やがて圭子が未来の居る部屋に戻ってきた。

「ちょっと疲れたけど、気になっていたところを両方教えて貰えたから今日は大成功。未来、サンキュー。恩に着るわ」

「やっぱり私には無理だと思うの。圭子ちゃんみたいに上手くできそうにないし、思い切ってバージン捨てても先生が気に入ってくれなきゃ意味無いし」

「未来、そんなこと気にしてるの?」

「だって、私、圭子ちゃんみたいに可愛くないもの」

「何言ってんだか。未来、あなたは先生達の大のお気に入りなのよ」

「え?私が?どうして?」

「未来、ここに来たとき、クラスで何番だった?」

「18番」

「そうでしょ?ほらやっぱりそうだ」

「どういうこと?」

「普通はね、クラスで10番以内に入らないと、ここには来れないの」

「えっ、そうなの?」

「そうよ。でも未来はここに来れたでしょ?先生達が気に入ってる証拠なのよ」

「どうして・・・私・・・・」

「良くは知らないけど、先生達が次に呼ぶ生徒を相談して順番を決めているみたいなの。先生達がどこかに集まるのか、ネットで投票するのか、本当のところは分からないけど、とにかく何かをして生徒を決めているみたいなのよ」

「どうしてそんなこと分かるの?」

「だって、先生達は新しい生徒を全部知ってるもの」

「ええっ?私、水野先生にしか教わってないのに」

「今はね。でも、未来がもう少しして上手になれば他の先生に代わるわ」

「上手にって・・・・」

「そう、あれのこと」

「私、やっぱり自信ないからやめようかと思って」

「未来、未来は一番先生に人気があるのよ。きっと他の先生は早く未来を抱きたくて仕方がないはず。それなのに未来はやめちゃうの?普通の勉強で我慢できる?」

「でも・・・・」

「私はもう一年あるけど、未来はもう3年生でしょ?いいの?」

「それは・・・・」

それを言われると未来も何も言えなくなってしまう。特に、雲の上だった海王への可能性が出てきた時だけに強烈に未来の決意を揺さぶり続けた。海王の制服を着て街を歩く自分の姿を想像すると強烈に心が揺れた。でも、あんな事をしてまで成績を上げたくはないという気持ちもある。

「もう、いい加減にしてよ。私なんか未来ほどのチャンスも持っていないのに!」

それでも未来は黙ったままだった。そんな未来を見て圭子は、どうやらこれ以上何を言ってもダメなようだな、と言う気がしてきた。

しばらく二人で黙り込んだ後、未来はぽつりと言った。

「ねえ、気持ちいいの?」

「え?」

「してるとき、気持ちいいの?」

「それ聞いてどうするつもり?気持ちよかったらやるの?私が喜んで感じてるとでも思ってるの?」

「そう言うわけじゃないけど」

「慣れよ。あんなもの。それと精神力。自分の身体だもの」

「そう・・・、わかったわ・・・・・」

「決めた?」

「わかんない。本当にどうして良いのかなぁ・・・。少しだけ待って」

そう言うと未来は立ち上がり、そっと部屋を抜け出すと家路に付いた。圭子は駅まで着いてきたが、結局余り話が弾まなかった。圭子と別れる時未来は、

「ありがとう。どうなるかわかんないけど、とにかくお礼だけは言っとくね」

と言うと、

「未来、きっとまた会えるよね?ね?」

と圭子は心配そうに言ったが、未来はとうとう返事をしないまま電車に乗ってしまった。

未来はその夜、深夜過ぎまで布団の中で迷っていた。どうしてもあれ以外に方法はないのだろうか?自分一人で何とかできないのだろうか?ずっとずっと考え続けた。考えながら、頭の中では答えは決まってしまっているような気がしたが、それを一生懸命否定し、最初から何とかならないか考え続けた。そして、考え疲れて寝てしまった。

次の日は土曜日で、学校はなかったのだが塾はあった。

未来はおそるおそる携帯で確認したが、まだ予約はできるようだった。しかし、いつまでこの画面が現れるのか全く分からない。予約できる内に予約しないと元の退屈な普通の塾に戻らなくてはいけない。それは「隠し塾」のレベルを知ってしまった未来には我慢できないことだった。

未来は一人で街に出ると、しばらく宛もなく歩き続けた。気が付くと同じ所を何度も回っていたらしく、前と同じ場所を歩いていた。未来はやがて一軒の店を見つけると、その中に入っていった。マックでアイスティーを飲みながら、塾で受け取った携帯を取りだし、じっと見つめる。この中に未来の未来が入っていると思うと不思議な気がした。それからもしばらくじっと画面を見続けていたが、やがてゆっくりと一つずつキーを押し始めた。キーを押している間、とても心が重かった。実際、2回ほど途中でキャンセルして初期画面に戻ってしまったくらいだ。

そして、『土曜日:6時半:予約完了。26日まで残りあと1回』と表示が出たとき、ビクッと身体が震えてしまった。やってしまった。とうとう自分から身体を許すことに決めてしまったのだ。まだバージンの未来には、まるで自分でしたことではないかのような気がしたが、気持ちだけは重くなった。

それでも準備だけはしておかなくてはいけない。未来はマックの片隅で教科書と参考書を広げると、勉強の準備に取りかかった。幸い店はまだ好いていたので店員も何も言わなかった。未来はとにかく何も考えずに勉強に集中した。途中で一回アップルパイと紅茶を買いにカウンターに降りた他はひたすら勉強し続けた。勉強している間、他の雑音は聞こえなかった。

その日の夕方、未来は重い足を引きずるようにしてマンションの入り口でIDを入力してドアを開けた。『一瞬、開かない方が良いのに』と思った。

「未来ちゃん、こんにちは。来てくれたんだね」

康司は優しく未来を入り口まで出迎えると、勉強机までエスコートした。未来は黙ったまま大人しく机に座り、じっと前を見ていた。その様子を見て康司は、未来が覚悟を決めてきたことを知った。後はじっくりと開発するだけだ。

それには未来の心を開かせなくてはいけない。

「未来ちゃん、来てくれてありがとう。もう会えないかと思ったよ」

その優しい言い方も、今の未来には白々しく聞こえた。康司はそのまま続けた。

「未来ちゃん、本当に来てくれて嬉しいんだよ?分かってくれる?」

未来は少しだけ頷いた。『自分のおもちゃが手に入ったんだもの。嬉しくて当然よね』そんな気持ちで聞いていた。

「いいかい、こう考えて欲しいんだ。ここは以前の塾とは全然教えるレベルが違うだろ?未来ちゃんはそれを手に入れる替わりに、先生を気持ち良くして欲しいんだ。先生だって、これだけ教えるのは大変なんだ。いつもいつも未来ちゃん以上に勉強しなくちゃ教えられないからね・・・・」

康司の話は言い訳にしか聞こえなかったが、それでも理屈としては分かった。

「僕は本当に未来ちゃんが来てくれて嬉しいんだ。未来ちゃんのことが大好きだからね。優しく教えてあげるから、未来ちゃんもいっぱい勉強してね」

未来はコクッと頷いた。

「それと、未来ちゃんに優しく感じさせてあげる。そっとするから、未来ちゃんも楽しんで欲しいんだ。そうすればもっともっと成績が上がるよ」

「本当?」

「そうさ、未来ちゃんは適正テストでは抜群の素質を認められたんだ。ここに来ていれば、きっと未来ちゃん自身も驚くくらい成績が上がるよ。それは信じて欲しいな」

「はい」

素質の話は未来には意外だったが、確かに驚くくらい成績が上がらないと納得できないと思った。

「それじゃ、今日は何から始める?」

「教えて下さい」

「え?なに?」

「いつするんですか?」

「何を?」

康司がまじめに聞き返したので、未来は小さな声で言った。

「・・・したいんでしょ?」

「心配しなくて良いよ。未来ちゃんの身体の準備が出来て、未来ちゃんがして欲しいって思ったら、ね」

「え?本当?」

「もちろんだよ。安心して良いよ」

それを聞いて未来は少しだけ気が楽になった。

「本当に私が言うまでしないの?」

「うん、僕はそう決めてるんだ。未来ちゃんもその方が良いでしょ?」

「はい」

未来はもしかしたら、自分がセックスを望まなければバージンのままでいられるのではないかと思った。しかし未来はまだ康司の本当の実力を知らなかった。直ぐに思い知ることになるのだが・・・。

「それで、何を教えて欲しいの?」

「国語をお願いします」

そう言う未来の声は少しだけ安心したようだった。その声を聞いて康司は、未来が納得してくれたことを喜んだ。無理やりやってもロボットのように機械的に身体が動くだけだ。気持ちの入っていない喘ぎ声を聞いても面白くない。この頑なな少女の心を少しずつ溶かし、最後には喘ぎながら肉棒を求めてくる所まで開発することにこの仕事の醍醐味があるのだ。

「それじゃ、始めようか。この文章を読みなさい。3分で内容を理解すること。良いね。始め」

未来は大人しく問題を開き、素早く読んでいった。

「はい、終わり。問題を閉じて。この文章は昭和20年代にラジオを自作した高校生の話だけど、栄治が『電気の臭い』と読んでいるのは何の臭い?15文字以内で答えて?」

「はい、ペーストとハンダの焦げる臭い、です」

未来は指を折りながら正確に答えた。

「よし、次に、文中に『まさにそれが裏目に出たのだ』とあるけど、『それ』って何?」

「はい、えーと、難しい配線図のラジオを作ったことです」

「う〜ん、まだ理解が足りないな。1分で読み直しなさい」

未来は長文問題が苦手だった。英語でもそうだが、全体としては分かっていても、文の中にある『それが』とか『こういう事』というのを答えさせる問題ははっきり言って嫌いだった。未来自身、本を読むのは好きな方だが、どう感じようが読み手の自由であるべきだと思うので、なかなか上達しなくて困っていた。

そのまま30分ほど勉強を続けたとき、康司が未来の両手を机の上に上げ、開いた脇から手を差し込んできた。そして、ゆっくりと小さなな膨らみを撫で始める。未来は『始まった』と思い、どこまで我慢できるか不安に駆られていたが、それでも必死に勉強に集中しようとした。

「いいかい。未来ちゃんは文章を楽しんで読もうとしてる。だから、全体の雰囲気や構成を読むのは得意だけど、細かいところに注意しないから代名詞の指すものを間違えたりするんだ」

「はい」

「長文問題は、問題なんだから、それぞれの代名詞が何を指すのか、出てきたときに素早く考えて、分からなければ直ぐに数行戻るようにしないと、読み終わっても問題に直ぐ答えられなくてもう一回読まなくちゃいけなくなるよ」

「はい」

「できる?」

康司の手は相変わらず未来の膨らみを丁寧に撫でている。未来は少しずつ胸の辺りから何とも言えない感覚が沸き上がってくるのを感じ、自分の身体が反応を始めたことに戸惑っていた。