第24部
二人は海岸へ行き、傾き掛けた日差しを浴びながら二人だけの時をフィルムに焼き付けていった。亮子と康司の息はぴったりと合っており、亮子が振り向くとそこにはレンズがあり、康司の構えたフレームの中に亮子の方から飛び込んで何もせずに構図がピタリと決まった。日差しが斜めになってきているので陰が協調され、亮子の顔も身体も凹凸がはっきり分かる。康司は夢中でシャッターを切りながら、ファインダーの中で踊るように動き回っている亮子の一瞬の表情や仕草を逃すまいと亮子の周りをぐるぐる回った。亮子にしてみれば、まるで自分が本当のモデルになったかのようで、夢のような時間だった。康司はフィルムを入れ替える短時間の撮影休止以外はひたすらファインダーの中の亮子を見つめ続けていたが、時間はあっという間に過ぎていき、気が付くとフィルムの残りは後2本になっていた。
「あ、もうすぐフィルムが無くなる」
「え?どうしたの?」
「うん、フィルムがもうすぐ無くなるんだ。買ってくるよ」
「どこで?ホテルに売ってた?」
「そうか・・・・無かった、かも・・・」
そこで初めて撮影のリズムが止まり、康司は改めて周りの景色をゆっくり見てみた。もうだいぶ日が傾いてきている。日が水平線にかかるまで後1時間もないだろう。これからどこかホテルの外に買いに行っても、戻ってくる頃には撮影できないのは明白だった。
「ねぇ、康司さん。ちょっと休まない?」
「うん、そうだね」
二人は大きな椰子の木の下にバスタオルを敷き、機材だのタオルや水のボトルが入ったバスケットを横に置いて二人並んで海を眺めた。
寄り添って海風を浴びる二人の目の前で大きな夕日がゆっくりと沈んでいく。それは二人にとって、出会ってから今日までの大きな目標がひとつ終わってゆくことを表していた。
「康司さん、戻ろうよ」
「寒くなってきたの?」
「ううん、このままここにいたら泣いちゃいそうだから」
「じゃ、戻ろうか?」
二人は部屋に戻ると、亮子はシャワーを浴びに行き、康司は機材とフィルムの整理をした。二日間で撮影したフィルムはかなりの量になり、機材の整理も含めて思ったよりも大変な作業だった。その間に亮子はシャワーから出てきて髪を乾かし、ちょっとベッドに横になるつもりが、いつの間にか寝てしまった。自分でも気づかないうちにかなり疲れていたらしい。
康司が機材の整理を終わったとき、亮子は完全に寝てしまっており、一緒にベッドに入ろうかとも思ったが、あどけない寝顔を見ると、それも可哀想な気がした。一度軽く声をかけてみたが、亮子は少し反応しただけで起きなかったし、寝顔を見ているのもなんか幸せな気分だった。
『起さなかったら、アキちゃん怒るかな?』そんな気もしたが、しばらくそっとしておき、康司は明日帰国できるように荷物の整理を始めた。
亮子が起きたのは完全に夜になってからだった。
「ううん、あ・・・れ・・・寝ちゃった?」
「お腹空いた?」
「うん、だけど・・・康司さん、寝かせてくれたの?」
「寝かせたわけじゃなくて、アキちゃんが寝ちゃっただけだけど、しばらくそうして置こうと思って」
「そんな・・・ごめんなさい。寝るつもりじゃなかったのに」
「いいよ」
「ごめんなさい。ベッドに来てくれてもよかったのに」
「そうしようかなって思ったけど、そうするとまたアキちゃん、寝られなくなるし」
「そうか・・・でも、ありがとう」
「いいよ。さぁ、夕食を食べに行こうか?」
「康司さん、またあのレストランに行きたい?」
「え?どこかほかに行くの?」
「ううん、ここで食べちゃ、だめ?」
「ここで?」
「うん、ルームサービスって言うの」
「それって映画とかでやってるやつ?高くない?」
「そんなことないみたいよ」
「それならそうしようよ。アキちゃんと二人でいられるし」
「じゃあ、何を食べたいの?電話するから教えて」
「わかんないよ・・俺」
「またビフテキがいい?」
「それもいいけど、せっかくだから違うものも食べてみたいしなぁ。アキちゃんは?」
「私だって、せっかくなんだから違うもの食べたい」
「それじゃ、そうしてみようよ。何が来るかわかんないけど」
「私だってよくわかんないけど、やってみるか」
亮子はメニューの書いてあるリストをしばらく眺めていたが、やがて意を決したように電話を取り上げると、何やらつっかえつっかえながらもいくつかの注文をした。そして電話を切ると、
「さて、何とか終わったから、あとは来るのを待つだけ。混んでるから少し時間がかかるって30分ぐらいだって」
と言うと康司が座っているラブソファの横に来た。
「そうか、ほかのグループが着いたんだ」
「そうみたい」
康司が何気なく亮子を横に座らせると、
「康司さん、ここで撮った写真、いつごろできるの?」
「そうだね、明日帰ってからすぐに現像してもいいんだけど、強い光で撮った写真だから、念のため下調べしてからにしたいんだ。現像は一発勝負だから。だから、そうだなぁ、あさっての夕方にはできると思うけど。また焼付けを一緒にやる?」
「ううん、康司さんがうまく現像してくれますようにってお祈りしてる」
「一緒にやろうよ」
「私がいると気になるかもしれないから、康司さんにはベストでやってほしいの」
「そうかぁ、ま、いいか、わかった。出来上がったら電話する」
「うん、待ってる」
「がんばるよ」
「ねぇ、康司さん、あすの朝は忙しくて大変だと思うの」
「そうだね、朝早いからね」
「だから、今晩は二人でゆっくり過ごしたいの」
「うん、だからこうしてるんでしょ?」
「そうなの。康司さん、これが私からのお礼、ね?いいでしょ?」
「お礼なんて・・・」
「そうしたいの。私の気持ちなの」
「うん」
「だから、いっぱい優しくして」
「うん」
康司は亮子の体を引き寄せると、自分のひざの上に横たえて、ゆっくりとキスをした。
「でもね、何回も入れるのは無理みたい」
「え?どうして?」
「なんか痛くなってきたみたいなの」
「そうかぁ、それなら日本に帰るまで我慢してもいいよ」
「ううん、それはいや、ちゃんとして」
「一回だけ?」
「わかんない、でも、いっぱいしてね」
そのときになって康司は、亮子がTシャツの下にまだビキニを付けていることに気がついた。ゆっくりとそれを指でなぞりながら脱がしていく。
「服に着替えたほうがよかった?」
「ううん、どっちも可愛いからおんなじだよ」
「ベッドに連れてって」
康司は亮子の体を抱き上げると、ゆっくりとベッドに向かった。亮子は康司に抱き上げられながら、いよいよこの旅行が最後の段階に入ったことを実感した。
亮子の体をベッドに横たえた康司は、ゆっくりと指でなぞりながら胸の膨らみを露わにしていった。
「やっぱりまだ恥ずかしい」
「大丈夫。すぐに気にならなくなるから」
「やだぁ、なんかエロい会話してるぅ」
「じゃあ、こうすればそんな会話しなくて済むかな・・・」
康司はふくらみを指で裾野からゆっくりとなで上げ、先端をそっと口に含んだ。
「アン、感じる・・・・」
さらにゆっくりと揉み上げて明子が喜びの声を上げるまでたっぷりと可愛らしい乳房を楽しんだ。
「ああぁぁ、康司さん、上手にされると・・・ああん、だめよぉ」
「夢中になってごらん」
「だめぇ、夢中になったらぁ」
「どうして?」
明子の胸を揉みながら嘗め回していた康司が顔を上げた。
「もっとして欲しくなっちゃうぅ」
「してあげるよ」
「夕食がこれから来るのにぃ」
「まだ時間がかかるって言ったくせに」
康司は亮子のとがった乳首を舌で転がしながら言った。
「だってぇ、アアン、本当にぃ、欲しくなっちゃうぅ」
亮子は自分の奥が濡れ始めてきたことに気がついた。いつの間にか自分の体は康司の挿入を待ち望み始めている、そう思うだけでさらに康司が欲しくなってきた。しかし康司はまだ胸を愛し始めたばかりだ。自分のほうがどんどん欲しがってしまいそうで、亮子は恥ずかしくなった。だからじっと康司が先に進んでくれるのを待っていたが、康司はなかなか胸から先へと進もうとはしなかった。その間亮子は声を上げながらじっと耐えるしかなかった。