第65部
「あぁん・・・・ふぅ・・・・・」
昌代がゆっくりと身体を起こすと、康司がそれを受け止めて軽く抱き寄せてきた。
「もぅ・・・・・・康司・・・・」
甘えた声でそのまま身体を康司にすり寄せる。まだ身体中に残っている余韻がとても心地良かった。昌代は満たされる、と言うことを初めて実感した。
その時、康司の残滓が身体の中からゆっくりと流れ出してきた。
「・・汚れちゃうから・・・・あ、ダメ」
と言って昌代が慌てて無理に身体を起こすと、
「これを使えよ」
と言って康司がベッドサイドにあった綺麗に畳んだタオルをよこした。そしてヘッドボードにおいてあったウェットティッシュも2,3枚取り出して昌代に渡してくれた。昌代は軽くタオルで始末してからウェットティッシュ手早く拭う。
「来いよ」
康司が誘うままに身体を再び寄せる。何とも言えない安心感が昌代を包んでいた。ここでも昌代は嬉しいと思った。元彼は放出した後は全く無頓着だった。勝手に入ってきて勝手に終わってそのまま、自分の彼女の腹の上に出した液体が肌を流れ落ちても知らんぷりだった。だから後始末はいつも昌代がしなければならなかった。
しかし、康司はそうではない。ちゃんと放出した後でも気を使ってくれる。特別に気を使ってくれている、という感じもしないのだが、とても自分を自然に扱ってくれている、そんな気がするのだ。だから、中出しされても何となく安心感があった。
「恥ずかしかった・・・・」
そう言って昌代が康司の腕の中に滑り込むと、
「夢中になってくれて嬉しいよ」
と小さな声で康司が言った。昌代は康司が照れているのを直感した。
「もう、凄すぎるわよ」
「何が?」
「あんなに激しくするんだもの。身体が持たないわ」
昌代が更に甘えて康司に身体をすり寄せる。
「そんなにしたか?」
「やり過ぎ、なのよ」
「ごめん・・・・」
「バカ・・・、何言ってんのよ」
「あの・・昌代・・・」
「なあに?」
「良かったよ」
「え?」
「昌代の・・・中が・・・とっても良かった」
「もう・・・バカ、女の子にそんなこと・・・」
「言わない方が良かったか?」
「・・・・・ううん・・・・なんか、嬉しい」
「それじゃ、昌代は?」
「え?」
「昌代はどうだったの?」
「もう、男って何でも言葉にしないと・・・」
その昌代の言葉は康司の全く無防備だった心を少し傷つけた。康司自身を単に「男」として一緒くたにされた挙げ句呆れられたような気がした。
「・・・・・・・・・・・・・・そうか、悪かったな」
その言葉に昌代は敏感に反応した。何気なく言った言葉で康司を傷つけたことを察したのだ。本当は昌代などもっともっと康司に傷つけられていたのだが、康司にそれが分かる筈など無いので昌代は素直に謝ることにした。今は謝ることが全然嫌じゃないのが不思議だった。
「ごめんなさい。康司さん。機嫌を直して」
「・・ん?・・んー・・・んん」
康司は昌代を抱きしめたまま迷っているようだ。
「康司さん、お願い。気を悪くしたのなら謝るわ。ごめんなさい。だからまた優しくして」
「昌代ったら・・・・」
「機嫌、直った?」
昌代が一生懸命謝ったので、康司も機嫌を直したようだ。
「うん。だいぶ・・・・直った・・・・かな?」
「よかった」
やはり全身でお互いの肌を感じていると安心感が絶対的とも言えるほど大きい。昌代は康司に身体を更にすり寄せて思いっきり甘えてみた。
「あのね。さっきの私を見れば、どれくらい感じてたか分かるでしょ?」
「・・・そう・・・だな・・・」
「だったらそんなこと、女の子には聞かないの」
「でも、言葉で聞きたかったな」
「女の子はそんなこと、滅多に言わないの」
「どうして?」
「良く分かんないけど、身体で感じるんじゃなくて、心で感じてるから、かな?」
「心で?」
「そう。康司さんだったからあれだけ感じたの。私だって不思議だったもの。あんなの初めてだったのよ。本当よ」
「それに、分かって欲しかったな」
「え?何が?」
「私があんなに感じてたって事。言葉でなんて表したくないの」
「そうなの?」
「そうよ。あれがあーでこーで、っていくら言葉を並べてみても絶対に誰にも分からないもの」
「そうなの?」
「そうなのよ。もう、いい加減に分かってよ。こんなに可愛い女の子がそう言ってるんだぞ。ね?わかって?」
その言い方は学校の昌代とは違い、とても子供じみた言い方だった。康司は昌代が心の制服を脱いだような感じがしてとても嬉しかった。それを示すかのように、腕枕で抱き込んだ昌代の首筋から背中にかけて優しく愛撫を始める。それはまだ敏感さが残っている昌代に心地良い刺激となって響いた。
「あん、康司さん、そんなにしたらぁ、やぁ、くすぐったい」
「感じるんじゃないのか?」
「くすぐったいの」
「いやなのか?」
「そんなことないけど、やっぱりくすぐったい」
昌代はそれを身体で示すかのように、また軽く身体を康司に擦り付けた。康司は何気なく回した手で昌代の背中を優しく愛撫している。昌代は身体が再び熱くなってくるのを感じた。しかし康司はくつろいでいる。このままでは自分だけ燃え上がりそうでどうしようか迷ってしまった。康司は微妙な愛撫に昌代の身体が反応していることに気づいていた。ほんの少しだが、指先が昌代の上を滑る度に小さく身体が震えるのだ。康司は昌代が反応してくれるのが嬉しくて、何気ない愛撫を続けた。
次第に昌代が感じていたくすぐったさが、はっきりとした快感に変わっていく。それと共に昌代もだんだんと我慢できなくなってきた。
「あん、そんなにしたらダメよ」
「どうして?」
「どうしても」
「いやなの?」
「そんなこと言ってない。でも、そればっかりじゃいやぁ」
「感じてきたのか?」
「そう言うんじゃなくて、ねえ、康司さん」
「もう一回欲しくなったのなら、ちゃんとそう言えよ」
「そんなこと、女の子が言うわけ無いでしょ」
「ほう?そうなの?それじゃ、試してみるかな?」
「いやぁ、そんなの試さないで、ああん、ねぇ、分かってるんでしょ?」
「女の子はそうなのかも知れないけど、男ははっきり言葉で聞きたいんだ」
康司は昌代をこのまま焦らすことにした。既に思いっきり燃え上がった二人なのだし、昌代は子供っぽく甘えることに嬉しさを感じている。きっと康司の言う通りになると思った。
康司がいつまで経っても再開してくれないので、昌代は更に追いつめられていった。
「康司さぁん、あん、いやぁ、いじめないでぇ」
「虐めてなんか無いだろ?」
康司はそう言ったが、昌代は身体が暴走しそうで怖くなってきた。軽く指が這うだけでビンッと快感が走る。
「ああん、もう許してぇ、私の身体・・・ああん、熱いぃ」
昌代はとうとう我慢できずに康司の首に手を回すと火照った身体を康司へとくっつけていった。自然に昌代の身体は康司の上に被さっていく。康司はそれを上手に受け止め、昌代が康司の上にしっかりと乗っかるようにした。そして更に今度は両手の指先で昌代の背中をたっぷりと愛撫する。康司の指先が昌代の肌の上を滑る度に昌代は必死になって康司にしがみつかなければならなかった。
「はぁぁーーっ、ううぅぅーーっ、あうぅーーっ、ゆ、許してぇーっ」
「ダメだ。たっぷりと感じるんだ。ほうら、気持ち良いだろ」
「ああぁーーっ、こんなにされたら、はうっ、話ができないっ、はうっ」
「どうだ?天国か?地獄か?」
「て、天国っ」
「こんなにされてもか?」
「はうぅぅーーーーっ、天国ぅっ」
康司はたっぷりと昌代を攻め、昌代は康司に上からしがみついたまま、声を上げながら何度も仰け反った。それは快感と言うには余りにも強く繰り返されるものだった。しかし、昌代にとっては全てを忘れて自分を解放できる天国以外の何物でもなかった。だから昌代は康司の与える愛撫を夢中になって受け止めた。
「よし、それじゃ、上から来いよ」
康司はそう言うと、背中への愛撫を止めて、昌代を自分の上で四つん這いになるように導いた。しかし、昌代は身体中が痺れていて直ぐには動けなかった。
「待って、今するから、ああぁ、力が、入らない・・・・ごめんなさい。直ぐにやるから」
昌代は何とか身体を起こそうとした。しかし、余りにも何度も背中の愛撫に反応していたので身体中の筋肉に力が上手く入らなかった。