「それじゃあ、デザートだけでも付き合ってくれないかな?これなら食事のうちでしょ?」「はい、喜んで。でも、もうお腹いっぱいだから、ほとんど食べられませんよ」
「良いよ。一口でも二口でも。一緒にいられれば」
「宏一さん、そんなこと言わないでください。家に帰りたくなくなる・・・」
友絵は困ったように横を向いてしまった。心の中にチラッと『宏一さんと一緒にいようかな』という思いがよぎる。友絵の気持ちを察したのか、宏一が、
「ごめんね。湿っぽくなっちゃったかな?それじゃ、デザートメニューでご機嫌を直して貰おうかな?」
と言うと、友絵もにっこりと笑って、
「そうします。好きなのを選んじゃいますよ」
と言うと、宏一も、
「どんなのを選ぶのかな?それじゃ、何にも言わずにじっと見学させて貰おう」
そう言うと宏一は自分のデザートを選び始めた。
結局友絵はチョコレートのムースを選び、宏一はチーズケーキを選んだ。友絵はエスプレッソを少しずつ飲みながら味見程度に食べるくらいしかできなかったが、それでも一時間近くがあっという間に経ってしまい、友絵は時計を気にし始めた。宏一はもっと友絵と居たかったが、いつまでも引き延ばすわけにも行かない。宏一も心を決めると、
「友絵さん、そろそろ出ようか?」
とレジへと向かった。
「友絵さん、今タクシーを呼ぶからね」
「良いですよ。ここからなら地下鉄の方が早いから」
そう言うと、じっと宏一を見つめて何かを言いたそうにしたが、
「今日は本当にごちそうさまでした」
と丁寧にお辞儀をしてから帰って行った。
感情を終わって外に出た宏一は、最初タクシーを拾おうと地上に出たのだが、一人でタクシーに乗って帰るのもつまらないと思い返し、それにもしかしたら巴と駅で会えるかも知れないと思って地下鉄の駅に行った。しかし、友絵を見つけることはできず、仕方なく家へと帰った。
もうすぐアパートに着くと言う時、宏一の携帯が鳴った。もしかしたら恵美からの電話かも知れないと思って表示を確認した宏一は驚いた。
「明子さん、久しぶり。どうしたの?」
「宏一さん・・・」
「どうしたの?いまどこ?」
「ううん、今日は会えないけど、ちょっと声が聞きたくて」
「そう?いつなら会えるの?」
「来週かな?」
「曜日は分かる?空けておくよ」
「もうちょっと待って・・・・その前にしておかなくちゃいけないことがあるの」
「良いけど、久しぶりだね」
宏一は旅行から帰ってきて今まで何度か明子に電話をしたのにいつも繋がらなかったことを気にしていた。もしかしたら明子が離れていったのかも知れないと思っていた。しかし、連絡が取れないのではどうしようもない。だから今まで定期的に明子に電話をしていたのだ。
「何度も電話したんだよ」
「分かってるの。でも・・・・ごめんなさい。今は話したくないの。会ってからにしましょう」
何か久しぶりに話した明子は、以前とは別人のようによそよそしかった。
「・・・いいけど・・・・」
「ごめんなさい。こんな声の私と話すの、いやでしょう?」
「声がどうとかじゃなくて、明子さん自身がどうなのか心配になって」
「ありがとう。嬉しいな。本当よ?今度会うのが楽しみなの」
「泊まっていける?」
「うん、もちろん」
「良かった。うちに来る?」
「あのね、どこかに二人で泊まれない?今はそう言う気分なの。それだけの時間、作っておくから」
「良いよ。いつかみたいに出かける?」
「任せる。でも宏一さんは仕事でしょ?」
どうやら明子は平日に宏一に会うことを考えているようだ。
「そうだね。会社の仕事は今、とっても忙しいから」
「そんなに遠くに出なくて良いの。近くで良いのよ。二人っきりで居られれば」
「分かった。夕食から一緒にいられる?」
「うん、がんばる」
「それじゃ、予定が決まり次第教えてね。どこか美味しい店を予約しておくから」
「二人でお店かぁ、嬉しいな。楽しみにしてる」
明子はそう言うと、
「それじゃぁ、また電話するから」
と言って切った。
宏一は久しぶりの明子との会話を思い返しながら部屋へと向かったが、ふと気が付いたことがあった。『明子さん、一番最初しか俺の名字も名前も言わなかった』そのことに気が付いた宏一は、嫌なことが起きそうな予感がした。
翌日、由美はいつものようにシャワーを浴び、自習をしながら宏一を待っていた。一昨日、あれだけ激しく愛されたのに、今日、こうして待っていると宏一に愛されたいと思ってしまう。あの時はまともに歩けないくらいくたくたに疲れ切っていたのに、今はもう一度ああなってみたいと思ってしまう。今の自分がどうしてそこまで強烈に宏一を求めるのか、由美自身不思議だったが、一枝のことがあって以来、少し自分はおかしくなってしまったのかな、と思ったりもする。宏一を好きだと言うこと自体は良いのだが、荒々しく宏一を求める自分が我が儘で粗暴で欲深い女の子になってしまったようで、それが宏一に伝わったらと思うと心配になる。正直に言うと、『一枝ちゃんは、わがままに見えるけど、心はとっても真っ直ぐで素敵な子だから、あんまり宏一さんにおねだりすると一枝ちゃんに取られちゃうかも知れない』と思うのだ。
だから、宏一にベッドの上で愛されるのは嬉しいのだが、それだけではまだ不安になってしまいそうだ。自分でも、一枝を宏一に頼んだときにはこんな気持ちになるとは思っていなかった。好きな彼に抱かれるのが不安で、親友と一緒にベッドに入った女の子が知り合いにいたが、その時は『信じられない』と思ったのに、今は少しだけその子の気持ちが分かったような気がした。もし一枝と一緒に宏一に抱かれれば、一枝がどんな風に抱かれるのか見届けることはできる。見たくはないが、不安がもっともっと大きくなれば、そうしないと我慢できなくなるかも知れない・・・・・。
やがて宏一が現れ、いつものように後ろに立って、由美の脇から手を入れて服の上から胸を可愛がり始めた。分かってはいたが、いつもよりも素早く、強く身体が反応する。たちまちブラジャーの中で乳房が硬く膨らみ始めた。
やはり今日は身体も直ぐに我慢できなくなるだろうが、それよりも心が我慢できなかった。
「宏一さん」
「ん?どうしたの?」
「家で一生懸命勉強しますから・・・・」
「どうしたの?」
宏一は一瞬、由美の体調が良くないのかと思った。
「宏一さんと一緒にいたい」
「でも、二人だけでこうしているのに・・・」
宏一は由美がベッドで抱いて欲しいと言っているのかと思った。それならそれでかまわない。
「ごめんなさい。ベッドで・・・・・それならそれでも良いんです」
宏一は困ってしまった。単に抱いて欲しいと言っているわけではなさそうだ。
「一昨日みたいにして欲しいの?」
「分からないんです。でも、そうかも知れないし・・・・。何か、気持ちが先走りしてるみたいで・・・・」
「分かったよ。それじゃぁ、まず立ち上がって」
宏一は由美を立ち上がらせると、ゆっくりと抱きしめて甘いキスをした。
「由美ちゃん、不安?」
由美は正直にこっくりと頷いた。
「そうか、一枝ちゃんとのことが気になるんだね?」
「・・・・・ごめんなさい・・・・」
「良いよ。分かった。一枝ちゃんとは絶対にしないことをしようか?」
由美は一瞬、答に詰まってしまった。『もしかして普通じゃないセックスって事?それって・・・・・S・・・まさか・・・』
「由美ちゃんがするんだよ。良いね?」
由美はよく分からなかったが、一枝と違いがはっきりするならと思って小さく頷いた。
「それじゃ、まずそこに立って」
そう言うと宏一はベッドに座った。
「そうだ、これを飲もうかな?あ、これも」
そう言って宏一は冷蔵庫からダイエットペプシとエクレアを取り出し、由美にも勧めた。由美は何をされるのか不安でのどがカラカラなので、一気に三分の一も飲んでしまった。
宏一は再びベッドに座り、ペプシとエクレアを横に置いてから、
「いいかい、まず、ゆっくりと上を脱いでごらん」
と言った。
これは以前にもさせられたことがあった。あの時は身体が我慢できなくなるまで焦らされた後だったし、途中から宏一が手を入れてきたので我慢できなくなって脱いでしまったのだが、今日は胸を少し触られただけだ。しかし、由美は宏一の目の前で服のリボンのしたのホックを外し、ジッパーを下げ始めた。
「ゆっくりと脱ぐんだよ」
宏一はそう言うと由美の胸に視線を釘付けにした。実は宏一にとって、由美が服を着ている姿と裸を見ている時間は裸を見ている時間の方が長いくらいで、由美の制服姿はとても新鮮に見えた。宏一に抱かれているときの由美は15才の少女だが、制服を着ていれば高校一年生だ。だから今、宏一の目の前でジッパーを下げていく由美は高一から少女へと変わっていく瞬間の姿だった。
下げたジッパーの隙間からブルーのブラジャーが少しだけ見える。
「今日は由美ちゃんをゆっくり見たいんだ。良いだろ?」
宏一はそう言うと、ペプシをぐいっと飲んだ。
由美は普通、こう言うのは大嫌いだ。時々学校で『可愛らしいから』と言って写真を撮られたりするが、たいていは断るか、無視する。写真を撮ろうとする方は褒めているつもりなのだろうが、由美にとっては、相手が由美がどんな性格なのか知りもしないで姿ばかり欲しがるのは欲望の対象としてしか見ていないと思う。だから嫌なのだ。
しかし、相手が宏一では全然違う。もしかして一枝のことがなければ、やっぱり嫌がったかも知れないが、内心はとても内気な一枝は少なくともこんな事は絶対にしない。それだけは確信できた。だから、宏一の望みを叶えるだけでなく、自分も安心できそうな気がした。
由美がジッパーの一番下を外し、服を大きく開いて脱ごうとすると、
「ちょっと待って」
と宏一が言った。
「脱がないで、そのままゆっくりと回ってみて」
由美は少し意外だったが、大人しく言われた通りにした。
「由美ちゃんをゆっくり見た事って、意外に少ないんだ。とっても可愛いよ」
そう宏一に言われると、少しだけ嬉しかった。と同時に、どんどん恥ずかしさが湧き上がってきた。
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