第233部

「こっちだよ」
「おじさま、ああ良かった」
美菜はスッと晃一の横に座った。今日の美菜はさっき見たがグリーンのワンピース姿だ。ノースリーブなので細い腕がとても綺麗に見えるし、スレンダーな美菜の魅力が良く出ている。ただ胸元は首までしっかりとあるのが晃一には少し残念だった。制服以外の美菜の姿はとても新鮮だ。晃一は身体のラインが制服よりもはっきりと出るワンピース姿を横目で楽しみながら、この服を脱がせる時の美菜の身体を想像してしまった。
「どうしたの?友達と一緒だったじゃない」
「うん、ちょうど帰るところだったから」
「俺のこと、分かった?」
「もちろん。だから友達と別れてきたんだもの。私が指差したの、分かった?」
「うん。だからここの駅で降りたんだ」
「良かった。見てくれてるかどうか自信、無かったから」
「美菜ちゃんは目立ってたよ。直ぐに分かったから」
「やだぁ、そんなこと言わないでよ」
「でもさ・・・・・・・」
晃一が言い辛そうに口を挟むと、
「菜摘のこと?大丈夫。連絡してあるから」
と美菜がはっきり言った。
「そうなの?それならいいけど・・・・」
晃一がちょっと口ごもったので美菜は続けた。
「うん、だいじょうぶよ」
「それなら良かった」
美菜はそう言ったが、実は半分だけだった。確かに美菜は晃一に偶然会ったので少しおじさまと一緒に居たい、と菜摘にメールを送ったし、電話もしたのだが、菜摘とは連絡が取れなかった。実は菜摘は図書館にいたの携帯は鞄の中ででマナーモードになっていて気がつかなかったのだ。本当なら菜摘の許可をもらっていないのだから美菜は晃一に会うのを諦めるべきだった。もともと美菜だって晃一と会う予定など無かったのだから当然だ。
しかし、電車の窓に晃一を見つけた時、美菜の気持ちにスイッチが入ってしまった。だから美菜はしばらく友達と一緒に居て、みんなといつものように別れてから菜摘に連絡をして、そのうちに連絡があるだろうと思って移動を開始したが、菜摘から連絡が来る前に晃一の所に着いてしまったのだ。
もともと晃一の部屋以外では会わないと決めたのは美菜なのだ。それを自分から破ってしまっては元も子もないのだが、今の美菜はさほど気にしていないようだった。
「美菜ちゃん、夕ご飯は?」
「もちろんまだ。一緒に居ても良い?」
「食べる?」
「うん」
美菜は砕けた調子で笑った。それならば、と晃一は美菜と話をしながら手早くいくつか注文した。
「美菜ちゃんはシーフードとお肉と、どっちが好き?」
「本当はシーフードかな?でも、どっちでも食べる」
「食べ盛りなんだから当然だよね」
「ううん、シーフードって直ぐに無くなっちゃうから」
「お鮨とかは?」
「大好き。そう、聞いたわよ、おじさま、友紀や菜摘にはお鮨とか食べさせたんでしょ?」
「あぁ、そうだね」
「私だって食べたいぃ」
美菜は甘えるように言った。晃一だって男なので可愛い子に甘えられるのは気持ちの良いものだ。ほのぼのとした雰囲気が気持ちを楽にする。一方の美菜は晃一の優しいまなざしに包まれていることを実感でき、気持ちが急速に晃一に倒れ込んでいくのが分かった。
「それなら早く言ってよ。もう注文しちゃったじゃないか。それとも、これを食べてからお寿司屋さんに行く?良いよ、それでも」
「・・・・ううん、行かない」
「どうして?これっくらい食べたってお鮨ならまだ食べられるでしょ?」
そこで美菜はちょっと言葉を切って、恥ずかしそうに言った。
「・・・・・お部屋に行く・・・・・・」
美菜の心の中でスイッチが入った瞬間だった。
「・・・・そうか・・・」
「だめ?」
美菜はおずおずと聞いてきた。
「まさか」
「でも、いいの?」
「うん・・・・・」
晃一もそこで初めて美菜としばらく過ごすことを決めた。一瞬、菜摘に確認の連絡をするべきかとも思ったが、それだと美菜の言うことを信じていないみたいなので止めた。さて、そう思って改めて美菜を見ると、やはり制服姿とは違って別の可愛らしさがある。ほとんど『部屋に行って抱いて欲しい』と言われているようなものなので、目の前のワンピース姿を脱がせていくと、どうなるのか?とどうしても思ってしまう。しかし、完全にその気になって改めて思い返すと、美菜の返事は今一歩、はっきりとしない気がした。
「それならいいけど・・・」
だから何となく少し引っかかるものを感じたが、ここで美菜を問い詰めるつもりはなかった。それよりも、目の前の美菜を裸にしてみたい、と言う欲求がどんどん湧き上がってきた。なんと言っても美菜は可愛らしい。
「でも、そんなに遅くは無理なの」
「うん、わかった」
「それでもいい?」
「もちろんいいよ」
「よかった」
美菜は安心した。さっき帰るところだったというのは本当のことだし、ちゃんと友達ともいつものようにいつもの場所で別れてきたからそこから足が着く心配はない。それなら不意に訪れたこの機会を楽しんでみたい。抱かれるならそれも良いと思った。なんと言っても甘えたい。美菜は自然に椅子を晃一に寄せた。ただ、勉強のこともあるので遅くまで残るのはいけないことだと思っていた。
「それなら、食べるものを食べたら行こうか?」
晃一がそう言うと、美菜は一気に元気になった。
「はい」
「ごめんね、もう俺、ビールとか飲んじゃってるけど」
「ううん、ぜんぜん」
「ところで美菜ちゃんは成績、良いんだったよね。どうだった?この前のテスト」
いきなりの質問で美菜は痛いところを突かれた。
「うん、実はあんまり良くなかったの。悪くはなかったけど・・・・・。ちゃんとしなきゃって友紀とも話してたところなの」
「部屋に行くって決めてから言うのも何だけど、良いの?こんなところに来てさ」
「大丈夫。その分しっかりと勉強するから。私、これでも勉強してる時は集中するから」
「何時くらいまで勉強してるの?」
「ご飯を食べて、ちょっと寝てから始めて2時過ぎくらいかな・・・」
「それなら心配ないね。それで今日は何時に帰るの?」
「8時過ぎ・・くらい・・?」
美菜はそう言ったが、ちゃんと時間通りに帰れるかふと疑問に思った。
晃一は時計を見た。今は5時半過ぎだから、これから部屋に行けば2時間くらいしかない。
「それなら早く食べちゃわないとね」
晃一が言うと美菜は真剣に頷いた。
間もなく注文したものが次々に届いた。鰹の刺身、ツブ貝の煮たもの、カニサラダ、サイコロステーキ、肉じゃがコロッケ、お好み焼き、と居酒屋ならではのメニューが次々に届く。二人はそれをあっという間に片付けた。既に二人とも早くこの場所から離れたくなっている。それでも晃一は一応言うべき事は言った。
「お茶漬けとかも食べる?足りなかっただろう?俺はビールも飲んだから良いけど、美菜ちゃんは・・・」
「ううん、いい」
そう言って晃一を見つめる美菜の目には明らかに『二人っきりになりたい』という意思が表れていた。もちろん晃一も同じだ。
「それじゃ、行こうか」
「はい」
二人は早々に切り上げると、部屋に向かった。美菜が入ってきてからまだ20分も経っていなかった。
すると美菜の携帯が鳴った。
「あ、菜摘・・・・うん・・・そうなの。3組の美佳たちと遊んでたんだけど、別れる時偶然おじさまに会っちゃったの。・・・・・・うん、ちょっとだけ良いでしょ?なるべく早く帰るから。・・・・・・・・そうだったっけ・・・・・うん、わかった。それじゃ」
美菜は携帯を仕舞うと、
「ね?菜摘にもちゃんとOK取ったよ」
と言った。
晃一はさっき、菜摘の確認が取れていない段階で話を決めてしまった美菜のやり方がちょっとずるいような気はしたが、高校生だとこんなもんかも知れないと思い、気にしないことにした。なんと言っても既に気持ちのスイッチは入ってしまっているのだ。
晃一は時間がもったいないと短い距離だったがタクシーを使った。なんと言っても時間がないのだ。二人が晃一の部屋に着くと、美菜はリビングが既に涼しくなっていることに驚いた。
「エアコンかけっぱなしなの?」
「ううん、さっき居酒屋からメールでスイッチを入れたんだ」
「そうなんだ。便利なのね、最近のは・・・・。・・で、・・ねぇ・・・?」
そう言うと美菜は晃一の目の前に立ち、首に手を回してきた。晃一が軽く引き寄せると美菜は上を向いて目をつぶった。二人とも既に完全にその気になっている。晃一は美菜の細い身体を抱きしめてキスを楽しんだ。美菜も積極的に舌を絡めて雰囲気を盛り上げてきた。急いで歩いてきたので美菜の身体は熱い。美菜が満足するまで舌を絡めてから晃一が、
「どうしたの?甘えたくなった?」
晃一が唇を離して言うと、
「うん、ちょっと・・・甘えてもいい?」
と美菜が正直に言って身体をぴったりとくっつけてきた。今日のワンピース姿の美菜は制服の凜としたイメージとは違って可愛らしさが強調されている。細い身体を抱きしめると背中に細いジッパーの感覚が新鮮に感じられる。晃一は一気にその気になった。
「暑い?」
「うん、ちょっと。でも部屋が涼しいから・・」
「それじゃ、脱いだ方が良いね」
そう言うと晃一は美菜の首の後ろのジッパーに手をかけて背中のジッパーを一気に腰まで下げると、そのままバナナの皮をむくようにワンピースを一気に下ろした。
「ええっ?」
美菜はいつものように晃一の膝の上に座ってから脱がされると思っていたので意表を突かれた。晃一がワンピースの背中を開いて一気に下ろすと、あっという間に腕が抜かれて上半身がブラジャー姿になってしまったのだ。
「きゃっ?」
次の瞬間、ワンピースは足下に落ちて突然下着姿になった。美菜はキスに夢中になっていて晃一が首の後ろのジッパーに手をかけたことに気づかなかったのだ。慌てて手で胸を隠した。下着姿の美菜はとても綺麗だった。
「さぁ、座ってごらん」
晃一はソファに美菜と並んで座ると、直ぐにソファを倒していった。
「ちょっと、おじさま、いきなり脱がすなんて・・・」
胸を両手で抑えたまま美菜が小さく睨んだ。もちろん怒ってはいない。しかし、美菜にしてみればこの部屋に来るのを急いだのは晃一に甘えたかったからで裸になってセックスをするのが目的ではない。そこに菜摘に余り後ろめたいと思わない美菜の逃げがあった。もちろん抱かれるのは嫌ではないが、美菜にとってそれはあくまで甘えている時間の証というか副産物みたいなものだ。それに、お気に入りのワンピース姿を晃一にも楽しんで欲しかった。だからいきなり晃一が服を脱がせたのでちょっと驚いたのだ。しかし晃一は美菜が早く抱いて欲しがっていると思っていた。だから直ぐに脱がせたのだ。そこが二人だけの時間を過ごす男と女の認識の違いだった。
「ここからはじっくりとするからね」
「ああん、じっくりはいやぁ」
美菜は横になって晃一の唇を首筋に受けながら言った。まだ気持ちが裸になるところまでいっていないのでちょっと戸惑っている。
「それじゃブラジャーも・・・」
「だめ、ちゃんとして」
「うん、わかってる」
「もう、おじさまったらそんなに急がなくなって」
「じっくりして欲しい?」
「もう、わかってるくせにぃ。急がないで」
「ごめん」
「いきなり脱がすんだからぁ」
「嫌だった?」
「そうじゃないけど・・・・・ちょっとびっくりした」
また美菜は小さく睨んだ。
「美菜ちゃんが綺麗だから我慢できなくて」
「うそばっかり」
「本当だよ」
「ま、いいけど」
美菜は晃一が素直に謝った事で安心し、やっと気持ちが裸になることを受け入れた。すると身体のスイッチが入り、耳元で囁く晃一の吐息をくすぐったそうにしながら晃一が首筋から胸元へと移っていくのをわくわくしながら受け入れていった。身体の中にあの感覚が湧き上がってくる。晃一は再びキスをしてきた。もちろん美菜は素直に応じて晃一の舌を受け入れた。次第に身体が熱くなって意識にうっすらと霧がかかり始める。『あ、この感覚だ。これ、あん、気持ち良い・・・・身体が・・・』美菜の身体からゆっくりと力が抜けていった。
晃一はいつものように美菜の両手を挙げると、横たわった少女に覆い被さるようにゆっくりと胸元からブラジャーへと愛撫を移していった。ブラジャーのカップの縁を指でなぞり、美菜の胸の膨らみを確かめていく。
「あん、いやぁ、恥ずかしいから・・・」
「どうして?とっても綺麗だよ」
「どうしても。いきなりだから気持ちもまだ・・・・・」
美菜は次第にその気になってきていることを感じながらも、まだ胸を晒すところまでは気持ちが届いていなかった。やはりもっと気持ちを盛り上げないと晃一の目の前に乳房を露出する気になれない。もちろん晃一の愛撫は気持ち良いのだが、それとこれとは別だった。
しかし晃一は美菜が完全にその気になっていると思い込んでいた。だから一通りカップの上から胸を可愛がると、唇で乳房のカップの縁の部分を刺激しながらショルダーストラップに手をかけた。
「だめよ、まだ・・・・」
美菜はそう言ったが晃一の手は止まらない。肩から少しストラップがずらされた。
「まだだめ」
とうとう美菜ははっきりとそう言うと、被さっている晃一の目の前で再び両手で胸を隠した。
「だあめ」
美菜にしてみれば、晃一だけどんどん先に行ってしまうのは嫌だったのだ。
「え?だめ?」
晃一はそこで胸から顔を上げた。美菜の方が晃一を焦らしているのだと思ったのだ。
「まだだめって言ってるのに」
美菜はそう言うとまだストラップから手を離さない晃一に抗議するように俯せの姿勢になってしまった。
「だからだめ」
もちろん、美菜が拒絶するのではなく俯せになったのは胸を見られる前に気持ちを愛されても良いように合わせたかったからで、愛撫を嫌がった訳ではない。だから安心できるこの姿勢を取ったのだ。
「背中なら良いの?」
晃一は美菜の背中に指をそっと這わせながら言った。
「うん」
美菜の背中は綺麗だ。細身の身体の美しさが十分に出ている。美菜は晃一の指が背中をつーっと這って行く感覚を楽しみ始めた。
しかし晃一はまだ脱がすことに未練があった。だからブラジャーのバックストラップのところで指が止まった。
「だめだってば」
すかさず美菜が言った。外すのを許さないという意味だ。
「だめなの?」
「うん」
美菜がそう言うのでやっと晃一もこれ以上脱がすのを諦めた。それでは、と今度は首筋の後ろに唇を這わせ始める。