第195部

その日の夕方、友紀は一人でそっとマンションに向かった。晃一には何も言っていない。だからマンションには誰も居ないはずだった。もちろん、晃一に会うわけでは無いので菜摘にも連絡していない。
入り口でそっとカードキーを取り出してじっと見つめる。これを使えば誰に知られることも無くマンションに入れるはずだ。そっと玄関の鍵に近づける。
ピッ。小さな音と同時に友紀の方が震えた。
そして小さなモーター音がして鍵が開いた。確かに小さなLEDが緑に光っている。
そっとドアを開けてみる。
「こんにちはぁ・・・・・」
念のために声を掛けたが、案の定人気の無い部屋は静かなもので誰も居ないようだ。玄関には靴も無い。
友紀はそっと靴を脱いでリビングに入った。誰も居ないリビングは何となく友紀を突き放しているようだった。
電気のスイッチの位置は知っていたがわざと電気を付けなかった。ただ、熱気がこもっていたのでエアコンだけはスイッチを入れてソファにそっと座る。
静かだ。ここで晃一に抱かれた日の出来事がゆっくりと思い出されてきた。晃一とのことがあるまで、友紀は彼は致し経験もしたが、恋にあこがれる普通の女の子だった。十分とは言わないが勉強だって特に問題は無かったし、友達関係だって勉強とプライベートときっちりと別れていた。しかし、菜摘をきっかけに晃一と知り合い、そのまま晃一に抱かれたことで友紀の中で何かが変わっていったような気がする。
ただ、晃一と知り合ってからは、今までよりもずっと全力を出し切るようになったし、もっと精一杯がんばるようになったような気がする。それは良いことだと思っているし自分自身でも満足している。それが、晃一から離れて6組の田中に告られてからは、新しく別に何かが少しだけ変わったような気がするのだ。
友紀が今日、誰も居ないのを承知で、わざわざ誰も居ないこの部屋に来たのは、一度、晃一と知り合った時の自分に戻ってみようと思ったからだった。菜摘に頼み込んでカードキーを借りたのもこのためで、晃一と会うためのものでは無かった。
『誰も居ないこの部屋って、静かで広くて・・・・一人でいるには広すぎるくらい・・・なんだ・・・』友紀はソファに座り込むと静かにまわりを見回してみた。ふと、このソファは電動でフラットになることを思い出し、リモコンを探してみた。それは横の方に小さなコードとリモコンがついてくっついていた。
『これか・・・・・これを押すと・・・・』ぶぅーんと微かな音がして背もたれがゆっくりと倒れ始めると同時に足下からクッションが出てきた。ボタンを放すと途中で止まる。途端にこのソファが動作した時のことが鮮明に思い出されてきた。友紀は背もたれがかなり倒れたソファにゆったりと身体を持たれ掛け、ソファの背もたれが倒れていった時のことを思い出した。あの時は少し驚いたものだ。
『最初の時、おじさまの横に座っていたのを、途中から膝の上に仰向けで横になって・・・・・・あれ・・・・してもらったんだ・・・・』あの時のことを思い出すと、何故かとても心が熱くなってきた。こうしているだけであの時の自分の息づかいまでもが思い出されてくる。そう、ここには晃一が居ないだけで後は全てあの時と変わらない。そして目の前には友紀が選んだテーブルクロスがコーヒーテーブルにかかっている。『そう、最初は通販のサイトで買い物をしていただけだったんだ。でもその後に・・・・』
静かだった。この部屋は誰も居ないし、たぶん誰も来ない。もし誰か来れば玄関で音がするので直ぐに分かる。まるで友紀のためだけに用意されたような空間だと思った。そして、その空間の鍵は今自分が持っている。友紀はしばらくの間、静かに部屋に座っていたが、やがて『鍵閉めたよね?誰も来ないよね。絶対来ないよね?』と心の中で何度も確認すると、制服のジッパーをそっと下げて左手をブラジャーの中へと滑り込ませた。
元々友紀は結構一人上手が好きな方だ。寝る前にはたいてい乳首と秘核を両方可愛がる。そして幸せな気持ちになると熟睡できるのだ。ただ今日は自分の部屋では無い。誰も来ないのが分かっていてもドキドキする。友紀は最初に晃一に抱かれた時のことを思い出してブラジャーの乳首の近くを優しく刺激し始めた。
『こんな事しちゃだめ、止めなさい・・・』頭の中でもう一人の友紀が言った。しかし、同時に『こうしてるとおじさまとした時のことを思い出せる。でも分かってる。たぶん、こんな事したって何にもならない。するだけしたら、きっとむなしくなる。寂しくなる。そうすれば、もう二度としなくなるし、ここにも来なくなる。だから一度だけ・・・。菜摘に鍵を返す前に・・・。幸せな気持ちになりたいの・・・』そう自分を納得させると意識を想像の世界に集中した。
晃一とのことがあるまで、友紀はさほど焦らされたことは無かったし、焦らされてもかなりいい加減だったからあまり感じなかった。どちらかと言うと脱がされてから身体が感じ始めるのを待っていた方が多かった。だから、あの時の友紀にとって晃一に焦らされてから快感を与えられた時の経験は余りに鮮烈なものだった。晃一には焦らされて我慢できないくらいまで我慢してから触られると強烈な快感が身体を走り抜ける事を教え込まれた。
『ああん・・・・あの時・・・・おじさまに・・・・いっぱいいっぱい焦らされて・・・・でも感じるところは全然してくれなくて・・・・あんなにおっぱいが焦れったくなったの初めてだった・・・・』友紀は初めて晃一に抱かれた時のことは鮮明に覚えていた。もちろん、その後に神戸に旅行した時のことだってハッキリ覚えているが、最初にこの部屋で晃一に抱かれたことは友紀にとって普通のエッチとは全然違う、新しい自分への扉みたいなものだった。だから、今でも家でベッドに入って寝るまでの間、何度も思い出しながら一人上手をしているのでその記憶は褪せることが無かった。そして、それは菜摘に晃一を譲ってからの方が、より濃厚になってきた。
『おじさま・・・・早く・・・・早く・・・・ねぇ・・・ブラを・・・・外して・・・・ああん、そこで焦らしちゃ嫌・・・・・・あ、そこ、そこぉ・・・・そんなに見ちゃいや、だめぇ、確認しないで、そのままそっと何回もして・・・・ああん、お口も・・・・・・・だっておじさまが教えたんだよ。おじさまが最初にしてくれた癖にぃ・・・・ああぁぁぁぁ・・・・・うん、とっても気持ち良いの。分かってるでしょ?』友紀の想像の中の晃一は、優しく、包容力があって、焦らすのが好きで、焦らした後はたっぷりと感じさせてくれた。いつの間にか右手がスカートの中からパンツの中に滑り込んで指先が秘核の近くまで届いていた。しかし、まだ今は乳房を重点的に可愛がっているところで、指は秘唇の中へは入っていなかった。その手前ギリギリのところで待機している状態だ。今は乳首で我慢しなければいけない段階を演じている。
『ああぁぁぁ、そんなにお口でされたら・・・・・・あああん、我慢できなくなっちゃうの・・・・あぁ、分かってる癖にぃ、おじさまだって知ってる癖にぃ・・・・・・ああぁぁぁ・・・・とっても気持ち良い。私ね、胸がけっこうあるけど感じやすいみたいなの。他の子はこんなに感じないみたい。おじさまのおかげかな?ああん、だからぁ、話してる時にしないでぇ・・・・胸ばっかりはいやぁ。ああん、それは言いたくない。胸で良いでしょ?ダメ?ああん、おっぱいが気持ち良い・・・』
友紀の中で晃一は何度も何度も乳房を愛してくれた。それはあくまで優しく、とても繊細な愛撫を繰り返すが、時折友紀の予想を外して少し強くしたり、愛撫を止めたりして友紀を翻弄した。友紀の左手はブラジャーの中の乳房と乳首を可愛がっているが、まだ右手は茂みの辺りで蠢いているだけだ。友紀自身、本当に焦れったくなってきた。
そしていよいよ友紀の中で晃一が下半身を愛する時が来た。
『ああん、おじさまぁ、お口は嫌だっていつも言ってるのにぃ』そう言いながら友紀はパンツをグッと下ろしてから仰向けで膝を引き寄せた。いわゆる万繰り返しの状態だ。こんな格好は家でもなかなかしない。しかし、今日の友紀は大胆だった。そして右手の指をそっと秘核の下へと滑らせていく。しかし最初は秘唇の中には入れない。そっと秘唇を上からなぞるだけだ。
『ああん、息を掛けないでぇ、声はいやぁ、そこで話しちゃいやぁ、だめぇ、我慢できなくなるからぁ、ああぁぁぁ、おじさま、もっと我慢しないとだめ?まだだめなの?ああんっ、いや、いや、もう我慢したく無い。早く、早くぅっ』友紀の指は秘唇の上を残酷なまでにゆっくりとなぞり続けていた。すると指先が潤いで滑る感覚が生まれてきた。『おじさまぁ、もうだめ、もうだめなの。早く、早く優しくしてぇ、お口でしてぇ・・・・お願いだからぁ』そして友紀は右手の指を秘唇の中に埋もれさせた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ」
誰も居ない部屋に友紀の声にならない声が微かに響いた。同時に友紀の身体がソファの上で仰け反る。友紀の身体は仰け反っていたが、秘唇に埋もれさせた右手の指は微かに動き続け、そこからは秘めやかな音が生まれていた。
『ああぁぁぁっ、おじさまぁぁぁぁぁ、焦らしすぎよぉ、あああぁんっ、あんなに焦らしてからするなんて反則ぅっ、あっ、いや、やめちゃいやぁっ、あああぁぁぁぁっ、だめぇ、こんな事させないでぇ』友紀の頭の中では、友紀が両足を開いて晃一の頭を秘部に押し付けていた。それは声と口で焦らされた後にそっと晃一が舐め始めたという設定に友紀が我慢できなくなったからだった。晃一の口でたっぷりとなめられている快感を再現するために友紀は指を1本から2本にした。
そして友紀の頭の中では、口でたっぷりと感じさせられてグッタリしたところに晃一が友紀を貫くという流れになっていた。友紀は息を弾ませながら夢中になって指を動かし、そして間もなく小さな絶頂に達した。
『ああっ、あっ、あっ、おじさま、気持ち良い。すごく良いの、ああん、そんなにしたらいっちゃうぅ、ああんっ、だめ、もういっちゃう、良いでしょ?いっても良いでしょ?ああぁぁぁぁっ』
友紀は身体をビクンとさせると、グッタリとソファに身体を沈ませた。不思議な感覚だった。一人上手なのに、まるで本当に晃一に抱かれた後のような甘くて怠い感覚が身体を包んでいる。『おじさま・・・・・・』友紀は想像の中で全裸になって晃一に抱かれていた。晃一の存在感がとてもリアルに友紀を包み込む。それはまるで、今の友紀を晃一が抱いているかのような感覚だった。だから友紀は心の中で小さな声で抗議した。『もう、おじさま・・・・あんなにするなんて・・・・いくら私が感じたからって・・・もう・・・・あんなにされたら夢中になっちゃう。今の私には彼が居るのに・・・・・・』いつもは想像でしか無い晃一の存在が、晃一の部屋という現実の中での一人上手によって友紀の中で想像と現実が混じり始めていた。
『彼ね・・・・・優しくないの・・・・・最初は優しかったんだよ・・・・でも、最近は私が誘っても面倒って感じでしか話してくれなくてね・・・・・・でもね、私、メール送ってるんだ。メールだとちゃんと話してくれるから。だから今日もね、後でメール送るんだ。土曜日に遊びに行っても良い?って。・・・・・そうよ、たぶんエッチするけど・・・。おじさま、妬ける?私が彼とエッチしてもいい?応援してくれる?・・・・・・うん、だからおじさま、大好き・・・・・・嬉しい・・・・・・・ねぇ、だからもう一度、ねぇ・・・・良いでしょ?』
友紀はそこまで想像を膨らませると、一度起き上がってパンツを脱いだ。そしてもう一度ソファに座ろうとして、思い直したようにそのままベッドのある部屋に向かった。もちろん、玄関にはチェーンがかかっていることを確認した。そして部屋に入るとしっかりと戸を閉め、ベッドに横になる前にスカートを脱いだ。
そしてベッドの上に上がると軽く四つん這いの姿勢を取った。想像では友紀は晃一の上に被さっていた。『おじさま・・・・ああん、上はいやぁ、上は恥ずかしいからぁ・・・・・ああん、当たってる・・・・あんっ、だめぇ、今入れたら話せなくなるぅ・・・・・あんっ、やっぱり入れるの?くぅぅっ、お、おっきいっ』友紀の右手の指は丁寧に秘核の周りを刺激し始めた。
『ああぁぁぁん、いっぱい来た、おじさまぁ、いっぱい入ったぁ、あんっ、待って、ちょっと待って、ああっ、そんなに直ぐしたらぁっ』友紀は指の動きを速くした。そして、そのまま起き上がって膝立ちの姿勢になると、左手を背中に回してブラジャーのホックを外し、一気に右の乳房を揉み上げた。『ああぁぁーーっ、だめぇ、両方されたら我慢できないーっ、ああぁぁっ、だめぇっ、あああああああーーーっ、おじさまぁぁぁっ』友紀は膝立ちの姿勢のまま少し身体を屈めて右手で秘部を可愛がり、左手で乳房を揉み上げたり乳首を可愛がったりした。自分の息づかいが部屋の中で小さく響き、まるで本当に晃一としているようだ。
『ああぁぁぁっ、だめぇ、そんなに強くしないでぇ、おじさまのは凄いんだからぁッ、ああっ、そんなに奥までしたらぁいっちゃうぅっ・・・いやぁっ、まだいきたく無いのにぃッ、ああああぁぁぁぁ、だめぇ、あああああっ、いっちゃうぅぅーーーーーっ』友紀はベッドの上で再び身体を軽く震わせた。普段はここまで激しくすることは無いのだが、今日は特別だった。なんと言ってもこの部屋は友紀が晃一に愛された場所なのだ。
そのままグッタリと四つん這いになった友紀は、更に秘部に手を伸ばした。今度は右手で秘口の周りを刺激し、左手では秘核を優しく刺激する。
『ああぁん、おじさまぁ、まだするのぉ?ああん、今度は後ろからぁッ、ああああーーっ、もう許してぇぇ、身体が持たないぃぃっ、そんなに直ぐにしちゃだめぇッ、ああっ、まだ身体が、身体がぁぁッ、ああああああーーーーーっ、後ろは感じるからダメぇっ、あうぅぅっ、深いっ、気持ち良いぃーーっ』友紀はベッドに突っ伏したまま両手を使って気持ち良くなっていった。普段両手は気持ち良くなりすぎるので余りしないのだが今日は積極的に最高になろうとしている。そして右手の指は秘口の周りだけで無く、ひと関節だけだが指を秘口に入れて出し入れし始めた。指が肉門を通るときの快感が堪らない。
『おじさまぁぁぁぁぁっ、そんなに突いちゃいやぁぁ、ああああぁぁ、気持ち良すぎてぇっ、ああっ、ああっ、気持ち良いっ、おじさまぁっ、ああっ、後ろも素敵ぃっ。ああっ、だめぇっ、やっぱり直ぐにいっちゃう、いっちゃう、最後はおっぱいもしてぇーーっ』友紀は心の中でそう声を上げると、左手を素早く乳房に移動させて揉みしだいた。右手と協調させて一気に絶頂を極める。
「はうぅぅぅぅぅぅーーーーーーっ」
友紀の声が響き、友紀はベッドの上で身体を震わせた。今度のはかなり高い頂だった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・」
友紀はベッドで一人息を弾ませていた。最初の予想では、本当はここでむなしくなるはずだった。一人でこんな事をしてしまったことを後悔するはずだった。しかし、何故か甘い感覚が友紀を包んでおり、とても後悔するどころでは無く、どちらかと言うと安心感と小さな達成感のようなものがあった。
『ああん、このままじゃ、またここに来たくなるぅ、またここでしたくなっちゃう。もうっ、おじさまったらどうしてくれるのよぉっ』友紀はそう思いながらゆっくりと身体を起こした。
『もしかして臭いとか残るかな?』そう思ったがシーツは少し皺になったが汚しては居ないし、今更仕方ない。スカートを吐くと友紀はシーツを綺麗に直してリビングに戻った。
『さて、帰らなきゃいけないけど・・・・』そう思って時計を見ると、もう少しだけ時間がある。まだ快速が無くなる時間では無い。友紀はソファに真正面から上がり、右手を再び秘部に進ませた。今度は躊躇していない。
『ああぁん、おじさまぁ、やっぱり前からが良いっ、ああん、早くぅ、早くしてぇ・・・、ああん、入った・・・やっぱり大きい、うん、奥まで来てる・・・・・・・いやぁ、私が脱ぐのはいやぁ、おじさまが脱がせてぇ、ああん、早く動きたいぃっ』友紀は晃一の上に跨がって貫かれた時のことを思い出していた。友紀が自分で脱ぎ終わるまで晃一は何もしてくれず、腰を動かしたいのを必死に我慢させられたのだ。
『ああぁぁん、そんなに優しい目で見ないで。脱げば良いのね?脱いだらしてくれる?ああん、だったら脱ぐぅ』友紀はソファの上で服を脱ぎ始めた。
『ああん、なかなか脱げないぃっ、ああっ、ごめんなさい。我慢できないのぉ、少しだけ、少しだけなら動かしても良いでしょ?いやぁ、少しだけだからぁ、ああんっ、はい・・・我慢するぅ』友紀は器用に左手だけで制服を脱ぎ飛ばしてからブラジャーを落とし、そのままスカートに手を掛けるとジッパーを下げて上に引き上げた。もちろん右手はずっと秘核の周りをじわじわと撫で回している。自分で焦らしているのだ。
『ああんっ、上手く脱げないのぉッ、おじさまも手伝ってぇっ、ねぇ、良いでしょ?おじさまもぉッ』友紀はそのままスカートを上から脱ぐと、右手の動きを加速させて一気に乳房を揉み絞った。
『ああぁぁっ、おじさまぁっ、良いっ、良いっ、おじさまぁっ、ああぁぁっ、お口もぉっ、いいっ』友紀はその体勢のまま、簡単に達してしまった。『凄いぃーーっ、やっぱりおじさま凄いっ、ああぁぁっ、もうだめっ、いく、いくっ、いっちゃうぅぅぅーーーっ、うぐっ』
友紀はビクンと身体を震わせると、グッタリとソファの背もたれにもたれかかった。今度のは本当に凄かった。しばらくの間、放心状態のまま全く動けない。自分の息づかいだけが微かに部屋に響いている。静かだった。自分しかいないのが良く分かる。それは友紀にとって、頭の中の想像の世界を具現化した秘密の世界だった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・凄かった・・・・・」
友紀はぽつんとそう言うと、ゆっくりと身体を起こした。
『誰もいないよね?誰も見てなかったよね?』静まりかえったベッドルームを見渡してから、脱ぎ散らかした下着や服を集めてゆっくりと身につけていく。『こんな事・・・・誰にも言えないよね・・・・・菜摘が知ったら怒るかな?でも、おじさまだったら怒らないと思うな・・・・』
友紀は身支度を調えると、あちこちを丁寧に点検して痕跡を残していないことを確認してからマンションを出た。
その日の夜、美菜は晃一にメールを送ってきた。日曜日に会いたいという。なんでも、日曜日には外部テストがあるので、それが終わってからマンションに行きたいというのだ。晃一は少し迷ったが、今自分を必要としているのは美菜だと思い、OKの返事を送った。するとあっという間に美菜からお礼の返事が来た。本当は土曜日に行きたいのだが、そうすると土曜日に勉強の時間が短くなるのはまだ良いとしても、日曜日のテストの間、ずっと晃一のことを考えそうで怖いから日曜日にしたとのだという。日曜日にテストが終わったら直ぐにいくから、と。
晃一は美菜の考え方に不思議な思いがした。普通なら土曜日に行くとテスト前の勉強時間が短くなるからダメ、と言うのでは無いだろうか?晃一は、美菜の言うことが今ひとつ理解できなかったが、もともと美菜の考え方は浩一にはかんたんに理解できないので仕方ないと思い、もっと美菜の考え方を理解しようと思った。
それに、なんとなく、だが、美菜は菜摘よりも簡単に勉強と恋愛を区別しているような気がする。美菜との関係を恋愛と呼ぶのなら、だが。なんとなく菜摘が全身全霊を掛けて勉強する自分を守っているのに対して美菜は簡単に同じ事をしているような気がする。晃一には二人の違いが不思議だった。
菜摘は金曜日に、美菜からメールを受け取った。日曜日に晃一に会うという。菜摘はいよいよ心配が現実になってきた気がしたが、今自分が晃一に会いに行ったら絶対に晃一から離れたくなくなるし、テストの成績が下がると思っていた。なんと言っても目の前に友紀という見本があるのだ。もしかしたら、このテストでは英語で友紀を抜けるかも知れない、そんな気がしていた。いや、それを目指して勉強してきたのだ。別に友紀に自慢したい訳では無いが、今まで自分が絶対に届かなかった友紀を抜けるかどうかは自分にとって大きな意味がある。そしてそれは今の菜摘にとって晃一よりも大切なことなのだった。