第 15 部

             

            「久美ちゃん、ビール、もう一本出してくれる?美味しくて、ついビールが進んじゃって」

            「はい」

            久美は幸一が満足してくれたので心からホッとした。

            「褒めて貰って嬉しいです。来週は何にしますか?」

            「そうだな、トンカツがこれだけ上手にできたから・・・」

            「大丈夫です。言ってみてください」

            「それじゃ、スパゲティミートソースの温野菜添え」

            「え?はい・・・・・・」

            「温野菜って分かる?」

            「たぶん、茹でた野菜ですよね?」

            「まぁ、そんなものかな」

            久美は正直言って簡単だと思った。ミートソースの缶詰を買ってくれば直ぐにできてしまう。

            「どんなものを食べさせてくれるか、楽しみにしてるよ。あ、白ワインを何か買ってきてくれるかな?」

            「はい、ワインで食事なんて素敵ですね」

            「久美ちゃんはダメだよ」

            「私はいりません。うふ、ははははは」

            そう言って久美は軽く弾けるように笑った。幸一は、初めて久美が声を出して笑ったことに気が付いた。そしてその笑顔が久美の本来のものだと気が付くと、本当に久美は可愛いと思った。

            「そうそう、久美ちゃん、新しい制服、間に合ったんだね」

            「分かりますか?」

            「うん、なんか、前よりもぴったりとしてるみたいだけど」

            「前のが大きかったから、これはエプロンからあんまりはみ出すと汚れやすいと思って少しだけ今のサイズに近づけたんです」

            「そう、でも、こっちの方が可愛いよ」

            「・・・・はい・・・ありがとうございます・・・」

            久美は幸一に褒められて嬉しかった。

            「あー、美味しかった。ごちそうさま」

            「幸一さん、デザートは今食べますか?」

            「お風呂上がりにお酒と一緒に食べたいな」

            「はい、わかりました」

            「それじゃ、シャワーを浴びてくるよ。美味しかった。ありがとう」

            幸一は立ち上がるとすっと久美の横に来てあごを幸一に向かせるとチュッとキスをした。『あ』突然のことだったので、久美は心の準備ができておらず呆然としたままだった。

            「今日最初のキスはちょっとソースの味がしたかな?」

            幸一はそう言って笑った。

            「・・・・・・・・・」

            久美は思わず顔が真っ赤になって下を向いてしまった。そんな久美を残して幸一はシャワーと着替えに出て行った。

            久美は『どうして今日はこんなに気持ちが楽なんだろう?』と思った。これから幸一が久美にすることは、久美には我慢できないことの筈なのだ。それなのに、まるで友達の家に来ている時みたいに軽い緊張感と楽しさが同居している。そう思うと、まるで魔法が解けたときのように幸一の腕の中で一気に恐怖が襲ってくるのではと思い、怖くなった。

            久美が洗い物や片付けをしてデザートを準備している間に幸一はガウンを着て現れ、大画面テレビを点けていつものようにニュース専門チャンネルを見始めた。

            久美はデザートの準備ができると冷蔵庫から白ワインを取り出して一緒に幸一の前に並べると、自分の分のデザートを持って隣のソファに座った。幸一はワインの栓を抜くと、グラスに注ぎ、

            「美味しそうだね。頂きます。久美ちゃんは何か飲まないの?」

            と言った。

            「はい、それじゃ、コーラを頂きます」

            と言うと、冷蔵庫から取り出してコップに注いだ。冷蔵庫の中も綺麗に整理されており、先週と同じ飲み物が入っているところを見ると、家の掃除をしている人がいつも同じだけいろいろな飲み物を揃えて入れておくらしかった。

            「それじゃ、久美ちゃんが上手にトンカツを作ってくれたお礼に、乾杯」

            「はい、乾杯」

            幸一はゆっくりとワインを飲み始めた。久美の作ったデザートは果物を切って並べただけだったが、久美にとっては精一杯のものであることは良く分かっていた。

            「幸一さん、どうですか?」

            「なあに?」

            「いつも同じ様なものしか作れないから・・・・」

            「デザートはシンプルなものの方が良いんだよ。もちろん、手の込んだものも良いけど、これだってあっさりしていて美味しいよ。久美ちゃんはどんなものが好きなの?」

            「デザートですか?」

            「そう、どんなものが良いのかな?と思ってね」

            「エクレアが好きなんです」

            「エクレアかぁ・・・・、さすがにちょっと手作りって訳にはいかないね」

            「そうですね・・・・・」

            「でも、エクレアだって作ろうと思えば道具はそろってるよ」

            「ええっ?家で作れるものなんですか?」

            「使わないからあそこの棚にしまってあるけどハンドミキサーもあるし、オーブンレンジもあるから作ろうと思えば作れるはずだよ」

            「家で作れるなんて信じられない・・・・」

            「ま、その気になれば挑戦してみるのもの良いかもね。でも、もっと料理になれてからじゃないと一日かかっちゃうよ」

            「はい、そうですね」

            「でも、だいぶ手際が良くなったみたいだね」

            「分かりますか?」

            「もちろん。だって俺が帰ってきた時にちょうど全部が出来上がってただろ?先週とは大違いだよ」

            「やっぱり幸一さんには何でも分かっちゃうんですね」

            「時間もだいぶ上手く使えるようになっただろ?」

            「実は、ノートに全部時間を書いておいたんです」

            そう言うと久美は立ち上がって料理に使ったノートを見せた。

            「凄いね。ここまでやるとは・・・・。久美ちゃんは几帳面なんだね」

            「どうせやるなら失敗したくないから・・・」

            「ありがとう。凄く嬉しいよ。ね、こっちへおいでよ」

            久美はそう言われて立ち上がってから、前ほど嫌ではない自分に気が付いた。それでも嫌悪感はあるので幸一から少し離れて座った。

            久美が少し距離を置いて座ったことなど全く気にしていないかのように幸一は、幸一は、

            「ねぇ、久美ちゃんの学校のこと、話してくれないかな?聞きたいんだ」

            と言った。

            「でも、幸一さんの知らない人のことばっかりだし・・・・」

            「良いんだ。久美ちゃんがどんな風に学校で生活しているか知りたいだけだから」

            「そうですか・・・・、はい、やってみます」

            「それじゃ、今日はどんなこと、あったの?あの料理のノートは家で書いてきたの?」

            「いえ、午前中、ずっと学校で書いてました」

            「そうなの?大丈夫だった?先生に怒られたりしなかった?」

            「先生は大丈夫ですけど、友達に見られそうになったりして・・フフッ」

            「どうしたの?」

            「あの、実は・・・」

            久美はちーちゃんやミカリンに何度もノートを見られそうになったことや、ちーちゃんに問いつめられたことなどを話して聞かせた。幸一は興味を持ったらしく、かなり真剣に聞いており、途中でテレビも切ってしまった。

            「それで、何とかノートを守りきって、4時間目に最後の仕上げをしてから、ホームルームが終わると直ぐに出てきたんです」

            「もうちょっとこっちへおいでよ。ホームルームが終わってから直ぐに出てきたんじゃ友達もびっくりしたろう?」

            「大丈夫です。土曜の午後は夜までアルバイトだって言ってありますから」

            久美もつい少し幸一に近づいて座り直したところに、幸一が久美に近づいたので、久美が気が付いた時には幸一の手が肩に掛かっていた。そしてそっと引き寄せられていく。

            「あっ・・・」

            それでも久美は少し嫌がったのだが、身体を引き寄せられて傾けられれば倒れるしかない。結局この前のように幸一の膝の上に仰向けにさせられた。すっと幸一の左手が久美の首の下を支え、右手が優しく髪や頬を愛撫し始める。

            「まだ話が終わってません・・・」

            「うん、ホームルームが終わって直ぐに出てきても友達には大丈夫ってところだったね」

            「あの・・・・・それで・・・・」

            実はもう最後まで話をしてしまったのだ。何を話して良いか迷っているうちに幸一の唇が迫ってきた。

            「それなら今度はこっち」

            「待って・・・んんっ」

            久美はまだ心の準備ができないうちから唇を重ねられてしまった。そして幸一の唇が久美の唇をついばむように動き、久美の唇が開けられたところで幸一の舌が久美の歯茎をなぞり始めた。

            久美は意識の中で抵抗しようとしたが、幸一の巧みなキスに次第にぼうっとしてしまい、少しずつ舌を絡め始めた。久美がキスに応じることを確認した幸一の右手は項を優しく刺激してから胸へと降りていき、制服の上からゆっくりと膨らみを撫で始めた。『あ、ダメ、夢中になっちゃう!』久美はそう思ったが、少しずつ身体が熱くなってくるのを止めることはできなかった。

            幸一は久美がぐったりとしてきたことに気が付いた。これは経験の浅い少女が愛撫された時に示す典型的な反応だ。自分から積極的に愛されることに夢中になるほど経験がないので、身体が愛撫を受け入れるだけになっているのだ。

            幸一はゆっくりと時間をかけて久美の膨らみを撫で回し、時折隣の膨らみに手を移した。しかし、久美の頭が幸一の左にあるので、どうしても左の膨らみを撫でる方が多くなってしまう。それでも愛撫する手が隣の膨らみに移る度、久美は無意識に身体を少しずらして幸一の手が愛撫しやすいようにした。ゆっくりと久美の身体の中に甘い感覚が広がってくる。久美はその感覚を受け入れたくないと思いながら、どこかでその感覚に包まれていく自分を感じていた。その感覚の中に安らぎが含まれていることを願って。

            幸一は慈しむように丁寧に小さな膨らみを撫で回し、久美の身体がそれを受け入れて変化を見せることを願っていた。それまでは愛を語りかけるように心を込めて愛撫していく。

            最初、久美の身体が見せた変化は膨らみの高さだった。元々身体を横にしても殆ど高さが変わらない膨らみだったが、ゆっくりと丁寧に撫でている左側の膨らみがほんの少しだけ右よりも高くなってきた。それと同時に膨らみを撫でている右手の感触がほんの少しだけ固いものに触っているような感じになる。

            「久美ちゃん、感じてきた?」

            幸一がそう問いかけても、久美は静かに目を閉じたまま何も言わなかった。しかし、明らかに左の膨らみが固く張ってきているのは間違いない。幸一はゆっくりとそれを確かめるように今度は丁寧に左だけを撫で続けた。

            「少しずつ感じてくるからね」

            幸一はそう言うと、更に左の膨らみだけを撫で続ける。すると、久美は次第にむずがるように時折身体を動かし始めた。良い兆候だ。久美の中で快感の芽が育ち始めているのだ。