第86部
康司も亮子も眠りについてしばらくは熟睡していたが、夜明け前には亮子が目を覚まし、その気配で康司も目を覚ました。
「康司さん?起きたの?」
「うん、アキちゃんも?」
「うん、ねぇ、抱いて」
そう言うと亮子は康司の腕の中に身体をすべり込ませてきた。
「汗臭い?」
「ううん、俺はどう?」
「ちょっと汗臭いけど、良いの、それで」
そう言うと亮子は康司に唇を求めてきた。ゆっくりとお互いの舌が絡まり合い、そのまま康司が上になって挿入の体勢に入る。亮子は何も言わずに足を開いて康司の肉棒があてがわれるのを受け入れた。
「康司さん、疲れてるでしょ?無理しなくていいのよ」
亮子は康司の肉棒の硬さが十分ではないことに気がつくと、優しく康司をなだめた。しかし、康司は温かい亮子の秘芯に肉棒を擦り付け、亮子が声を上げ始めると肉棒に力が漲ってくるのを感じた。
「いい?入るよ。そっとだからね」
「康司さん、ああぁん、中に、入ってくる・・・・・」
亮子は康司の肉棒が入ってくると、その太さも長さも十分ではないことに気がついた。
「康司さん、少しこのままでいて。感じていたいの。康司さんを」
そう言うと亮子は康司を下から抱きしめた。こうして大きい身体を抱きしめていると、亮子は自分が女なんだと実感できる。力強い男を受け入れてこそ女の幸せみたいなものを感じることができると思う。
「康司さん、嬉しい」
「アキちゃん、大好きだよ」
康司は亮子の中に入っていられることが嬉しく、ゆっくりと動いて亮子を喜ばせようとした。
「ああん、康司さん、動かなくていいの。私、十分幸せだから。ああぁぁ、康司さん、動いたらまた疲れちゃうぅ」
亮子の中はねっとりとしており、激しく愛し合った時のようにサラサラとした液体ではなかった。しかし、その抵抗感が康司の肉棒に刺激を与えた。
「あ、なんか違う、おっきくなってきた?」
「そうかも知れないね。アキちゃんの中、とっても気持ち良いよ」
そう言うと康司はゆっくりと出没させて亮子の中を感じた。
「ああっ、おっきくなってきたぁっ、あうんっ、絶対おっきくなってるぅっ、どんどん太くなって、ああぁぁぁぁ、そんなにしないで、凄い、こんなに長くなって、奥まで入ってきたぁっ」
「アキちゃん、動くよ。我慢できないから」
「康司さん、我慢なんかしなくていいのよ。好きなだけしてね。ああぁぁっ、ああっ、康司さん、あうぅっ、あうぅっ、あうぅっ、素敵、あうぅっ」
「アキちゃん、アキちゃん、好きだよ、アキちゃん」
康司は力の漲ってきた肉棒を何度も何度も亮子に打ち込んだ。ズリッズリッと肉棒が亮子の中に入るたびに亮子は声を上げ、必死に康司につかまって快感に耐えた。しかし、康司に比べて体力のない亮子には、康司の全てを受け止められるほど力が残っていなかった。
「ああっ、だめ、だめ、康司さん、ああっ、やっぱりだめぇっ、お願い、許して、持たない、ああっ、だめぇっ、強すぎるぅっ。お願い、休ませて、少し休ませてぇ」
「『泣いても良い』って言ったのはアキちゃんだよ」
「ああっ、だめぇっ、休ませて、やっぱりだめぇぇぇ」
亮子は本当に身体が持たないと思った。康司の肉棒が出没を始めると、頭の中の全てが真っ白になってしまう。もっともっと愛されたいと思う反面、こんなことをしていたら康司は疲れるばかりだし、自分も身体が壊れてしまうとも思う。そして、とうとう亮子はギブアップした。
「康司さん、ごめんなさい。一度抜いて」
「え?抜くの?」
康司が少し不満そうに肉棒を抜き去ると、亮子は康司に身体を摺り寄せながら、
「ごめんなさい。朝になったらきっとまたできるから。お願い、それまで待って」
と言った。
「うん、わかったよ。アキちゃん、お休み」
「康司さん、ありがとう。ちゃんと抱いていてね」
そう言って亮子が康司に抱かれたまま目をつぶる。そして、再び眠りの世界へと落ちて行った。
二人が次に目を覚ましたのは朝の6時近くだった。既に部屋に強い日が差しているが、いつもはこんな早い時間には起きないので少し不思議な気がする。
「康司さん、起きたの?」
「うん、アキちゃんも起きたんだね」
「眠れた?」
「うん、ぐっすり寝たよ」
そう言いながら康司が亮子を引き寄せると、亮子は素直に身体を康司の腕の中に滑り込ませてきた。
「なんか、こうしてるなんて信じられない」
「そうだね。昨日の朝までは予定だって無かったんだから」
「ねぇ、もう少しこのままで居ても良い?」
「うん」
「ちょっとだけ康司さんの腕の中で眠ってみたいの。そんなに長くないから」
「俺もアキちゃんを抱きながら寝てみたいよ」
「康司さん、なんか、嬉しい・・・・・・」
そう言うと亮子は再びまどろみの世界に入っていった。亮子にしてみれば、本当に安心できる空間は康司の腕の中だけで、安心できる時間は今しかなかった。それに、今日は10時にあの雑誌社に行かなければならない。
康司は眠りに落ちるときに、目を覚ましたらもう一度亮子の身体をたっぷりと楽しむつもりだった。何と言っても、大好きな女の子が自分の腕の中で裸で寝ているのだ。我慢しろと言うほうが無理だった。それに肉棒は先程の中途半端な挿入で固く立ったまま放り出されている。何とかしたかった。だから、康司は亮子が目を覚ますのをじっと待っていたのだが、いつの間にか自分も眠ってしまったらしい。
次に二人が目を覚ましたのは8時近くだった。寝ぼけ眼でベッドサイドの時計を見た康司の目が驚きで見開かれる。
「アキちゃん、起きて、アキちゃん」
「え?・・・・?????」
「アキちゃん、家に一度帰らなくて良いの?」
「そうだった。汗臭い服を着替えなきゃ」
「俺も家に戻ってネガのベタ焼きを取ってこなくちゃいけないんだ」
「今何時?」
「8時」
「うわ、急がなきゃ」
二人は慌てて飛び起きると、急いで身支度を調えた。この時、康司は初めて女の子が下着を付けるところを間近で見た。グァムでは亮子はバスルームで着替えていたので見ることなど無かったのだ。裸の身体がどんどん服で覆われていくのは少し不思議な気がした。それに、ベッドに腰掛けている亮子がパンツよりも先にブラジャーを付けるとは知らなかった。
「いやぁ、見ないで」
「ごめん。初めて見たから」
「もう、さっきまで裸を見てたくせに」
「そんなこと無いよ。夜だとよく見えなかったから」
「とにかく、康司さんも早く来て。急がないと間に合わない」
「うん」
二人は大急ぎで身支度を調えると、部屋を出る前にしっかりと抱き合ってキスをしてからホテルを出た。
そのまま二人は渋谷まで行き、私鉄に乗り換えてから家に向かった。亮子は家に向かいながら、康司と抱き合ったためにかなり皺だらけになった服を気にしていた。家に帰ってシャワーを浴びたらまた直ぐに出かけなければいけない。母親が不審に思うだろうなと思った。『でも、今日だけだから、明日からは大人しく家にいよう』そう思って心を切り替えた。
しかし、母親は思ったよりも手強かった。家に帰って直ぐにシャワーを浴びたところまでは良かったのだが、上がってきた途端に昨夜のことについていろいろ聞かれた。適当に答えるしかなかったのだが、大好きな母親に嘘をつき続けるのはとても辛かった。やっと解放されて部屋に戻ると、ふぅ、吐息を着いて机に着いた。『私って何をしてるんだろう?こんなことするのが夢だったの?親に内緒で彼と外泊して出版社にネガを取り返しに行くためにお金を貯め続けてきたの?ばっかじゃないの?』しかし、康司を彼と思えることは少なくとも小さな幸せだった。
しかし、家でゆっくりしている時間など無い。あと1時間くらいしかないのだ。慌ててなるべくフォーマルな感じの服を着ようと思ったが、焦ると見つからないものだ。『何でこんな子供っぽい服しか無いのよぅ』とブツブツ言ってみたが、今までフォーマルな状況など無いに等しかったのだから使える服などあるはずがない。それでも何とか見繕って慌てて駅に向かった。
一方、康司の方は亮子よりも少し家が遠かったが、やることは簡単なので時間はかからなかった。家に帰って簡単にシャワーを浴びてべた焼きを持って出るだけなので10分ほどで再び家を出る。
亮子との待ち合わせの曙橋に向かっていると、奥野から電話が来た。
『今どこにいる?』
「はい、曙橋に向かっています」
『彼女もいっしょか?』
「いえ、向こうで待ち合わせなので」
『今連絡があって、時間が変更になった。11時だ』
「そんなぁ、もう向かってるのに」
『よくあることだよ。それに、ちゃんと連絡してきたってことは、まじめに話す意思があるってことだ』
「そりゃ、そうかもしれませんけど」
『向こうに行ってから会議室で待たされるよりいいだろ』
「・・・わかりました」
康司は時間が勝手に変更になったことに少し不満だったが、もうどうしようもない。あわてて亮子に電話してみたが、移動中らしく繋がらなかった。二人とも移動中ということは、どこか途中の駅で待ち合わせをしてみてもあまり意味がないということだ。結局曙橋まで行くしかない。
それに、このままでは元々の待ち合わせ時間の10時には少し遅れそうだったので、考えてみれば時間が変更になってよかったのかもしれない。康司はそう頭を切り替えると、曙橋に向かった。
康司は曙橋に着くとすぐに明子を探したが改札の付近には見当たらない。小さな駅なので来ていればすぐにわかるはずだ。まだ来ていないのだろうと思って少し待つことにした。時計を見ると10時ちょうどだった。