第26部

 「くぅぅぅーーっ、ああぁぁ、す、凄いぃぃぃ」

亮子は夢中になって康司の与えてくれる快感を貪った。こちらに来てからどんどん快感のレベルが上がっていくような気がする。自分の身体なのにどうしてこんなに感じるのか理解できないほど亮子の身体は急速に開発されていった。

「それじゃぁ、今度はこうしてみようかな?」

そう言うと、康司は亮子の中に入っている指先を少しだけ曲げて、ぐりぐりと中で回転させてみた。

「うわぁぁぁぁっ、な、何したの?あああぁぁ、奥からぁぁっ」

亮子は新しい快感に再びシーツを握りしめた。

「ほうら、こういうのも良いだろ?」

しかし、亮子にとっては指で愛されれば愛されるほど、自分の中にしっかりとしたものが欲しくなってくる。康司に感じさせられるのは嬉しいのだが、それは所詮前技でしかない。

「康司さん、ねぇ、もう良いでしょ?」

「なあにかなぁ?」

「意地悪しないでぇ。ね?」

亮子は仰向けになると、康司に向かって手を差し出した。

その時、部屋の入り口のチャイムがピンポーンと鳴った。

亮子があわててベッドカバーを被って身体を隠す。康司は全裸にジーンズとTシャツを纏って出て行く。

「アキちゃん、なんて言えばいいの?」

「わかんないからとにかく聞いて」

康司はこわごわとドアを開けた。この状況では亮子に通訳を頼むのは無理だ。康司自身も二人の大切な時間をじゃまされたことに少し腹を立てていた。

「Hai, do you enjoy your stay?」

髪に花をつけた女性がニコニコしながら康司にも一本の花を差し出しながらにこやかに話しかけてくる。とにかくトラブルとかではなさそうなことに、とりあえずホッとした。相手が何を言っているのかよくわからなかったが、かろうじてENJOYだけは聞き取れたので、よくわからないながらも

「Y...Yes....」

と小さな声で言うと、女性は大げさなジェスチャーを交えて、

「Oh, it's good! We have a good news right now. Cocktail

party will be held this evening on deck in administration

building. Do you have an idea to join to the party?」

さすがに何を言われているのか全然わからなかったが、パーティーがどうのこうのと言っているような気がしないでもなかった。

しかし、9割以上の言葉を聞き取れないので、さすがになんと答えて良いのかわからない。亮子がいてくれれば、と思いながらも聞き返してみる。

「ホワット???」

いきなりブロークンな英語を返されて、女性もびっくりしたらしい。う〜ん、と考えてから、簡単な英語をゆっくりと話し出した。

「WE HAVE A PARTY.... OK???」

ゆっくり話しても、日本語のように話すわけではないから聞き取りにくいことには全く変わりがない。康司にはWEとPARTYだけ聞き取れた。たぶん、何かのパーティーがあると言うことなのだろう。そこまではわかった。

しかし、どんなパーティーなのかわからない。『”どんな”って英語でなんて言うんだっけ』頭の中で記憶をひっくり返してみるが、出てきた単語は結局同じだった。

「ほわっと・・・ぱーてぃー???」

相手の女性は自分の言葉が通じていないのだと思った。表情から諦めの感じが読み取れる。しかし、何とかここは無事に切り抜けたい。康司はとりあえずパーティーがあることだけはわかったという意味で、

「ぱーてぃー???」

と言いながら、騒ぐふりをしてから、地面を指さしたり、海岸を指さしたり、管理棟を指差したりしてみた。

すると、意味だけは通じていることがわかったと見えて、再び明るい表情で話し始めた。

「Yes, Yes, PARTY, THERE!」

と言って管理棟を指差した。どうやら、あっちでパーティーがあるらしい。康司も自分の言いたいことが通じたことに気をよくして、何のパーティーだか聞いてみることにした。

「ほわっと、ぱーてぃー????」

康司は拍手をする格好をしたり、誕生日に蝋燭を吹き消す格好をしてみたり、やってみた。

相手の女性は少し不思議そうな顔をしていたが、康司が何度も同じことを言いながら繰り返すので、パーティーの種類を聞いているのだと言うことに思い当たったらしい。今度は女性が飲み物を飲むふりをしてくれた。

康司はパーティーと言うのが飲み物を飲むことだとやっと理解したが、それをどうやって伝えればいいのかわからない。第一、飲むって英語でなんて言うのか思い出せないのだ。とにかく同じことを言えばいいと思って、

「Oh, Party... PARTY!! MEAT, LEMON, ORANGE, EAT! EAT!」

と言いながら、一生懸命飲んだり食べたりふりをした。

女性はまさか、肉のほかにレモンやオレンジばかり食べたいと言っているとは思わなかったらしいが、通じていることはわかったようで笑いながら頷いている。

『そうだ、時間を聞かなきゃ!』と思った康司は、実際にははめていないが腕時計を指すふりをして、

「ほわっと、たいむ?」

と聞いてみた。さすがにこれはすぐに通じたと見えて、

「Eight, 8 o'clock!」

と答えてくれた。

ただ不幸なことに、相手は時間まで確認してきたところからみて、参加の意思があると思ったのだろう。いきなり、

「Two people???」

と指を二本立てて見せた。

康司にも人数を確認しようとしていることは通じたので、

「いえーす、つー!」

と指を二本立てた。すると女性は、

「Thank you for your joining! We're looking forward to see

you again!」

と言うと、バイバイと手を振って戻っていった。

康司は申し込みをしたなどとは全然思っていなかったから、とにかく亮子にこのことを伝えようと部屋の中に戻ろうとしたとき、ドアの陰に亮子がTシャツとスカートだけ着て立っているのとぶつかりそうになった。

「アキちゃん、いたの?」

「康司さん、パーティーに出るの?」

「ううん、とにかくそれだけアキちゃんに言おうと思って」

「たぶん、申し込みをしたと思ってるわよ?」

ええ?してないよ。何にも」

「そうよね、わかった。私が断っておくわ」

「近くにいたのなら、助けてくれればよかったのに」

「康司さんがちゃんと会話できるって感心してたの。どうしようもなかったら助けようと思ったけど、その必要全然なかったもの。後は私の仕事ね」

亮子は電話を取ると、素早く部屋番号を伝えてから、

「So, we've changed our plan. We don't go to the party,

OK? Yes, we cancel it, sorry about that」

と言うと、康司の方を見て、

「せっかく康司さんと二人でいるのに、にぎやかなパーティーなんて行く気、起きないわ。そうでしょ?」

と笑った。

康司は、亮子が康司と二人っきりで過ごしたがっているものだと思い、嬉しくなった。

「そうだよね。そうさ、アキちゃんの言うとおりだ」

と喜んで答えた。康司はこのまま亮子をベッドに連れ戻すつもりだった。そしてさっきの続きをもっとじっくりと楽しみたかった。亮子を黙って引き寄せると、亮子も素直に身体を預けてくる。そのままじっくりとキスを楽しんだ。

そして、そのまま亮子をベッドへと連れて行こうとしたが、亮子は、

「ちょっと待って、せっかくだから海へ行ってみない?」

と言いだした。

「え?撮影ならもうほとんど終わってるよ?」

と康司が何とか部屋に引き留めようとするのだが、

「日もまだ残ってるし、もうすぐ夜でしょ?行きましょうよ」

と甘えてくる。

こうなってはもうどうにもならない。康司はとても残念そうに、

「わかったよ。支度をしておいで」

と言った。

その言い方があまりに残念そうだったので亮子はとても可笑しかったが、

「また部屋に戻ってくるんだから、ね?」

と言って康司に軽くキスをしてくれた。

亮子は康司があまりに素直に感情を出すので、『康司さんて、子供みたいね』と思った。

亮子が支度をして戻ってくると、二人は部屋を出て海岸に向かった。短い道だが、もう何度も通ったので、なんだかとても通い慣れた道のような気がする。海岸に出ると、確かにもうすぐ夕方になろうとしている太陽が海の上に浮かんでいた。

「どこに座ろうか?」

「どこでも良いけど・・・」

「海岸の上は風が強いね。少し木の陰の方が砂が飛んでこなくて良いよ」

「そうね、ゆっくり見たいから」

亮子も同意して、海岸の近くの椰子の木の隣に灌木が茂っている場所を見つけ、ビーチタオルを敷いてから二人並んで海を見ながら座った。ここなら風もほとんど来ない。

ふと気がつくと、周りには誰もいなかった。

「ここには俺たちだけみたいだね」

「すてき、貸し切りなのね」

しばらく亮子はじっと海を見ていたが、やがてポツンと言った。

「康司さん、ありがとう」

「ううん、こっちこそありがとうだよ」

「あのね、本当に嬉しいの」

「うん」

「小さいときからの夢が叶うなんて、本当に奇跡みたい・・・・」

「そうかな?」

「うん、康司さんと一緒にここに来られて、私、幸せ」

「良かった。そう言ってくれて」

亮子は康司にゆっくりと寄りかかると、そのまま身体を預けていった。康司はそれを優しく受け止め、亮子の身体をそっと抱き寄せると、目をつぶった亮子の唇が康司を待っていた。それは赤い夕日を受けてとても輝いて見えた。

二人の唇が重なると、海風が二人の周りを吹き抜けていった。

最初は優しく亮子の髪を撫でていた康司だったが、自然にその手は亮子の上半身を撫で始めていた。しかし亮子は全く嫌がらず、康司にすべてを任せていた。やがて亮子の身体がゆっくりと反応を始めた。

戻る