ウォーター

第八十九部

 

翌朝、宏一が目を覚ますと、横に明子はいなかった。慌てて部屋の中を見渡したが、明子の靴も、荷物も、いつもは必ず置いていくメモも見あたらなかった。ただ、明子が買ってきたコンビニ袋に入ったビールと弁当だけが宏一を睨み付けていた。宏一は明子を抱いてから初めて、明子が二度と返ってこないような気がしてその場に立ち尽くした。今さら後悔してもしきれない、明子が一番嫌がることをした自分を責め続けていた。

幸いにもその日は仕事が忙しく、仕事が始まると余計なことを考える時間など無かった。宏一達が使っている第三応接には、朝からひっきりなしに業者が入れ替わり立ち替わり押しかけ、その賑わいに営業の連中がうらやましがった位だった。この日、友絵は一人でパソコンの前に陣取り、業者が納めるべき部品の収納位置を指示し、業者が必要としている部品の棚の位置を教え、宏一が工事を監督していた。だから友絵は宏一の直ぐ側にいたが、2m以内に近づくことはなく、昼食の時も休憩の時もそれは変わらなかった。今が一番忙しい時なのだ。それは二人ともよく分かっていた。それでもほんの少し、1分にも満たない時間、友絵に自由な時間ができると、友絵はじっと宏一を見つめ続け、たまに宏一が振り向いた時に微笑みを返すと友絵もちょっとだけにっこりと笑った。それで友絵には充分だったし、それ以上の時間を二人に望むのは不可能だった。

そして宏一が由美と過ごす時間を気にし始めた4時過ぎに問題が起こった。配線業者からブレードサーバーがゲートウェイと繋がらないと言うクレームで現場を見に行った宏一はぞっとした。明らかにブレードサーバーのサイズが宏一の指定したサイズと異なっており、ゲートウェイと繋がらないどころかラックにも入りそうにない。『これは時間がかかるぞ』と直感した宏一は、慌てて部品番号と仕様書を付き合わせる作業に入った。宏一の書いた仕様書そのものか、業者の手配間違いか、さらにどうして友絵のチェックをすり抜けたのか、いくら考えても分からない。とにかく正しい部品の手配を済ませて工事の段取りを調整する。工事のやり直しが入ってしまった工事業者の事を考えると、このままでは由美の待つ部屋に行くのは難しいかも知れなかった。それでも宏一はパソコンを2台同時に使って仕様書をチェックし、手配書を読み直す。夕方5時を回ってしばらくした時、宏一と友絵はほとんど同時に問題の箇所を見つけた。

「あ、これだ。あったよ」

「見つけました。たぶんこれです」

「え?そっちも見つけたの?」

「はい。たぶん、エクスチェンジサーバー仕様書の2の6に書いてある指定機種の欄の型番が納入仕様書の型番と違っているのが原因だと・・」

「そうか、それで分かったぞ。俺が見つけたのは機種選定理由書のネットワークサーバーの部分でエクスチェンジサーバーを指定している部分なんだけど、線を引いて訂正してあるんだ。別の型に。それがラックに入らないやつなんだ」

「違う大きさの機種に変更したんですか?」

「ははーん、思い出してきたぞ。そうだ、これは俺のミスだな。価格交渉をした時に、向こうに薦められて値段が同じでネットワーク容量の大きい機種が買えたんで、それに土壇場になって変更したんだ。サイズを確認しておかなかったのは俺のミスだ。これじゃ容量が大きくても変更する意味がない。小さいやつに戻そう」

宏一は慌てて電話を掛け、納入されたサーバーがラックに入らないのでオリジナルの仕様通りのブレードサーバーを入れてくれるように依頼した。しかし、今は在庫が切れていて来週にならないと入らないという。宏一はメーカーに直接依頼することにして電話を掛け直した」

「・・・はい。急ぐものですから、商品だけは直接こちらに送って頂きたいんです。伝票はマイルストーンさんを通して頂いて結構ですから、商品だけこちらに送って下さい。・・・・はい。もちろん了解は得ています。この電話番号もマイルストーンさんに教えて頂いたんですから・・・はい。宜しくお願いします」

宏一は電話を切ると、慌てて工事予定を変更した。ブレードサーバー関係の工事を後回しにして、ネットワークの他の部分の工事を優先し、サーバーへの繋ぎ込みを最後にする。幸い各部屋の工事予定を変更せずに済ますことができてホッとした。もし、事前に決められた工事予定日を直前になって変更されて突然自分たちの部屋が使えなくなったら、きっとどの部署も猛烈に怒り出すだろう。当初の予定を変えて一部の端末接続を無線LANに替えたので室内の配線工事はかなり短縮されたが、それでもアクセスポイントの工事はやらなくてはいけない。宏一は急ぎながらも慎重に工事予定を変更していった。どうやら大きな事にならずに済みそうだ。

それでも何とか6時頃には区切りをつけ、友絵に後を頼んで会社を出た。友絵は何か言いたそうだったが、それを聞くと時間に間に合わなくなるような気がして、ちょっとだけぶっきらぼうに残った仕事を友絵に任せると会社を出て足早に向かった。そして足早に会社を出た瞬間に、今まで心の端に引っかかっていた由美のことが猛烈に気になってきた。今日はどうしても確かめたかった。本当に由美の心が自分から離れてしまったのか、それを確認しない内には他に何もする気が起きなかった。今まで通りなら安心できるが、もし由美が二度と抱かれるのを嫌がるようなら、宏一の仕事の意欲そのものが大きく変わってしまう。それは今の宏一の存在そのものを変えてしまうだけの影響力を持っていた。

不安顔を出さないように心がけながらそっと部屋のドアを開けると、イスに向かって座っていた由美が弾かれたようにイスから立ち上がって宏一の方に走ってきた。そのまま宏一の腕の中に飛び込んでくる。慌てて宏一が抱き留めると、由美は宏一にしっかり抱きつくと、いきなり謝り始めた。

「宏一さん、ごめんなさい。私・・・宏一さんの言うことを聞かなかった。ごめんなさい。宏一さん、嫌いにならないで。私、宏一さんに嫌われたら・・・・ごめんなさい。私、宏一さんを信じます。だから、嫌いにならないで」

宏一の腕の中で胸に顔を擦り付けながら由美は必死に宏一に謝っていた。その仕草はとても可愛らしい。どうやらこれ以上心配することはないようだった。由美は宏一をマンションの玄関で見失った一昨日からずっと宏一のことばかり考えていてほとんど勉強も手に付かなかった。そして、どうやって謝ろうか、そればかりを考えていた。今の由美にとって、宏一のいない時間は考えられなかった。今は自分でもどうしようもない位宏一が好きだった。この前は大好きな宏一が誰か他の女性と一緒にいたことでカッとなってしまったが、そんなことで宏一を失いたくはない。失ってしまえばわがままを言うことも甘えることもできなくなる。由美は週に2回の宏一との時間を宝石のように大切にしていた。だから宏一の存在を自分のプライドと比べると、自分のプライドは影が薄くなってしまったのだ。今は宏一と一緒にいた女性のことを詮索するより、自分が宏一と一緒にいることの方が大切だった。

「ほんと?嬉しいよ。由美ちゃん、信じてくれるんだね」

「はい、だから私のこと、嫌いにならないで」

「まさか、嫌いになんかならないよ。ただ悲しかっただけ」

「ごめんなさい。ちょっと嫉妬してました。綺麗な人だったから」

「由美ちゃんは何も心配しなくて良いんだよ」

「はい、良かった。宏一さん。宏一さん・・・・・好きです。どこにも行かないで」

「俺も大好きだよ」

「本当ですか?」

「もちろん、大好きさ。分かってるだろ?」

宏一はそう言うと、由美のあごに指をかけて上を向かせる。涙ぐんでいる由美の顔はとても綺麗だった。そのまま長いディープキスに入る。お互いに激しく舌を絡めている間、由美は身体を宏一に擦りつけ、宏一を挑発してきた。由美自身は抱きしめられてキスをしているのが気持ちよく、それをしっかり感じようとしていたら身体を擦りつけるようになってしまっただけで、特に挑発しようとは思っていなかったのだが、結果として二人の身体を燃え上がらせることになった。

宏一も由美の身体を何度も抱き換え、その気になってきたことを伝える。すると、由美は宏一に喜んで欲しくて、宏一を抱きしめていた細い手がいつの間にか前に回り、スラックスの上から肉棒を刺激し始めた。それに気が付いた宏一が唇を話すと、ねっとりとした唾液が糸を引いて二人をつないだ。

そのまま軽く由美の肩を下に押すと、由美はそのまま跪いて宏一のジッパーを下げ、スラックスの中に手を入れて肉棒を取り出し、パクッと大胆にくわえる。その仕草はおとといとは大違いで、ダイナミックに肉棒全体を味わう大胆で熱心なものだった。さらにフェラチオを続けながら手際よく宏一のベルトを外し、スラックスを脱がせながら、時折チラリと宏一を見上げ、何度も更に大きくくわえ込みそして先端まで唇で挟んでしごき出す。口いっぱいに肉棒を入れたまま宏一を見上げる由美の瞳は、挑発的なようでいてどこか甘えるような、そして何かを待ち望んでいるような目つきだった。

由美は宏一が驚く位熱心にフェラチオをしていた。それは今までよりも更に情熱的なものだった。思い切って肉棒を深く飲み込んだ時は大半が飲み込まれ、宏一の茂みに顔を擦りつけそうになるほどだった。由美の口の中は相変わらず小さく、肉棒の周りを遊び回る小さな舌の動きがとても気持ち良い。その動きに満足した宏一は由美を見下ろしながらゆっくりと服を脱ぎはじめた。そして由美がフェラチオをしながら宏一の下半身を全て脱がし終わる頃には宏一は上を全て脱ぎ終わっていた。

このまま由美を抱き上げてベッドに移動したのでは面白くない、そう思った宏一は、由美の頭を優しく両手で掴むと、由美が肉棒をくわえた姿勢のままゆっくりと横に移動した。ちょっと乱暴な動きだったが、由美は何も言わずに肉棒をほおばり続ける。由美は頭を掴まれているので、宏一がゆっくり歩くと膝建ちの姿勢のまま床を這うようにぱたぱたと膝歩きをして肉棒を銜えたままベッドまで動いてきた。その間も由美の舌は肉棒にからみついている。

やがてベッドにたどり着いた宏一は両足を大きく開いて腰を下ろし、タバコに火を付けてゆっくり一服しながら由美の口を心ゆくまで堪能した。由美はまだ時々チラッと宏一を見ながら熱心にフェラチオを続けている。既に肉棒は隆々と反り返り、由美にとっては顎が痛くなるほど辛い愛撫だった。そして由美は、宏一に言われたわけでもないのに、フェラチオをしながら自分からゆっくりと服を脱ぎ始めた。

由美がゆっくりと制服を脱ぐと、綺麗な白い肌の背中に薄いブルーのブラジャーのストラップが見えた。宏一のお気に入りのフロントホックなので背中のラインが綺麗だ。制服を脱いで下着姿になった由美の肌は宏一を強烈にそそった。肉棒は最大限に反り返り、由美は口に入れるだけでも辛かったが、目にうっすら涙を浮かべてもフェラチオを止めることはなかった。

宏一はその仕草を見ながら由美が強烈なセックスを望んでいることに気が付いた。実は一昨日、宏一と別れてから、由美の身体の中にはずっと小さな炎が燃え続けていた。それは、宏一をつなぎ止めておかないと離れていってしまうという恐れと相まって、身体の中にずっと疼き続けていた。宏一に最後に愛撫されてから、由美の身体は不完全燃焼のままくすぶり続けていたのだ。それは宏一への気持ちが募れば募るほど大きくなっていった。

今日、宏一が部屋に入ってきた時、既に由美の身体は愛される準備を完全に終わっており、抱きしめられてキスをしている間、既に由美の身体は快感に悶えていた。今、由美は宏一に思いっきり愛して欲しかった。愛されることで、宏一が離れていくかも知れないと言う恐怖を溶かし去って欲しかった。肉棒をくわえたままの由美は再び大胆に肉棒をしごき始めた。

「そのまま全部脱ぎなさい」

宏一がそう言うと、口いっぱいに肉棒をほおばったままの由美は宏一を見上げて、困ったような顔で小さくいやいやをする。その仕草は目を覆うほどイヤらしかったが、また可愛くもあった。

「最後は俺に脱がせて欲しいの?」

そう言うと、肉棒を銜えたまま小さくうんうんと頷く。口いっぱいに堅い肉棒を銜えたままなので顔を自由に動かせないようだ。

「ゆっくりでいいから続けて」

そう言うと、由美は言われた通り、今度はじっくりと時間を掛けて丁寧に口を使い始めた。時折口から全部出して、舌先を使って微妙に撫でるように肉棒全体を舐める。それもまた、とても気持ちよかった。

「良いかい、由美ちゃん、そのまま聞いてね。今日は由美ちゃんをたっぷり愛してあげる」

そう言うと、肉棒の裏に舌を這わせていた由美の顔に喜びの表情が広がった。

「でもね、一昨日由美ちゃんは俺を困らせたでしょ。だから、由美ちゃんは一つだけ言うことを聞いてね」

由美の表情が一瞬こわばった。宏一がそう言う時は、大抵かなり厳しいことを言うのだ。怖がったような不安な目つきで再び肉棒をくわえた由美が動きを止めて見上げた。

「立って」

そう言うと宏一は由美を目の前に立たせた。薄い青色のブラとショーツに包まれた15才の身体が目の前に無防備にさらけ出される。久しぶりにゆっくりと見る由美の身体は、相変わらず腰の辺りが絶妙な曲線を描いており、胸の膨らみはいつも通りの半球形をしていた。既に胸の先端の突起が布地を突き上げて宏一を待ちわびている。宏一はゆっくりと右手の指を2本、ショーツの一番下の両足の間にできた隙間に差し込み、ショーツの布地の上から秘芯を撫で始めた。途端に強烈な快感が沸き上がる。


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