第89部

 「あああぁぁぁぁぁ、もうだめぇぇぇ、ああぅぅぅっ、このまま、このままぁぁぁ、ああぁぁぁ、はやくぅぅぅぅぅーっ」

亮子は康司にも一緒に終わって欲しくてそう言ったのだが、その声を聞いて康司は亮子が早くいきたいのだと思って更に攻めを強くした。最後のスパートだ。もちろん、康司自身も限界に来ていた。腰を強く何度も押し付けると、亮子もその意味を悟ったらしく、自らも腰をクイクイと可愛らしく動かして康司の動きをサポートしてきた。そして二人一気にフィニッシュへと入っていく。

康司がググッと亮子の腰を押し付け、肉棒を一番深くまで入れてから最高の快感をもぎ取ると、康司の肉棒の先端がグッと開いて亮子の肉壁を強く擦った。亮子はその刺激で一気に身体を大きく仰け反らせて硬直した。それに合わせて康司は乳房を強く吸い、ギュッと右手で乳房を揉み絞る。その中で康司は亮子の中に放った。我慢していただけに最高の放出だった。

「ううぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーっ」

亮子は気を失うほどの快感の中で絶頂を極めた。全身に鳥肌が立ち、髪の毛が全て逆立つほどの快感だった。

二人は少しの間、そのままでいた。しかし、亮子の意識がはっきりしてくると、ゆっくりと離れる。亮子は康司から立ち上がると、まず服装を直そうとしたが、

「あっ、だめ、出てきちゃう」

と言うと、慌ててポケットからティッシュを取りだし、しゃがみ込んだ。

「だいじょうぶ?」

康司が声を掛けると、

「大丈夫だから、あっちを向いてて」

と困ったような声で答えた。

そして、立ち上がった亮子は乱れた服装を慌てて直し始めた。康司は簡単なので直ぐに終わってしまう。

「アキちゃん、どう?」

「うん、もう少しなんだけど・・・・ブラが・・・・」

絶頂した直後で身体の力が抜けているのでTシャツが邪魔になってブラのホックが上手く留まらなかった。

「康司さん、ホックを留めて」

そう言うと亮子は綺麗な背中を康司に差し出した。康司はそのまま両手を差し込んで乳房を揉みたくなり一瞬手を止めると亮子がハッとしたように身体を硬くする。しかし、グッと我慢してホックを留めた。

「ありがとう」

そう言うと亮子は康司に振り返って軽くキスをしてくれた。

やがて亮子は康司と一緒に通りに出た。出てしまえば今までの二人の出来事など何もなかったような穏やかな人の流れだ。亮子はまだ身体のほてりが治まらず少しフラついており、康司が歩くのを追いかけるだけでも大変だった。まだかなり身体がだるい。

「康司さん、そんなに速く行かないで」

亮子が声をかけると、康司は振り向いて、

「あ、ごめん。速かった?」

と言うと、亮子の歩みに歩調を合わせながらゆっくりと歩き始めた。

「だいじょうぶ?」

「うん。でも、まだ身体がだるくて」

康司はそう言われて初めて気が付いた。ほんの今まで康司の肉棒を銜え込んで悶えていたのだ。あれだけ激しく感じれば疲れて当然なのだ。

「ごめんね。無理しちゃったかな?」

そう言うと亮子は康司の耳元に口を寄せ、

「ううん、私、恥ずかしかったけど夢中になっちゃったから・・・・」

と言った。

「ごめんね。でも、嬉しかったよ」

「私も。ね、私の服、どこもおかしくない?」

康司は亮子の周りをぐるっと回り、

「うん、どこもおかしくないよ」

と言うと、亮子は、

「ありがと。優しいのね」

そう言って二人で軽くチュッとキスをすると、手をつないで歩き始めた。

目的の出版社まではほんの直ぐだった。会社に入ると直ぐに応接スペースに通され、そこにはすでに奥野が来ていた。

「おう、来たか。時間ぴったりだな」

「はい、ちゃんと言われたもの、持ってきましたよ」

「当然だよ。それが無いと始まらないんだから。見せてくれよ」

そう言うと奥野は康司のべた焼きと亮子と一緒に写っているネガを見始めた。

「ね?確かにあの写真のネガがアキちゃんと一緒に写ってますよね?」

「ビューワーが無いと何とも言えないが、たぶん、そうだな」

「よかった」

「さっさと済ませて飯を食って仕事に戻ろう。おっと、あんたたちは家に帰ればいいのか」

「はい。そうしたいです」

「それじゃ、べた焼きだけ先に頼んでおくか」

そう言うと奥野はネガを持って立ち上がり、どこかに行くと直ぐに戻ってきた。

「奥野さん、大丈夫ですか?ネガを渡しちゃったりして」

「大丈夫だよ。ここにきて人のネガを取ったりしたら、余計あっちが面倒なことになる」

「それなら良いんですけど」

「もし、その時は任しておけよ」

奥野は十分に自信があるようだった。

やがて部屋の中にネガを抱えて一人の男が入って来て、康司と亮子に軽く会釈をすると奥野と軽く挨拶をして直ぐに話を始めた。

「それじゃ、奥野さん、差し替えの件だけど」

と言うと、奥野が、

「これが今回のカメラマンの三谷君です」

と紹介したので、

「どうも・・・・」

と、何と言っていいかわからない感じで康司が挨拶した。

「君がこれを取ったのか。良く出来てたよ」

と相手は軽く褒めた。亮子は自分が渡したネガが目の前にあるのに、なんか手を出せない雰囲気なので、どうして良いかわからずにじっと担当者を見ている。

「で、ネガは?」

「今、べた焼きだけ頼んどいたけど???」

「え、そうなの?誰に?ちょっと待って」

相手はそう言うと立ち上がって事務所の中に入って行った。

しかし、少しして戻ってくると、

「誰に頼んだのかわかる?誰も知らないって言うんだ」

「名前なんか知らないよ。近くの机に座ってる人に頼んだんだから」

「どこの机?教えてくれない?」

そう言うと、奥野と担当者は部屋を出て行った。そして、直ぐに戻ってくると、

「いやぁ、困っちゃったなぁ」

と言いながら戻ってきた。

「どうしたんですか?」

そう康司が聞くと、

「ネガを受け取った奴が急な用事で出てちゃったんだよ」

と奥野が言った。

「そんな・・・・・・・。それで、どうなるんですか?」

「それをこれから決めなくちゃいけないんだ。そうだろ?」

「そうですね・・・・・・・・」

そう言って担当者はしばらく黙りこんだ。

「ま、後に回しても良いだろ?」

少し黙りこんでいた奥野が口を開いた。

「ネガしかない方は後で確認すればいいんだし、元々のフィルムのべた焼きは三谷君が持ってきてるんだから」

「そうですねぇ・・・・・・」

「帰るのを待ってから始めても良いけど、時間の無駄だと思うな」

「・・・・・・・そうですね。とりあえず、やることやっちゃいますか」

そう言うと担当者は戸棚からフォトビューワーを取り出すと、拡大モードにしてべた焼きを見始めた。

「ふんふん、そうか、こういう順番になってるんだ」

とか、

「ははぁ、だから日差しが弱いんだ・・・・・」

とか言いながら、手際良くべた焼きを確認し、手元のネガホルダーに赤鉛筆で印をつけていく。担当者の手際は良かったが、ネガの枚数が多いので確認が終わるまでは10分以上かかってしまった。しかし、確認が終わると、

「はい、間違いないですね」

と奥野に向かって言い、亮子に大量のネガをすっと差し出した。

「これはあんたのものなんだろ。今度からは直ぐに渡したりせずに大切にしておくんだよ」

と言った。亮子は怒って良いやら謝って良いやらよくわからなかったが、どうも部屋の雰囲気からは怒る場面ではなさそうだと思い、

「はい、わかりました」

とだけ言った。

「よし、ネガは戻った。それじゃ、次だな」

「今、持ってくるよ」

そう言うと担当者はまた席を離れ、しばらくすると何枚かの紙を持ってきた。それはプリンターからプリントアウトされたゲラだった。紙の大きさはA4サイズなのに、そこにはA5サイズの雑誌のページがカラーで印刷されていた。

「これがおれたちで作った版だ。レイアウトも考えてあるけど、これでいいか?」

奥野は亮子と康司に2ページ分の原稿を見せた。奥野は康司ではなく亮子の方を見ているが、亮子は全く無表情で何も言おうとしない。

「アキちゃん、どう?これでいい?」

「・・・・康司さんはどう思うの?」

「俺?俺は・・・・・」

そう言って奥野の方を見ると、

「言ってみろよ。感じたままを」

と言うので、

「アキちゃんにとっては不満かもしれないけど、うーん、たぶんアキちゃんは何の写真が載っても不満だと思うけど、俺はアキちゃんがきれいに載ってていいと思うよ」

「これ以上は減らせないの?」

康司の話を聞いていなかったかのように、亮子は奥野に言った。

「それを言い出すと、また話が初めに戻るんだぞ」

奥野は有無と言わさないという感じで亮子に念を押すように言った。

「どうしようもないの・・・・ね・・・・・・」

亮子はだんだん泣きそうな感じになってきた。しかし、ここで泣かれても周りが迷惑するだけだ。康司は何とか亮子を話の中に引きずり込もうとした。

「それじゃ、アキちゃんはこの中に他と替えてほしい写真はある?」

「・・・・・・・・」

「奥野さん、レイアウトを壊さない程度なら、今からほかの写真と入れ替えることは出来ますよね?」

「あ、どうなんだ?」

「それは、まだできるけど、今日中に印刷所に回して機械にかけるから、そうだね、ネガからデータを抜きだして調整することを考えたら、あと2時間くらいしかないかな。だから、大幅に変えるのは無理だよ」

「それじゃ、同じ大きさくらいのものならいいんですね?」

「ああ、周りとの関係を崩さなけりゃな」

「そうなんだって、アキちゃん。今なら入れ替えられるってさ」

 

 

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