第16部

 

「どこに行こうか?何を食べたいの?」

「う〜ん、良くわかんない」

「お寿司か何か?それともイタリアンとか?」

「うん、お寿司が良い」

「分かったよ。それじゃ、お寿司屋さんに行こう」

「うん、ちょっと待ってて。直ぐだから」

そう言うと菜摘は一生懸命制服を直し、晃一に向き直るとにっこりと笑った。それは、ほんの今まで服をはだけられて声を上げていた少女とは思えないあどけなさで、ちょっと柔らかくなりかけていた晃一の肉棒は一気に再び堅くなった。菜摘はそのまま晃一のところに来ると、ちょっと胸に頭を付けるようにして、

「ちょっと恥ずかしかった」

と言った。

「嫌じゃなかった?」

「うん、でも、よくわかんない・・・・」

晃一はその菜摘の顎を上に向かせてチュッとキスをすると、菜摘は素直に応じてくる。そして少しだけ舌を入れると、菜摘も小さな舌を軽く絡ませてきた。

軽く舌の応酬をした後、晃一は菜摘を連れて部屋を出た。エレベーターから外に出ると、どこかの奥さんと思われる若い女性が2階の廊下から軽く会釈をしてきた。

「パパ、あの人、私が来た時も居たよ」

「あそこに?」

「ううん、入り口のロビーで郵便を取ってた」

「そうか・・・・・」

晃一は通りに出るとタクシーを拾い、駅前の寿司屋を告げた。そして菜摘の言葉の意味を考えてみる。社宅は同じ会社の仲間同士なので住みやすいのは間違いない。知らない人がいないし周りに迷惑がかかるようなことはしないからだ。しかし、その分、プライバシーを制限されるのも仕方なかった。このまま菜摘が晃一の部屋に何度も出入りすれば、いずれ間違いなく噂になるだろう。会社でも噂が広がるかもしれない。今運転手に告げた寿司屋も行ったことのない初めての店だった。

寿司屋に着くと、菜摘は綺麗な内装と高級そうな店構えに緊張しているのが分かった。

「パパ、ここって良く来るの?」

「ううん、一度来てみたいと思っていたんだ。菜摘ちゃんのおかげで良い機会ができたよ」

元気な声に迎えられてカウンターに着くと、若大将が愛想良く迎えてくれる。

「いらっしゃいませ。今日はどのようにしましょうか?」

「お勧めのところを二人前握ってください。この子にはちょっと多めの方が良いかな?」

「へい」

「パパ、ここって高くない?」

「お昼だからそんなでもないよ。菜摘ちゃん、お腹減ってるんだろう?」

「うん、だって美味しそうなんだもん。回ってないし」

「そうだね。今日はちょっと特別かな。足りなかったら言っていいよ」

そう晃一が言うと、店員が愛想良く、

「お嬢さん、お父さんに甘えられて良いですね」

と言った。

「うん、最高のパパだもん、ね?」

「そうかな?」

「絶対そうよ。こんな素敵なお店に連れてきてくれるんだもん。ここ、高くないの?」

「そんなことはありませんよ。リーズナブルな値段で楽しんでいただけます」

「菜摘ちゃん、そんなに聞いたら失礼だよ」

「はぁい、ごめんなさい」

「それと、大将、汁物は何かありますか?」

「はい、ハマグリの潮汁になりますが?」

「それもください」

「へい、潮汁2人前お願い」

そんな他愛もない会話をしていると、二人の前には次々と握りが並び始めた。

「パパ、お箸は?」

「あぁ、ここのお店は最初に自分の前に濡れた笹が並べられたろ?それに大きなお手ふきも。手で食べるのがお勧めみたいだね。でも、言えば箸は出してもらえるよ。ね?大将?」

「もちろんです。はい、お箸お願い」

「あ、良いです。手で食べます」

そう言うと菜摘は、晃一のすることを見よう見まねで握りを手で食べ始めた。

「うん、これも素敵かも。でも、やっぱり手はべとべとね」

「無理しなくて良いのに。箸で食べても美味しいから」

「うん、でも今日はこれで良いの」

菜摘はあっという間に一人前を食べ、更に4貫ほど握ってもらって食べたところで晃一がやっと食べ終わった。

「もう少し頼む?」

「ううん、これで止めとく」

「遠慮しなくて良いのに」

「またお腹がすいたら何か買ってもらうから」

「ちゃっかりしてるなぁ。分かったよ、大将、お勘定をお願い」

「へい、まいどあり」

「それとタクシーを呼んでください」

晃一はそう言ってお勘定を済ませ、タクシーに菜摘を乗せると社宅に戻った。

社宅の部屋に入る時、また誰かに見られるかと少し緊張したが、幸い誰にも会わなかった。部屋に入るとエアコンを入れっぱなしにしていたので涼しさが二人を包む。

「あー涼しい。気持ちいー」

「そうだね、外は暑かったからね」

「またあのおばさんに会うかと思って緊張しちゃった」

「そうだね、社宅だと誰かに見られると噂になるからね」

「パパ、もしかして、私が来ると迷惑?」

「そんなこと無いよ。ちょっと考えてることがあるんだ。とにかく菜摘ちゃんは気にしなくて良いからね」

「うん、分かった。気にしない。パパの言うこと聞く」

「それじゃ、冷たいお茶でも出そうか?」

「さすがパパ、気が利くなぁ。でも、ジュースとかある?」

「えーと、確かオレンジジュースがあったはずだけど・・・・、うん、あった」

「パパはいつもは飲まないの?」

「うん、会社で農薬を作ってるだろ?だから、お客さんの農協からジュースの斡旋があるんだ。それで仕方なく買ってるんだけど、なかなか無くならなくてね」

「それじゃ、私が飲んであげる」

「そうだね。菜摘ちゃんが飲んでくれれば助かるよ」

そう言って晃一は菜摘にジュースを渡した。

「んっ、これって結構美味しいよ。見たこと無いけど」

「地元でしか売ってないらしいからね。地元の人が納得する味だから美味しいんだと思うよ」

「地元だけじゃなくて全国で売ればいいのに」

「全国で売るには大手の会社の力を借りないといけないから、原価をずっと安くするか、売値を高くしないと売れないらしいんだ。だから地元だけでしか売ってないって聞いたよ」

「そうなんだ・・・・・」

「美味しいって言ってくれて嬉しいよ。買っておいて良かった」

菜摘はジュースを美味しそうに飲んでいた。しかし、最初は楽しそうだった菜摘だったが、だんだん静かになり、そのうち無口になってしまった。晃一はその変化に対応できず、ただ横から眺めているだけだ。とりあえず菜摘の座っているロングソファの離れた位置に座り様子を見る。すると、

「ねぇパパ、私って変なのかな?」

と聞いてきた。

「どうして?」

「だって、パパのところに来るだけでじろじろ見られるし、いつの間にか誰かに見られないか、びくびくしてるし・・・・・」

「気にしてるの、さっき見られたこと」

「うん・・・たぶん・・・・・」

「あんまり気にしない方が良いと思うけど・・・・・。きっと、いつもと違う人が入ってきたから興味本位で見ていたんだと思うよ」

「うん・・・・・私、パパみたいに年上の人を好きになったの、初めてだから」

「そうなんだ。それって嬉しいけど・・・・・、そう言う話じゃないよね・・・」

「でも、私の年頃って年上に憧れるものでしょ?それに、さっきのことだって私の年なら誰だって経験することだし・・・・」

「うん、たぶんそうだね」

「私、自分のことばっかり考えて周りのことが見えなくなっているのかなぁ?」

「うーん、俺は菜摘ちゃんのほんの一部しか見てないから何とも言えないけど、そんな風にも見えないけどな。我が儘な子だったら俺は好きになったりしないよ」

「そう?」

「うん、菜摘ちゃんはごく普通の子だと思う。だって、さっきのことでよく分かったよ。大人の世界に憧れてるごく普通の高校生だと思うよ。勉強だってしっかりやってるみたいだし、遊ぶことだけ考えてる訳じゃないもの」

「そうよね・・・・・・」

「周りのことを全然見てない子だったら、きっともっと派手な遊び方をしたがるんじゃないのかな?友達をたくさん連れて繁華街で遊び回るとか」

「そうよね。そうしてる子もいるけど、私とは全然違うもの。私、学校ではおとなしい方よ」

「だから菜摘ちゃんはあんまり気にしない方が良いと思うよ」

「うん、そうする」

「でも、ここに遊びに来ると確かに周りの人には気になるだろうね。ここの社宅には菜摘ちゃんみたいな高校生は居ないから」

「そうなんだ」

「うん、たいていは小さい子を持っている若い夫婦ばっかりだからね。俺は会社の都合であちこち転勤するから社宅にいるけど、そうじゃない人は俺くらいの年にはどこかに家を買って社宅から出て行くから」

「そうなんだ」

「うん、だから気にしないでね。何か考えるよ」

「うん」

「元気になった?」

「なった。パパ、ありがとう。ちょっと気になったから相談してみたんだ。やっぱりパパは頼りになるね」

にっこり笑ってそう言うと、菜摘はすっと晃一の近くに寄ってきて、頭を晃一の肩により掛からせた。

「菜摘ちゃん?疲れたの?」

「どうかな?」

「ん?どうかなって・・・・・え????」

「安心したの。パパ、甘えても良い?」

「いいよ。もちろん」

「こうしていると安心するの」

菜摘は静かに晃一に寄りかかってきた。

「うん、安心して良いよ。ここは菜摘ちゃんが安心して良いところだから」

「パパ、優しいのね」

「そう菜摘ちゃんに言ってもらえるのが嬉しいからね」

「こんなに優しくされるのって、もしかして久しぶりかな」

「お母さんだっていつも菜摘ちゃんのことを心配してるだろう?」

「分かってる。・・・分かってるけど、毎日顔を見るとけんかばっかり」

「でも、家族だからお互いに我が儘になっていられるんだろ?だから安心してけんかできるんでしょ?」

「そう、でも、やっぱりこういうのがいいなぁ」

「俺も、菜摘ちゃんとこうしているのが良いな」

「なんか言い方が嫌らしいけど、まぁ、良いか。私だって同じだから」

「同じって?」

「パパは、今日はどうして私を呼んでくれたの?」

「もちろん、菜摘ちゃんと二人で過ごしたいからだよ」

「だから同じなの。私もそうだから」

「嬉しいな。そう言ってもらえると」

「言わせたくせに」

「そう言わせるように言わせたくせに」

「ふふふ、私、ここに来たかったから」

そう言うと、菜摘は晃一の横から身体を倒しながら振り向くように身体を捻って晃一の首に手を回してきた。

「パパ・・・・・」

そう言うと静かに目をつぶった。完全にさっきの続きを期待している雰囲気だ。

晃一はちょっと驚いた。菜摘の心の激しい動きについて行けない。しかし、目の前でキスを待っている少女は最高に可愛らしいお気に入りの少女だ。自然に晃一は菜摘の唇に吸い寄せられるように唇を重ねていった。

最初はゆっくりと唇同士を重ね合い、次第にお互いの唇が求め合い始める。そして晃一の口から舌が差し入れられると菜摘は最初は静かに、そしてだんだん情熱的に舌を絡め始めた。

「んん・・・・・んんんん・・・ん・・・ん・・・」

菜摘の口から時々甘い息が漏れる。キスに慣れてきて気持ちが自然に高まってきたようだ。

晃一が左手を菜摘の首の後ろに回すと、菜摘は自然に晃一の首に回した手をほどいて身体をそっと晃一の膝の上に横たえた。先ほどより明らかにリラックスしている。そして晃一の左手が菜摘の首を支え、右手が制服の上からそっと菜摘の胸の膨らみを撫で始めると、静かにその探られる感覚の中に身を置く。菜摘の胸の膨らみは小さめだが、制服の上からでも形良く盛り上がっているのがよく分かった。

晃一はここで決断を迫られた。ここから始めるともはや引き返せなくなる。それで本当によいのか自分に問いかけてみた。しかし自分の気持ちは変わらない。これから先、どうなるのか分からなかったが、菜摘の身近な存在になりたかった。できれば一番身近な存在に。同時に、それはたぶん無理だとも思っていたが。菜摘の年頃はどんどん成長して行くにつれて考え方も好みも変わる。今の菜摘が晃一を好きだとしても、いずれ晃一を飽きるかもしれない。しかし、それでも良いと思った。この年頃の女の子にずっと一人の人を好きになるなんて、望むこと自体に無理があると思った。いずれ菜摘が晃一から離れていくことがあるとしても、それはそれで仕方ないと思った。

しばらくの間、物思いにふけりながら静かに左右の胸の膨らみを撫でていた晃一は、気持ちが固まった頃に先ほどのように菜摘の胸の頂点に小さなしこりができてきたのを感じた。『制服の上からでも分かるのか?』晃一はちょっと驚いたが、制服の上から触っても間違いなくそのしこりは先ほどと同じ位置にある。非常に淡い突起だが、確かに制服の上からでもよく見るとかすかに小さく飛び出しているところが確認できた。『菜摘ちゃんはさっきより感じてきたんだ』と思う。すると今度は菜摘の制服を脱がしたくなってきた。たぶん、すでに一度しているのだから菜摘も嫌がらないだろうと思う。

「菜摘ちゃん、さっきみたいにここ、外すよ」

そう言ってリボンの下のジッパーに手をかけると、案の定菜摘は静かに頷いただけで何も言わなかった。しかし、晃一が静かに胸を撫でていた右手をリボンの下に差し入れると、菜摘の手がすっと晃一の手の上に動いて軽く抑えた。

「いやなの?」

「ううん、嫌じゃないの。でも・・・、さっきよりも恥ずかしいの。さっきは怖い気持ちもあったけど、今は恥ずかしくて・・・・」

菜摘は目をつぶったまま答えた。

「大丈夫。菜摘ちゃんの嫌がることなんてしないから」

「分かってるの。分かってるけど、どうしても手が動いちゃって・・・・」

菜摘がそう答えている間にも晃一の指は小さなジッパーを探り出し、ゆっくりと下ろしていく。それを察した菜摘の手にちょっと力がこもった。

「だいじょうぶだよ」

「うん、わかってる・・・・・・」

「力を抜ける?」

「うん」

そう言うと菜摘の手から力が抜け、晃一の右手は更に胸元から胸へと降りていった。しかし、直ぐにまた菜摘の手に力がこもる。そのたびに晃一は手を止め、菜摘の心が落ち着いて手の力が抜けてから更にジッパーを下げた。それを何回か繰り返すと、ジッパーをほとんど下げることができた。左右に分かれたジッパーの下に、かすかに菜摘の肌が息づいている。そして更に力を入れるとまた菜摘が手に力を込めてきた。