第113部



「そうかってどう言うこと?」
「麗華はまだ何か企んでる・・・っぽい」
「まだ何か?」
「そう、だからきっと急ぐ必要があった、と思う・・・」
「う〜ん、わかんないなぁ。そのまだ何か考えてることのために急いで彼を引っ張り出したって事?」
「そう、麗華だもん」
「彼と早く一緒になりたかったんじゃ無いの?」
「そうかも知れないけど、それならここまでしないような・・・・たぶん・・・」
菜摘は友紀の言うことがなんなのか分からなかったが、何となく嫌な予感がした。それは友紀も同じらしい。
「ま、今度麗華にでも聞いてみるわ」
そう言うと友紀は帰って行った。その友紀と別れて席に戻る途中、菜摘はもう一度考えてみた。友紀は今度麗華に聞いてみると言ったが、麗華は放課後まで待てないくらい急いでいるのだ。と言うことは『今度聞いてみる』という程度では間に合わないのでは無いか?しかし、麗華が居なくなってしまった以上、今日はもう何もできないのは確かだ。まさかホテルに居る麗華に電話するわけにも行かない。菜摘は何となく心に重いものを感じながら午後の授業を受けることになった。
その麗華は、夕方には何と結佳を駅の近くのミスドに呼び出していた。もちろんすることはちゃんとした後なので、何というか晴れ晴れとした表情だ。結佳は菜摘のことで何か相談があるのかと思って麗華と待ち合わせのミスドに入った。
「どうしたの?」
「悪い悪い、ちょっとバックレてたもんだからさ」
「聞いたよ。彼の手を引っ張ってお昼に抜け出したんだって?」
「彼の手を引っ張って?なんだよそれ、私が嫌がる年下の彼を無理やり引っ張ってったってか?」
「違うの?」
「それじゃまるで私が誘拐か何かみたいじゃ無いの」
「でも、最近問題抱えてたんでしょ?」
「それがすっきりとしてね。全部元の通り。だからここに居るワケ」
「はは〜ん、ちょっとふかふかなところに寄ってきたんだ。麗華にしちゃ思いきったことするね」
「思い切ったこと?」
「そう、麗華って目立ってるけど、やることはいつも地味なこつこつと積み重ねるようなことが得意でしょ?それをいきなり、なんてさ」
「ほう、そんなこと言ってくれるの結佳だけだよ。嬉しいな。分かってくれるって言うのはさ。あたし達の処に戻っておいでよ」
「おあいにく様、私は一人が良いの」
「そうかなぁ、つるむのも楽しいのに・・・」
「ところで何よ、急に呼び出したりして。もう聞かれるような事してないよ」
「分かってるよ。そう言う話じゃ無いんだ」
「じゃ、なに?」
「うん、ちょっと耳を貸してよ。ちょっと普通の声ではさ・・・ね、もっとこっち」
そう言うと麗華は結佳の方にイスをずらし、小さな声で言った。
「良い?いりなり言うからって怒らないで聞いてよ」
「分かってるわよ。何でも最初はいきなりなものよ」
「わかってるじゃん。それじゃあね・・・・」
麗華が耳元で囁くのを結佳はじっと聞き入った。
「あのね、ナツと友紀の彼、知ってるでしょ?」
「うん」
「最初にナツと一緒に会ったのはあんたなんだってね」
「そうよ」
「でね、その彼にあんたも協力してもらったらって事」
「協力?」
「そう、あんた、マグロなんだろ?」
いきなりな言い方に結佳はカッとなった。
「何よそれ。そんなこと言われてハイって言う人が居るとでも・・・」
「だから言ったろ?怒らないでって。まぁまぁ聞いてよ」
「何よ。良いわ、聞くだけは聞いてあげる。返事は決まってるけど」
由佳は無理矢理冷静さを保つと耳を傾けた。
「あのね、実は私も相談に乗って貰ったんだ」
「え?麗華が?彼に?」
「そう、オジサマにね。それで上手く行ったたってワケ」
「そうなんだ。麗華は上手く行ったんだ。おめでとう。それじゃ話は終わりね」
「だから、そう急ぐなって」
「何なのよ。私のこと、どこで聞いたか知らないけど」
「だから怒らないでって言ったでしょ?落ち着いてよ」
「落ち着いてるわよ。でも、麗華が私のプライベートまでさ・・・」
「ごめんごめん、謝るよ。でもね、凄く元気になれたからさ」
「どういうことなの?」
「あんただってナツから友紀へのオジサマの一件では部外者じゃ無いんだから、関係者って事だよね?で、私が相談に乗って貰ったもんだから、結佳だって聞いて貰えば良いなって思ってさ」
「良く友紀が承知したわね」
「そうなの。それがちょっと不思議なんだけど、ナツが動いたらしくてね」
「ナツが?」
「そう、知ってる?ナツ、別れたんだよ」
「え?もう?高木と?」
「そう、だからナツはもうフリー」
「ナツはそうでも友紀は違うでしょ?聞いたよ。しっかり上手にやってるらしいじゃん」
「それはそうなんだけど・・・・・・・たぶん・・・・」
「なあに?」
「あのね、私の感だけど、たぶん友紀は離れたがってる」
「どうしてそんなことが言えるの?」
「だって、本当に好きだったらナツが私の相談に乗ってあげて欲しいってオジサマにお願いするのを許すはず無いでしょ?例え相談でも」
「まぁ・・そう・・・かも・・・・ね・・???」
「それに、私をおじさまに紹介したら、ナツと友紀はさっさと私たちを残して出て行ったんだよ。それって何か違うと思わない?」
「それで、私?」
「そう、今なら友紀だって文句は言わないはずだし、だって私の相談にはにOK出したんだから、友紀が居る限りナツだってオジサマには接近しないはずだし、だから今、ね?分かる?この意味?」
「分かるわよ、それくらい。要するに、麗華が相談に乗って貰って上手く行ったのと同じ状況の内に私も相談に乗って貰えば?って事でしょ?」
「そう、さすが結佳だね、話が早いわ」
「でも、私は間に合ってる」
「そうなんだ」
「そうよ。それに、そんなこと、麗華に心配して貰う必要ないから」
「そうか、そう言うんなら仕方ないけど・・・」
結佳は麗華が無理押してこないので、もしかしたら本当に相談に乗って貰えと言っているのかと思い始めた。
「でもさ、どうして私なの?」
「だから、結佳も関係者だからだよ」
「それはそうかも知れないけど・・・・・」
「ナツが勢いでオジサマに飛び込もうとした時、ちゃんと調べた方が良いよって引き留めたんだろ?」
「あぁ、あれね。そう、言ったわ、確かに」
「だから、ナツは確かめた上で思い切り飛び込んで行けた。結局はあんな形になっちゃったけど、今でもナツはおじさまが好きだし、それをサポートしたのは結佳だろ?」
「それはそうよ。ナツとは仲良いもん」
「知ってるよ。だから言ってるの。おじさまに相談に乗ってもらえばって」
「でもさ、麗華の相談に乗ったからって私の相談にも乗るとは思えないんだけどな」
「それは心配ないよ。とっても良い人だし、経験豊富だし・・・」
その言葉に結佳はぴんと来た。
「もしかして、麗華・・・した?」
「何のことかな?そんなこと私に聞いたって無駄さぁね」
「それはそうよね」
「でも、オジサマは口が堅いから相談に乗って貰っても、それが私たちに漏れる心配は無いって言うのは確かよ」
「ふぅん・・・」
「それに、相談しても後腐れ無いしね。変につきまとわれる心配も無いし」
「それはそうよね・・・・」
麗華は結佳が真剣に考え始めた様子に満足した。これなら大丈夫かも知れない。
「あのね、私だって最初から真剣な話ができたわけじゃ無いのよ。最初はだいぶ疑ってたかな?でもね、話をする内に・・・なんて言うのかな、言葉に暖かみがあってね・・・・それで、ここだけの話だけど、おじさまの前で何度も泣いちゃった・・・・」
「麗華が?」
「そうよ。私だってびっくりしたわよ。でも、それで心が打ち解けてきたみたい・・・。それからはスムースだったな。で、今日のことが起きたわけ。だから結佳に言ってるの、次はあんたの番だよって」
「ふぅん・・・・・」
結佳は何となく麗華が誘っている意味が分かったような気がした。要するに麗華はおじさまに相談に乗って貰ったという仲間が欲しいのだ。このままだと恋人という関係では無い相談者というのは麗華だけになってしまう。それが嫌だと言うことのようだ。それはそれとして、もともと恋愛相談に無関心な女子など居るはずが無い。しかし、非常に微妙なことだけに簡単にハイそうですか、とは行かないもの事実だ。
「それに、このまま放っておくと、たぶんオジサマはまたナツとくっつくから、そうなったらきっともう相談なんて無理になると思うんだ。もう二度とナツはおじさまを離さないだろうから」
「それはそうでしょうね・・・・・」
「チャンスはいつもあるわけじゃ無いよ、結佳」
「分かった。考えとく」
「うん、それが良いと思うよ。私ばっかり幸せになっても心苦しくてね」
「そう、そんなに幸せになったんだ」
「うん、ちょっと最近じゃ一番かな」
「そうなんだ・・・・ま、終わったばっかりじゃ・・・」
「そう言うなって」
そういう麗香の声には明らかに幸せ感が漂っていた。
「幸せって分けてあげたくなるのよね、自分が幸せだとさ」
「そうかもね?」
「でもさ、どこから聞いたの?私のこと」
「それは内緒・・・っていつもは言うんだけど、今日だけは教えてあげる」
「うん」
「あんたの彼、ハンドボール部でしょ?」
「うん」
それを聞かれて結佳はちょっと胸が痛くなった。最近はほとんど会っていないのだ。まだ彼と言えるのかどうか・・・。
「その彼が、先輩に相談したのよ。どうすれば女の子を感じさせられるのかって」
「あぁ、そう言うことか」
「そう、その先輩が生徒会でさ、私の彼がポツッと言ってるのを横で聞いたってわけ。経験豊富じゃ無いのに聞かれても困るってね。経験豊富に見えるのかなって」
結佳は納得した。まだ彼とベッドに入るのが楽しかった頃、彼はいろいろ試そうとしたことがあった。結佳は感じることよりも肌を感じて抱かれているだけで嬉しかったので、余り協力的では無かったのだが、そのためにあまり感じない結佳はだんだん彼とベッドに入るのが辛くなってきて、少しずつ距離が開いてしまったのだ。今になって思えば、もっと協力していっぱい感じられる方法を探っていれば、もっとベッドで夢中になることもできて、そうしたら彼とのことも長続きしたかも知れないと思う。普段は知らんぷりをしているが、結佳だって高校生の女の子として、もっと感じてみたいと思う。
「でもさ・・・・ねぇ・・・・」
結佳が今度は麗華に話しかけた。
「そう言うことって相談して何とかなるものなの?」
「それは相談してみないと分からないけど、でも信用して良いと思うよ」
「そう言うもの?」
「あのね、オジサマって話が取っても上手いし、ちゃんと話を良く聞いてくれるし、押し付けたりしないから。私の時だって、ちゃんと私のペースに合わせてくれたよ。その辺りはやっぱり大人だね」
「ふぅん・・・」
「それに、私がじっと黙ってる時は無理に話をしようとしないし、女の子のペースを受け止めてくれるからね。だから私、結佳にもどうかなって思ったの」
「ねぇ?」
「なんだい?」
「本当にオジサマと何にも無かったの?」
「そんなこと言えるわけ無いでしょ。って言うか、言ってみても仕方ないでしょ。それに、仮にあったって言ってもなかったって言っても、どっちにしても今日の現実は変わらないんだから。それに、私がそのうちのどっちかだったって言えば、結佳は自分もそれと同じになるって思うでしょ?それってきっと相談する時には邪魔になると思うの。いずれにせよ、今のオジサマは実質的にはフリーみたいなもんなんだから」
「それは菜摘が・・・・・・・・」
と言いかけて結佳は黙ってしまった。菜摘はおじさまを振った後に戻ろうとしているのだ。これから先はどうなるのか、結佳がそれを気にしても仕方が無い。
菜摘はその日の夜、友紀のことを気にしていた。菜摘が聞いた話では、今日にも友紀は告白されるはずだったのだが、どうやらそうでは無かったようだ。クラスが違うので確実では無いが、じっと教室の窓から見ていたら友紀はほかの女の子と帰っていったのを見た。菜摘としては、早く友紀が告られて幸せになったのを確認してから晃一に行きたいのだが、まだ告られてもいないようだ。
結局、がっかりして家に帰ってきたので今一歩勉強に力が入らない。高木と別れた時は却ってもう一度晃一に近づけると勉強に力を入れ、前みたいに上がった成績を見せて褒めてもらいたいと思っていたものだが、今は目標がぼやけてしまって気合いが入らない。
『こんなことじゃパパにも会えない。今からがんばっておかないと』と無理矢理自分を励ましてなんとか3時間ほどはがんばったが、途中で失速してしまって12時過ぎには早々と参考書を仕舞ってしまった。その時まだ隣では妹が勉強していた。
菜摘はMP3で音楽を聴きくことにした。妹の隣なのでイヤホンの音量は小さめだ。だからどうしても音楽に没入できずに考え事をしてしまう。『どうしてあのときパパから逃げ出したんだろう?あの時にずっとパパと一緒にいたら、今頃はどうなっていたかな?』今まで何十回も考えては答えの出なかった自問自答を繰り返した。『パパと一緒にいたら、今はもっと幸せだったかな?』いくら考えてもわかるはずの無い問いだった。ただ、一つだけはっきりと言えるのは、『もしパパと一緒にいたとしたら、きっともっと成績は上がっていたはず』と言うことだった。短い間だったが、確かに晃一と一緒にいたときは勉強するのが楽しかったし、次の成績発表が楽しみだった。今でもあの時に勉強したところだけは自信がある。
しばらくそんなことを考えながら音楽を聴いていると、突然妹が『お風呂に入ってくる』と言って部屋を出て行った。時々妹はこんな風に夜中にお風呂に入る。たぶん、いつも簡単に戻ってこないことから考えると、一人で考え事でもしているのだろう。
菜摘はこうしていても時間の無駄だと思い、さっさと着替えると布団を敷いて妹との間のカーテンを引いて部屋の電気を消して布団に入った。もともとこのカーテンは菜摘が妹よりも遅くまで勉強をするためにスタンドの灯りが妹の睡眠を邪魔しないように付けたものだったが、今日は逆だ。
布団に入ると、突然じわりと涙が浮かんできた。『パパに会いたい・・・』そんな思いが胸の中でどんどん大きくなる。
「パパ」
小さな声で呼んでみると、余計に涙が出てきた。会いたい、せめて少しだけでも・・・、そんな思いが菜摘の胸を締め付ける。あの晃一に抱かれているときの安心感、満足感が忘れられない。
菜摘はそっとパジャマのボタンを外すと左手をその中に滑り込ませ、右手をパンツの中に差し込んだ。まず右手の指をそっと秘唇の間に割り込ませ、秘核の下の部分をそっと触り始めた。最初は感じないが、少しずつ快感が湧き上がってくる。『パパ・・甘えても良い?』想像の中の菜摘は晃一の膝の上で頭を撫でてもらっていた。『今日成績上がったんだよ。ね?偉いでしょ?・・・うん、ちょっとだけがんばったかな?へへへ、本当はちょっとじゃないけど・・・・んんん・・・いきなりキスなんてだめぇ・・・まだ心の準備ができて無いのにぃ・・・・』菜摘の右手の指先はゆっくりと秘核の下で円を描き始めた。
少しずつ潤いが増してくるのがわかる。いつもは妹が隣で寝ているのでこれ以上はしないのだが、妹は風呂に行くとそう簡単に戻ってこないので今日はもっと先までやってみることにした。パジャマの中に滑り込ませた左手で右の乳房をそっと触り始めた。