第60部
昌代は待っている間、康司に撮ってもらった写真を眺めて過ごした。すると、撮影中は自分でも全く気が付かない表情をしていることを知り、とても不思議な気持ちになった。
「私って、こんな顔をしてたんだ。康司さんはどうしてこんな私の写真が撮れるんだろう?いつもこんな顔なんてしたこと無いはずなのに・・・・」
昌代はそう思いながらカメラの液晶を食い入るように見つめていた。
「どう?気に入った?」
「うん。凄い写真ばっかり。とっても綺麗な写真だもの。私って、まるでモデルみたい」
「そうだよ。今日はモデルだよ」
「ええっ?そうなの?」
「だって、写真を撮ってただろ?あんなにたくさん。それってモデルなんじゃないの?」
「ううん、全然思わなかった。だって、それは二人で出かけたときにとってもらってただけで・・・」
昌代は少し恥ずかしそうに言葉の最後の声が小さくなった。本当は『二人でデートしてたときに』と言いかけたのだ。
「今日は良いモデルだったよ」
「そう?ねぇ、それじゃ解説して」
昌代は、康司に人目を気にせずくっつくにはこれに限る、と思った。
康司が熱心に写真を解説していると、直ぐに水上バスが来た。昌代は水上バスも初めてだったので、ほんの数分の短い船の旅だったが、とても気に入った。特に、康司に肩を抱かれて風に吹かれているのは最高だった。康司はまだ熱心に写真の説明をしていた。
船が桟橋に着くと、二人は歩いて浜松町の駅に向かった。それほど距離はないが、余り人通りのないビルの間の静かな道が続く。
「ねえ、さっき、浜離宮で戻りたいって言ったじゃない?」
「うん。言った・・・・」
「どうして戻りたかったの?何か撮って欲しい写真があったのかな、と思って」
康司があくまで写真のことを言うので昌代は少し可笑しくなった。
「ううん、もういいの」
「いいって、どういうこと?」
「ちょっと、あそこだったらいいかなって思っただけ」
「なにが?」
「フフッ、それは内緒」
「そんなこと言うなよ。なんなのさ」
「知りたい?」
「もちろん」
「どうしようかな?・・・・あのね・・・・・・・」
「もったい付けるなよ」
「鴨を見張る小屋の中でしたことなの・・・」
「え?・・・・・それじゃ・・・・・もしかして・・・」
「しーらないっ」
「なんなんだよ」
昌代は笑いながら小走りに先を急ぎ、康司は後ろから追いかけた。
「待ってよ。ねえ」
「はははっ、いや」
「おい」
「きゃあ」
「なんて声出してんだよ」
「変な声で悪かったわね」
昌代は笑いながら康司に抗議した。
「ねぇ、これからどこ行くの?」
「え?これから?」
康司は聞かれて戸惑った。撮影はあらかた終わったし、これからのことなど考えていなかったのだ。
「昌代はどこに行きたいの?」
「康司さんの行きたいところ」
「そう言われても、お金、無いしなぁ」
「ねぇ、それなら今日撮った写真、どうするの?」
「もちろん、これからパソコンに落として画像処理してから印刷だけど」
「それは自分の部屋でやるんでしょう?それなら康司さんの部屋に行きましょう」
「いいの?」
「うん」
「それじゃ、途中で何か買っていこうか?」
「奢ってくれるの?」
「そうだな。あんまりお金無いけど、コンビニで良ければ」
「嬉しい」
「でも、高いのはダメだぞ」
「うん、康司さんと一緒にいられれば何でも良いの」
「え?」
「あ・・・・・・」
昌代は思わず康司に言ってしまってから後悔した。昌代の心の中で康司が大切になっていることはお互いに確認しているが、ここまで直接言ったことはなかった。急に黙り込んでしまった昌代を康司が不思議そうに覗き込んでいた。
それから1時間半後、昌代は康司の部屋にいた。昌代の前にはパソコンのスクリーンがあり、今日撮影してきた写真が順に映し出されている。このソフトは写真を画像処理するためのものなので康司の指示通りに画面をクリックしているのだが、昌代の瞳は既に虚ろになっていた。
「だいぶ輪郭が強調されたろ?それじゃ、ガンマ値を見てみようか?『画像処理』から『画像情報』を選んで『ガンマ』をクリックして」
康司の声が昌代の直ぐ後ろですると、昌代はゆっくりとマウスを動かして言われた通りにしたが、その動作はかなり遅かった。
「・・・・・・んっ・・」
「ほら、ガンマ値の分散が平均化されたのが分かるだろ?」
康司の声はあくまでも冷静だ。しかし、昌代は直ぐにでも大きな声を上げてしまいそうで必死に声を堪えていた。
「・・・・・・」
「わかった?」
「うん・・・・・うぅぅ・・・・・」
昌代は何かを堪えようとして必死に机に掴まっている。
「それじゃ、よいしょっと・・」
康司が少し腰を動かした。
「ああっ、だめえっ、ああんっ、いやぁっ」
とうとう昌代は沸き上がってくる感覚に耐えられずに声を上げてしまった。今、昌代は椅子に座った康司の上に座っている。ちょっと目には単に康司の上に甘えて座っているだけのようにも見えるのだが、ミニスカートは捲れ上がっており、その下にパンツは穿いていなかった。
そして康司から延びた固い肉棒は既に先端が昌代の中にすっぽりと入っている。
「それじゃぁ、今度はセピアに処理してみようか?」
康司は先端がどんどん締め付けられ、昌代の中が潤いで満たされているのを感じながら満足げに次の操作に入ろうとしていた。
昌代の肉壁は先端だけしか埋め込まれていない肉棒を締め付け、更に奥まで欲しいと言わんばかりに活発に擦り上げており、中から少しずつ液体を吐き出し続けていた。最初康司の上に座ったときには肉棒の先端部分が当たっていただけだったが、昌代の中が潤ってくると自然に先端を飲み込んでしまったのだ。
昌代は何とか腰から沸き上がる快感を無視しようとした。しかし、やっと感覚を押し殺しても康司が少しでも動くと一気に快感が身体の中を吹き上がる。しかし、先端しか入っていないので夢中になれるほどの快感は得られず、中途半端な快感に昌代は身を焦がし続けた。
「康司さん、もうダメ、お願い、許して・・・」
「ベッドに連れて行こうとしたのに、写真が見たいって言ったくせに」
「こんなのいやぁ・・・」
「どうしてだ?入れて欲しかったんだろ?」
「そんな風に言っちゃだめぇ」
「何言ってんだよ。喜んでるから中に入っちゃったんだろ?」
「ああん、もう我慢できないぃ」
「何言ってんだよ。もう入ってるだろ?抜いた方が良いのか?」
「そんなのいやぁ」
昌代は何とか腰を振って少しでも肉棒を自分の奥へと導こうとしたが、康司が腰を大きく突き出していないのでいくらやってもこれ以上は無理だった。
「それならこっちを可愛がってやるよ」
そう言って康司は昌代のTシャツを少し捲り上げると、ゆっくりと腹の方から肌を撫で上げていった。昌代の肌は亮子のように吸い付く感じではないが、とても滑らかで張りがある。それに亮子よりもプロポーションが良いのでくびれた腰から胸へと撫で上げていくと女の子の身体を探っているという実感が強い。康司の手は柔らかい布地に包まれた膨らみまで来ると、全体を確かめるように撫で上げ始めた。
「いやぁ、今そんなのはぁ、ああん、いやぁ」
昌代はゆっくりと布地の上から撫で上げられる感覚と腰から沸き上がる感覚とのギャップに、康司のソフトな愛撫を嫌がった。
「どうして?『優しくして』って言ったのに?」
「言ったけどぉ、こんなのはいやぁ」
「どうしたいんだ?」
「ベッドに連れてって、お願い」
「ベッドでどうしたいって?」
「いっぱいして。ね?ベッドでぇ」
「ベッドに座って同じ事しても良いの?」
「同じのはいやぁ、ああんっ、お願いっ」
康司は直ぐに昌代を満足させるつもりはなかった。
実はこの部屋に二人が入って来た時、直ぐに二人は抱き合って唇を奪い合った。夕方近くになれば康司の両親は店で仕事の準備に忙しい。人目を気にする必要はなかった。抱き合った二人は一瞬にして夢中になった。
「康司さん、優しくして、あうっ」
昌代は首筋に康司の舌がヌメヌメと這っていくのを感じながら喘いでいた。
「昌代。ありがとう。嬉しいよ」
「康司さん、私も、嬉しいの。ああん、そんなにしないで」
康司の手は昌代のTシャツの中に入り、ブラジャーへと伸び始めていた。昌代は意識に霞がかかっていくようなあの独特な感覚を感じながら、このまま求め合ったら直ぐに最後まで行ってしまうと思った。そして、せっかく二人の気持ちを確かめ合って最初のエッチなのだから、もっとゆっくりと大切に気持ちを確かめ合いたかった。