第270部

「で、何が良かったんだい?」
「とにかく安心できるの。私、胸を見られるのが嫌だったけど、脱がされて胸をされたのに全然嫌じゃなくて、ちょっとだけ嫌がったけど、ちょっとだけだったし、その後は却って安心できて・・・・甘えたくなって・・・・・そうしたら身構えてないっていうか、自由っていうか、自分が安心してる、そんな感じかな・・・・」
「まぁ、ずっと年上のおじさまに優しくされたらそうかもしれないね。若い男が相手だと、好きとかどうかとは別としてどこか緊張してるところがあるけど、無理なことはしないってわかってるおじさまなら気を使う必要がないからな」
「それなら麗華もおじさまにお願いしてみたら?」
美菜が小さな反撃を繰り出した。美菜は晃一と麗華のことは知らない。
「いいや、あたしゃ年下に甘えられるほうがいいから。あんたとは違うよ」
麗華はぴしゃっと反撃を退けた。もちろん、自分の気持ちの奥底で思い出してることなどおくびにも出さない。ただ、美菜への執拗な追求がその片鱗を伺わせていた。
「それで、もう一回しただけなのかい?」
「それは・・・・・・」
「そうだろ?おじさま相手にそんなに簡単に終わるわけないよな」
「なんでそんなこと勝手に・・・・」
「だって、おじさま、終わってないんだろ?それで終わりになるか?それに、あんただってどんどんメロメロになってるじゃないか」
「ううん、そういうわけじゃ・・・・」
「早くゲロっちまいな。どうせ最後なんだから」
ふぅ、とため息をついてから美菜は話し始めた。もともと最後のは話すつもりはなかったのだが、麗華と話している間に気持ちが緩んでしまったらしく、麗華の問いかけに一瞬反応できなかった。こうなったら仕方ない。
菜摘はこの時間がまだ続くことが悲しかった。もともと自分でもわかっていたこととは言え、やっぱり聞かずに済むのなら聞きたくない。知りたいという気持ちはもちろんあったが、自分の気持ちが沈んでいくのは止めようがない。
「それでね、終わりだと思ってシャワーを借りてすっきりしてから部屋に戻ったの。で、それから少しだけって思っておじさまに甘えてたら・・・・・・またしたくなっちゃって・・・・・・・・それでお願いしたの」
「もう服を着ていたんだろう?」
「うん、もちろん」
「そして美菜からまた・・・ねぇ、それで、してくれたのかい?」
「ちょっと渋ってたけどね・・・・私が押し切った感じ」
「それで、もう一度最初からかい?」
「ううん、そのまま少し甘えてたの。そしてそのままの格好で服を着たままじっくり感じさせてもらって、我慢できなくなってやっと脱がしてもらってから、後ろから・・・」
「ほう、最後は結構刺激的だね。感じてるのになかなか脱がしてもらえなかったってことかい?」
「そう、全然強くないの。かえってそっと触ってるだけなのに、とにかく身体が・・・・それで我慢できなくなって・・・・」
「おじさまのテクだね」
「そう、すごいのよ。本当に我慢の限界だったから」
「よくもまぁ、美菜みたいにかわいい子をそこまで焦らすもんだね。女の子が感じてるのを見たら、さっさと脱がしたくならないのかね?おじさまってそういうところはやっぱり凄いと思うよ」
「でしょう?」
「全然がっつかないんだ。女の子を丁寧に観察してるから感じるところをピンポイントで攻めてくるんだな」
「だから、自分の方がどんどんその気になっちゃって・・・・」
「それで、してもらって、どっちが先にいったんだい?」
「それは・・・私・・・・」
「またおじさまは終わらなかったんだ。呆れるね。それで?」
「おじさまがソファに座って、その上になって・・・・それで・・・」
「ほう、さらにもう一回か。おじさまにしてみれば続きかもしれないけどな。それで?」
「私が上になって胸を手と口でされながら最後まで・・・・・それでお終い」
「ほう、跨って入れられて胸も手と口で?すごいね、それ。3か所攻めって奴か。それじゃ美菜だって持たないわなぁ。それで、おじさまはその時に?」
「そう」
「やっとか、それじゃ、あんただってクタクタだね」
「そう、とにかく凄いんだから。おじさまは冷静なのに私ばっかり夢中になっちゃって、でさ」
美菜は話し終わった安心感からか、少し余計な感想まで口にした。
「あんたがそんなになるとはねぇ、おじさまのテクがどれくらい凄いかはよぉく分かったよ」
「とにかくそう言うこと。これで全部話したよ」
美菜はそう言うと話を区切った。もちろん、本当は後ろと前でされて2回絶頂を極めた後に、更にシックスナインで口の中に出してもらったことや、さらにその後、おまけでもう一度してもらったことは黙っていた。それはさすがに言える雰囲気ではない。これだけ話しただけでメンバーは完全にお腹いっぱいになっているのは明らかだったからだ。全部話したら何を言われるか分かったものではない。ただ、麗華は何か感づいたようだったが、それ以上追及してこなかった。
「ま、おじさまは美菜みたいなかわいい子とできたんだ。幸せだったろうよ。それで、今まで何回おじさまとしたんだい?」
「3回かな?ね、菜摘、そうだよね?」
「・・・そう・・・」
菜摘が答えると、麗華が後を受けて言った。
「そのことさね。今日はナツからも報告があるってことだ。良いよ、ナツ。次はあんただ。始めな」
いよいよだ。菜摘はここまできたらどうにでもなれという少しやけっぱちな感じで話し始めた。
「あのね、みんなが今聞いたように、美菜がおじさまのところに行って、さっきみたいなことになったのは、私、後で知ったの。美菜は私には確かに話してくれたけど、パパとした後だったってこと」
菜摘の言い方には棘があった。
「それならここでみんなに言って美菜にペナルティを与えておじさまのところに行かないようにすればよかったのに、どうしてしなかったんだい?」
「うん、それはね・・・・・・・・。私、最近、パパにあまり会わないようにしてるの」
「それで?」
「パパに会いたくないわけじゃないの。逆よ、すっごく会いたい。でも、会うと止まらなくなって、帰るのも遅くなるし、ぐったりして疲れて勉強だってできないし・・・・。だから会うのを我慢してるの」
「それはそうだろうよ。そんなにじっくりとされて最高にされれば、ね。でも、それと美菜とどういう関係があるんだい?」
「もし、私がずっと会わなかったら、パパはだれかと浮気するかもしれないって思って・・・・」
「おじさまを信じられないって話かい?」
「信じられないっていうか、だってパパは美菜としちゃったのよ。美菜が私にきちんと断るって言ったら簡単にしちゃったのよ。私にまず電話するべきだったんじゃない?」
「そう言うことか。おじさまは信用できないってことだ」
「信用できないって言うのとちょっと違うけど・・・・・、パパは私が嫌ならもう誰とも会わないって言ってくれてるし・・・・」
「その言葉は信用してるのかい?」
「うん、それは信じてる」
「それならどうして美菜がおじさまと会うのを許してるんだい?」
「もう一度しちゃったのなら・・・・・、それに、二人とも本気にならないって言ってるし・・・」
「はあ?そんなこと、どうなるかなんてわかるわけないだろう?」
「ううん、それは信じていいと思ってる」
その言い方には断固とした響きがあった。
「ほう、すごい自信だな」
「そう、そこは信じてるの。それなら、私が会わない時に誰かパパの相手をしてくれてればパパがこれ以上ほかの子に行く心配はないでしょう?」
「お前、なんてことを・・・・・・。それに、それじゃ美菜が納得しないだろう?」
「そんなことないんじゃない?ね、美菜?」
「うん、私、菜摘を追い出す気なんてないから。ときどき甘えられればそれでいいから」
「ええ?それでいいのかい?」
「いいの」
美菜がはっきりと言った。
「なんか、えーとなんだっけ。刹那的というか何というか」
麗華が返事に困ってそういうと、また美菜が言った。
「別に純愛路線を追っかけてないし」
なんとなくグループがざわついてきた。美菜のポジションと言い分をどうとらえるか、みんな困っているらしい。
「それに、美菜をOKしたのにはもう一つ理由があって・・・・」
「おう、それじゃ、そっちを聞かせてもらおうか」
「実はね、一人だけじゃないのよ。パパと会ってるのは」
菜摘がそういうと、友紀は身体を固くした。いよいよ始まるのだ。
「どういうことだい?」
麗華は知らなかった、とばかりに話を振ってきた。
「もともと私がパパから離れていた時、友紀がパパと付き合ってたのはみんな知ってるでしょう?それで、この前、友紀が彼と別れた時、友紀に頼まれたの。パパに優しくしてもらいたいって」
「そんなことあるのかい?だって、友紀にしてみれば元カレだろ?それが分かれて付き合った相手とうまくいかなかったからって、菜摘がいるのに戻りたいってどういうことだよ」
麗華はみんなの気持ちを代弁しているのだ。ざわざわとみんな小声で同じようなことを言っている。
「うん、それにはちょっとわけがあって、私がパパに戻りたくて戻れない時、友紀は応援してくれたの。きっと、友紀はパパのことが好きだったのに、私を応援してくれたのよ。それで田中と付き合うことにしてくれたの」
「友紀が自分から身を引いたってことかい?」
「そうよ、だって、おじさまの心の中は菜摘ばっかりだもん。嫌になったの」
友紀が割り込んでそう言った。
「それで、友紀がおじさまに戻りたいって言ったときに・・」
「戻りたいんじゃなくて、ちょっと優しくしてもらいたいって言っただけ。戻りたいなんて言ってないよ」
再び友紀がそう言った。
「そりゃ失礼。それでナツとしては断りにくかったってことか」
「そう。友紀が田中と別れて落ち込んでる時に、私はパパと幸せって・・・・」
「ナツは甘いね。そんなこと言ってたら簡単に横取りされるよ」
「だから友紀のほかに美菜にもOKしたの」
「そう言うことか。やっとわかったよ。美菜は友紀が本気にならないようにするストッパーってわけだ。美菜くらい可愛けりゃ、そりゃ役に立つだろうよ」
「そんな言い方、やめてよ。実際その通りだけどさ・・・・」
友紀がぶつぶつ言った。
「それで、今までみんなに黙ってて、それを今日ここで告白したのはどういう理由だい?」
麗華の目がギロッと光った。ここが本当の正念場だ。菜摘は一度大きく息を吸うと話し始めた。
「最初に言っておくけど、私、全然グループの掟を破ってないからね。友紀だって美菜だって、私が良いって言わないとパパに会わないし、パパも私からお願いしないと友紀にも美菜にも会わないんだから。それって全然浮気じゃないから」
「ほう、確かに浮気じゃないし、横取りでもない。それで?」
「だけど、そういう関係があるのにみんなに黙ってるのって、やっぱり嫌でしょ?だから3人で話してここで言うことにしたの」
「ふうん、一応話の筋は通っているわなぁ。いくつかを除いては・・だけどな」
麗華はそう言った。
「いくつかを除いてって、いったい何を・・・・・・」
菜摘が文句を言うと、麗華はそれを遮って言った。
「待て待て。今はそこじゃなくて、菜摘が黙ってたことが問題かどうか、みんなで話すことにするよ。ちょっと3人はしばらく外してくんな」
「そんな、私たちは何も隠してなんて・・・・」
「おや?誰が隠してるなんて言った?語るに落ちたな。それにナツ、美菜はグループを抜けることに決めてから私に会いに来たんだ。それなのにナツは、みんなに黙ってるのが嫌だから話すことにしたっていう。話の前後のつながりがおかしいだろ?え?どうなんだい?」
「それは・・・・」
麗華に鋭く突っ込まれて菜摘はひるんでしまった。
「まぁ良い、今はその話はしないよ。とにかく、みんなが黙ってたことをどう思うか、そっちのほうが大事だ。話し合うからちょっと出てな。5分でいいよ、ほら、出な」
そう言うと麗華は菜摘、美菜、友紀の3人をいったん店の外に出し、グループのみんなと話し始めた。
3人で外に出ても、誰も話そうとしなかった。ただ路地裏にじっと立っているだけだ。しかし、それに我慢できなくなったのか、とうとう友紀が口火を切った。
「私たち、本当にバラバラだね・・・・・」
「そうね、おじさまがいないと全然つながってない」
美菜がぽつっと言った。
「でも、あんたと菜摘は・・・・・」
「繋がってるって言えるのかな?ねぇ、菜摘・・・・」
「わかんない・・・・・・・・。でも、私は・・・・・」
「友紀とはつながってるって思う?」
美菜が問いかけると、菜摘はおずおずとうなづいた。
「私は・・・・そう思う。友紀がどう思ってるかは分かんないけど・・・・」
「菜摘、そんな言い方しないでよ。私がバラバラって言ったのは、そういう意味じゃないの。みんな、自分の理由でおじさまとつながってるってことよ。それを言いたかったの」
「でも、それは最初からわかってたことでしょ?」
そう言って美菜が反論した。
「もちろんそうよ。でも、3人とも、どっか思ってない?おじさまにとって『私は特別』だって。だから、まだおじさまのところに行きたいんじゃないの?」
「おじさまって、そう思わせてくれるもんね・・・・」
美菜が静かにそう言った。美菜自身、確かに友紀の言う通りなのだ。自分が晃一にとって特別だと思えるからこそ、裸になれるし夢中になれる。たとえ菜摘がどう言おうと、晃一に抱かれている間は身体の芯からそう思えるのだ。それは理屈や理性の世界とは違う、女の感というか本能のようなものだった。
「あ、もう時間かな?戻らない?」
「うん、戻るか」
そう言うとじっと黙ったまま何も言おうとしない菜摘を促して店の中に戻っていった。
「おう、座りな」
3人が戻ると、麗華は勢いよく話を始めた。
「いいかい、もう話が終わった美菜はもちろんこのままだ。どのみち抜けるんだから仕方ない。それで、話し合った結果、友紀には同情する点が多いってことになった」
「そんなぁ、私の方が・・・・」
菜摘が声をあげた。菜摘にしてみれば損をしてるのは自分なのだ。
「その逆の意見もあったよ。勿論ね。でも、今の状況を自由にできるのはナツの方だ。友紀や美菜はナツに従わなきゃいけない、そうだろ?それに、ここが大切だけど、そもそもはあんたがおじさまに会わないって決めたのがすべての始まりなんだ。違うかい?」
「それは・・・・・・・」
「だったら、これはやっぱりナツに責任があるし、同情されるべきなのは友紀ってことだよ。一種の巻き添えみたいなもんなんだから」
「ええっ?私が悪いって言うの?」
「悪いなんて言ってないけど、こうなったのにはナツにかなりの責任があるのは間違いないってことになったんだ」
「そんなぁ。それで、どうしろって言うのよ」
「別にどうこう言わないさ。ただ、じっくり話してもらおうってだけさね」
「ああぁぁ・・・・・そうなるか・・・・」
「そうだよ。たっぷり楽しませてもらうからね」
「・・・・・・・・」
「その前に、友紀、あんたも話したいことがあるんだろう?」
「え?あ、うん・・・、まぁ・・・・・」
「どうぞ。お話しくださいな」