第14部
「なにが?」
「・・・そんなこと言えない」
「そうなの?????????」
「ふう、まぁ、仕方ないか」
そう言うと菜摘はソファに陣取って周りを見渡した。本棚には単行本がぎっしりと並んでいるが、他にはあまり物が無い。
「パパ、私の読める本とか無いの?」
「本はいっぱいあるけど、菜摘ちゃんの好きそうなのはねぇ・・・・」
「なあんだ、つまんないの」
「その代わり、映画とかなら見られるけど・・・」
「DVD?なにがあるの?」
「配信のやつなんだけど、菜摘ちゃんの見たい映画、どんなのが良いの?」
「それって、古いやつばっかりって事?」
「まぁ、DVDと同じくらいだと思うけど」
そう言うと晃一はテレビをネットにつなぎ、配信サービスで映画の画面を立ち上げた。菜摘はしばらくリストを見ていたが、あまり気に入った物はないようで、次々にリモコンでリストをめくっていった。
「パパ、映画だけ?」
「ううん、ドラマとかもあるよ」
「それじゃ、日曜日に見逃したやつ、見られる?」
「うん、たぶんだいじょうぶだと思うけど」
そう言うと晃一は菜摘の指定するドラマを検索し、ペイパービュー画面で支払いを済ませるとドラマを見始めた。最初はそれほど乗り気でなかった菜摘も結構真剣に見ている。晃一自身はこのドラマにあまり興味がなかったので、どちらかというとお茶を入れたり部屋にカーテンを引いたりエアコンを調節したりと落ち着かない様子だったが、菜摘はおとなしくドラマを真剣に見ていた。ペイパービューだとコマーシャルが無いのが気に入ったらしい。
「これってはまるね。時短で見なくたって1時間分を45分くらいで見られちゃうんだもん」
と見終わった途端に次のドラマを探している。
こうなってくると、晃一の方がおまけみたいで菜摘はテレビに釘付けだ。晃一はだんだんいるところが無くなってきた。話もしないのに菜摘の正面に座るのも変だと思った晃一は、菜摘が2本目のドラマを見始めると、菜摘の座っているロングソファに移動して菜摘の横に座った。晃一の座った位置は菜摘からは1mくらい左に離れていたのだが、菜摘はすっと晃一にくっつくくらいに身体を寄せてきた。そして、そっと身体をもたれかけてくる。
晃一はこれをどう判断すればよいのか分からなかった。菜摘がドラマを見たいのなら晃一はじっとしているべきだろうが、そもそもドラマを見たいのなら身体を寄せてくることなど無いのではないか。しかし、単に甘えながらドラマを見たいだけかもしれない、などと考えていると頭の中がぐるぐる回って何も考えられなくなった。
しかし、『横に来たのだからこれくらいは良いだろう』と思って晃一が菜摘の肩へそっと手を回すと、菜摘はその腕の中にすっぽりと入るようにして、晃一の手を取ると自分の身体の前に回してきた。自然に晃一は少し菜摘の後ろに回り込むような感じになる。晃一の息が菜摘の髪にかかっているはずだが、菜摘は嫌がらずにじっとドラマを見ていた。
ここまで来ると、晃一も腹が決まってきた。ここまで来て何もしないのでは絶対に後で自分が後悔する。
「菜摘ちゃん、恋人になっても良いの?」
と菜摘の後ろから耳元でささやくと、菜摘はじっとしたままだったが、わずかに頷いたようだった。
しかし、晃一は高校生のようにいきなり欲望をむき出しにしたりはしない。あくまで菜摘の反応を見ながら少しずつ進めていこうと思った。それが、千載一遇の機会を大切にしようと思った晃一のやり方だった。
まず最初に、少しだけ菜摘の身体を後ろに引いて晃一に完全に寄りかからせると、菜摘は素直に身体を預けてきた。これで晃一は両手を十分に使えるようになった。そして両手を菜摘の脇から前に持って行くと、そっと胸の膨らみを制服の上から撫で始めた。制服を着ていると分からないが、菜摘の身体が細身で胸の膨らみは小さめだがぷくっと膨らんでいるのがよく分かった。その形をそっと撫でながら楽しむ。
「だめよぉ、パパぁ・・・・ねぇ・・・・・・」
菜摘は少し嫌がったようだが、別に手を払いのけるわけでもなく、晃一のするがままに任せている。しかし、晃一がそっと膨らみを撫で続けても、菜摘に何か変化が起こるわけでもなく、そのまま時がゆっくりと流れていった。菜摘もじっとしたままだ。
まだ菜摘はこの程度の愛撫では感じないらしい。それは菜摘が一番分かっていたのだろう。しばらく晃一に胸を撫でさせていたが、やがて待ちくたびれたというか、感じるのを待つのに飽きたらしく、
「パパぁ、起きても良い?」
と胸を撫でられながら晃一に聞いてきた。
「うん、嫌なの?」
そう晃一が再び耳元でささやくと、その息が菜摘の耳元をくすぐった。
「きゃっ」
と菜摘は小さな声を上げて首をすくめた。実は、菜摘は晃一の横に来た時から緊張していた。だから息がかかっただけで反応したのだ。晃一の吐息、声さえも菜摘を優しく刺激していた。
「ごめん、感じちゃったかな?」
「きゃうっ、だめぇ、ああん、ちょっとぉ」
どうやら菜摘は胸よりも項で感じるらしい。それならば、と晃一は更に仕掛けることにした。わざと息を菜摘の耳元にかけながら話しかける。
「菜摘ちゃん、可愛いよ、もっと感じてごらん」
「きゃっきゃっ、いやぁっ、くすぐったぁい」
菜摘はくすぐったいのが嬉しかった。晃一とのスキンシップがとても楽しいのだ。
「そんなにくすぐったいの?」
「パパぁ、だめっ、あっ、くすぐったあいっ」
「菜摘ちゃんは項が感じやすいんだね」
「ああんっ、だめっ、そんな事言って遊ばないでえっ」
「だって可愛いんだもん」
そう言って今度は菜摘の項にそっと唇を這わす。
「あうぅぅ」
「どう?これも感じる?」
「そんなことぉっ、ああうぅぅぅぅっ、ちょっと、ちょっと待って、待ってぇ」
まるで逃げ出すかのように、晃一に後ろから抱きしめられたままの菜摘は身体を起こして晃一の吐息から少しだけ離れた。そして、晃一がそっと引き寄せると静かに再び晃一に身体を預けてくる。
「ああ、びっくりした」
「菜摘ちゃん、結構敏感なんだね」
「知らなかった。こんなだなんて」
「どんな感じ?嫌だった?」
「嫌じゃないけどぉ・・・・・微妙かも・・・・・」
「微妙って?」
「・・・よくわかんないけど・・・・・・」
「でも、嫌じゃないんだね」
「うん、嫌じゃない。でも・・・・・」
「でも?」
「恥ずかしいかな?」
「そりゃそうだよ。誰だって感じてる時は恥ずかしいよ」
「パパぁ、私、どうかな?」
「どうって?」
「だって・・・・・、胸は・・・・・・・・」
「ははぁん、菜摘ちゃん、さっき触ったおっぱいが感じないこと、気にしてるのかな?」
「何よ、その言い方」
明らかに菜摘はちょっとむっとしたようだった。しかし、怒っているという感じでもない。
「ごめんごめん。でも、あれだけ感じやすいんだから直ぐにおっぱいだって感じるようになるよ」
「そう・・・・なの?」
「うん、そうだよ」
菜摘はここで少し考えた。このまま晃一に教えてもらうのがよいのか、それとも晃一にはこれ以上許さない方が良いのか。しかし、今晃一のリードを断れば、たぶん晃一は優しいパパでいてくれることは間違いなさそうだが、それだと当面はこれ以上経験することはなさそうだ。しばらく考えていた菜摘は決心した。嫌になったらそこで断ればいい。晃一は怒ったりしないだろう。
「ねぇ、パパ?」
「なあに?」
「もう少し、教えてもいいよ?」
「いいの?」
「うん、嫌だったらちゃんと言うから。そうしたら止めてね」
「分かった。でも、恥ずかしいのは我慢しなきゃだめだよ」
「それはぁ・・・・・・」
「だって、恥ずかしいからって止めてたら、全然先に進まないよ」
「それを上手に教えてくれるのがパパでしょ?」
「それはそうだけど・・・・・・、でも、菜摘ちゃんも努力はしてくれなきゃ」
「私もがんばってみる・・・・」
「うん、分かった。それじゃ教えてあげる」
「うん・・・・・」
「それじゃ、まずはキスからだね」
そう言うと晃一はテレビを消して自分の右にある菜摘の身体を膝の上にそっと倒し、横抱きの形にした。菜摘は目をパチッと開いたままじっと晃一を見上げている。
「まずはちゃんとしたキスからだよ」
「ちゃんとって、あう・・・・」
菜摘は晃一がキスしてきた時にちょっと驚いたが、とりあえず任せてみることにした。晃一は何度か唇を閉じたり開いたりして菜摘のぷにゅぷにゅした唇を確かめた後、しっかりと舌を入れてくる。菜摘は自然に目を閉じると必死になってそれに応じ、次第に舌を真剣に絡めてきた。菜摘の小さな舌が晃一の舌に一生懸命絡んでくるのが心地良い。そのまま二人はしばらくディープなキスに夢中になる。
しかし、菜摘は晃一の手が再び胸を撫で始めると慌てて唇を離した。
「んんっ、だめ。そっちはまだダメ」
「どうして?」
「だって、まだキスを教えてもらってるところだもん。一度にいろいろは無理」
「大丈夫。任せておいてごらん、そっとするだけだから」
そう言うと再び晃一は菜摘の唇を楽しみ始めた。そっと胸を撫で始めるが、今度は嫌がらない。しかし、嫌がらないだけで感じないことはさっきと変わりなかった。やがて唇を離した菜摘は、
「あーあ、やっぱり感じない・・・・」
とちょっと残念そうだ。
「そんなに直ぐには感じないよ。少しずつだよ」
「少しずつって?」
「何回かしてれば、どんどん感じるようになるよ」
「そうなの?だいぶかかるのかなぁ・・・・・????」
「直ぐに感じたいの?」
「そんなことはないけどぉ・・・・・・」
「あんまり時間がかかるのは嫌?」
「うん・・・・・・・」
「ちょっとだけ試してみる?」
「試すって?」
「ベッドで」
「ええっ?いきなり?」
「まだ無理かな?」
その晃一の言い方が菜摘の感に障った。いかにも子供だと言われているようだ。
「ちょっとだけなら試してみても・・・・・・・・」
「ちょっとだけ?」
「そう、ちょっとだけ。もうパパ分かったでしょ?私がどれだけ子供か。それならちゃんとリードして」
「そう言われると・・・・・、それじゃ、ベッドでちょっとだけ試してみるか」
「やっぱりベッドはダメ、ここでして」
と言った。
「ここで?」
「そう、それなら許してあげる」
菜摘の様子から、晃一は今の菜摘にとって精一杯の譲歩であることを感じ取った。無理にベッドに運べばきっと嫌がるに違いない。それでは菜摘が可愛そうだ。
「うん、わかったよ。ここで試してみよう」
「ありがと、パパ」
そう言うと菜摘は晃一の首に手を回すと、軽くキスをしてくれた。その様子は無邪気な子供のようで本当に可愛らしい。
「それじゃ、制服のジッパーを下げても良い?」
「ええ?脱がすの?」
「脱がすんじゃないよ。おっぱいにそっとキスするだけ。それなら良いでしょ?」
「う〜ん、本当にそれだけ?」
「うん、そうだよ」
「それ以上はしない?」
「うん、しないよ」
「ほんとうに?」
「本当だよ。それ以上はしない」
「なあんだ」
「それ以上して欲しいの?」
「うそうそ、今のは無し。絶対しないで」
「それじゃ、目をつぶって?」
晃一がそう言うと、菜摘は静かに目をつぶった。しかし、晃一が菜摘の制服のリボンの下のジッパーに手をかけると、
「ちょっと待って」
と目を開けて慌てて胸を押さえた。
「え?どうしたの?」
「まさか、パパ、脱がすつもりじゃ・・・・・」
「もちろん」
「ダメ、そんなのダメ」
「どうして?」
「どうしてって、当たり前でしょ?」
「どうして?」
「だって、脱がすなんて聞いてない」
「脱がないとおっぱいにキスできないよ」
「服の上からでも良いでしょ?」
「菜摘ちゃん」
「なあに?」
「いや?」
「そう言う訳じゃないけど・・・・・・・・・・」
「それじゃ、菜摘ちゃんの服は脱がさないけど、このままおっぱいにキスしてみたい」
「胸に?・・・・・・・・・・・・・・・・」
菜摘はしばらく考えた。このまま止めても良いのだが、それでは冒険も何もあった物ではない。少なくとも菜摘はもう少し冒険してみたかった。ただ、正直に言えば怖いのだ。単純に怖い。知識としては知っていても、いざ自分のこととなると話は別だった。しかし、こうやってぐずぐずしているのもみっともないと思う。菜摘は『えいっ』と気合いを入れると、
「わかった。いいよ」
と答えた。
「でも、上手にしてね」
「うん・・・・・」
晃一はそう答えながら、これからまだ何度も同じ会話をしなければ先に進まないだろうと思った。もしかしたら菜摘は、年の近い彼氏とならもっとスムースに経験したのかもしれないが、パパと呼ばれる半分身内みたいな感じなのでわがままも恐れも素直に出るのだと思った。そして、『女の子の防御を外していくのを一つのプロセスとして楽しむのなら問題はないが、単にやりたいだけの男だとしたらしんどいだろうな』と思った。
幸い晃一はプロセスを楽しめる方だ。あっという間に行くところまで行ってしまうのはもったいないと思う。菜摘のようにバージンで興味津々の時期というのは結構短いのだ。
晃一は無言でリボンの下のジッパーに手をかけると、ゆっくりと下ろしていった。今度は菜摘も嫌がらない。ただ、明らかに緊張が高まったのが手に取るように分かった。