未来はそのまましばらくマンションに通い続けた。自分の苦手な

ところでも、康司はあっという間に未来に最適な勉強法を見つけ、

限られた1時間半という時間の中で未来の頭の中に染み込ませる

ことができた。『こんな凄い先生がいたなんて、どうして授業に

出ないのかな?きっと人気が出るのに』そう思った未来は康司に

聞いてみた。

「康司さんはどうして塾で教えないんですか?こんなに教えるの

が上手なのに」

「大勢の生徒相手にこんな勉強法はできないよ。一人だからでき

るんだ」

康司は笑って言った。

「いいかい、案内書にも書いてあるけど、もし成績が落ちたら元

のクラスに戻って貰うからね」

「はい、がんばります」

未来は今初めて、実力テストが待ち遠しくなっていた。

あっという間に2週間が過ぎたが、未来はそのまま通い続けた。

その時まではマンションで勉強は普通の個人授業だったのだが、

それから次第に雰囲気がおかしくなり始めた。

未来が机に座って勉強を始め、康司が教え始めると、康司はやた

らに未来の身体を触り始めたのだ。元々座っている未来の後ろか

ら覆い被さるようにして教えたりもしていたので、最初はあまり

気にしなかったのだが、康司の手が制服の裾を持ち上げて中のT

シャツの下にまで手を入れてくると、さすがに未来は我慢できな

くなった。

「康司さん、やめてください。イヤです。イヤッ」

「じっとしていなさい。ほら、そこでいつも未来ちゃんは間違え

るんだから」

「イヤッ、考えられないからやめて。いやだってば」

康司の手はTシャツの下の未来のきめの細かい肌を撫で回し、捲

り上げるようにして胸の方に上がってくる。

「イヤッ、もうイヤッ、そんなことするんなら、私、帰ります」

「そう、良いよ。それじゃ、代わりの生徒を呼ぶから」

「えっ?」

未来は絶句した。慌てて服を直すと、

「ちゃんと普通に教えて下さい」

「これがここでは普通なんだよ」

康司は堂々と言い放った。

「どうする?帰る?それともこのまま続ける?」

「そんな・・・・、今までは普通に教えてくれたじゃないですか」

「今までは、ね。これからはこれが普通なの」

「そんなの・・・いやです」

「そう、それじゃ帰って良いよ。次は明後日だね」

「先生を変えて貰います」

「もう変えられないよ。未来ちゃんは俺を選んだんだ。俺以外の

先生の都合は付けられないんだ」

「そんな、事務に行って話してきます」

「それはいいけど、無駄だよ。先に言っておくけど。ここはこう

いうとこなんだ」

「もういいです。帰ります」

未来は荷物をまとめると慌ててマンションの部屋を出た。その足

で塾に向かう。塾までの間、未来は怒り続けていた。『もう、あ

んな先生だとは思わなかった。絶対に変えて貰う。二度と会いた

くないんだから』頭から湯気を出して塾の事務所に駆け込み、授

業が終わって戻ってきた近藤を見つけると駆け寄って一気に話し

始めた。

近藤はしばらく未来の話を聞いていたが、やがて、

「要するに、加藤はもうあの塾は嫌だと言うんだね」

「はい、嫌です。先生を変えてください」

「それはできない。嫌ならやめて貰ってかまわないよ。残念だな、

もっと伸びると思って推薦したのに」

「そんな、先生さえ変えてくれれば、私、絶対もっと勉強して・・」

「加藤、いいか、良く聞くんだ。加藤と同じ成績の生徒はたくさ

んいるんだ。いくらでも他が見つかる。でも、水野先生の代わり

は見つからないんだ。あそこで教えられる先生は本当に貴重な先

生なんだよ。加藤だって水野先生の凄さを分かっているだろう?

嫌ならやめて貰ってかまわない。それじゃ」

そう言うと近藤は奥に引っ込んでしまった。

『そんな・・・・』未来は絶句してしばらくその場に立ちつくす

しかなかった。確かに未来と同じ成績の生徒は他にもいるだろう、

それに比べて康司ほど教えられる先生は滅多にいない。それは頭

では理解できる。しかし、あんなことされてまで我慢しなくては

いけないなんて、未来にはとても許せなかった。

しかし、あの康司の授業を棒に振るのはとてもできなかった。な

んと言っても学力が伸びているのは自分が一番よく分かる。もっ

とあそこで勉強したかった。少しくらいなら我慢できそうな気も

する。

しかし、このまま我慢していたらどこまでされるか分かったもの

ではない。未来はまだ初体験どころかキスだってしたこと無いの

だ。

唖然としたまま塾を出て、どうしようかと考えながら歩いている

うちに、いつの間にかあのマンションの近くまで来てしまった。

とりあえずコンビニに入る。

雑誌コーナーには数人の女生徒がたむろしていたが、今回は以前

のようには睨まれなかった。未来が雑誌を手にすると一人が近寄っ

てきた。

「ねえ、あの部屋で勉強してるの?」

年は未来と同じくらいの可愛らしい子だ。

「あ、そうなの・・・。でも?」

「なに?成績が落ちたの?」

「違うの。そう言うことじゃなくて・・・」

「巧くあれができないの?」

「え?あれって・・・」

「セックスよ」

「そんな、私、勉強に来てるのよ」

「それで?」

「それでって、勉強に来てるのに身体を勝手に触られて、服まで

脱がされそうになったら、誰だって嫌になってでてくるわよ」

「誰だって?そうなの?なんだ、触られただけなんだ。あ、分かっ

た。さっき部屋を出たでしょ」

二人の話を横で聞いていたあとの二人の生徒がクスッと笑いだし

た。そして、

「そう、嫌になったの。良かった。それじゃ、あんたの時間が空

くのね」

小さな声でそんなことを言ってる。

「え?だって・・・」

「やめるんでしょ?いいのよ。どうぞやめていいわよ。あんたみ

たいなお子様には向かないところかもね」

「ねぇ、あなたは知ってるの?あそこがどんなところか」

「もちろん。私、1年生からずっと通ってるもの」

「それじゃ、もしかして・・・」

「そうよ、したわ。悪い?」

「いや、でも、だって」

「そんな程度で嫌になるならやめればいいのよ」

その時、横で聞いていた少し年上っぽい子が未来の前の子に向かっ

ていった。

「ねえ、その子、全然分かってないみたい。教えてあげたら。隠

れ塾がどんなところかを」

「そうね、ね、行こう」

その子は未来の手を取ると、コンビニを出てどんどん歩いていっ

た。そして未来を駅の近くの喫茶店に連れて行き、席に座り際に、

「ミルフィーユと紅茶のセットを二つ」

と通りがかりのウェイトレスに言うと、どかっと座り、

「私は三ツ木圭子、2年生、よろしくね」

と言ってきた。ショートカットが似合うくりっとした感じの小柄

な少女だ。

「私は加藤未来、同じ2年生よ」

「じゃあ、未来って呼んでもいい?」

「いいわ、それじゃ教えて、どういうことなの?」

「そうね、未来はあの部屋で触られただけ?」

「そうよ。でも、Tシャツの中まで手を入れられたし、もう少し

でブラも触られるところだったのよ」

「そう、それで怒って出てきたの?」

「そう、それから塾に行って近藤先生に会ったけど・・」

「聞いてくれなかったでしょ?」

「そう、そうなの、全然」

「そりゃそうだわ、近藤じゃあね」

「え?だって、親切だし、よく見てくれてたのに・・・」

「あんたはホントに何考えてんだか、ま、いずれ分かるわ」

「どういうこと?」

「まだわかんないの?あの部屋は、生徒が身体を許す代わりに最

高の教育をして貰うの。そう言う所よ」

「そ・・・そんなこと・・・・」

「でもね、みんなそれでもあの部屋に行きたがるの。分かるで

しょ?自分の学力がどれだけ伸びてるか。他にどんな方法がある?

あれだけのとこなんて無いわよ」

「だって・・・」

「我慢した方が良いわよ。どうせ受験が終わればサヨナラなんだ

から。私なんて、去年からなのよ。分かる?一年生よ?もちろん

バージンだったわ。どれだけの思いをしたか?」

「やめようと思わなかったの?」

「何千回も何万回も思ったわ」

「でもやめなかったの?」

「私、もう慶賀の一歩手前まで来てるの。合格判定はいつもB以

上なのよ。あの部屋に最初に行った時、やっとクラスで10番以

内に入った程度だったの」

「クラスで?その程度?」

「今はもっと厳しくなってるみたいね。でも、去年はそうだった

の」

「何とも思わないの?」

「思わない分けないじゃないの。私があの部屋で何をしてると思

うの?未来はまだバージンだから想像もできないでしょうね。ソー

プランドだってあそこまでしないわ」

「どうしてそんなことを?」

「あのね、だんだん教えてくれなくなるの。言うこと聞かないと。

それに成績が下がってもダメ。あっという間に放り出されるわ」

「圭子も下がったの?」

「そう、この前ね。点数では上がったんだけど、順位が少し。そ

うしたらいきなりよ。全然予約できなくなったの」

「一回だけで?」

「そう、一回だけ」

「それなら自分で勉強しても次回は上がるんじゃないの?」

「あのマンションで勉強をしている子たちと一緒にテストを受け

るのよ。勝てる分けないでしょ?」

「そ、そうね・・・」

「ま、初めてじゃないから、下がったのは」

「え?前にもあったの?どうやって戻ったの?」

「成績が上がればいいのよ。それだけ。あそこにいた子たち、み

んなそうなの。キャンセルを待ってるのよ」

「キャンセル待ちって言うと・・・、あ、私が出てきたから」

「そう、いろんな理由でキャンセルされる子が出るの。成績が上

がらない子が多いけど、中には上手に言われた通りのことができ

なくて出される子もいるわ」

「言われた通りって、まさか・・・」

「当たり前でしょ、その通りよ」

未来はだんだん自分の置かれている状況が飲み込めてきた。成績

を上げたければおもちゃになる覚悟がいるのだ。そして、それを

納得した子だけが必死に通い続けるところなのだ。

自分にそんなことができるだろうか?しかし、自分一人であれだ

けの勉強をしようと思うと・・。

突然、圭子の携帯が鳴り出した。慌てて番号を確認する。

「あ、空いたみたい。またね。あそこで会いましょ」

そう言って圭子は慌てて立ち上がり、

「ここのお金、貸しといて、今度返すから。いいわね、やめちゃ

ダメよ。またね」

そう言うと慌てて小走りに去っていった。その後ろ姿はどこから

見ても普通の中学2年生だ。

未来は重い足取りで家路に着いた。家までの間、答えなどあるは

ずもない問題を必死に考えていたし、家に着いてからも悩んでい

た。幸い家族にはテストが近いからと行ってごまかせたが、部屋

にこもってからはもっと憂鬱になった。

翌々日、未来は予約した時間にマンションの電子ロックを解除してドアを開けた。これしか方法がないと自分に一応納得させて来たので、ここまでは足が止まることもなく来ることができた。なんと言っても、あれだけの勉強は自分自信の力だけではどうにもならない。でも、身体をもてあそばれるのも、服の上から触られるだけならなんとか我慢できるかも知れない・・・・。

「あ、未来ちゃん、来たんだ。もうこないかと思っていたのに」

康司が軽くそんなことを言う。

「はい、今日もお願いします」

未来は素直に頭を下げたが、既に何も考えられなかった。

「いいよ、何から始める?」

「理科の代謝をお願いします」

「分かった。始めようか」

「あ、あの、ジュースを飲んでもいいですか?」

「いいよ、好きなものを取りなさい」

未来がリビングの中におかれている冷蔵庫を開けると、中には膨大な種類の飲み物とスナック、ケーキ類が詰まっていた。一瞬驚いたが、気に入ったものを取り出して机の上に置く。

「今日、未来ちゃんは来ないと思っていたから、他の子も予約できるようにしちゃったんだ。もしかしたら途中で他の子が来るかも知れないけど、いいよね?」

「そんな、困ります。私、ちゃんと来たのに教えてもらえないなんて」

「そうじゃないよ。他の子だけじゃなくて先生ももう一人来るから」

「え?先生も?」

「ほら、あっちの机があるだろ?あれを使うんだよ」

康司はそう言うと部屋の反対側に同じようにおかれている机を指さした。

「いつ?」

「決まりでは10分こなかったら次の子を呼ぶことになってるだろ?だからもうすぐだね。先生もそのあとに来るよ。じゃあ、始めようか」

康司はそう言うと、代謝のTCAサイクルの説明から始めた。

「いいかい、未来ちゃんの指をよく見てごらん。そこには細かい細胞がいっぱい入っていてその中ではいろんなことが起こってる」

そう言いながら、康司の手は未来の制服のリボンにかかり、ゆっくりと解き始めた。未来はなるべく気にしないようにして、康司の話に意識を集中した。康司はリボンをとくと、ホックを外してジッパーを下げ始める。

「いいかい、その中で起こっているのは全部化学反応だ。生物の身体の中は化学反応を自分で起こしてエネルギーを出しているんだ」

ジーッと音がして未来の身体の包んでいた一枚目の布が左右に分かれてしまう。

「細胞の中で起こっているのは化学反応。それは一番無駄のない、最高の効率でエネルギーを取り出せる反応だ」

康司の手は、今度は制服の下に着ているTシャツの裾をスカートからゆっくりと引き出し、徐々に折り返しながら巻き上げ始めた。未来はじっとして耐える。お腹がスッとしてきたのでもうおへその上までは巻き上げられてしまっている。

「その化学反応がどんなものかを示しているのがこの図だ。どう思う?」

康司の手はとうとう未来のブラの上までTシャツを捲り上げてしまった。

「あの・・・どうって・・・複雑で・・」

「そう、複雑だね。でも、それだけ無駄がないってことなんだ」

康司は一旦手を止め、未来の身体を眺めているようだった。見られるのは恥ずかしくて堪らなかったが、見られるだけですむならその方が良いとも思った。

「体を動かすエネルギーはどこから身体に入るの?」

そう言うと、とうとう康司の手はぷくっと膨らんだ布地を包み、ゆっくりと揉み始めた。

「あうぅっ、いやっ、ごめんなさい、いや」

「嫌なの?帰る?」

「違います、違います。帰りません、続けてください、ああっ」

「未来ちゃんはまだバージンなんだね」

「そう・・・、そうなんです。だから・・・」

「大丈夫。すぐに慣れるさ」

「・・・あぁ、そんなこと・・・」

「いいかい、続けるよ。どうやって身体の中に入るの?」

「食物です。食物の栄養です」

「栄養の三大要素は?」

康司は嫌がる未来の可愛らしい膨らみをゆっくりと揉みながら教え続けた。

「炭水化物と脂肪と・・・」

ピンポーンと音がしてドアが開き、女の子が一人入ってきた。思わず未来は康司の手の上から両手で胸を隠し、ドアの方を見る。初めて見る女の子だった。

「こんにちは、あ、今日はこっちですね」

その子は未来が胸を揉まれていることなど全く気にしていないようで、そのままもう一つの机に向かい、荷物を置いた。

「手を離しなさい」

康司はそう言って未来の両手を机の上に戻してから、再びゆっくりと楽しむように揉み始めた。未来には全く快感などはなく、ただ気持ち悪いのと恥ずかしいだけだった。

「さあ、もう一つは?」

「タンパク質です」

「そう、じゃあ、この図をもう一度見てみよう。タンパク質の成分の特徴はなあに?」

「窒素があることです」

未来は少しだけ慣れてきた。イヤではあるが、身体からは何も感じないのだから、恥ずかしいのさえ我慢すれば耐えられそうだ。ほんの少しだけ希望が持てたことで嬉しくなった。

ピンポーン、また音がして今度は男性が入ってきた。未来はそれを見て、

「近藤先生!来てくれたんですね」

未来は近藤が康司のしていることを確かめに来てくれたのだと一瞬思った。そして、『これで助かる』と何の理由もなく思ってしまった。

「おや、加藤未来が来てるのか。ま、いいだろ」

近藤はそう言うと、もう一つの机の方に向かう。

「近藤先生、お願いします」

「おお、久しぶりだね。元気にしてた?」

その言葉に未来の心は凍り付いた。近藤は未来が服を脱がされて胸を揉まれていても何も気にしないでもう一人の少女と懐かしそうに挨拶をしている。それが信じられなかった。