第205部

「友紀ちゃん、後悔してない?」
「おじさま、女の子にそう言うこと、絶対言っちゃだめよ」
「え?どうして?」
「女の子はこう言う時、絶対後悔しないの」
「そうなんだ・・っけ・・・・・」
「そう、男の人とは違うのよ」
「それじゃ友紀ちゃん・・・・・」
「私が最初、嫌がってたの分かった?」
「そんなに嫌がってたとも思わなかったけど、少しは嫌がってたかな????」
「もう、分かっててするんだから。強引なんだからぁ、おじさまって」
「ごめん」
「だから謝らないで。私、後悔したくないもん」
「うん、ごめ・・・・ううん、わかった」
「それでね、私、もう帰らなきゃ」
友紀は晃一の手がお腹から胸へと上がってくるのを感じながらこともなげに言った。
「どうして?これから予定があるの?」
「ううん、美菜が鞄を取りに戻ってくるでしょ?」
「美菜ちゃんが??・・・・・あっ、何も持たずに出て行った・・・??」
「そう、私達がしてたから。ほら、おじさま、あれが見えない?」
友紀はテーブルの陰の美菜の鞄を指さした。
「そうか・・・・・・」
「だから・・・・・ね?」
友紀は晃一の手を外すと、
「帰るね。おじさま、今日はありがと。嬉しかった」
と立ち上がった。
「もう帰っちゃうんだ・・・・・」
「だって、美菜が外で待ってるもん」
「そうなの?」
「そうに決まってる。さっき出てったみたいだけど、これを取りに来ないと帰れないんだから」
「でも・・・・もう少しくらい・・・・・」
晃一も立ち上がって友紀を抱きしめようとしたが、友紀は半分身体を捻って中途半端に抱きしめられた。
「だめよ、おじさま。私だってこれ以上優しくされた我慢できなくなるんだから。美菜のことも考えてあげて」
「ってことは・・・・・」
「そうよ。私だって我慢してるの。分かった?だから、はい、今日は帰ります」
友紀は自分の荷物を持つと、さっさと玄関に行った。
「分かった。友紀ちゃん、また来てね」
「ありがと。おじさまに会えて・・・・良かった」
そう言うと友紀は晃一に手を回すとキスをしてくれた。そのまま二人はしばらくキスを楽しんだが、やがて晃一の方から唇を離した。
「だめだ。本当に友紀ちゃんを引き戻したくなってきた」
「それなら帰らないと。バイバイ」
友紀は片手を上げてグーパーと握ったり放したりしてから素早く出て行った。晃一が送りに出る間もなかった。
「ふぅ・・・・・・・」
晃一はリビングのソファに座り込んだ。
友紀はそっと玄関から出たつもりだったが、そこに美菜はいなかった。『どこにいるんだろう?下のホールかなぁ・・???』見渡すが誰もいない。そこで友紀はエレベーターで玄関ホールに出た。すると、扉の向こうから美菜が出てきた。
『あ、やっぱりいた』友紀は想像通りだったことに満足した。そして自動ドアに近づいてドアが開いたときに美菜を中に呼び寄せた。
「ごめんね、お待たせ」
その言い方に美菜はちょっとむっときた。
「別に・・・・」
そのつっけんどんな言い方に友紀はちょっと反省した。そして、改めてきちんと言った。
「あのね・・・・私達、たぶん、話し合う必要、あるよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
突然の友紀の申し出に美菜は言葉を無くしたが、考えてみればその通りだ。
「・・・うん・・・・たぶん・・・・・」
「どこで話す?これから直ぐに?先に荷物取ってくる?それとも今日は止めとく?」
友紀は美菜に暗に晃一の所に戻るように言ってみたつもりだった。
「ううん・・・・」
美菜は少し考えていたが、
「明日にしない?今、頭が混乱してるから。明日のお昼に音楽室でどう?」
「・・・そう・・・・それもそうね。わかった。それじゃ、明日ね」
そう言うと友紀は去って行った。美菜がここで友紀と話さなかったのは、友紀と違って自分は今話す必要があるのに気がついたからこのまま友紀と話すと友紀のペースで話が進みそうだったからと言うのと、晃一にもう一度会いたかったからだ。その意味では友紀の思い通りになっている。
美菜はそのままエレベーターに乗ると晃一の部屋のドアの呼び鈴を押した。
「美菜ちゃん・・・・・」
晃一は既に服に着替えていた。
「入っても良いですか?」
「もちろんだよ。忘れ物だっけ?」
「はい・・・・、お邪魔します」
美菜はリビングに入ると、自分の荷物がそのままになっているのを見つけて、取り敢えず安心した。
「あった?」
「あった・・・・・」
美菜は荷物を持つと、晃一に向き直った。
「おじさま・・・・教えて?」
「うん?どうしたの?」
晃一はその言い方に緊張した。何か重大なことでも話しそうな雰囲気だ。
「おじさま・・・・教えて。どうして私と・・・・したの?」
「え?だって、美菜ちゃんはとっても可愛いし、優しくしてあげたかったし・・・・」
そこで美菜は正直に聞いてみた。じっと抱え込んだまま黙っているのは嫌だったのだ。
「でも一回してみて分かったでしょ?あの時・・・入れて・・・私の中・・・・・気持ち良くないって」
「そんなこと無いよ。気持ち良いよ。どうして・・・」
晃一は美菜がそのことに気がついていたことに内心驚いた。
「だって、私の中ではおじさま、最後までいかないでしょ?それなのに友紀だと直ぐに・・・。私だって口でしてあげると最後までいくのに・・・あそこだと・・・・」
「そう言うことか。そんなこと心配してたんだ」
「いけない?それって、おじさまが本気じゃ無かったって事でしょ?私を裸にして、してみたかっただけ?」
分かってはいても、どうしても言い方がきつくなった。だって、とても恥ずかしいことを聞いているのだ。
「そんな言い方しなくたって・・・・。ごめんね、こっちも言い方、拙かったね。美菜ちゃん、真剣に悩んだんだものね」
「・・・・・・・・・・・」
そんな風に言われて『そうです』とは言えない。
「どう言おうかな・・・・」
晃一は少し考えていたが、やがて話し始めた。
「美菜ちゃん、男って何のためにエッチすると思う?」
「それは・・・・赤ちゃんを作るため・・・・・」
「それは生物学的にはそうかも知れないけど、もっと簡単に考えて。男って女の子とどうなりたいと思ってるのか分かる?」
「それは・・・・キスして・・・・身体を触って・・・気持ち良くなって・・・」
「そう。それだよ。キスってどう?気持ち良い?」
「気持ち良いって言うか、何か変な気持ちになるって言うか、ぼうっとなるって言うか・・・」
「そう、キス自体は快感なんて無いだろ?」
「うん・・・・・・」
「それじゃ、どうしてキスしたがるんだろう?」
「気持ちを確かめたいから・・???かな・・嬉しくなるし・・・安心の方が大きいかな???」
「そう。気持ちが安心するとか、嬉しいとか。女の子が腕の中で目をつぶって唇を許してくれるんだからね。それと同じで、どうしてエッチしたいと思う?」
「それは・・・・女の子の中に入って・・・・って言うのはキスするのと同じ?でも、入れると気持ち良いんでしょ?」
「それはそうだけど、同じ様に考えてみて」
「女の子の服を脱がせて、触ると、女の子が喜ぶからとか、触りたい時に触ることができたとか?」
「そう。おちんちんを女の子の中に入れると、確かに気持ち良いのは確かだけど、それだけのためにするんじゃ無いよ。一番大きいのは、女の子が自分だけに裸を見せてくれるとか、自分には恥ずかしい姿を見せてくれるとか、自分にだけは触らせてくれるって言う、特別な存在になったって言う満足感だと思うんだ。だからもっと大切にしようって思うし、もっと気持ち良くしてあげたいなって思うんだ。美菜ちゃんだってお口でしてくれるとき、同じだろ?」
「うん・・・・・私ばっかり気持ち良くなっちゃ悪いって思った・・・」
「そう。それだと思うんだよね。そう思って美菜ちゃんとエッチすると、美菜ちゃんが俺より先にいつもいっちゃうからきっと俺は気持ち良くないんだろうって思ったのかも知れないけど、そんなことは無いよ。でも、美菜ちゃんがいくと俺は止めるでしょ?俺が終わるまでしないから。俺はその方が良いから。美菜ちゃんが気持ち良くなって、いって、満足してくれるのを見るのが一番嬉しいから。幸せそうに甘えてくれるのが嬉しいから。それだけ。でも美菜ちゃんにお口でして貰うときは最後までいかせてくれるからね。とっても気持ち良かったよ」
「最後までしないのに?」
「うん、そう。女の子がいった後も思い切りズボズボすればいけるだろうけど、それだと女の子が可愛そうだろ?終わって直ぐには敏感になるから痛がったりする子もいるし。だから俺は女の子が終わったらそれ以上はしないんだ」
「私の方が先にいっちゃうから・・・・・か・・・・・・」
「うん。そうだよ」
「おじさまにされたら、どんどん感じちゃうから・・・・私・・・・」
「そうだよね。感じやすいからね」
「それじゃ、友紀はどうなの?友紀のこと、好きなの?」
「好きって言えばそうかも知れないけど・・・・」
「やっぱり」
「違うよ。美菜ちゃんと同じだよ。好きは好きだけど、菜摘ちゃんとは違うから。それに、さっきだって友紀ちゃんは甘えたかったのと安心したかったんだと思うよ。その証拠に、友紀ちゃんは一度も『好き』って言わなかったよ。美菜ちゃんは言ってくれたけど」
「そう・・・・・そう思うんだ・・・・・・」
美菜は考え込んだ。美菜はこの前、確かに晃一に『好き』と言った。晃一も言ってくれたが、校飯野好きはどう考えても美菜のとは違うと思った。今聞くと、その晃一の考えはもっともなように聞こえるが、美菜は何か少し違うと思った。それは明日、友紀と話せば少しは分かるはずだ。
「それじゃ、おじさま、私のことは?」
「うん、大切だと思うし、好きだよ」
「菜摘とは違うけど?」
「うん、そうだね」
「それじゃ・・・・・友紀とああなっても私を避けたりしない?」
「まさか、そんなことある訳無いよ」
「でも、友紀はあんなに胸だって大きいし、おじさまだって友紀の中で・・・・」
「美菜ちゃんほど綺麗な人でもコンプレックスってあるんだね」
「え?」
「スタイルについてなら、きっと友紀ちゃんの方が美菜ちゃんよりいっぱいコンプレックスがあると思うよ」
「そうかな?」
「そうだよ。間違いないから」
美菜は友紀に明日、聞けたら聞いてみようと思った。
「逆に俺から聞くけど、美菜ちゃんは俺が友紀ちゃんとあんな事したのに怒らないの?」
「私が?どうして?」
「だって、俺は美菜ちゃんに見られるかも知れないって気がついてた訳だし・・・・、その上でしちゃったし・・・」
「すごくびっくりした・・・。他人のなんて見たの初めてだから。でも、それだけ。見たのが友紀だったからって言うのもあるのかも知れないけど。それに、私は見たのより見られた方がショックだったわ」
「だって、あれは美菜ちゃんが止めたくないって・・・」
「その前は。最初に友紀が入ってきた時はびっくりしたから・・・」
「あぁ、そうだね。本当にびっくりしたね」
晃一は話の雰囲気が柔らかくなってきたので美菜と一緒にソファに座った。美菜は嫌がらなかったが、晃一にくっついてくる訳でも無かった。
「ねぇ、友紀の言ってた鍵って何?」
「あのね、このマンションのカードキーなんだ。鍵を差し込んで回すって言う機械式とは違ってカードを翳すとドアが開くんだよ。鍵穴が無いからピッキングされないって言うんだ」
「へぇ、どんなの?見せて?」
「うん、えーとね」
晃一はカードキーを取り出して美菜に見せた。
「へぇぇぇ?これが鍵なんだ。金属の鍵じゃ無いんだ」
美菜はカードを見て結構真剣に感心した。
「私、もう少しここにいてもいい?」
「もちろんそれは良いけど・・・・・。嫌じゃない?」
「うん、もう少し居たいの・・・・」
「好きなだけ居て良いよ」
「それじゃぁ・・・・・・・・怒らないでね」
そう言うと美菜は立ち上がって晃一の膝の上に横向きで乗ってきた。そして、そのまま晃一の肩に頭をもたげてきた。
「ありがと。ちょっとだけ安心した。いいのよ、もし触りたければ・・・。それとも、もういい?」
「美菜ちゃんはどっちが良いの?」
「・・・・・ちょっとだけ・・・・・・」
「俺は良いけど、ちょっとで止まるかどうか分かんないよ」
「それならそれで良いから・・・・・」
美菜は晃一の気持ちを全て受け入れた訳では無かったが、晃一が自分は友紀と同じに好きと言ったことで少し安心したのと、また少し友紀に対抗心が芽生えてきたのと、もう一度晃一の胸で安心したかったので晃一の膝に乗ることにした。もちろん、晃一に言ったように、また服を脱ぐのならそれでも良いと思っていた。しかし、晃一が既に2回放出しているので高校生と違って晃一には無理かも知れないと思っていた。だから、その上で晃一がその気になるなら、自分に対する晃一の気持ちが強いことの証になるのでは無いかと思った。
「うん、わかった」
晃一は左手で美菜の髪を撫でながら、右手で優しく美菜の肩から胸、そして腰から足を撫でていった。美菜は違和感と共に安心感を感じていた。自分が今乗っかっている晃一は、ほんの少し前まで友紀を抱いていたのだ。その前は自分なのだが、美菜は自分の気持ちがどう反応するか確かめたかった。
今日、最初にこの部屋に来た時に晃一に触られた時は嬉しくて直ぐに身体が反応し始めたが、やはり今はそれほど反応しない。今までは圧倒的とも言う安心感があっという間に気持ちを包み込んで楽にさせたのに、今はまだ緊張している。それは明らかに晃一と友紀とのことを見てしまったからなのは間違いない。
元々美菜は晃一と菜摘との関係を知っていてこうなったのだから、自分が一人だけ晃一に抱かれているとは思っていなかったし、友紀としているところを見たからと言ってショックを受けるのもおかしいのかも知れないが、やはり目の前で見てしまうとインパクトが強い。
それに、正直に言えば菜摘が晃一に会おうとしないのなら、もしかしたらこれからは自分が晃一の唯一の相手になるかも知れないという期待があったことは事実だ。だから晃一は美菜にとって心の中では唯一の存在になりかけていた。
それが、今は全然違う。ほんの1時間ほど前と今とでこんなにも晃一の印象が違うと言うのは自分でも不思議であり、少しだがこうして直ぐに女の子に手を出してくる晃一に嫌悪感さえ感じてしまう自分が分からなかった。