第276部

「それじゃ、決まったら連絡するね」
菜摘はそう言うと、
「まだ続きを聞きたい?」
ともう一度聞いてきた。
そうなると、美菜にはもう積極的に聞こうという気持ちは薄らいでくる。美菜が返事に窮していると友紀が言葉を挟んできた。
「ねぇ、本妻さんが別格なのはよくわかった。だからもう細かいことはいいから、あと少しだけ教えて?」
「少しって?」
「さっき美菜が私のこと話したから分かったでしょ?菜摘があれを教えてもらったのはいつ?」
友紀は晃一の上に乗って思い切り腰を上下させる友紀お気に入りのやり方のことを言っているのだ。それは菜摘に直ぐにもわかった。
「あの日、お風呂に入った後、ベッドの上で・・・・」
「そう・・・あの日にしてもらったんだ・・・。それじゃ、美菜のは?おじさまの顔の上で・・・・いつしてもらったの?」
「顔の上じゃないけど、いつもしてもらってる。最初のころから・・・・」
「え?顔の上じゃないの?寝てる状態ってこと?」
「そう」
「そうか、私は何度もしてもらったのに、菜摘はまだなんだ」
友紀がそう言うのを聞いて菜摘は驚いた。
「だって、顔の上に乗らなくたって同じでしょ?」
「ううん、全然違う。そう、菜摘はまだなんだ。私と美菜だけなんだ」
友紀が断定的に否定したのを聞いた菜摘は戸惑ったし、正直に言えばちょっとカチンときた。でも、したことが無いのだから、仰向けで足を開いて舐められるのとどう違うのかわからない。
「菜摘、まだしてもらってなかったんだ。そう・・・・・」
美菜も少し驚いた。そして、ほんの少しだけ落ち込んだ気持ちが回復した。菜摘にもまだしてもらってないことがあったのだ。
「そう・・・そんなに・・・ちがうの?」
「全然違うよ。寝てる時と同じって思うかも知れないけど、もっとずっといやらしくて恥ずかしくて気持ち良くて・・・・・ね?美菜?」
「・・うん・・・・・」
友紀に言われて菜摘はショックを隠し切れなかった。どうして晃一が今までしてくれなかったのか、その理由を考えてみたが分からない。今まであれだけいろんなやり方を試してくれたのに、自分だけしてもらっていないというのはやはりショックだ。
「それじゃ、次」
友紀はそこで話を打ち切ると、次の質問に移った。
「朝になってから帰るまでの間、何回してもらった?」
「うーん・・・・・・、よく覚えてないけど・・・・5回くらいかな?」
「やっぱり、朝のおじさま、凄かったでしょ?」
「凄かった。何度も何度もされて・・・・・だって・・・・・」
「だって?」
「朝のパパ、すごく太くて・・・固くて・・・・」
「違ったの?」
今度は友紀がちょっと意外だった。神戸では最後、友紀が嫌がるほど何度もされたが肉棒が違うとは感じなかったからだ。ただ、逃げ出したくなるほど激しく求められて必死に耐えたのを思い出しただけだ。
「うん、全然違った・・・・・だから簡単に何度もいっちゃって・・・・・」
「やっぱり本妻さんだとおじさまの気持ちも違うのかな?私も何度もされたけど、違うとは思わなかったもの」
友紀のフォローでやっと菜摘の気持ちに余裕ができた。
「朝は違うみたい。根っこが太くて・・・・長かったみたいだし・・・・」
「あれよりもっとってこと?やっぱり、本気度が違うのね」
友紀はそう言うと、
「わかった。ありがと。私はこれでおしまい。美菜は?」
「うん、これでいい。充分」
「ねぇ美菜、おじさまの顔の上、またしてもらいたくなった?」
友紀がちょっと意地悪っぽく言った。
「それは・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
「そうよね。でも、菜摘はどうせすぐにしてもらうだろうから、もう私と美菜だけじゃなくなるよ」
「それは別に・・・・・・・・・。だって、本妻さんだし・・・・」
美菜の口から始めて菜摘の立場を明確にする言葉が出た。それを聞いた菜摘はちょっと心が落ち着いた。取り敢えず美菜は晃一を菜摘から奪いたいわけではないと分かったからだ。
美菜も気持ちに少し整理ができたようだ。
「菜摘、アリガト。やっぱり聞いてみて良かった。やっぱり菜摘が一番だって」
「うん、私も聞いてよかった。ずっと気になってたから」
菜摘も話していて自分が特別なのはよくわかったし、晃一にしてもらいたいこともわかったので話を終えることにした。
「それじゃ、今日は3人だけの特別な日だね」
友紀の言葉に菜摘はしっかりと宣言した。
「そう、三人だけ」
「うん、美菜はこれからグループを抜けるけど、ぜったいこれからも関係は同じだからね」
「もちろん、菜摘、ありがと」
美菜も素直にそう言った。
「それじゃ、抜け駆けはこれからも無しってことで」
友紀がそう言うと3人は頷いて席を立った。
その夜、菜摘は晃一に会いたいと連絡しようかどうか迷っていた。本当は直ぐにでも会って思い切り甘えて美菜がしてもらったことを自分も試したい。しかし、それだとなんとなく自分が晃一に会うのを我慢しているのが安っぽくなる気がした。それに、どうやって晃一にして欲しいことを言えばよいのかわからない。まさか、美菜に教えてもらったとも言えないではないか。
それに、美菜のお泊りリクエストも気になる。さっさと断るべきだったのだろうが、何か引っかかるのだ。今日美菜は菜摘の立場をはっきりと認めて自分はその下であることを宣言したのだから、取られる心配は無い。それなら認めてもいいような気もする。しかし、もちろん晃一が本気になったらどうするのかと言う心配もあるが、菜摘は自分の心の中にある何かドロドロしたものがはっきりせずにどうしたら良いのか迷っていた。
その週はミーティングの後、何も起きなかった。晃一は海外出張が入って週末もいなかったから誰も晃一に会うことはできなかったし、だいいち、マークシート方式の全国模試があったからみんなそちらに全力だったというのもある。
その模試は菜摘、友紀、美菜の三人にとってそれぞれ違ったものになった。菜摘は思ったよりも回答に自信が持てず、終わって出てきても気持ちが落ち着かなかったし、友紀は全然できなかったことに落ち込んでいた。しかし美菜は気持ちの整理がついたからか、予想以上の出来だったと胸を撫で下ろしていた。
そして次の週の木曜日に結果が出た。菜摘は予想通りの出来にほっと胸を撫で下ろした。そして、これから晃一に会っても良いと思えた。実は初めて国立の志望校の判定がCに上がったのだ。学年の順位もそれに見合ったものになっていた。真っ先に帰って母親に見せると、母親は夕食の支度を止めて買い物に出て行き、ひき肉を買ってきて菜摘の大好きなハンバーグをを作ってくれた。特大サイズだ。妹は自分のよりも圧倒的に大きな菜摘のハンバーグに文句を言ったが、母親は取り合わなかった。
夜になって勉強が佳境に入ってきたころ、友紀からラインが入ってきた。実は、それまで菜摘はラインはしていなかった。始めると止まらなくなるから勉強に差し支えると思っていたのだ。しかし、プライベートスペースのない菜摘の場合、電話ではどうしてもトイレに籠らないといけないので家族に迷惑がかかる。だから友紀や美菜とのグループ通話だけすることにしたのだ。そして3人だけが入れるグループ通話にすると、週末の相談が始まった。
友紀:今度の週末、誰が会いに行くの?やっぱり菜摘?
菜摘:会いに行こうかどうか考えてるの
美菜:おじさまは帰ってきたの?
菜摘:うん、今日帰ってきたはず
友紀:菜摘は会いたいんだ
菜摘:うん、成績、上がったから
友紀:いいなぁ、私、ボロボロだった
美菜:成績が上がって会いたいってことは、菜摘は圏内に入ったってことね?
菜摘:初めてC判定になってた
友紀:それって国立?
菜摘:そう
友紀:ええっ、完全に抜かれてしまった・・・・
菜摘:それじゃ、友紀は成績上がらなかったんだ。パパに会えないじゃないの
友紀:悔しいけど、そうみたいね
菜摘:美菜はどうしたいの?
美菜:私はあの部屋に行くの、いいから
友紀:え?どうして?会いたくないの?
美菜:うん
菜摘:成績、悪かったの?
美菜:ううん、ちゃんと上がってた
菜摘:それって・・・・・・もしかして???
美菜:そう、菜摘、行っても良い?
友紀:え?美菜、お泊りに行きたいの?
美菜:そう
友紀:菜摘、どうするのよ。行かせるつもり?
美菜:お願い・・・・
菜摘:どれくらい上がったの?
美菜:CからA
菜摘は驚いた。もともと美菜の成績が良いのは分かっていたから、美菜が狙っているのは誰でも知ってる国立の有名校だというのは想像がついていた。それがAとは。
菜摘:パパに旅行に連れて行ってもらいたいから頑張ったの?
美菜:それはきっと、菜摘と同じだと思う。それだけじゃないけど、それも大切な目標だったから
それを聞いて菜摘の心は決まった。
菜摘:行ってもいいわよ。条件付きで。
美菜:いいの?条件?
菜摘:うん、それでも良いのなら
美菜:教えて。何なの?
菜摘:パパの言うことは無条件に全部聞くこと
美菜:どういうこと?
菜摘:美菜はパパの言ったことは全部OKしなくちゃいけないってこと
美菜:そんなこと・・・・・・・それでいいの?
菜摘:そう。それでいいよ
美菜:私からは?お願いしてもいいの?
菜摘:いいわよ
美菜:本当?それでいいの?ありがとう、菜摘
友紀:ねぇねぇ、菜摘、本当にそれでいいの?考え直したら?
菜摘:ううん、これでいいの。いっぱい考えて出した結果だから
友紀:本当に?それで後悔しないの?
菜摘:うん、いいよ。後悔しない。美菜、いいよ
友紀:ちょっとちょっと、待ってよ。本当に良いの?おかしくない?
菜摘:どうして?
友紀:だって今までおじさまと旅行に行ったのは私と菜摘の彼氏だった時だけだよ。美菜は彼女でもなんでもないじゃん。
菜摘:それでもいいの
友紀:どうして?
菜摘:私もいろいろ考えた結果なの
友紀:それなら私だって行きたい
菜摘:友紀は成績落ちたんでしょ?それじゃパパだってOKしないと思う
友紀:それはそうかもしれないけど・・・・・
菜摘:でしょ?
友紀:それなら、私も成績上げたら行ってもいいの?
菜摘:考えると思う。友紀だもん
友紀:でも、おじさまが本気になったらどうするのよ
菜摘:それも考えた。でも、パパのことは信用してるし
友紀:そういう問題なの?
菜摘:いいの。それでも。あ、美菜、行ってもいいけど、もう一つ条件がある
美菜:なに?
菜摘:パパと旅行に行けば、かなりの時間一緒になるでしょ?
美菜:そうなる
菜摘:美菜ばっかりってのはおかしいから、旅行の後は会う時間、減らす
実はここがポイントなのだ。菜摘はできるだけサラリと伝えた。
美菜:そう・・・ね・・・・・・
菜摘:別に問題ないよね?
美菜:そう。ない。それじゃ、条件は二つね
菜摘:最初は、パパの言うことは必ず聞くこと。
美菜:うん
菜摘:帰ったら時間は減らす
美菜:わかった
菜摘:もちろん、私や友紀の会う時間が増えたら元に戻す
美菜:うん
友紀:なんかおかしいよぉ。どうして美菜ばっかりぃ
菜摘:いいのいいの
美菜:菜摘、ありがと。嬉しい
菜摘:お礼なんていらない
美菜:頑張ってよかった
友紀:やっぱり変だよぉ
菜摘:変じゃない。だいじょうぶ
美菜:おじさまに連絡してもいい?
菜摘:いいよ。どこに行くの?
美菜:長崎
友紀:ええっ、そんなに遠く?
美菜:そうだよ
友紀:そんなぁ、美菜ばっかりぃ
菜摘:いつ行くの?
美菜:おじさまの都合も、だけど
菜摘:そっちの予定は?
美菜:私はいつでも。早い方が良い
菜摘:そうね。今度の土曜から?
美菜:うん、いい?
菜摘:わかった
美菜:ねぇ、本当に良いの?
菜摘:信じられない?
美菜:そんなことはないけど・・・・・
菜摘:信じられないなら止める?
美菜:まさか。絶対やめない
菜摘:どうして長崎なの?
美菜:一度行きたかったの。あの景色、小さいときに見た景色
友紀:どうせ、ずっとホテルのベッドの上でしょ?景色なんて関係ない
美菜:ちゃんと観光だってする
友紀:どうだか
美菜:真剣に観光するよ
友紀:それじゃ、ちゃんと写真撮って送って
美菜:送る
友紀:それじゃこうしよう
美菜:なに?
友紀:観光の間、1時間ごとに必ず写真を送ること
美菜:それくらいOK
友紀:もしベッドに居ても送ること
美菜:それは
友紀:おじさまの言うこと聞くんでしょ?
美菜:そう
友紀:それならおじさまがしたいって言えば断れない
菜摘:それは悪趣味じゃない?
友紀:それくらい問題ないよ。美菜、いいね?
美菜:うん
友紀:夜中までずっと送れって言ってない。6時まで
美菜:わかった。それが友紀の条件ね
友紀:そう
美菜:わかった。送る
友紀:それじゃ、あとは明日ね
菜摘:うん、おやすみ
美菜:おやすみ