圭子は再生を止めると、

「未来、こんな子に比べれば、康司さんに優しくして貰って、おまけに丁寧に勉強を見て貰って、あなたは最高のことをしてもらってるのよ。分かる?」

と諭すように言い含めた。

未来はしばらく放心したようになっていた。自分がされたことだけでも十分にひどいことだと思っていたが、今見たのはそれ以上に悲惨な体験だった。

「あ・・・あのこ・・・・・どうしてる・・・・?」

「え?今出てた子?わかんないけど、もうだいぶ前から見ないよ」

「・・・そう・・・」

それからまたしばらく未来は黙っていた。

「あの子、耐えられなかったみたいね。可愛そうに」

「・・・うん・・・・」

「そんなに嫌なら最初から来なければいいのに」

「・・・・うん・・・・・」

しばらくの間、圭子が何を話しかけても、未来は生返事だった。圭子は未来の気持ちの整理が付くと思ってビデオを見せたのだが、もしかしたらこのまま未来が居なくなってしまうかも知れないと思った。それほど未来の表情は硬く、悲しげだった。

それからも未来はしばらく考えていたが、圭子の言うことも次第に分かるようになってきた。ゆっくりと未来の表情が楽になっていく。

「へへへ、ごめんね圭子。心配してくれてありがとう。やっぱり圭子がいてくれて良かった」

「ううん、そんなの全然気にしなくて良いよ。未来は大切な友達だから」

「ううん、ありがとう。勉強、キャンセルしたんでしょ?さっきの携帯」

「え?・・うん、でも良いの。今は未来の方が大切だから」

「ありがとう。明後日の私の分、譲るよ。使ってね」

「え?良いの?本当?ありがとう」

「それくらい・・・・。だって圭子が居なかったら私、あのまま家に帰ってもずっと泣いてたと思う。圭子のおかげだよ」

それから二人は打ち解けたように話し始めた。そして未来は、圭子の最初の時の経験を話して貰い、今の自分に比べてずっと辛い思いをしたことを知った。多感な少女が身体と引き替えに勉強を教えて貰うというのは想像以上に辛いことなのだと言うことがよく分かった。その間圭子は、何度も『未来は康司さんで良かったよ』言った。

未来はそう言われると、確かに康司がそれほど未来に無理強いをしていないような気がしてきた。確かに脱がされて触られるのは嫌だが、自分で納得したことなのだから嫌がっても始まらないのかも知れない。圭子の話を聞きながら、何となくそんな気がしていた。

翌週、学校が始まると、未来は授業が気楽に感じられて仕方がなかった。授業自体は公立の中学の場合、全国どこに行ってもそれほど変わりはない。授業内容は教科書によって決まってしまい、各県の教育委員会に採用して欲しい各教科書会社は、1年間で教える内容の一覧に始まり、各時間に何を何分かけて教えるか、そしてその教え方まで分単位で懇切丁寧に決めてあるので、先生はそれを棒読みするだけで授業になるからだ。

しかし未来はそんなことは予習の段階で既に終えており、そこから発生した分からないところを塾で教わっているのだから、学校の授業が気楽なのは当然と言えば当然だった。

更に、時間は短いとは言え、完全に個人で授業を受けており、そのレベルは最高なので、未来が授業中にあくびをしていても、いや、授業を聞いている必要さえ本当はなかったのだ。先生も最初はぼけっとしている未来にわざと当てたが、未来が何度か完璧に答えると、それ以上当てなくなった。

未来は自分が他の生徒よりはっきりと一歩も二歩も前を進んでいることを実感していた。そして、授業中は他の生徒より教科書のずっと先を読んで予習をするようになった。時々目を上げて授業の進み具合を確かめ、頭の中で復習をするだけで充分だった。

圭子にまた一回譲ったので、週の半ばになってから未来は隠し塾に行った。その日の放課後、学校を出た未来は、隠し塾の近くの喫茶店で予習をすることにした。お小遣いから見るとかなり厳しい出費なのだが、マックはうるさいだけでなく、直ぐ隣でがたがたと騒がれると集中できないのだ。だから頼むのはいつもレモンティー一杯だけだった。

ただ、塾の外では楽しい生活も、塾の直ぐ近くまで来ると一気に気が重くなった。仕方ないとは言え、これから起こることを考えると逃げ出したくなるくらいだった。

いつものコンビニに、今日は圭子の姿はない。きっと先日未来が譲った分で勉強が進んだのだろう。未来は重い足取りでマンションのドアロックを解除した。

ピンポーン、

「やあ、未来ちゃん、この前は来てくれなかったんだね。寂しかったよ」

「ごめんなさい。ちょっとお腹が痛くなったから」

未来は勉強道具を机の上に並べながら康司とさりげない会話をした。

「未来ちゃんと圭子ちゃんは知り合いなの?」

「え?どうして?」

「この前も未来ちゃんが来なかったときに圭子ちゃんが来たから」

「あ、コンビニで知り合ったんです。中学生は少ないから」

「そうか。圭子ちゃんはいっぱい勉強していったよ。未来ちゃんもがんばろうね」

「はい」

「それじゃ、何から始める?」

「社会をお願いします。最近の入試ではロシアとか韓国なんかの問題が多いみたいですけど、まだ十分に理解してないから」

未来は考えに考え抜いた結果、康司にかなり大きい分野をそのまま投げかけることで、教えるのに時間がかかるようにし向けた。これなら康司は教えるのに時間がかかり、未来を脱がす時間が短くなると思ったのだ。

「それじゃ未来ちゃん、最初に未来ちゃんが知っている日本とロシアの関係を19世紀末まで全部話してごらん」

「えっ、それは・・・・、えーと、ロシアは江戸時代に日本に最初に開国を求めた外国で・・・」

「それは江戸末期の話だね。でも、貿易を求めた国はもっと昔からあったよ。それは知ってるね?」

「はい、今の韓国と中国です」

「知っていればいいよ。続けて」

「はい、江戸時代末期に間宮林蔵が樺太の調査のためロシアに入りました。また、大黒屋光太夫が・・・」

「それは試験には出ないよ。忘れて良いよ」

「そうなんですか?」

「そう、まだ一度も出ていないから」

「はい、間宮林蔵の方だけで良いんですね?」

「うん良いよ。たぶん来年も出ないだろう。その他は?」

「えっとぉー・・・・・」

未来が苦手なところなので、知っていることは余り無い。未来は康司が丁寧に教えてくれるものと思っていたが、康司は未来の知識を徹底的に絞り出し、考えさせる方法を取った。

こうされると未来は1秒も気が抜けなくなる。未来は康司の教え方のペースが速いので、頭に入れるだけで大変だった。ちょっと今日の話題を選んだことを後悔した。

今日の未来は学校から真っ直ぐ来たのだから制服のままだ。康司は未来には制服の方が似合うと思っていた。そのまま二人はしばらくロシアとの歴史を復習した後、韓国との歴史の復習に入った。

「よし、未来ちゃん、韓国と日本の関係をまとめる上で、時代の流れを大まかに掴んでおくことがとても大切なんだ。韓国は最近よく問題に出るよ。中国と同じくらい時間をかけて勉強した方が良いね。まず奈良時代から順番にどんなことがあったか簡単に流してごらん」

「はい、奈良時代は百済から文化の渡来がありました。その時は仏教やいろいろな文化が日本に伝わりました。平安時代になると中国との交流が盛んになるので韓国とは余り交流がありません。鎌倉時代には韓国との交易が盛んになってきました。その次は・・・えーと・・・・日明貿易には余り関係しないので、江戸時代の通信史が韓国から江戸間で何度が往復しています。そして幕末になって日本と同様に開国を迫られ、結局日本の支配を受けるようになりました」

「よし、鎌倉時代以降に韓国との交流が衰退した理由は?」

「それは・・・・・」

「それじゃ、どうして最初の時代は中国が相手じゃなく百済だったの?」

「一番近かったから」

「どうして一番近くないとだめなの?」

「え??」

「覚えることも大事だけど、自分で考えるのも大事だ。考えてごらん」

そう言うと、康司は机の上の未来の手を取って少し前にずらし、脇を空けさせた。そして両手を脇から入れて、そっと小さな膨らみを掌の中に入れる。

未来は最初、軽く嫌がったが、康司の手を払いのけたり嫌がって声を出すほどではなかった。

康司は未来が受け入れたことに満足すると、ゆっくりと膨らみの形を確認するように優しく全体を撫で始めた。最初はむず痒いだけでほとんど何も感じなかった未来だが、次第に身体がだるくなって勉強に集中できなくなってくる。

康司は未来の目がスッと細くなったり、自然に頭が下がってくるのを見つけると、未来の身体が準備を始めたことを確認した。

「どうしたの?分からないのかな?それともだるくなった?」

未来はまだここで勉強をやめるつもりはなかった。韓国の所を一通り教わるまではソファで感じさせて貰うわけにはいかない。しかし、胸の辺りからはどんどんけだるいような甘い感覚が身体中に広がっていく。

甘い感覚と戦いながら、やっと未来は歴史の事実の中に埋もれていた共通点を見つけた。

「昔の船は遠くまで行けなかったから・・・」

「そうだ。よくできた」

康司は掌に可愛らしく収まった未来の胸をクッと持ち上げるように一度だけ揉んだ。

「んっ!」

言葉にならない感覚が一瞬胸から吹き出した。しかしそれは本当に一瞬で、未来自身がそれを確かめる余裕さえなかった。

「未来ちゃん、感じた?」

「・・・・・・」

答えられるはずがない。未来はじっとテキストに集中して、何とか胸からの甘い感覚を忘れようとした。しかし、恥ずかしさで耳元まで赤くなった少女のぎこちない仕草は康司を満足させるだけだった。実際、未来自身も気が付いていなかったが、お気に入りの薄いピンクのブラジャーの中では小さな突起が固さを増して布地を押し上げ始めていた。

康司は未来が恥ずかしがっていることに満足すると、ゆっくりと未来を追い込むことに集中した。ただでさえ未来の開発が遅いと他の教師から責められているのだ。余り時間はかけられないことは康司が一番良く分かっていたが、未来のようなタイプの少女はそう簡単に手に入らない。可能な限り未来の可能性を伸ばしてみたかった。もちろんそれは勉強だけでなく、身体の開発の方に重点を於いていることは明らかだった。

塾の教師はたくさん居るが、この「隠し塾」の教師の地位を手に入れるのは楽ではない。少女の身体を自由にできるとは言っても、結局教え方も結局は生徒が納得するだけのものを持っていないと長続きしないし、最悪訴えられる可能性だってある。だから塾としても最高レベルの教育能力のある教師にしかチャンスを与えなかったし、他の教師には一切「隠し塾」の内容を秘密にしていた。従って、ここで少女を抱けるのは教師の能力の証でもあるのだ。もちろん同時に少女の身体を短期間に開発する能力も必要だ。これとて簡単なことではない。

康司自身、「隠し塾」の教師を目指すようになってからは学生の時以上に勉強をした。さらに、ここの教師になるには「隠し塾」の教師達で作る試験に合格しなければいけないし、実際に教えるようになってからも常にレポートの提出が義務づけられ、先輩教師から好き勝手な注文を付けられる。