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二人は刺身だけで無くアワビのステーキまで堪能した。さとみは素晴らしい料理でニコニコ顔だ。宏一は頑張って房総半島の反対側まで来て良かったと思った。ラストオーダーは8時半だったので二人は慌てて飲み物を纏めて注文し、宏一は地酒を飲んだし、さとみも少しは飲んだが、さとみは白ワインの方が好きみたいだ。二人は時間が無いこともあってかなり早いペースで夕食を食べた。『食事は簡単に』と言ったさとみも宏一もいつの間にか素晴らしい食事を夢中で楽しんだ。
そしてその食事も佳境に入った頃、宏一が思い出したように言った。
「そう言えばさ、さっき聞いたんだけど・・・・・」
「なにを?」
「うん、それがね・・・・・」
宏一は一度言葉を切ってから、ゆっくりと話した。
「『私を見たいんなら、いくらでも見せる』とか、『好きなだけ見ても触ってもいい』とか、聞いたと思うんだ」
さとみは『しまった。今頃余計なことを思い出すんだから』と思った。
「だって、あの時は本当に怖くて・・・・・だから、とにかく早く元の道路に戻りたくて・・・・・」
宏一は笑い飛ばせる話かと思ったが、さとみが困った様子なので改めて聞いてみた。
「ねぇ、どうしてあんなに怖がったの?確かに道は暗かったし、ナビは動作不良を起こしたけど、あそこまで怖がるなんて・・・・・」
宏一の問いにさとみは心を決めて話し始めた。
「あのね、前の同居人と付き合い始めた頃、ドライブデートに行ったのね。その時、夜になって、運転が下手なのに変に格好付けて山道でスピードを出したものだから、道路から落っこちて車を壊したことがあって・・・」
「ええっ、車が壊れたとか何とかじゃなくて、さとみさんの怪我はどうだったの?」
「幸い、シートベルトとエアバッグのおかげで大したことなくて、少しむち打ちになったくらいだったの。直ぐに直ったし。でも、本当に怖くて、このまま死んじゃうって思ったの。それ以来ドライブデートってしたこと無くて・・・・」
「だから、あんなに怖がったんだ」
「だから、今日も実は不安だったの。でも、さすがに言えなくて・・・・・。だから、ナビが動かなくなったときから急に怖くなって、ごめんなさい」
「ううん、全然謝ることじゃないじゃないの。こっちこそ、きちんと事前に伝えて確認すれば良かったよ。ごめんなさい。まさか、そんなことがあったなんて」
さとみは、宏一が真っ先に自分の身体を心配してくれたことが嬉しかったが、怖い思い出に未だに支配されていることに気が付いて悲しくなった。
「それで、今はもう大丈夫なの?」
「私?もちろん。なんともないわ。後遺症もないみたい」
「良かった。明日はゆっくり走るね」
「明るい間なら問題ないわ。特にスピード出したりしないで普通に走る分には」
「うん、分かった。それでも十分に気をつけるよ」
「ありがとう。でも、そんなに大事故じゃなかったから。車だって前が壊れたくらいだったし。只、道路から飛び出したのが怖くて」
「車がどうとかじゃなくて、さとみさんの心が傷ついた事が問題なんだよ。元カレと別れた後でも未だに蘇ってくるなんて」
「そうね。私もあんなになるなんて思ってなくて・・・・・」
「さとみさんもショックだったんだね」
さとみはコックリと頷いた。そして、心を決めたように宏一に向かってそっと言った。
「宏一さん、明日までずっと一緒に居てね。気持ちが落ち込まないようにして。さっき宏一さんが言ったこと、しても良いから」
「うん、もちろん。ずっと一緒だよ。暗いのが怖かったら電気をずっと付けておいても良いよ。そうすればさとみさんをいっぱい見られるからね」
「もう、直ぐにそう言うことを。でも、そんなにまぶしくなければ良いわ。でも、消してっていったら消してね。薄暗い方が安心するかも知れないから」
「さとみさんの気分に合わせるよ」
「ありがとう。それじゃ、このお酒、飲んじゃおうか」
「そうだね。女の子を酔わせて部屋に連れ込むって言われちゃうかな?」
「宏一さん、そんなことが得意なの?確かにそう言われればその通りだけど。はい、乾杯。でも、そんな簡単にはいかないって事を教えてあげるわ」
そう言うと、二人は残りの日本酒とワインを楽しみながら飲んだ。
「誰もそんなこと言って無いじゃない。でも、さとみさんはちゃんと飲めるから安心してお酒を勧められて楽しいよ」
「それじゃ、ちょっと交換」
そう言うと二人は日本酒とワインを交換して飲んでみた。
「う~ん、ちょっとこの日本酒は好きじゃないかなぁ?」
「そうなんだ。千葉のこの辺りの日本酒は伝統的なコクのあるタイプが多いから、こう言う味だと思うけど」
「ワインはどう?」
「俺はもっと辛口の方が好きだけど、これくらいの甘さなら食事にも楽しめるね」
「そうでしょう?このワイン、食事にとっても合うの」
さとみはニッコリ笑って宏一からワイングラスを取り返してまた一口飲んだ。そして結局二人は時間いっぱいまで食事を楽しみ、飲み終わると部屋に向かった。
「さぁ、どうぞ」
宏一がドアを開けて先にさとみを部屋に入れた。
「あれ?ここ・・・・この先?」
さとみは部屋に入ったが、短い廊下になっていて最初、部屋がよく分からなかった。
「こっち?あ、洗面台・・・だからこっちね」
さとみは改めて部屋の入り口の扉を開けた。すると突然、視界が大きく開けた。
「うわぁ、すごい部屋。角部屋」
「そうなの?俺も知らないんだ。知り合いに任せて予約したから」
宏一も部屋に入ってキョロキョロ周りを見渡した。
「こんなに広い部屋なんて初めて。福岡の時も広かったけど、今度も私の部屋よりずっと広いわ」
さとみは豪華な部屋に目を丸くした。
「リゾートだからね」
「これお風呂?窓際にあるの?すごい。海が見えるんだ。ねぇ、後で入りましょう」
さとみは先ず風呂に目が行った。部屋の窓際にあり、部屋からガラスを通して風呂があり、その向こうに海が見える。
「福岡のホテルだってすごかったけど、これもすごい」
「直前の予約だから安く予約できたみたいだよ。空きにしておくよりは、ってことだろ」
「へぇ、すごいわぁ。ゆったりって言うか、なんか全部が離れてて遠い。私の部屋なんか手を伸ばせば全部届くくらいなのにい」
さとみはすっかり気に入ったようだ。さとみは一通り部屋を見てから言った。
「それじゃ、先にシャワー浴びて良い?」
「良いよ。『先に』?なの?」
「そう。おねがい」
「うん、分かった。入っておいで。でもどうせなら一緒に浴びようか?」
そう言うとさとみは小走りでシャワーを見てきた。
「だあめ、そんなに広くないもの。ちょっと待っててね」
さとみは着替えを持つとシャワーに行った。シャワーブースは先ほどの洗面台の奥にあり、眺望の利く窓際のガラス張りの風呂とは完全に別の場所だ。宏一は外のデッキで風に吹かれながら一服する。海はまだ荒れていたが、遠くを航海する船の灯りがポツポツ見えてシーサイドリゾートの雰囲気が楽しめる。
やがてさとみが出てくると、宏一も交代で軽くシャワーを浴びた。熱い湯を浴びていると、さとみと同じ職場だという感覚が流れ去っていくような気がする。宏一が出てくると、さとみは買い出したものをテーブルに並べていた。
「飲み物はちょっと温くなっちゃったけど・・・・」
「それじゃ、氷を頼もうか」
宏一はそう言うとルームサービスで氷を頼んだ。
「それじゃ、氷が届くまで待つ?」
「そうね・・・・どうせなら・・・・・直ぐでしょ?」
「たぶん。それじゃ、外を見てみない?船の灯りが浮かんでるよ」
「そうね。風に吹かれるのも良いかも?」
二人共、既に備え付けの部屋着に着替えている。外に出ると生暖かい風が二人を包んだ。空にはいくつか星も見え始めている。
「さっきまでの嵐が嘘みたいね」
「うん、前線が通り過ぎたんだね。風も弱くなったし、ほら、雲も切れてきた」
「宏一さん、こんな素敵なところに連れてくるなんて、これは反則」
「え?いやだった?」
「バカ、そんなわけ無いじゃない。これで落ちない女がいたら見てみたいものだわ」
「落ちないって・・・そう言うつもりじゃなくて、さとみさんが寂しさを我慢しながら部屋を一生懸命整理したから、それで・・・」
「わかってる」
そう言うとさとみは宏一の胸にくっついてきた。
「ありがとう」
さとみはそう言うと、目をつぶって宏一の方を向いた。そのまま二人はゆっくりとキスを始め、宏一はさとみを抱きしめ、さとみも宏一の首に手を回して応じてきた。風が優しく二人を包んで吹き抜けていく。そのまま二人が抱き合ったままねっとりとキスを楽しんでいると、部屋の中で呼び鈴が聞こえた。
「氷が来たんだ」
そう言うと宏一は部屋に戻って氷を受け取った。さとみは氷を受け取ってテーブルに置くとポツリと言った。
「危なかった」
「え?どうしたの?」
「ううん、あのままだと止まらなかったなって・・・・」
さとみは抱きしめられてキスをしている間に急速に身体が熱くなってきたのだ。あのまま、もう少しキスをしていたら、バルコニーで始めてしまったかも知れない。そうでなくてもベッドに行きたくて我慢できなくなっていただろうと思った。
「そんなの、止まらなくたって問題ないのに」
「問題は無いけど、でもね・・・・・」
「どうしたの?」
「宏一さんとゆっくり夜を楽しみたいの。直ぐにベッドに入ったら夢中になっちゃいそうで、せっかくの時間がもったいないって思ったの。せっかくだから二人で過ごした時間を残していきたいから」
「そうか、うん、明日の十時まで時間があるからね。ゆっくり楽しもうね。そう言えば、12時まで開いてるバーもあるみたいだけど、どうする?行ってみる?」
「もう着替えちゃったし。飲み物も食べ物もここにあるし、ここが良いわ。さっきいっぱい楽しんだし」
「うん、よかった」
「どうして良かったの?」
「うん、だってさ、さっきの約束もあるし」
さとみは、また宏一があの話題を持ち出してきたと半分呆れたが、もう今更という感じで慣れている。さとみは意地悪っぽく言った。二人はソファに座って買い出ししてきたものを全て並べ、2次会の準備を整えていく。
「ははぁン、そう言うこと。約束は守るけど、でも、そう簡単には見せないわよ」
「どうして?」
「どうしても」
そう言うとさとみは宏一の隣にぴったりとくっついてきた。
「先ずは乾杯しましょ」
そう言うとさとみはグラスに氷を入れ、カクテルを注いだ。
「改めて、素敵な夜に乾杯」
「かんぱーい」
さとみは宏一の隣から更に宏一に近づき、宏一に軽く寄りかかるように身体を預けてきた。宏一はさとみの真意を測りかねて困った。これだけ露骨に身体を預けてくると言うことは、宏一に何かして欲しいと言うことなのだろうが、どうして良いのか分からない。なんと言っても乾杯したばかりだ。取り敢えずはしばらく飲むしかなさそうだ。
「ねぇ、明日はどこに連れてってくれるの?」
さとみはカクテルをちびちび飲みながら背中の宏一に聞いた。
「うん、天気次第って言うか、海次第なんだけど、先ずは鴨川シーワールドかな?それから勝浦海中公園って思ってるんだ」
「雨が降って無ければってこと?でも海中公園も雨はダメなの?」
「そうだよ。雨が降って川の水がたくさん流れ込むと海の水が濁るからね。せっかくの海中展望も台無しになっちゃうんだ」
「そうか・・・・・・・・それで、天気が悪かったら?」
「それは良い質問だね。実は、どうしようもない・・・・」
「つまりまっすぐ帰るってこと?」
「そうだね」
「それで、鴨川シーワールドって良く聞くけど、どんな感じ?イルカとシャチのショーを見るんでしょ?」
「うん、それが目玉だね。なんと言ってここの直ぐ近くだから」
「そうなの?来るときは全然分からなかった」
「本当に直ぐだよ。1キロもないくらい」
「それじゃ、先ず鴨川シーワールドね。それから勝浦海中公園て感じ?宏一さんはどっちが好き?」
「それは華やかな鴨川シーワールドだけど、静かに海の中から魚を見てるのも良いものだよ」
「それも素敵ね。ねぇ、鴨川シーワールドのことを話して」
「うん、行ったこと無いの?」
「昔、小さいときに行ったっきりだから聞きたい」
「分かった。一言で言えば水族館の大きい奴なんだけど、シャチとイルカの他にもベルーガって言ってイルカとクジラの間みたいな真っ白の大きい奴のショーもあるし、他にはアシカとかもあったと思うんだ。全部のショーは別々の場所にあって、その間にいろんな見るところがあるんだよ」
「そうなんだ・・・・・」
さとみはそう言うと一口カクテルを飲んでから宏一に少し背中を擦り付けてサインを送った。すると、宏一の手がスッと動いてさとみの脇を回ってお腹の方へと来た。さとみはその手をそっと脇に挟んで受け入れるサインを送った。
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