第140部


「ああん、行きたくないよう。今行ったら絶対不味いよぉ」
「連絡したのはあんたでしょ?覚悟を決めることね。どうしたのよ?あんなに気合い入れて勉強してたくせに」
「だって、もっと上手く書けるって思ってたから・・・・・」
「そんなに簡単に成績なんて上がるわけ無いでしょ?」
友紀に言われて菜摘は母親の言葉を再び思い知った。今はがんばりさえすれば良い結果が得られると思い込んでいた自分が悲しい。
「うん・・・・・・・そうだね・・・・・」
「でも、ちゃんと私の問題を解いたんだから、きっと成績だって上がってるよ。ああん、私が菜摘を励ましてどうするのよぉ。競争してるのは私よ?」
「ねぇ、やっぱり無しにしない?」
「何言ってんの。ダメ、絶対ダメ。私だって気合い入れてたんだから。結果がどうなったとしても、ちゃんとしないと」
「そうよねぇ・・・・」
「それじゃ、ちょっとだけ答え合わせしてみようか?覚えてるのだけで良いから」
「え?英語?」
「う、英語の残り」
「う・・ん・・・・・・」
友紀は気が進まない菜摘から残りの問題の答を聞いて自分のと合わせてみた。すると、確かに自分よりはだいぶ点数が低いような気がした。何というか、自分よりも2割くらい間違いが多いような気がする。それに、菜摘が大丈夫だと言った英単語だって一つや二つは間違っているかも知れない。英語勝負の行方が決まってきたのなら、後はケリを早く着けるのに限る。友紀はまだ決まっていない勝った場合と負けた場合を決めることにした。
「それならねぇ、もし私が勝ったらね・・・・」
友紀がそう言い出すと、途端に菜摘は、
「そんなの今考えられないよぉ。許して。もう分かったでしょ?」
と泣きが入った。
「ダメ、言いだしたのは菜摘でしょ?許さない。えーと、どうしようかな、私が勝ったらぁ・・・」
「ああん、もう、何よぉ。何にするのよぉ」
「おじさまに相談に乗ってもらおうかな?うん、それにしようっと」
その途端、菜摘の目がまん丸になった。
「え?だって友紀、上手く行ってるんじゃ・・・・・」
「それはそうだと思うんだけど・・・。もし何にも必要なかったら、その必要ができた時にって事でどう?それなら当分は上手く行きそうだし、菜摘も楽でしょ?おじさまに相談に乗ってもらう権利1回分ね」
「それで・・・・、いいの?」
菜摘は友紀の真意を測りかねたが、すぐに晃一の所に行くという話でも無いし、今は上手く行ってるんだから問題無いかと思った。
「うん、だって、菜摘がこんな状態じゃぁ、強い事なんて言えないよぉ」
友紀も軽く微笑んで返す。
「ごめんね・・・・・・」
菜摘は友紀がわざと緩い条件を出してきてくれたと思った。これなら当分は安心だ。
「それに、もし相談をお願いする時は、ちゃんと菜摘にも居てもらうから。それなら安心でしょ?」
「うん、ありがと」
「それで良いよね?良し、じゃぁ、菜摘が勝ったらどうするの?」
「そんなの考えられないよ、今はもう・・・・」
「そんなこと言わないで。ちゃんと話してごらん?」
菜摘は友紀が一生懸命元気の無い自分をフォローしてくれるのがありがたかった。しかし、今日のできでは菜摘が勝つとは思えないが・・・・・。『でも、一番でも縮まれば良いんだもんね』と自分に言い聞かせると、考えていたことをこっそり友紀に伝えた。すると、
「えっ?そう言うことなの?それってさ、もしかしてあなた・・・・」
と友紀が驚いている。菜摘はこくんと頷いた。友紀は『この菜摘の仕草、本当に可愛い。おじさまが忘れられないのも仕方ないか・・・』と思った。
「でもさ、私にだって都合って物があってさ・・・・・」
友紀がそう言うと、
「うん、わかった」
と菜摘があっさりと引き下がろうとする。
「しっかりしてよ。それじゃ話にならないじゃ無いの。もう、分かったわよ。もし菜摘が勝ったら何とかするから。ほら、元気出しておじさまの所に行きなよ。私だってもう行かなきゃ。あ、でも、ちゃんと報告するのよ。良いわね?」
友紀はそう言って菜摘を促すと駅に入っていった。
菜摘はぽつんと取り残された。晃一の所に行くのはとても気が重いが、しかし、今さらキャンセルするのも確かに迷惑な話だ。それは菜摘のポリシーに反する。仕方なく菜摘は電車で一駅の晃一のマンションの最寄り駅に移動してからポツポツと歩き出した。
友紀は英語勝負で菜摘が勝つ心配が無さそうなことが分かると、再び恋の方に心が傾いていった。そして菜摘と別れてから直ぐに彼に電話してみた。お互い試験が終わって気持ちが楽なこともあって話が自然と弾んでいく。友紀は明日、彼に会うのが待ち遠しくなっていた。
しかし友紀は忘れて居た。百番ちょっとの自分が成績を上げるのと二百番以下の菜摘が成績を上げるのと、どちらが難しいかと言うことを。菜摘のように元の成績が低ければ、少し勉強するだけで大きく成績が上がるが、みんなが気合いを入れて勉強している中位以上の成績では少々の勉強で成績など上がるはずが無いと言うことを。友紀の最大のミスは、勉強する前の菜摘の答案がどんな物だったのか確認せずに、いきなり自分の成績を基準に判断したことだった。そして、テスト後の菜摘の落胆ぶりに幻惑されて実際にテスト前に菜摘が勉強した量を過小評価したことだった。
マンションの直ぐ近くまで来た時、菜摘は胃が喉までせり上がってくるような気持ちになった。本気でどこか痛くなったり気分が悪くなったりしていないか確認したが、菜摘自身は悲しいことに健康そのものだ。
本当はがっちり試験で書けたという実感を手にしてから晃一の所に行くつもりだった。それだけの勉強はしたと思ったのだ。だが、今はとてもその気になれない。しかし、ゆっくりだろうと歩いていればマンションは確実に近づいてくる。菜摘は携帯で友紀に電話してみた。しかし話し中でキャッチもしてくれなかった。
ピンポーン、聞き慣れた音が響き、Yシャツとスラックス姿の晃一がドアを開けると菜摘がぽつんと立っていた。
「菜摘ちゃん、テスト終わったの?」
「はい」
「そう、それはお疲れ様。とにかく上がって」
晃一は菜摘をリビングに上げると、途中で買ってきたケーキを箱毎出した。菜摘は自然にいつものソファに座っている。
「菜摘ちゃんの好みが分からなくていくつか買ってきたんだ。好きなのを食べて」
晃一は菜摘が来てくれたのが嬉しかった。突然菜摘が会いたいとメールしてきた時は驚いたが、菜摘と少しでも時間を過ごせるなら理由など何でも良かった。ただ、理性でしっかりと気持ちを制御できるかどうかが心配だったが。
「菜摘ちゃん、連絡くれてありがとう。嬉しくて今日は落ち着かなかったよ」
晃一はうれしさを隠そうともしない。それが却って今の菜摘には重荷になった。それでも、
「夜中過ぎに急にメールしてごめんなさい。迷惑だったでしょ?」
と言ってみた。
「ううん、全然。ちょうど目を覚ましたところだったからね」
晃一はそう言いながら改めて菜摘を見た。やはり菜摘は可愛らしかった。今日は少し元気が無いようだが、それでも可愛らしさに変わりは無い。いや、可愛いと言うよりはナチュラルな美しさと言うべきかも知れない。麗華のような派手な顔つきや体型では無いが、すらりとした体型と整った顔立ちはとても魅力的だった。
「今お茶を入れるから座ってて」
そう言うと晃一はキッチンでお湯を掛けてティーカップなどの用意を始めた。やがて晃一は大人しく静かに座っている菜摘に入れ立ての濃いめの紅茶に氷を入れて作ったアイスティーを出すと、一人用ソファに座った。さすがにいきなり菜摘の隣に座る勇気は無かった。
「あれ?食べてないの?あ、取り皿が無いか」
「あ、そんなのいりません。このままで良いです」
ぼうっとしていた菜摘が初めて反応した。
「好きなのを食べて良いんだよ」
「はい、それじゃぁ、これを頂きます」
そう言うと菜摘は箱の横に添えてあるフォークを持ってチョコレートケーキを取り出した。
「パパは何?」
「俺はねぇ・・・・モンブランかな?」
「これね?」
菜摘はモンブランを取り出すと晃一に渡してくれた。どれもガラスのカップに入っているので持ちやすい。
「いただきます」
菜摘はケーキを食べ始めたが、ふと手を止めると、ケーキをテーブルに置いた。本当ならもっとハイな気持ちで言うつもりだったが、こうなってはどうしようも無い。それでも、言うべきことは言わなくてはいけないのだ。
「パパ、私、パパに言わなきゃいけないことがあるの」
その言い方に真剣な気持ちが感じられたので、晃一は柔らかく言った。
「うん、それならまずケーキを食べたら?」
「ううん、今言わせて」
その様子から、晃一には菜摘が謝ろうとしているのだと言うことがはっきり分かった。しかし、晃一にしてみれば菜摘には謝って欲しくない。良く自分でも分からないが、謝られると困るような気がしたのだ。
「パパ、あの・・・・・、もう少し前になっちゃったけど、急に私がね・・」
菜摘がちょっと下を向いて話し始めると、晃一は思い切って菜摘の横に座った。そして菜摘の肩に手を回した。これでいつもの体勢だ。
しかし、その途端、菜摘は激しく身体を左右に捻って嫌がった。
「いやっ、今はいやっ、絶対いやっ」
「どうしたの?」
晃一が驚いて聞くと、
「本当はもっとテストができるはずだったから、そうしたらパパに褒めてもらおうと思ってメールしたの。でも全然できなかったの」
そう言っている菜摘には晃一の手の感触がまざまざと思い出された。あの全てを包んでくれるような優しい感触が。
「だから、次のテストはきっと頑張るからそれまで待ってもらって・・・・・」
そう言っている菜摘を晃一は抱き上げて膝の上に横向きに乗せた。
「あっ、ちょ、ちょっと待って・・・」
「いや、待てない」
晃一の膝の上に乗せられた菜摘は心がどんどん晃一に引かれていくのを止めようが無かった。
「だって、せっかく菜摘ちゃんが来てくれたのに。この前、菜摘ちゃんと買い物に行った時、そのまま別れちゃったのが撮っても悲しかった。もっと引き留めておきたかったんだ。でも、菜摘ちゃんの気持ちを大切にしたかったから」
「それなら、後もう少しだけ待って」
「ごめん、待てないよ。もう膝の上に載っちゃってるんだよ」
「そんな・・・・・」
そう言いながらも菜摘は晃一の包容力に包まれていく自分を感じていた。晃一が軽く菜摘の頭を引き寄せると、自然にそのまま菜摘は晃一の肩に頭を乗せてくる。
「ああぁ・・・・パパ・・・・・ダメ・・・・・まだ成績が・・・」
「ダメ、帰さない。菜摘ちゃんを帰したくない。好きだからね」
「そんなこと言わないで」
「菜摘ちゃんだって分かってるんじゃ無いの?」
「パパ・・・・・私・・・・・もう、気持ちを抑えられない・・・」
そう言うと菜摘は身体の力を抜いて晃一に身体を預けてきた。
「菜摘ちゃん、好きだよ」
そう言われて菜摘の心の留め金がパチンと弾けた。
「私も・・好き・・・・」
晃一に優しく髪を撫でられながら菜摘は思わず言ってしまった。何というか、自然に言ってしまったという感じだ。
「うん、良かった。振られなくて」
「バカ・・・・・・」
菜摘は髪を撫でられる感触に包まれ、もう気持ちが抑えられないことを悟った。
「パパ・・・・・ごめんなさい・・・・・」
「良いんだよ。お互いに十分話し合えない感じだったからこうなっちゃったんだ。仕方ないよ」
「でもパパ・・・・・・・怖くて・・・・・・」
「分かってる。俺も悪かったんだ」
「ごめんなさい・・・・・・パパ・・・・・・ごめんなさい・・・・・」
晃一の肩に頭を載せたまま菜摘はポロポロと涙を流した。晃一が菜摘の顎をそっと持ち上げると、髪の毛に半分隠れた菜摘の目は真っ赤になっており、涙が流れている。
「もう何も言わないで」
そう言って晃一は優しくキスをした。
「ん・・んん・・・・んんんん・・・・・・」
最初は唇同士が軽く触れ合う程度だったが、それを何度か繰り返す内にだんだんお互いの気持ちを確かめ合いたがるように舌と舌が絡まり始め、直ぐにディープな情熱の篭もったキスになった。晃一の手は最初、優しく菜摘の背中を撫でていたが、そのうちに自然に手が前に回り、制服の上から小さいがはっきりと形良く盛り上がった膨らみを撫で始めた。菜摘も自然にそれを受け止め、少し身体を開いて晃一の手が動きやすいようにした。
菜摘の身体は本人が思っている以上に晃一の手を覚えていた。直ぐに胸から甘い感触が湧き上がり、身体が熱くなり始めた。
晃一は菜摘が嫌がらないことが分かると、制服のジッパーに手を掛けた。それでも菜摘は嫌がらなかった。ジーッと微かな音がしてジッパーが下ろされると、菜摘の制服が開き、リボンの下の留め金だけで泊まっている状態になった。そして晃一の手が菜摘の肌に直接触れた。
「んんんっ、パパ、待って・・・」
そこで初めて菜摘がキスを止めると晃一に手を止めるように言った。しかし、菜摘は晃一の手を掴んで止めたりはしなかったし、晃一の手がブラジャーのカップへと上がってきてもそのまま触らせていた。
「ダメ、パパ、止まらなくなる。シャワーも浴びてないし・・」
「菜摘ちゃん、俺も止まらないんだ。どうしても触っていたいんだよ」
「あぁ、ダメ、パパ、本当に身体が・・・・・ああああぁぁ、ダメ・・・・」
菜摘は軽く喘ぎ始めた。しかしそれでも晃一は手を止めようとしなかった。菜摘の胸はどんどん敏感になって行く。
「お、お願い、パパ、だめ、このままだと・・・ああああぁぁ、だめぇ」
菜摘は胸が感じ始めると、無意識に両足を擦り合わせ始めた。晃一は菜摘がその気になってきたのが嬉しかった。また菜摘が自分の所に戻ってきてくれたという実感が嬉しいのだ。
「もう少しだけ、良いだろ?」
そう言いながら更に丁寧にカップの上から膨らみの形を確認するように撫で回していく。
「パパ・・・・お願い・・・・ああああああぁ、シャワーを浴びさせて・・・・」
「もう少し」
「ああぁぁ、だめぇ、許して、早く、シャワーを・・・・ああぁぁぁ、身体が感じてきて・・・・止まらなくなりそうなの・・・・お願い・・・」
菜摘は晃一の膝の上で喘ぎ続けた。そして何度も膝を擦り合わせてもどかしい感触を我慢している。既に身体は猛烈に熱くなっていた。
菜摘がはっきりと拒否しないので、晃一の手は次にスカートの中へと入っていった。菜摘の身体がはっきりと硬くなる。
「パパ、そこはっ」
「そっと優しくしてあげる」
そう言って晃一の手は菜摘のすべすべとした肌の上を滑って小さな布地へとたどり着いた。
「ああっ、だめっ、そこはっ」
菜摘は口ではそう言っているが、一切態度では拒否を示していない。そこで晃一はパンツの上から菜摘の敏感な部分をそっと撫で始めた。
「あああっ」
菜摘はぎゅっと晃一に抱きついてきた。しかし、喜んでいるというよりは無理に耐えているという感じだ。そこで晃一は更に菜摘の敏感なところをそっと突いてみた。
「あっ、あっ」
菜摘の口から思わず声が漏れた。しかし、それも喜んでいるという感じでは無い。更に晃一の手がパンツの布地にかかっても菜摘は嫌がらなかった。そして晃一の指が菜摘の淡い茂みの端を捉えた途端、菜摘がぎゅっと晃一にしがみついてきた。
その途端、晃一は気が付いた。今日の菜摘は全てを受け入れたいのだ。だから本人はシャワーを浴びに行きたいのに、晃一の好きにさせているのだ。まるでそれが晃一へのお詫びだとでも言うかのように。
そうなれば晃一のするべきことは一つしか無い。
「菜摘ちゃん、シャワーを浴びておいで」
そう言うと晃一はそっと菜摘を膝から下ろした。菜摘は慌てて鞄から下着を取り出すと浴室へと消えていった。