第43部
「アキちゃん、大好きだよ」
康司はもう夢中になっていた。亮子は抱きしめられたままソファへと押されていく間、何かをしなければ、と思った。
「そうだ、康司さん、私を撮って」
「え?アキちゃんを、今?」
思いつきで言ったのだが、康司には覿面の効果があった。康司の手が止まり、亮子がスムーズに康司から離れる。
「そう、まだ少しくらいフィルムはあるでしょ?」
「え?あぁ、中途半端になった最後のフィルムは短く切ったから10枚ちょっとなら」
「それならここで私を撮って。その間に乾くでしょ?」
「ポートレートか、良いけど、Tシャツだしなぁ・・・」
それなら、私バッグにワンピが入ってるから、それで撮って。すぐに着替える」
そう言うと亮子は部屋の影で大急ぎでワンピースに着替えた。これは単に友達に貸していたのを朝受け取ってきただけで、着る予定などなかったのだが、薄手のワンピはそんなに嵩も無いので持って歩いていただけなのだ。亮子が戻ってくると、康司はその気になったらしく、条件を付けて来た。
「うん、いいよ。その代わり、このフィルムはアキちゃんから俺へのプレゼントにしてもいい?」
亮子はちょっと考えたが、大したものにはならないと思い、承諾した。
「いいわ。でも、脱がないわよ。それでいい?」
「うん、いいよ。でも、少しジッパーを下げたり、ポーズを作るくらいはいいだろ?」
「はいはい。カメラマンさんは注文が多いわね」
「やった。すぐに準備するね」
康司はそう言うと、あっという間に片付けを済ませ、撮影用のスペースを作った。ただ、カメラはレンタルしたときのものではないので最高級品というわけには行かない。それでも康司はなんとか撮影できるくらいの環境は作った。
「それじゃ、まずビューワーの前に座って、それを覗いている感じで・・・・・・・そう、もうちょっと身体を起こして、背筋を伸ばして-・・・うん、そう。それじゃ、1枚目、行くよ」
康司の声がかかり、撮影が始まった。
「次、そっちの流しの前に行って。そう、背中を見せて。ちょっとだけジッパーを下げて、うまく上がらないーって感じで。ネガの向こうを見て。そっちに俺がいると思って。そう、その首の角度、良いよ」
「どうしてジッパーを下げなきゃいけないの?」
「洋服を着た背中ってラインが単純だから殆どグラビアにも出ないだろ?でも、こうすると可愛らしいし、綺麗だし、おまけにアキちゃんの首がネガをぶら下げたほうを見てるから、自然にそっちにも目が行くし、まぁできあがりを楽しみにしていてよ」
「うん、わかった」
「それじゃ、次はネガをぶら下げた方に行って、ちょっと手でそれを左右に分けて顔を出してみて。うん、カメラを見て。ストロボを見ちゃダメ、レンズを見て。いくよ」
康司はそれから少しの間、撮影に夢中になった。亮子もだんだんとその気になってきたのか、最後には背中のジッパーを全部下ろして両手で胸を隠し、ブラジャーの背中を丸出しにしたショットも撮らせてくれた。
「もう、大サービスなんだから」
「うん、ありがとう。アキちゃんの背中、とっても綺麗だから良い写真になるよ」
「背中ばっかり撮らないでよ」
「何言ってるの。顔のほうが枚数は多いよ」
「知ってるけど」
「ほら、服を戻しておいでよ。ネガも乾いたよ」
「いい。このままにする」
「わかった。それじゃ、これを全部ネガケースに入れなきゃね」
二人は手分けしてネガを丁寧にケースに入れると、全て片付けを終わった。
「それじゃ、行こうか」
康司はお金を払ってラボを出ると、途中で中華の定食屋に寄って食事をしてから亮子を家に連れて行った。亮子はネガが綺麗に仕上がったのが嬉しいらしく、ニコニコしながら康司についてきた。康司の家の方向に誘ったとき、亮子はちょっと迷ったみたいだったが、すぐにニッコリ笑うと、
「あんまり遅くしないで・・・・」
とだけ言った。
康司は亮子を自分の部屋に上げると、すぐに抱きしめた。
「康司さん・・・・」
「アキちゃん、好きだよ」
「康司さん、嬉しかった。とっても・・・」
「アキちゃん・・・」
康司は亮子をベッドの上に横たえると、そっとキスをした。
「康司さん」
「どうしたの?」
「この前、ここに来たときは撮影前だったし、バージンだったし、・・・そう思うと不思議なの」
「そうだね。まだ一週間くらいしか経ってないのにね」
「不思議」
「不思議・・・か。でも、不思議じゃないよ」
「どうして?不思議よ」
「不思議じゃない訳をこれから教えてあげる」
そう言うと康司はキスをしながら亮子の膨らみをそっと撫で始めた。もう康司は焦っていなかった。ゆっくりとした愛撫で亮子をその気にさせていく。
『あ』亮子は目をつぶっていてすぐに身体が反応し始めたのがわかった。康司の言う通り、この前このベッドに上がったとき、身体はこれほどすぐに康司の愛撫には反応しなかった。この身体の反応には自分が何度も康司を受け入れた体験が確実に沁み込んでいるのだ。『このままだと夢中になっちゃうかも・・・』亮子はそう思いながら康司の愛撫を楽しんでいたが、少しして息が弾みだした頃には『ここまできたら夢中になっちゃおうかな』と思い始めていた。
そのとき、康司の携帯が光と共に鳴り出した。康司は、
「ごめん、止めてくる」
と言うと、机の上の携帯を一瞬見てからすぐに止めて戻ってきたが、亮子は康司の一瞬の表情の変化を見逃さなかった。理由は亮子自身にも分からなかったが『きっとサヨだ』と直感した。すると、康司を盗られたくないと言う思いが湧き上がってきた。
「ごめんね」
康司がそう言うと再び亮子に優しいキスと胸への愛撫を再開した。『アン、感じ易くなってる』亮子は康司を独占したいと言う想いからか、先程よりも康司の愛撫に反応し始めた。そして、康司の手が背中へと回ると、身体を康司に寄り添うように回してジッパーの下がる音を聞いた。
昌代は康司の携帯から直ぐには何も返事が返ってこないことなど気にしてはいなかったが、その後で電話をしたときに康司の携帯に電源が入っていないことを知ると、康司は亮子といることを確信した。この時間になっても二人でいると言うことは、何をしているのか聞くまでも無い。
『まさか二人で宿題をやってる、なんてあるわけ無いわよね』そう自虐的に嘲笑してみたが、気は重くなるばかりだった。『康司さん、やっぱりアキに夢中になってる。きっとアキは離れていくのに。でも私じゃ止められないし・・・・康司さん・・・』昌代は自信に溢れた康司が大好きだった。しかし、きっとこれから康司は亮子が離れていって悲しい思いをすると思った。亮子は自分の目的を達成するためには周りを最大限利用する女の子なのだ。
康司は亮子にキスをしながら背中のジッパーを下げ、そのままそっとベッドに横たえるとワンピースの袖を引き抜いた。亮子は康司の背中に手を回していたので、気が付くと上半身を脱がされており、いきなりワンピースが無くなったので驚いた。
「えっ!康司さん、こんなにあっという間に脱がしちゃうなんて」
亮子は胸を押さえて驚いている。亮子はキスをしている間に康司が背中のジッパーを下げたことに気が付かなかったのだ。
康司は胸を隠している亮子の手をそっと持ち上げると、
「アキちゃん、これからアキちゃんの身体が前とどれくらい変わったのか、きっと良く分かると思うよ」
と言って、小さな布地に包まれた膨らみを愛撫し始めた。
「ああん、分かった、分かったからぁ。もう分かってるから教えなくても良いの」
「どうして?知りたいんでしょ?」
「もう分かっちゃったから良いの」
「え?もういいの?」
「そう。だって・・・・・」
「なあに?」
「私の身体、キスされただけで反応したから」
「反応した?」
「そう」
「どんな風に?」
「男の人は知らなくて良いの」
そう言うと亮子は康司の首に手を回して引き寄せ、キスから首筋に康司の唇を受け始めた。
「ああぁぁ、康司さん。やっぱり康司さんて・・・、あん、上手なんだ」
「何言ってるの?」
「内緒なの」
「二人だけでこんな事してるときに内緒なの?」
「そう、内緒」
亮子は軽く喘ぎながら康司が胸へと降りていく時を待っている。康司も今は会話よりも亮子を感じて楽しみたかった。
「アキちゃん、それじゃ、まず脱がすよ」
「どうしたの?大丈夫よ。そんなに急がなくたって良いのにぃ」
康司が亮子を脱がそうとするので、亮子は笑って康司のしたいようにさせることにした。
亮子が許してくれたので、康司は亮子のワンピースを完全に脱がしてからブラジャーを外し、更にパンツにも手を掛けた。
「康司さん、もうこれも?」
「そうだよ。まずアキちゃんの身体を確かめたいんだ」
「恥ずかしいの・・・・」
亮子はそう言いながら手で抑えている。康司は早く脱がして全裸にしてからゆっくりと亮子の身体の隅々まで愛したかったが、亮子がパンツをギュッと抑えているのでこれ以上は無理だと思った。
「分かったよ。それじゃ、少ししてから脱がすよ」
「そんなこと、言わなくたって良いのっ。あんっ」
亮子は康司の唇が再び首筋に辺り、今度は明確な意志を持って胸へと下がっていくのを感じた。亮子は康司の愛撫に体の芯が熱くなってくるのを感じながら『やっぱり康司さんに抱かれると安心するんだな』と思っていた。
康司は唇を小さいが固い膨らみへと移すと、唇と両手の指を両方使って二つの膨らみを裾野から刺激し始めた。それは早く亮子を感じさせてみたい、と言う男の本能と、大切な亮子を優しく扱いたい、と言う彼女への愛情から出たやり方だった。指で膨らみの裾野を撫で回しながら唇で頂上をゆっくりと目指していく。
「あ・・あんっ、そんなぁ、康司さんっ、それは、だめっ、ああんっ、そんな事されたら、あうぅ、声が、声が出ちゃう」
「声を出して良いんだよ。外に漏れたりしないから」
「本当?」
「うん、ペアガラスになってるし、直ぐ近くの家まで少し距離があるから」
「本当ね?」
「うん、本当だよ」
「ああぁんっ、我慢できなくなって来るぅっ」