第211部

「でもさ、いいの?それで・・???菜摘に許可をもらって会いに行く、なんてさ・・・。身代わりなんて・・・」
「良いよ、それで。誰かを押しのけて、なんて私のキャラじゃないし、会えればそれで良いんだし」
「そうか・・・・実を取ったって事か・・・・」
友紀は美菜の考えていることが分かったと思った。
「それじゃ、今度は私からね。どうして昨日、日曜日に一人で来たの?菜摘にもおじさま連絡してなかったんでしょ?」
「うん・・・・・・・・」
「それじゃ、どうして?誰もいなかったらどうするつもりだったの?」
「それでも良いと思ってた・・・・・・って言うか、もともと誰も居ないと思ってたから」
「え?どういうこと?おじさまに会いに行ったんじゃ無かったの?」
「そうじゃ・・・・ない・・・・・」
友紀の言葉の歯切れが急に悪くなった。それが美菜には不思議だった。
「そうじゃないって・・・・・それじゃ、何しに行ったの?」
「部屋に行くため・・・・・・じゃ、だめ?」
「だから、おじさまのいない部屋に行きたかったって事?」
「うん・・・・そういうこと・・・・・、だめ?」
美菜は友紀の曖昧な受け答えが変だと思った。おかしい、何かある。
「ねぇ、私、ちゃんと話したけど?」
「そうよね・・・・」
「私、こんな事、今まで誰にも話した事なんてないのに、友紀には話したのよ」
「そうよね・・・・・・」
「それでも正直に言わないつもり?」
「それは・・・・・・そんなこと、ない・・・・」
「なら言って。なんのためにおじさまの部屋に来たの?」
「それは・・・・・・・」
友紀は黙り込んでしまった。
「どう言うことよ」
美菜は畳み掛けた。
「だから・・・・誰も居ないと思ったから・・・・・誰もいないおじさまの部屋に行きたかったの・・・」
「誰もいないと思って行った??どう言うこと?」
「そう、誰も居ないあの部屋に行きたかったの」
「一人で考え事をしたかった、って事?」
「そうよ・・・・」
「あの部屋で?」
「そう。美菜だって同じでしょ?あの部屋、あんたはなんのために行くの?」
急に問い返された美菜は動揺した。
「え?それは・・・・・・・おじさまに会いに・・・」
「私だって同じよ。だって、あそこですることは一つだもん」
「でも、おじさまがいないんじゃ・・・・」
「居たら、・・・・ぜったい、して欲しくなるでしょ?あの部屋に行けばさ」
「そうよ、だから一人でって・・・・・・あ」
美菜は何となく友紀の気持ちが分かってきた。
「おじさまとのこと、思い出すためにあそこに行ったって事?おじさまが居たら我慢できなくなるから菜摘に悪いって思ったの?だからわざとおじさまが居ないと思った日に行ったって事?」
「菜摘に悪いってのもあったけど、それだけじゃなくて・・ね。だって、誰も居ない時に行けば、何にも起こらないって思ったから。日曜日ならおじさまもいないはずって思ったの。それまで菜摘はいつも土曜日におじさまと会ってたから・・・・だから・・・」
「日曜日なら誰も居ないと思った?」
「そう・・・・・」
「それで、雰囲気に浸りに行ったって事?」
「そうよ。それなら良いでしょ?私だって、おじさまと付き合ってたんだから」
「それは分かってる。どっちかって言うと、私の方が付き合い短いって事くらい、分かってる」
「それなら、分かってくれたって良いじゃないの」
「そうか・・・・・。何となく分かってきた。あの部屋にいれば雰囲気に浸れるって事か・・・」
「そうよ。悪い?」
「悪くなんてない。責めてるんじゃないんだから。ちょっと不思議だって思っただけで・・・」
「それならいいでしょ?」
「いつから?昨日が初めて?」
「それは・・・・・・本当は、木曜日にも・・・・」
「2回目って事か。それじゃ、その時は雰囲気に浸れたんだ。だから昨日も来たんだ」
「そうよ。良いじゃないの。浸ってるだけなんだから。木曜は誰にも会わなかったんだから」
「もちろん良いけど・・・・・・」
美菜は自分だったらどうだろうとかと思った。
「友紀、でも、あの部屋に一人でいたとして、じっと考え事してたの?あの部屋で普通でいられる?」
友紀はドキッとした。
「えっ?・・ふ・・普通って・・・????」
「だって、あの部屋はさ・・・・・・第一、友紀だってそうでしょ?あの部屋ですることって言えば一つって・・・」
美菜はあの部屋では服を脱いでいる時間の方がずっと長いことを暗に指摘した。友紀は逃げ場が無くなってきたと思った。
「うん・・・・・・だから・・・・・・なの・・・私だけ、だから・・」
その言い方に美菜にはピンと来た。
「だから?それってあんた・・・・・・・もしかしてあの部屋で一人だけでって・・・・一人で・・してた????そう・・なの?」
友紀の顔が一気に赤くなった。
「・・・誰にも内緒よ、良い?絶対内緒にして、お願い」
「・・・・って事は、もしかして友紀、あの部屋で、あれ・・・・・・・してたの?」
「しぃっ!だからお願い!黙ってて・・・・・」
「どうしてそんなこと・・・・・・」
「だって、あそこに居るだけでおじさまにしてもらったこと思い出せるし・・・・。幸せな気分になれるし・・・、落ち着くし・・・・、美菜には分からないと思うけど・・・・」
「・・・・・・・・・・・そうなんだ・・・」
美菜は友紀の心の中のどうしようも無いやるせなさのようなものを垣間見た気がした。
「あそこに行けば、気持ちが楽になるの。楽しかった時を思い出せるから」
「彼と、上手くいってないの?」
「ちょっと寂しかったんだと思う。最近、ぜんぜん上手くいってなかったから・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「ねえ美菜、何も言ってくれないの?・・・・・」
「ううん、分かる。だって私も同じだもん」
「同じ?何が?」
「昨日、帰ってから考えたの。どうして私は先週の日曜日、おじさまに連れられてあの部屋に行ったんだろうって。最初の土曜日は警戒されて当然として、次の日曜日に偶然会った時よ、どうして部屋に行ったのかなって。行けばどうなるかは分かってたのに。それでね、考えてみてなんとなく分かったの」
「だから何が?」
「私も寂しかったの。ここんとこ、彼にぜんぜん相手にされなくて。だから友紀と同じってこと」
「美菜が相手にされない?どう言うこと?」
「どうって・・・・そう言うことよ・・・」
「美菜の彼って、あのイケメンぽい彼だよね?」
「そうよ・・・・そうだった、かな?・・・・」
「美菜が?・・・・そうなの?・・・・そうだったんだ・・・・・・」
「そう、それで、日曜に偶然会った時にその話になって・・・おじさまに相談してるうちにね・・・・」
「分かる。それは私もそうだったから・・・・」
「それで・・・・なんとなく、のめり込んじゃったみたい・・・・。自然にって言うか、そのままの流れでって言うか・・・・、気がついたら優しくされて、それで脱がされて、ううん、脱いだって感じだったかも・・・・・」
「そうよね、あんな風に優しくされれば誰だってさ・・・・・。おじさま、大人だからがっつかないから気持ちが楽だし」
「安心してられるのよね。脱いでも全然緊張しないの、なんか、もっと甘えたくなって」
「そうそう。学校のこと考えなくて良いし」
「うん、優しくされるのが嬉しくて・・・・・。だって、本当に優しいんだもの」
「形だけじゃないからね。うわべの優しさだと直ぐに下心が見え見えになっちゃって嫌になるけどさ」
「でもさ、ごめん、友紀って告られたんじゃなかったっけ?それでおじさまから移ったんでしょ?」
「そう。私、舞い上がってたのかも、付き合って欲しいなんて告白なんてされたこと無かったから。それに、おじさま、上手に隠してたけど菜摘のこと、ずっと思ってるのに気がついたし」
今度は美菜がドキッとした。何となく気がついていたのに気がついてない振りをしていたことを指摘された気がした。
「そ、そうなんだ・・・・・・」
美菜の中途半端な返事を友紀は気にしていないようだ。
「でもね、最初から他にも居たのよ。中学からの同級生だって」
「え?二股?」
「そう、一緒の中学だった子に会った時に横取りって言われてさ、びっくりして問い詰めたら、私は学校だけの彼女だってさ。馬鹿にしてるよね、全く。こっちはおじさまを振って行ったのに」
「へぇ、私だけじゃないんだ。そんな風にされるの・・・・」
「美菜にも経験あるの?」
「何言ってんのよ。私はほら、元々学校の外が多いでしょ?だから他にもいるなんて珍しくもなんともなかったわ」
「学校の外の彼だから?」
「そう、私が付き合う人って、元々顔が広い人が多いから。もともと学校の中で作るって好きじゃ無かったし」
「そうか、美菜もだったんだ・・・、へえぇ、美菜がねぇ・・・・。学校じゃ選び放題なのに・・・」
「え?選び放題?そんなことないよぉ。まるで私が次々乗り換えてるみたいに言わないでよ」
「どうして?しょっちゅう告られてるじゃないの」
「私に言ってくる奴って、見かけだけって言うか、真面目に付き合う気なんて無いのばっかりでさ。私自身、遊んでるように見えるのかも知れないけど、一度友紀にリストでも作って見て欲しいくらいだわ」
「そうなの?だって、しょっちゅう彼を替えてるのを見てるから・・・」
「それは、さすがに少しは話してみないと分からないから・・・・・だから最初は一緒に帰ったり、待ち合わせたりはするけど・・・・」
「そうするとだんだん分かってくるんだ。なんか違う奴だって」
「そう・・・・、なんか、私のこと、アクセサリーかなんかだって思ってる奴ばっかりで。私を連れて歩いてればそれで良い、みたいな・・・。それで私も俺と一緒に歩ければ満足だろう、なんて言われてもねぇ」
「それは確かにね、嫌になるよねぇ」
「うん、だからさ、おじさまに・・・あんな風に真面目に相談に乗ってもらうとさ、なんて言うか、心の中に入ってくるって言うか・・・・・。だから、どうしてもおじさまの所に行きたくなっちゃって・・・・実は先週の水曜にも行っちゃったの」
美菜は正直に言った。そして自分の気持ちを話すことができて少し安心した。友紀も自分と同じだと言うことが確認できたのだ。
「そういう訳か。・・・・そうだよね、そうなるよね。私だって同じだもん」
友紀も美菜が自分と同じだと確認できたらしい。
「確かに昨日、友紀が突然来た時はびっくりしたけど、もしかして逆の立場だったら、私だって同じ事してたかも・・・・・」
「ねぇ、美菜、怒ってない?」
「え?怒る?どうして?」
「だってさ、ごめん、邪魔したでしょ?それだけじゃなくて、突然割り込んで居座って、あれまで・・・・・・しちゃったし・・・」
「ううん、全然。もちろんドキドキしたけど、友紀だって全然余裕無かったんだよね。だからおじさまと話して安心したかったんでしょ?それに、私だって・・・・・したよ。友紀の直ぐ後にも。分かってるでしょ?」
美菜がはっきりと言ったことで二人はしばらく見つめ合った。じっとお互いの目を真剣に見つめ合った。ここまではちゃんと話せた。しかし、お互いの一番のプライベートを知られてしまったのだから、相手がどう思っているのか心配で仕方がない。しかし、しばらくお互い見つめ合っていると、相手も同じ心配をしているのが何となく分かってきた。
「ふふふ・・・・・」
「ふふふふふ・・・・」
「私達、お互いにさ・・・・・」
「見ちゃったね・・・・見られた、かな?」
「そう、お互いにね」
二人はそこでニッコリと笑った。そして美菜が、
「ちょっと隣に移るね」
と言うと、友紀の隣の席に移り、友紀の耳元で話し始めた。カラオケルームだから元々誰に聞かれるはずも無いが、さすがに内緒の話はこうするのが一番だ。
「私達、同じなんだね」
美菜がそう言うと、友紀も真剣な目でこっくりと頷いた。
「うん、同じ。びっくりするくらい」
「それじゃ、良い?」
美菜は真剣な目で友紀を見た。
「良い?絶対誰にも内緒だよ」
「もちろん、菜摘にだって言えないよ」
友紀も同じ気持ちだ。
「絶対に絶対、良いね」
「もちろん絶対」
「良かった。それで・・・・教えて。ねぇ、私の・・・・・もしかして・・びっくりした?」
「それはそうよ。だって他の人のなんて見たことなかったし・・・・・・。行っとくけど、わざと見たんじゃ無いの。絶対興味なんかじゃ無い」
「分かってる。私だってそうだもん。あそこに居たら・・・・自然にそうなっちゃって・・・」
「ごめん、部屋でじっとしてると、どうしても気になっちゃって・・・・・。ちょっと声も聞こえて・・・・美菜・・・凄かったから・・・・・」
「それは私だって同じ。友紀、凄かったもん。ごめん、ちょっとびっくりした・・・かも」
「そう?でもね、美菜、とっても綺麗だったよ。本当に。」
言われて美菜は恥ずかしくなった。あの時に自分がしていたことをはっきりと思い出したのだ。あそこまでしたのは初めてだったが、同時に気持ちがとても楽になったし、充実したのも確かだった。
「友紀だって。心からおじさまに甘えてるのが良く分かったもん。気持ちが正直に出てた。どうしようも無いって言うか、夢中になってるのが良く分かったわ・・・・」
「そうか・・・・・。美菜も素敵だった。思い切った事してるって思ったけど」
友紀は美菜があそこを舐められながら晃一の精を口の中に受けた時の美菜の表情を鮮明に思い出していた。
「それは私も同じ。友紀、夢中だったでしょ?思い切りしてたから」
美菜も友紀が晃一の上に乗って乳房を揉まれながら両足を踏ん張って腰を思い切り上下させ絶頂していたのを鮮明に思い出していた。
「だって、ああなれば誰だって・・・、それに、するんなら夢中にならないと。美菜、見てたんでしょ?私がしてたとこ、最後まで」
「うん・・・・ごめん・・・・」
「ううん、私だって見たんだし。ごめん」
やっと二人とも、口に出して正直に自分のしたことを告白できた。二人とも、グッと気が楽になった。
「いいの。私、なんか、変な気持ちになっちゃって・・・・」
「それは私も同じ。してもらった後だったからかな?覗くって言う感じじゃ無くて、なんて言うんだろう、上手く言えないけど・・・」
「あのね・・・・もしかしたら、自分を重ねて見てたのかも・・・・・。自分がされてるみたいな気持ちになってたかも・・・・」
「そうそう、絶対それ。『私なら』って思った」
「私も。だから見てて自分でも真っ赤になったのが分かったから。自分がしてもらってる気分になったんだと思う。だって、本当に凄かったよ・・・・」