅ」

明子は潤んだ目で宏一を見上げ、恥ずかしそうにおねだりした。宏一は、少し早いかなとも思ったが、久しぶりに明子を抱くので早く明子を味わいたい気持ちの方が強かった。明子を四つん這いにすると、後ろから明子の足を広げて肉棒をあてがい、先端だけそっと明子に差し込む。

「ああっ、来たっ、来てくれたあっ、ああんっ、あうぅっ、くうっ、もっとっ」

明子は自ら腰を動かして肉棒を更に深く飲み込もうとする。明子はこの姿勢で愛されると自分の制御が利かなくなるので本当は正面から挿入して欲しかったが、久しぶりの宏一の肉棒はその明子の気持ちなど吹き飛ばすほど明子を燃え上がらせた。

「ああっ、ああうぅっ、ああんっ、あん、あん、ああん、あぁぁーーーっ」

明子は腰を動かして肉棒をちょうど良い位置に迎え入れると、身体を仰け反らせて喜びを表しながら更に深く肉棒を飲み込もうと腰を押しつけてきた。

「ああんっ、宏一さん、もう、我慢できない、ああんっ、おっきいの、嬉しいっ」

宏一は伸び上がった小柄な明子の身体の前に手を回し、三角に尖った乳房を両手の中に納めて優しく揉みほぐす。

「ああぁぁぁっ、はうぅーっ、ああんっ、それをされたらぁ、ああーーっ」

明子は更に悶えながらも、宏一が明子の忌まわしい記憶の残る愛し方ではなく、宏一らしい愛し方で感じさせてくれることに安心して更に声を上げた。

しかし、宏一はそれだけでは明子を満足させなかった。細い腰を掴んでゆっくりと出没していた腰の動きを止め、今度は指で背中をツーッと撫で上げ始める。

「あああぁぁぁーーっ、だめぇーーっ」

途端に明子の身体が反応し、肉壁が肉棒をきゅっと締め付ける。

「明子さん、これで感じてごらん」

「ああんっ、それをされたらぁっ、ああっ、あうぅっ、はうっ、我慢できないっ」

明子は堪らずに反応して腰を振り始める。自分ではどうにもならないくらい身体が反応してしまうこの愛され方は、以前に上司にさんざん仕込まれたものだった。

「ああんっ、だめぇっ、宏一さん、さっきみたいにして、お願いようっ、ああんっ、これはイヤあぁっ」

「ダメだよ。明子さんがこれを喜んでくれないと、安心して愛せないから。ほうら、お尻が可愛らしく動いてもっともっとっていってるよ」

宏一自身は全く動かず、明子の腰がじわじわと肉棒を飲み込んでいく様をじっと見ている。

「はあっ、だめぇっ、これだけはぁっ、宏一さん、普通にしてぇ、お願いよう、ああん、身体が動いて、ああぁぁぁ、止まらないぃぃーっ」

明子は自分の身体が暴走するこの愛し方だけは嫌だった。背中からの感覚が肉棒の快感を何倍にも増幅し、自分が腰を振り立てているのが分かっていながらも肉棒をむさぼってしまう。どうしても身体が肉棒を深く納めたがるのだ。自分が求めているのは安らぎなのに、これをされると肉欲が全てを抑えてひたすら快感を求めてしまう。以前の上司との交わりで、徹底的に焦らされて仕込まれた身体は、明子に快感と同時に悲しい記憶を思い起こさせる。

「ほうら、もっと感じてごらん。いっぱい感じて良いんだよ」

「いやあ、いやあぁぁ、ああん、嫌なのに、ああぁぁっ、良すぎるぅっ」

明子の肉壁は徐々に肉棒をゆっくりと掴むように締め付け、ヒクヒクッと動く軽い痙攣と共に更に快感を増幅させ始めた。それは明子がいく前兆だった。快感で身体がだるくなり、上手く動けなくなると、明子は霞のかかり始めた意識の中で、最後の言葉を出してしまいそうな自分を必死に抑えていた。あの言葉だけは言いたくなかった。しかし、宏一は明子がこの愛され方で行くとどうなるのか見てみたかった。

「腰が動かなくなってきたのかな?がんばって動いてごらん。ほら」

宏一は肉棒を明子の中でピクンと動かし、更に明子を挑発すると、一気にびくんと反応した明子の身体は一気に最後の頂きへと走り始めた。必死に言葉を飲み込んでいた明子はそれでも我慢しようとした。宏一にだけは聞かせたくない言葉だった。しかし・・・・、

「ああぁぁ、もう我慢できない。早くぅっ、ずんずん突いてぇっ、幸せにしてぇーっ」

とうとう明子は以前に教え込まれた通りにおねだりしてしまった。宏一が明子の腰を掴んで一気に腰を使い始めると、一気に我慢していた快感が身体の中に吹き上がる。

「はぁぁーーーっ、いっちゃう、いくぅーーーっ」

明子は喜びの声を上げると、四つん這いで大きく仰け反った姿勢で絶頂した。きゅっと閉まった入り口の両側が何度もぴくっぴくっと力強く痙攣し、その度に明子の口から声が絞り出される。宏一はそのまま更に出没を続ければ明子の中に果てる予感があったが、次は優しく正面からしようと思ってそのままの姿勢で明子の肉壁を感じながら耐えていた。それは宏一が初めて見る、明子の壮絶な絶頂だった。

「・・・あうぅぅーっ、あっ・・ううっ・・・うっ・・・くうっ・・・あん・・」

明子は腰を高く上げて肉棒を納めたままシーツに顔を埋め、そのまましばらく宏一の肉棒を感じながら、余韻の中をさまようように甘い声を出していた。しかし、やがてそれも収まるとゆっくりと泣き始めた。宏一にだけは見られたくない姿を見られてしまった。宏一に愛されることで忘れかけていた悲しい思い出が、まだ身体の中にしっかりと残っていることを思い知らされたのだ。それは何よりも明子の心を傷つけた。

それからは宏一が優しく明子を抱きしめても、丁寧に愛撫を繰り返しても、明子は泣き続けたままだった。宏一は自分がとんでもないことをしたことに気が付いた。明子のことをもっと知りたいと思ってやったことだったが、明子の心が離れていくような気がして何度もキスを繰り返してみたが、明子はもう反応しなかった。宏一は人形のような明子を抱きしめながら愛を囁き続けたが、既に明子の心は閉ざされていた。


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