第13部

「アアン、いやぁ、まだぁ、やめないで、もっとぉ、いじわるしないでぇ」

「また気持ち良くなるから、それまで待ってて、もう少しだよ」

「アーッ、我慢できないーっ、ねぇっ、お願い、もっとぉ」

亮子は両足を昆虫のように動かして肉壁の動きで更に感じようとした。しかし、肉棒が刺さっていないと快感も生まれてこない。

「アアン、康司さん、ちゃんと奥まで入れてぇ、ねぇ、お願い、いけそうなの、いいでしょ?」

「ほうら、だんだん深く、大きくなってくるよ。どこまで深くなるのかな」

「あっ、はあッ、来た、もっと、はウッ、アアッ、アーーーッ、イイッ、いいの、そのまま、奥まで来て、大丈夫だから、ぐ、うぅ、も、もっとぉ」

我慢していた分だけ亮子の身体に先程以上の快感が生まれる。亮子は更に深く迎え入れようと、膝を自分の両手で身体に引き寄せた。

「それはダメ、ちゃんと両手は頭の横に置いて」

康司は横からの撮影の邪魔になる両手で膝を引き寄せる動きを禁止した。膝の位置が固定されると画像に変化が無くなるのだ。

「いやぁ、抜いちゃいやぁ、ごめんなさい、もう、もうしないから、ねぇ、アアン、全部抜いちゃいやぁ」

康司はゆっくりと一回引き抜くと、肉棒の先端で秘核を可愛がってやった。亮子は思いがけない愛撫に仰け反る。亮子の反応に満足すると、再びゆっくりと入っていった。

「くぅーっ、お願い、今度は、こんどはちゃんとするから、アアッ、早く、早く奥まで、待てないのぅ、あうッ、そう、あうッ、それがイイッ」

康司は今度の挿入で亮子がいくだろうと思った。ビデオのリモコンで亮子の上半身をアップにする。画像の中で可愛い乳房をぷるぷる揺らしながら悶える亮子の姿が大写しになった。

「ああっ、これ、これなの、そのままよ。あうッ、あぅっ、はう、はあッ、ああぁっ、ああぁっ、ああーーっ、アアン、ああぁぁぁぁーーーーーっ」

レンズの中で大きく仰け反った亮子の身体がすーっとピンク色に染まる。亮子の身体が絶頂する瞬間、康司は真上から手持ちのビデオカメラで肉棒の刺さった秘部をズームアップで撮影した。深く刺さった肉棒の周りがきゅっと締まるのがはっきり写る。その動きが絶妙で、内部の肉壁がギュッと締まった快感で康司も発射してしまった。ゆっくりと時間をかけたこともあり、二回目とは思えないほどたくさんの液体が注ぎ込まれる。康司はそのビュビュッと言う感覚の素晴らしさに陶然となった。

「あ、何か、でてるの・・・温かいの・・・」

亮子が小さな声でつぶやく。その声があまりに可愛らしいので、康司は抱きしめたいという欲望をこれ以上堪えることができなかった。それでも一応リモコンでズームを元に戻すと、手に持ったビデオの撮影を中止して亮子の上に被さっていく。ゆっくりとキスをすると、

「やっと来てくれたのね。ずっと待ってたのに・・・」

少し汗ばんだ表情の亮子が可愛らしく拗ねて見せた。

「初体験は約束通りちゃんと撮影したよ。だから、もう少ししたい」

「もう、撮影なんてどうでもよかったのに。康司さんに抱いて欲しくて我慢してたの。このままこうしていましょう」

亮子と康司は挿入して重なったまま深くお互いの唇を求め合った。すると、半分ほどの硬さになっていた康司の肉棒がまた膨張を始めた。そのまま亮子は康司を深く迎え入れようと足を康司の腰に絡めてくる。

「オッパイもして上げるからね」

康司は身体を両手の肘で支えると、固く膨らみきった乳房を優しく揉み始めた。

「アアン、これ、これがイイッ、暖かくて、気持ち良くて、アアッ、嬉しいの」

亮子は康司に愛されている喜びを初めて実感できた。自然に亮子の腰は康司の腰の動きに合わせてクッと突き出され、更に深く迎え入れようとする。

康司はその亮子の動きが嬉しく、一定のリズムで腰を送りながら両手で乳房と乳首を可愛がり、唇を求めた。

「う、うぐ、うう、うぅ、うー、ううぅ、うぅぅぅーーーっ」

亮子の身体はいったばかりだったので、すぐに感覚が盛り上がってきた。亮子自身もキスを続けようとするが、だんだんそれどころではなくなってくる。

「うはッ、アアッ、ごめんなさい、キス、できない。アアッ、また、またなの、アアッ、そのまま、康司さん、大好き、大好きよぅ、ああぁぁーーーーっ」

亮子は下から康司に抱きつき、夢中で足を康司の腰に絡めて再び最高の瞬間を迎えた。康司はグッと腰を突き出し、グリグリと腰を回して亮子の絶頂を更に高く押し上げる。

「うぅぅぅーーーーっ」

亮子の身体がすーっとピンク色に変わるとしばらくは息もできないほどの絶頂が亮子を包んだ。

「はっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

亮子が簡単にいってしまったのでほとんど動かなかった康司はいけなかったが、亮子の言葉に完全に満足した康司は、ゆっくりと肉棒を引き抜く。

ベッドに横たわり、そっと横から亮子を抱き寄せると、グッタリとなった身体を康司にピッタリ寄せて康司の腕に抱かれてきた。しばらく亮子は話もできなかったが、その仕草から充分満足しているのがはっきり分かった。

「あ、中から流れてきた・・・」

亮子が小さな声で囁いた。

「こうじさん・・・ごめんなさい・・・からだ・・動かないの・・・汚しちゃう・・・」

「いいよ、初めての記念なんだから。シーツなんていつでも代えられるし」

康司はそう言うと、再びカメラのリモコンを手にして足下からのショットを何枚か撮影し、亮子の中から流れ出してきた液体を撮影する。それはうっすらとピンク色に染まっていた。

「いじわる・・・」

康司がベッドに戻り亮子を抱くと、亮子はそう言って、康司の胸に頭を埋めてきた。

「少し休んでいい?」

「いいよ。疲れたろう?夕食まで寝ていていいよ。起きたら出かけよう」

「ごめんなさい・・・、もう、何もできないの・・・、康司さん、大好きよ」

「俺も大好きだよ。愛してる」

「嬉しい・・・・・・」

亮子はそのまま目を閉じると、深い眠りの世界に引き込まれていった。康司はじっと亮子を抱いていたが、亮子が寝返りを打って康司から離れる頃、康司自身も短い眠りに引き込まれていった。

 康司が目を覚ました頃、日もだいぶ傾いて夕方になっていた。まだ亮子はスヤスヤと寝ている。全裸で無防備に寝ている亮子を見ると、形のよい乳房が可愛らしく上下している。思わず乳房を握りしめたくなったが、疲れているようなので我慢する。亮子を見ていると我慢できなくなりそうなので、そっとベッドを降りると撮影機材のセッティングをすることにした。ベッドから降りてトランクスとTシャツだけ身につけると、スタンドからリモコンで操作していたビデオカメラは取り外し、部屋のテレビに付いているビデオデッキにコードをつないでバックアップ用にダビングを始めた。また、250枚入りのカートリッジも暗室でフィルムを交換する。

そんな作業をしばらくやっていると、物音に気が付いたのか、亮子が少し身動きしてからゆっくりと目を覚ました。康司を不思議そうにぼうっと眺め、自分の格好に気が付くとびっくりしてベッドカバーを巻き付ける。

「え?何?」

「どうした?起こしちゃったかな?まだ寝てていいよ」

「え?あ、康司さん?あれ?私・・、そうか、グァムに来たんだ」

「なんだ、寝ぼけたの?それでびっくりしたんだ」

「ごめんなさい、私、寝起きは悪いの」

「疲れてたみたいだから、起こさなかったんだ。そろそろ夕方になってきたけど、どうする?亮子さんがいないとなんにもできないよ」

「え?なに?ごめんなさい、まだ頭がぼうっとして・・・。だって、あんなにするんだもの。少し疲れるのは当然よ。ぐっすり寝ちゃった」

亮子は先程の来る雄々しいまでのセックスを思い出したらしく、上掛けから首だけ出したまま康司に少し口を尖らせた。康司はベッドに行くと、亮子の横に腰を下ろし、

「もう少し寝てて。まだ少し準備って言うか、後始末が残ってるんだ。終わったら起こすから」

そう言いながらベッドの亮子にキスをする。亮子は最初はおとなしくキスをしていたが、次第に康司の首に手を回し、自分の首筋に押し当てて感じ始めた。

「アアン、ダメェ、目を覚ましたばかりなのにぃ。まだ夕食も考えないといけないのにぃ、だめよ、少しまってぇ、壊れちゃうからぁ」

康司はすでに乳房に手をかけていたが、亮子はそれを手で押しのけるとクルッと後ろを向いてしまう。

「ごめんなさい、もう少し休んだら良くなるから。そうしたらまたしましょう。今は少し疲れてるの」

目の前に亮子の綺麗な背中を見ながら、康司は何とか我慢した。思い切ってベッドから離れると、機材の整理を始める。

「ごめんなさい、あとで・・・ね・・・」

亮子の小さな声がすると、すぐに再び小さな寝息が聞こえてきた。

 

結局亮子はそれからまた1時間ほど寝た。やっと目を覚ました亮子はだいぶ疲れも取れたようで、ベッドから起き上がると康司がソファで向こうを向いているのを気にしながら素早く自分の荷物に行って着替えを取り出し、バスルームに入る。ベッドの上ではあれだけ凄い格好をしていたのに、ベッドを降りると恥ずかしいんだな、と康司は物音を聞きながら感心してしまった。

明子はピンクのTシャツに同じスカートと言った格好に着替えて出てくると、

「どうしようか、あ、もう8時なんだ。だいぶ寝ちゃったのね」

と時計を見て驚いていた。

「ちょっと激しすぎた?」

「過ぎよ。あんなに疲れたのって生まれて初めて。マラソンしたみたいにグッタリしたもの」

「じゃあ、もっとそっとした方が良かった?」

康司がそんなことを言うので、亮子は急に恥ずかしくなってしまい、

「ばか、そんなこと・・・、康司さんが知ってるでしょ」

と小さな声で言うと、乱れたベッドを直し始めた。『あ、あの痕だ』亮子はシーツの一部が少しピンク色になっていることに気が付いた。自分では出血したことに気が付かなかったが、やはりロストした証を残したらしい。あまり大きいものではなく、可愛らしいものだった。

「どうする?康司さん、どこかに行って食べたい?それともここのレストランにする?」

「どっちでもいいけど、たくさん食べられる方がいい。それと美味しいのが」

「普通はそうよね。私だってそう。でも、量については心配しなくていいと思うの。アメリカはとにかくなんでも量が多いから」

「それじゃぁ、今日はここにしよう。美味しくなかったら明日は外に出ればいいさ」

「外にって言っても、そう簡単じゃないんだけど・・ま、いいか。それじゃ、そうしましょう。仕度して。レストランに行きましょうか」

二人はチェックインの時に行った大きな家に行き、その中のレストランに入った。レストラン自体はあまり大きくなかったが、それにしても他の客は少なく、ほんの数人がバラバラになって食事をしているだけだった。レストランの入り口には女性が1人立っており、ここが受付らしかった。亮子がスッと前に出て話しかける。

Hi, we are two people." 「二人ですけど」
"Thank you and welcome. Follow me please." 「こちらへどうぞ」
受付の若い女性は二人を海に近い窓際に案内した。
"Take your seat. Service will be here soon." 「お座り下さい。間もなく係のものが参ります」
席に着くと、メニューを見ながら康司は心配そうに亮子に尋ねた。
「ねぇ、何を食べればいいのか全然わかんないよ。日本語でダメなの?」
「あのね、本当はかなり日本語も通じるのよ。でも、こっちの人の日本語ってかなりいいかげんだし、勘違いも起こるし、せっかくこっちに来たんだから雰囲気を楽しみたいじゃない。それだけ」
別の係がオーダーを取りに来たとき、亮子は日本語メニューを康司のためにリクエストしてくれた。届いた日本語メニューは亮子のものより小さく、ほんの少ししか載っていない。康司がそれを言うと、
「日本人はシーフードとか、ビフテキくらいしか食べないからよ、たぶん。家族で来たときも、いつも同じものを食べてたもの」
と亮子が笑って言った。
「どうせならアメリカ人が食べるようなものを食べてみたいな」
「それもそうよね。じゃぁ、前菜は何を食べる?」
「前菜?それっていちいち自分で一つずつ頼むの?前菜の次は何だっけ、スープ?コース料理?でも、高くない?」
「大丈夫よ。どれも値段は千円しないもの。二人で分ければ安いわよ」
「それじゃ、まかせるよ」
「そうね。この貝と鯛のグリルって言うのにしようかな。スモークサーモンとかもあるけど、日本にもあるものね」
「わかった」
「スープとかは?」
「欲しい。何でも」
「じゃあ、何があるかあとで聞いてみましょう。いよいよメインね。どれがいい?」
「メインてEntreeって書いてあるところの?主菜って書いてあるよ」
「そう、ステーキって言うのもあるでしょ?」
「それなら俺はステーキ12ozって書いてある。そのステーキの下にあるのもやっぱり同じ数字が書いてあるな。なんて読むのかな、ぽーたーはうす??ステーキじゃないのかな18ozって大きさのこと?」
「うん、そうだと思うけどozって単位が分からないの。ちょっと待っててね」
亮子はポシェットから小さな電子辞書を取り出すと、ozと入力して見た。
「約30gって書いてあるから、18オンスだと・・・540g!凄い量よ」
「そりゃいいや。一度そんな大きいのを食べてみたかったんだ。でも、ステーキじゃないならハンバーグかな?なんなんだろ?」
「そうね、聞いてみましょう。私は・・・そうね、このベイビーバックリブって言うのにするわ。なんか小さそうだけど、値段からすると普通みたいだし」
「アキちゃんも肉がいいの?シーフードかと思ったのに」
「私だって凄くお腹が空いてるの」
やがて係がオーダーを取りに来た。
"Hi, I'm Cherryl, serve to you today. Welcome! Do you have any drink?, sir" 「こんにちは、私はシェリルで、今日サービスします。ようこそ。何かお飲みになりますか?」
"Two ice teas, please" 「アイスティーを二つ」
"Fine! Are you ready to order, sir?" 「分かりました。ご注文はよろしいでしょうか?」
"Ya, we are starving" 「お腹が減り過ぎよ」
"Great. Can I offer our chef's specials?" 「良かった。それではシェフのお薦めを説明しましょうか?」
"Thank you, but we've decided already." 「ありがとう。でももう決めたの」
"Fine. Go ahead, sir." 「それではどうぞ」
"We have Shells and Tirapia. What's the portion?" 「貝と鯛をもらうわ。量はどう?」
"Not so much., 3 piece each." 「多くはありません。3切れずつです」
"OK, we share it, and have another one. What's your recommendation for us?" 「分かったわ、それを二人で分けて、もう一皿もらいましょう。何かお薦めは?」
"How's Assorted Plate would you like? That involves each of all appetizers we have today. But, that's pretty big." 「盛り合わせはいかがでしょう?  今日の前菜全てが一つずつ入っていますが。ただ、ちょっと量が多いですけど。」
"Hnn, well, we cancel Shell and Tilapia, and move to the Assorted." 「それなら、貝と鯛をキャンセルして盛り合わせに代えるわ」
"Fine. Would you like soup or salad?" 「スープかサラダはいかが致しますか?」
"What's Soup of the Day?" 「今日のスープは何です?」
"We have, chicken noodles, clam chowder, and tuna and cabbage." 「鶏とヌードル、クラムチャウダー、マグロとキャベツです」
「ねえ、スープは鶏か貝のクリームスープかマグロだって。どうする?」
「マグロにするよ」
「私はクラムチャウダーね」
"Tuna for him, clam chowder for me." 「マグロは彼に、クラムチャウダーは私に」
"Well, what's your main course would you like?" 「主菜は何にしますか?」
"What is this...Porterhouse?" 「ポーターハウスって何? 」
"It's a big steak. Big steak is called Porterhouse, but it's just a steak." 「ステーキです。大きなステーキのことをポーターハウスと言います。でもただのステーキです。」
「ポーターハウスって大きいステーキのことだって。それにする?」
「そうだね。一度食べてみたかったんだ」
"Ok, he takes it." 「彼はそれにします」
"Hyuuu. How would you like?" 「へぇ、焼き方はどうします?」
"nn?? Would you like what?" 「え? 何をどうするの?」
"How would you like to cook? Medium? Rare???" 「焼き方はどうします? ミディアムですか、レアですか?」
「焼き方はどうするかって?」
「まかせるよ」
"Medium please." 「ミディアムでお願いします」
"What's your side?" 「付け合わせは何にします?」
"... What's what? 「何が何ですって?」
"What's your side order? Potato? Greens? Corn?" 「付け合わせは何にしますか?ポテト?ミニサラダ?トウモロコシ?」
「付け合わせに何か選ぶみたい」
「あ、こっちのメニューにも書いてあるよ。えーと、ポテト」
"Potato? What's your style? Baked? Mashed with gravy? French Flies?" 「ポテトですか?どんな風に調理しますか?ベークドポテトか、マッシュポテトのグレービーソース付きか、フレンチフライか?」
「ポテトの種類を訊いてるみたい。ベークドポテトとマッシュポテトとフレンチフライですって?」
「どうでもいいよ。まかせる」
"He takes baked one." 「ベークドにして」
"Ok, what's do you have, sir." 「分かりました。あなたは何にします?」
"I have Baby Back Ribs." 「ベイビーバックリブにします」
"How's your side?" 「付け合わせは?」
"Greens, please." 「ミニサラダを」
"Great, all set! Thank you." 「分かりました。ありがとうございます」
そう言うと、ウェイトレスは戻っていった。亮子は大きなため息をつくと、身体中の力を一気に抜いた。
「あー疲れた。これだからアメリカのレストランは大変なのよ」
「俺なんか聞いてるだけで嫌になったよ。良くあんなに色々話せるね」
「こっちも耳ダンボで真剣だったんだから。なんとか注文できた見たい」
「いつもアメリカではこうなの?」
「たいていそうね。日本食レストランとか行けば日本と一緒だけど、普通は色々細かいことを頼まないと。NOVAで英会話するよりよっぽど疲れるわ」
亮子は本当に疲れてしまったようで、しばらくは口数も少なくなった。やがてアイスティーと一緒にテーブルの上にパンのバスケットが置かれたので、康司が、
「なんかパンが来たよ。頼んだ?」
と聞いて初めて、
「レストランではパンは食べ放題なの。あーおなかすいた。さぁ食べましょう」
そう言うと手を伸ばしてバターを付けてバクバクと食べ始めた。康司は喉が渇いていたので、一気にアイスティーを飲み干した。

「もう一つ頼んでくれる?一気に飲んじゃった」

「大丈夫。アイスティーは飲み放題なの。アメリカはみんなそうなの。すぐに注ぎに来てくれるわ」

亮子の言った通り、すぐに大きなジャーに入ったアイスティーを持った係がどさっとアイスティーをつぎ足してくれた。
二人が4つほど入っていたバスケットをからにする頃、全盛の盛り合わせが運ばれてきた。確かに大きな皿に色々載っていて見た目は綺麗だったが、どちらかというとおつまみ盛り合わせと言った感じで量としては少なかった。
二人は5分もしない内に片づけるとパンのお代わりをもらった。次にスープが運ばれてきた。あまり美味しいものではなかったが、空腹は最高の調味料であっという間に飲んでしまった。ここまで一気に食べて二人のお腹はようやく一息ついた感じだった。

そしてメインのステーキとリブが運ばれてきた。ほとんど同時に付け合わせも出てきた。鉄板の上でジュージュー音を立てているそれは、二人とも今まで見たことがないくらいの大きさだった。康司のステーキが大きいのは最初からわかってはいたが想像を超える大きさで、ちょっとした辞書並の大きさがあったし、亮子のに至ってはそれよりも大きいのではないかと思うほどのものだった。
「すごーい。こんなの見たの初めて」
「食べよう、食べよう。いただきまぁす」
しばらくの間、二人は息もつかせずに食べた。康司は両親と一緒に街の小さなステーキ屋で300gのステーキを食べたことはあったが、540gと言えばその倍近い大きさだ。アメリカの肉は美味しくないと聞いたことがあったが、思ったほどまずくはなかった。勢いにまかせてあっという間に2/3くらい食べてしまう。

苦労したのは亮子の方だった。ラム肉のステーキを頼むとあばら骨に付いたままの小さな肉が出てくることがあるが、これはその親分と言った感じで、ズラッと並んだあばら骨付きの肉に甘いバーベキューソースがかかっている。亮子はここで初めてベイビーバックリブと言うのが子供の豚のあばら骨を指していることに気が付いた。何とも言えない味で、ケチャップとソースをたっぷり付けて巨大なフランクフルトを食べているような感じだった。柔らかいので意外に食べやすいが、歯ごたえがないのでぶよぶよした感じが何とも言えない。

康司は大きな肉をザクザクと切り分け、ガツガツ食べながら言った。
「ところで、一応言われた撮影はしたけど、後はどうすればいいのかな?明日は朝の内に海岸で水着の撮影をしようと思うんだけど。まだ部屋で撮影した方がいい?嫌ならやめるけど」
康司がカメラマンとしてそう言っていることは亮子にも分かった。確かにこのチャンスを逃せば次のチャンスはなかなかこないだろう、そう思うと亮子の心は揺れた。中学の頃から誰にも言わずにじっと待ち続けた日がやっと来た、その想いが次第に膨らんでくる。
「分かったわ。撮影に関しては全部まかせる。でも、きれいに撮ってね。嫌らしいショットはいやよ」
「うん、わかったよ。明日はがんばってね」
すっかり大きな肉を食べてしまった康司はニッコリと笑った。
「それじゃ、デザートを頼みましょうか?何にしようか?」
濃い味の肉に半分ほどで音を上げた亮子は、さっぱりしたものが食べたくてウェイトレスに手を挙げた。

"Hi, how's everything?" 「いかがでした?」
"It's pressed us so much." 「とても印象に残りました」
"Great, do you have some desserts?" 「よかった。デザートを召し上がりますか?」
"Fine, but our room in stomach became small. Do you have any tiny ones, like fruit....?" 「そうね、でもお腹に余り入らないの。何か小さなものあります?フルーツとか?」
"We have Three Berry. That's three types of berries." 「ベリー3種があります。3種類のベリーが入っています」
"OK, we take two." 「二つ下さい」
"Do you have ice- cream on top of that?" 「アイスクリームを上に載せますか?」
"No, it's over enough!" 「いいえ、多すぎるわ」
"Do you have coffee or cappuccino?" 「コーヒーやカプチーノは?」
"Two hot teas, please." 「紅茶を二つ下さい」
"Thank you." 「ありがとうございます」
「いちいちこんな事しないとデザートも食べられないの?面倒だよ」
「だからファーストフードが流行るのかもね?私も、明日まではもう喋りたくないわ。でもお金払うときに話さないといけないのか。あーあ」
間もなく二人の前に注文のものが届いた。苺は見慣れているのですぐに分かったが、あとは知らないフルーツだった。亮子は訊いてみようかと思ったが、さすがに頭が疲れていて上手く英語がでてこなかったので黙っていた。不思議そうに見つめる二人に、ウェイトレスは気を効かせて、
"This is raspberry, strawberry, and blueberry."
とニッコリ笑って教えてくれた。生のラズベリーもブルーベリーも二人は初めてだったので、余り美味しいとは思わなかったがあっという間になくなってしまった。
食べ終わるころにはレストランは閉店の準備をしているようで、後片付けが始まっていた。亮子は意を決してカウンターに行ったが、あっという間に帰ってきた。
「あれ?お勘定?もう終わったの?」
「うん。部屋代といっしょにするかって訊くから、そうしてって言ったの。あっという間に終わっちゃった」
「お金を払うのは便利なんだね」
「いかにもアメリカって感じしない?」
「そうかなぁ?」

二人が部屋に帰ってきたのは9時半頃になっていた。

 

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